堤防どて)” の例文
はしのあつたのは、まちすこはなれたところで、堤防どてまつならむではつてて、はしたもと一本いつぽん時雨榎しぐれえのきとかいふのであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたし所有あらゆるしらべました、堤防どてました、それからかきも』として、はとあいちやんにはかまはず、『けどへびは!だれでもきらひだ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
麓路ふもとじ堤防どてとならびて、小家こいえ四五軒、蒼白あおじろきこの夜の色に、氷のなかにてたるが、すかせば見ゆるにさも似たり。月は峰の松のうしろになりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
橋のあったのは、まちを少し離れた処で、堤防どてに松の木が並んでうわっていて、橋のたもとえのきが一本、時雨榎しぐれえのきとかいうのであった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すあと、注すあと、割醤油わりしたはもうからで、ねぎがじりじり焦げつくのに、白滝しらたきは水気を去らず、生豆府なまどうふ堤防どてを築き、きょなって湯至るの観がある。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
賤機山しずはたやま浅間せんげん吹降ふきおろす風の強い、寒い日で。寂しい屋敷町を抜けたり、大川おおかわ堤防どてを伝ったりして阿部川の橋のたもとへ出て、くるまは一軒の餅屋へ入った。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれは人間じゃあない、きのこなんで、御覧なさい。片手ふところって、ぬうと立って、笠をかぶってる姿というものは、堤防どての上に一ぽん占治茸しめじが生えたのに違いません。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちよろ/\とだけのながれながら、堤防どてひかへず地續ぢつゞきに、諏訪湖すはこひとひかへたれば、爪下つました大湖たいこみづしのぎをせめて、をはいで、じり/\とせまるがごとおもはるゝ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さつきは雨脚あめあししげくつて、宛然まるで薄墨うすゞみいたやう、堤防どてだの、石垣いしがきだの、蛇籠じやかごだの、中洲なかずくさへたところだのが、点々ぽつちり/\彼方此方あちらこちらくろずんでて、それで湿しめつぽくツて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
青い山から靄の麓へけ渡したようにも見え、低い堤防どての、茅屋かややから茅屋の軒へ、階子はしごよこたえたようにも見え、とある大家の、物好ものずきに、長く渡した廻廊かともながめられる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爾時そのとき何事とも知れずほのかにあかりがさし、池を隔てた、堤防どての上の、松と松との間に、すっと立ったのが婦人おんなの形、ト思うと細長い手を出し、此方こなたの岸をだるげに指招さしまねく。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爾時そのとき何事なにごとともれずほのかにあかりがさし、いけへだてた、堤防どてうへの、まつまつとのあひだに、すつとつたのが婦人をんなかたち、トおもふと細長ほそながし、此方こなたきしだるげに指招さしまねく。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さあ思い立ってはたてたまらない、渡り懸けた橋を取って返して、堤防どて伝いに川上へ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠くの方に堤防どての下の石垣の中ほどに、置物のようになって、かしこまって、猿が居る。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とほくのはう堤防どてした石垣いしがきなかほどに、置物おきもののやうになつて、かしこまつて、さるる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
堤防どてを離れた、電信のはりがねの上の、あの辺……崖の中途のしいの枝に、飛上った黒髪が——根をくるくると巻いて、さかさ真黒まっくろ小蓑こみのを掛けたようになって、それでも、優しい人ですから
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなわち石滝のある処で、旅客は岸づたいくのであるが、ここを流るるのは神通の支流で、幅は十間に足りないけれども、わずかの雨にもたちまち暴溢あふれて、しばしば堤防どてを崩す名代の荒河。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぶやうに列車れつしやぐる、小栗栖をぐるすまどからのぞいて、あゝ、あすこらのやぶからやりて、馬上ばじやうたまらず武智光秀たけちみつひで、どうと落人おちうどから忠兵衞ちうべゑで、あし捗取はかどらぬ小笹原こざさはらと、線路せんろ堤防どて枯草かれくさ料簡れうけん
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬士まごにも、荷担夫にかつぎにも、畑打はたうつ人にも、三にんにんぐらいずつ、村一つ越しては川沿かわぞい堤防どてへ出るごとに逢ったですが、みんなただ立停たちどまって、じろじろ見送ったばかり、言葉を懸ける者はなかったです。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巌角いわかどきざを入れて、これを足懸あしがかりにして、こちらの堤防どてあがるんですな。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
尾上をのへはるかに、がけなびいて、堤防どてのこり、稻束いなづかつて、くきみだみだれてそれ蕎麥そばよりもあかいのに、ゆめのやうにしろまぼろしにしてしかも、名殘なごりか、月影つきかげか、晃々きら/\つやはなつて、やまそでに、ふところ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)