“丹波(たんば)” の例文
丹波(たんば)の朝倉山椒(あさくらざんしょう)というのは、古くから有名で献上品、あるいは大名の御用となって諸方へ出回り、ずいぶん珍重されたようである。
山椒 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
藤園池辺氏が丹波(たんば)に遊んで大江山(おおえやま)あたりを歩いたとき、九州辺で彼岸花(ひがんばな)というものを、土地の人に聞けばきつねばなと答えたといって
その山代(やましろ)のオホツツキマワカの王は弟君イリネの王の女の丹波(たんば)のアヂサハ姫と結婚して生んだ御子は、カニメイカヅチの王です。
澄之は出た家も好し、上品の若者だったから、人〻も好い若君と喜び、丹波(たんば)の国をこの人に進ずることにしたので、澄之はそこで入都した。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
光秀は、主君とわかれて、ここから丹波(たんば)の領地へ帰る予定である。——で、明るいうちにと、自分の宿舎からいま暇乞(いとまご)いのためここへ来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「旦那はんお留守の間に早よ行つて来てんか。何でもあらへん、眼つぶりもつてでも楽(らく)に行ける。えら行けの丹波(たんば)行けや。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
が、忌々(いまいま)しさを忘れるには、一しょに流された相手が悪い。丹波(たんば)の少将成経(なりつね)などは、ふさいでいなければ居睡(いねむ)りをしていた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころ丹波(たんば)の大江山(おおえやま)に、酒呑童子(しゅてんどうじ)と呼(よ)ばれた恐(おそ)ろしい鬼(おに)が住(す)んでいて、毎日(まいにち)のように都(みやこ)の町(まち)へ出て来(き)ては、方々(ほうぼう)の家(いえ)の子供(こども)をさらって行きました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
丹波(たんば)の大江山等に住んでいるこの半人半怪の惨酷(ざんこく)なる奴と、もっと幽霊らしい、死して鬼となるといったような一種の悪霊としての鬼と、悪気災難
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
この廓(くるわ)にいる人でも大坂生まれは数えるほどで、近くても京(きょう)丹波(たんば)、遠くは四国西国から売られて来て、知らぬ他国で辛い勤め奉公しているのもある。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここに細川方の幕僚(ばくりょう)で丹波(たんば)を領している細川下野守教春(しもつけのかみのりはる)も、その数に洩(も)れず、急いで国元へ引返して行きました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「福引の箪笥はくれるぜ。去年の暮に僕のところの女中が引いてきた。して見ると高等学校の教員は丹波(たんば)の篠山(ささやま)出身の女中よりも馬鹿にされているんだね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
桃六 されば、誰かの櫛(くし)に牡丹(ぼたん)も刻めば、この獅子頭も彫った、近江之丞桃六と云う、丹波(たんば)の国の楊枝削(ようじけずり)よ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
都から二十里ばかり北に離れた丹波(たんば)の国のある村に、三人の兄弟がありました。一番上の兄を一郎次(いちろうじ)と言いました。真中(まんなか)を二郎次(じろうじ)と言い、末の弟を三郎次(さぶろうじ)と言いました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山陰道の東端は丹波(たんば)、丹後(たんご)、但馬(たじま)であります。これらの国々の名は色々の言葉で思い出されます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
でも、そちらの方には深い高地があって、その遠い連山の間に山城(やましろ)から丹波(たんば)にまたがるいくつかの高峰があるという日本人の説明を聞くだけにも満足するものが多かった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「昔丹波(たんば)の大江山(おおえやま)。」と子供の歌う声がして、急に鉦はそれと調子を合せて早く叩かれた。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「それには、丹波(たんば)の道能宇斯王(みちのうしのみこ)の子に、兄媛(えひめ)、弟媛(おとひめ)というきょうだいの娘(むすめ)がございます。これならば家柄(いえがら)も正しい女たちでございますから、どうかその二人をお召(め)しなさいまし」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ヰロリをカナゴと謂う例は丹波(たんば)の天田(あまだ)・何鹿(いかるが)辺に一つあり、クヌギすなわち薪材をカナギという例は三河にも越前にもあって、カナドもまた一つの炉を意味する名詞だったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いずれも一騎当千の猛将と見えて、丹波(たんば)の国は笹山から昨夜着し立てでござると云わぬばかりに、黒く逞(たくま)しく筋肉が発達している。中学などへ入れて学問をさせるのは惜しいものだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
京師(けいし)に応挙(おうきょ)という画人あり。生まれは丹波(たんば)の笹山(ささやま)の者なり。京にいでて一風の画を描出す。唐画にもあらず。和風にもあらず。自己の工夫(くふう)にて。新裳(しんしょう)を出しければ。京じゅう妙手として。
人の言葉――自分の言葉 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
でも両親が宗家と共に、城中で切腹いたしまして、妾一人が乳母や下僕に、わずかに守られて城を出てからは、昔の栄華は夢となり、丹波(たんば)の奥の狩野(かの)の庄で、みすぼらしく寂しく暮らしました。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さう/\おぼえて居(ゐ)る八百屋(やをや)お七の機関(からくり)が見(み)たいと云(い)つたんだツけ。アラ否(いや)嘘(うそ)ばつかり。それぢやア丹波(たんば)の国(くに)から生捕(いけど)つた荒熊(あらくま)でございの方(はう)か。何(ど)うでもようございますよ妾(わたし)は最早(もう)帰(かへ)りますから。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山海万里のうちにはおのずから異風奇態の生類(しょうるい)あるまじき事に非(あら)ず、古代にも、仁徳(にんとく)天皇の御時、飛騨(ひだ)に一身両面の人出ずる、天武(てんむ)天皇の御宇(ぎょう)に丹波(たんば)の山家(やまが)より十二角の牛出ずる、文武(もんむ)天皇の御時
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一昨年(大正五年)十二月の『風俗』に、林若樹君が「不思議な薬品」てふ一文を出し、本邦現存最古の医書丹波(たんば)康頼の『医心方』から引き陳(つら)ねた奇薬の名の内に、馬乳、白馬茎、狐と狗の陰茎あり。
丹波(たんば)である——峰丹波が、ノッソリと突っ立っているのだが。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その帰途に官兵衛は、供も馬も捨てて丹波(たんば)から山陰へ廻った。これは今度、秀吉と二日間を安土に送った間に結ばれた秘策(ひさく)を果たすためだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それより以前にも、垂仁紀(すいにんき)を見ると、八十七年、丹波(たんば)の国の甕襲(みかそ)と云う人の犬が、貉を噛(か)み食(ころ)したら、腹の中に八尺瓊曲玉(やさかにのまがたま)があったと書いてある。
貉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この天皇は、丹波(たんば)の大縣主(おおあがたぬし)ユゴリの女のタカノ姫と結婚してお生みになつた御子はヒコユムスミの命お一方です。
今年になってからは豊後(ぶんご)、日向を調査し、帰って四国に旅立ち、信州に行き、また最近には周防(すおう)、長門を経て石見(いわみ)に入りました。丹波(たんば)を訪うたのはわずか旬日前のことです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
寿商店(ことぶきしょうてん)の独息子(ひとりむすこ)新太郎君(しんたろうくん)が三度目の診察を受けた時、丹波(たんば)先生は漸く転地を勧めてくれた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
上夜久野の驛を過ぎて、但馬(たじま)の國に入つた。攝津(せつつ)から丹波(たんば)、丹波から丹後といふ風に、私達は三つの國のうちを通り過ぎて、但馬の和田山についた。そこは播但線(ばんたんせん)の交叉點にもあたる。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ケケスはなお近江(おうみ)の湖畔、阿波(あわ)の吉野川流域、丹波(たんば)等にもあって弘い名称である。
そうして丹波(たんば)の山奥から出て来た観覧者の目に映るような美しい影像はもう再び認める時はなくなってしまう。これは実にその人にとっては取り返しのつかない損失でなければならない。
案内者 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
浮かれ人を花に送る京の汽車は嵯峨(さが)より二条(にじょう)に引き返す。引き返さぬは山を貫いて丹波(たんば)へ抜ける。二人は丹波行の切符を買って、亀岡(かめおか)に降りた。保津川(ほづがわ)の急湍(きゅうたん)はこの駅より下(くだ)る掟(おきて)である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大鷹(おおたか)はかしこまって、その鳥のあとをどこまでも追っかけて、紀伊国(きいのくに)、播磨国(はりまのくに)へとくだって行き、そこから因幡(いなば)、丹波(たんば)、但馬(たじま)をかけまわった後、こんどは東の方へまわって、近江(おうみ)から美濃(みの)
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
細い山道は陽のあった所を解け崩(くず)しながらも、山陰は残雪で踏む度に草履が鳴った。千枝子はときどき立ち停って、まだ雪を冠(かぶ)っている丹波(たんば)から摂津へかけて延びている山山の峰を見渡しながら
比叡 (新字新仮名) / 横光利一(著)
額を青くしている早苗を、丹波(たんば)はうるさそうに見やって
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
丹波(たんば)の太郎(たろう)に聞(き)かせるな。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
岐阜城第一に迎えた春の献賀(けんが)にと、丹波(たんば)長谷(はせ)の城主赤沢加賀守(かがのかみ)は、自分の秘蔵する名鷹(めいよう)二羽のうちの一羽を、わざわざ使者に託して送ってきた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甥(をひ)の法師の頼みますには、丹波(たんば)の前司(ぜんじ)なにがしの殿が、あなた様に会はせて頂きたいとか申して居るさうでございます。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この王が丹波(たんば)の遠津の臣の女のタカキ姫と結婚して生んだ御子はオキナガの宿禰の王です。
山陰道(さんいんどう)は丹波(たんば)、丹後(たんご)、但馬(たじま)、因幡(いなば)、伯耆(ほうき)、出雲(いずも)、石見(いわみ)の七ヵ国でこれに隠岐(おき)の島が加わります。県は主として鳥取県と島根県とでありますが、東寄りの国々は京都府や兵庫県の一部を占めます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼は饑(う)え渇(かわ)いたように車の窓を開け放ち、山城(やましろ)丹波(たんば)地方の連山の眺望(ちょうぼう)を胸一ぱいに自分の身に迎え入れようとして行った。大阪から京都まで乗って行く途中にも、彼は窓から眼を離せなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
丹波(たんば)から兄媛(えひめ)たちのきょうだい四人をおめしよせになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
とのは丹波(たんば)の助三(すけさぶ)さまよ……
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平家の敗色が明瞭になると、丹波(たんば)辺りでも、吉野でも、いちど平定した畿内の反平家分子も、また一斉に、騒ぎ出した。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大和(やまと)の国内は申すまでもなく、摂津の国、和泉(いずみ)の国、河内(かわち)の国を始めとして、事によると播磨(はりま)の国、山城(やましろ)の国、近江(おうみ)の国、丹波(たんば)の国のあたりまでも
竜 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
中国 播磨(はりま)以西の山陽道と、丹波(たんば)以西の山陰道。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
丹波(たんば)雪国積(つも)らぬさきに
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)