もとづ)” の例文
それは無限の過程であるのである。物理学というものも、歴史的身体的なる我々の感官の無限なる行為的直観の過程にもとづくのである。
デカルト哲学について (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
一四一かれ善果ぜんくわもとづきて遷化せんげせしとならば、一四二道に先達せんだちの師ともいふべし。又活きてあるときは一四三我がために一個ひとり徒弟とていなり。
この長田は長田の荘司しょうじの事で、例の源の義朝をめて置きながらこれを暗殺して平家の方に党した等の事蹟にもとづいて作ったもので
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
さあ、仲直りに二人で踊れよおい、と五合ばかり取ってきた。その時の女房との条約にもとづいて、店の狐は翌日から姿を隠してしまった。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
されど北寿の山水画に対しては西洋画模倣にもとづく幼稚なる技巧と、制作上の無邪気なる誤謬ごびゅうとは、最初よりこれを認容せざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私たちはこれらの直観と理性との二つにもとづいて、民藝の振興が工藝界にとって最も重大な事であるのを確信するに至りました。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
けれどもこの刺激は前に述べた条件にもとづいて、ある具体、ことに人間を通じて情があらわるるときに始めて享受きょうじゅする事ができるのであります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのアメリカ人の着想ちゃくそうもとづいて、わしが低速砲弾に応用したんだ。つまり、砲弾の中に、それと似た重力打消装置じゅうりょくうちけしそうちがある。
以上の区域外にもイタドリといって通ずる土地はなお弘いが、それが在来の語か、はた新たなる匡正きょうせいもとづくものかを、確かめ得ざる場合が多い。
かくわたくしがあのとき天狗てんぐ頭目かしらいていただしたところにもとづき、ざっとそのおはなしをいたしてることにしましょう。
世に許されるようになりましたので、明治天皇御即位の時の制度などは、福羽氏の創意にもとづいたように聞きました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それがどういう原理にもとづくかということを、ごく抽象的に説明してあるに過ぎない。その抽象原理を具体化するために、わしは丸三年の日子にっしを費している。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人は皆これを評して英普聯合れんごう軍、ことに英軍司令官ウェリントンと普軍司令官プルーヘルの力にもとづくという。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
私は正確にこの提議にもとづいて行動しました。父と兄とは私の結婚を、知人には知らせてはゐませんでした。
ルコント・ドゥ・リイルの出づるや、哲学にもとづける厭世えんせい観は仏蘭西フランスの詩文に致死の棺衣たれぎぬを投げたり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
だい貴方あなた自身じしんなんもとづいて、こんなことを主張しゅちょうなさるのか、貴方あなたは一たい哲人ワイゼですか、哲学者てつがくしゃですか?
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一つ入れますで。——但シ、下名ノ保管スル証書ガ虚構ノ事実ニもとづケルモノナル時ハベテノ約束ヲ無効トス、——なあ、こない書いといても差支いあれしませんやろ?
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其の時聴衆みな言ってえらく、ばかりの佳作を一節切のはなずてに為さんはおしむべき事ならずや、宜敷よろしく足らざるを補いなば、あっぱれ席上の呼び物となるべしとの勧めにもとづ
福沢先生これに答ふるめにとて、生しょくして文案を草せしむ。即ち先生平素の言行にもとづき、其大要を述べて、先生の閲覧を乞ひ、これを修身要領となづけ、学生に示すこと左の如し。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
「私」の美的恣意しいもとづく鑑賞によって仏像を解しうるだろうか。信仰の上から云って冒涜ぼうとくであるのみならず、あらゆる点から云ってそれは虚偽ではなかろうか。造仏本来の意味に反する。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
この概論は独創的方法によって仕上げられた新しいプランにもとづいて組み立てられ、その結論もまた——あえていっておかねばならぬが——ある点において現在の経済学の結論と同一ではない。
ふしねがはくは公明正大の道理にもとづき、一大英断を以て天下と更始一新せん。
船中八策 (新字旧仮名) / 坂本竜馬(著)
初め如上の推定にもとづきて進行し、呉一郎を釈放したるも結局、再びこの方針を放棄し、純然たる見込捜索に移りたるため、ついに何等るところなく、事件は所謂いわゆる迷宮裡に遺棄さるるに到りたり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
永劫回帰といえども、輪廻思想にもとづかねば建立されもしなかったろう。
音律の学は格致の学にもとづき、別に一課をなし、音に従て譜を作り、譜を案じて調をなすの法なり。この法、支那には、ほぼこれあり。欧米諸国には、ほとんど精妙を極む。ただ我邦にいまだ開けず。
国楽を振興すべきの説 (新字新仮名) / 神田孝平(著)
幼年時代ようねんじだいを通じて、その音楽家の面影おもかげは生きた手本てほんとなり、かれはそのうえをすえていた。わずか六歳の少年しょうねんたる彼が、自分もまた楽曲を作ってみようと決心けっしんしたのは、この手本にもとづいてであった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ある人がかつて俳諧はいかいは普遍の徳があるとか云ったが、子規の一派の永く活動しているのは、この普遍の徳にでももとづいて居るものであろう。予が主筆のために説かんと約した鴎外漁史の事はここに終る。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これ皆尊君様そんくんさまの御説諭にもとづきますことゝ、実に何ともはや恐れ入りましたことで、粥河が先刻よりお待兼申し居りまする、さアすみやかにお通りあらせらるゝ様に、おや何だ、何処かへ行って居ねえわ
「天王山に兵を出す、此にもとづけり」
もっともこれは愚僧当山とうざんの厄介に相なり候てより三年の後にて、愚僧は御遺言ごゆいごんもとづき当山八代目の住職に相なり候次第にて有之候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だが、これは精神病ではなく、弾片だんぺんによって脳髄に受けたる圧迫傷害にもとづくもので、大脳手術を施すことにより多分恢復するだろうと思われる。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
石仏せきぶつに愛なし、色は出来ぬものと始から覚悟をきめているからである。愛は愛せらるる資格ありとの自信にもとづいて起る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
求道の精神にもとづいた高尚な美もあることは否まないが、そればかりではない。自然を諷詠した高尚な句も沢山にある。目的は真ではなくて美である。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
むかしことわざに『ひともとづき、かみもとづく』とやらもうしてりますが、わたくしはこちらの世界せかいて、そのことわざただしいことにづいたのでございます。
それ故私たちは現在の日本が伝統にもとづいてどんな仕事を続けているか。またかかるものにどんな価値を見出し得るかを、まずただしておかねばなりません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
他を人格と見ることによって自己が人格となるという道徳的原理は、これにもとづくものでなければならない。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
ワキモコガはマキムクノのなまり、纏向穴師まきむくのあなしは三輪の東にそばだつ高山で、大和北部の平野に近く、多分は朝家の思召おぼしめしもとづいて、この山にも一時国樔人の住んでいたのは
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなわち今日の科学にもとづき宇宙万物の進化生成を認めその上に立ちて進化の永き歴史を想え。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
松山は父親の長い手紙を持っていて、その文面にもとづいて意見を述べた訳だが、一口に云えば、僕は普通の意味の医者になって金を儲けるにも及ばぬし、学者となって名をあげる必要もない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何故つて、今私が云はうとしてゐることはもう二度と繰り返さないでも、私はきつとそれにもとづいて行動を取りますからね。母がくなつた後は私はもうあなたから手を引いてしまひますよ。
今日彼らをフィジオクラットと呼ぶのは、この理由にもとづくのである。
りに人間にんげん滿足まんぞく安心あんしんとが、其身外そのしんぐわいるにらずして、自身じしんうちるとして、またりに苦痛くつう輕蔑けいべつして、何事なにごとにもおどろかぬようになければならぬとして、て、だい貴方あなた自身じしんなんもとづいて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すなわチ一策ヲ進メ京紳ノ間ニ周旋ス。事すなわチ行ハレズ。他日石河鵜飼うがいノ諸氏遊説スルヤ別勅終ニくだル。アルイハコレニもとづクカ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
影の大統領「いやだ。これほどいっても分らないのか、君は……。よし、委員会の決定にもとづき、君から貰いうけるものがある。覚悟かくごをしたまえ」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前に云った社会状態の変化にもとづいた結果にほかならんのでありますから、この状態の変化を知りさえすれば、旧来の評価を墨守する必要がなくなります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
和訓栞わくんのしおり』に依ればみのの語源は「身荷みにの義なるべし」とある。身に担うの意にもとづいたのか。この外に異説の文献は見当らぬ。蓑を「簔」とも書くが正しくない。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
家族というものが、人間の社会的構成の出立点であり、社会の細胞と考えられる。進化論的に考えれば、人間の家族も動物の集団本能の如きものにもとづくとも考えられるであろう。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
神道の研究をとなえ初めたのもまた英国人チャンバレンであった。博物館の創立もまた西欧人の勧告にもとづく所だと聞いている。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それには面白い話があるのですが、それは長くなるから止しましょう。とにかく私が第一にこの現象を発見するに至ったのは、気象上の変化にもとづきます」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その代り血統上の親和力や、異性にもとづ牽引性けんいんせい以外に、年齢の相似から来る有利な接触面をもっていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)