長年ながねん)” の例文
まえとは長年ながねんいっしょにくらしてたが、おまえはただの一言ひとこともわたしの言葉ことばそむかなかった。わたしたちはしあわせであったとおもう。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むら猟人かりゅうどのおじいさんがんでいました。このおじいさんは、長年ながねん猟人かりゅうどをしていまして、鉄砲てっぽうつことの大名人だいめいじんでありました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女の若い時分は、ちやうどこゝの主人も若い頃なのだ——いつぞやフェアファックス夫人は彼女がこゝに長年ながねん住み込んでゐると私に話したことがある。
自力じりきで日の当る所まで歩いて出て見せるが、何しろ、長年ながねん掘荒したあなだから、まるで土蜘蛛つちぐもの根拠地みたようにいろいろな穴が、とんでもない所にいている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一家族は此処ここから一里ほど離れた昔の城下の士族町から来た。老人夫婦に取つても、主婦に取つても、長年ながねん住み馴れた土地や親しい人々に別れて来るのは辛かつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
長年ながねんの顔があるところから、暫くは無理がいたけれども、坪十五銭の地代が二年近くもとどこおつて、百二三十円にもなつてゐるのは、どうにも返済の見込みが立たない。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
槍先やりさき功名こうみやうよつ長年ながねん大禄たいろく頂戴ちやうだいしてつたが、これから追々おひ/\なかひらけてるにしたがつて時勢じせい段々だん/\変化へんくわしてまゐるから、なにに一のうそなへたいと考へて、人知ひとしれず医学いがくを研究したよ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かねをおろすまえに、青年団長せいねんだんちょう吉彦よしひこさんが、とてもよいことをおもいついてくれた。長年ながねんともだちであったかねともいよいよおわかれだから、子供こどもたちにおもうぞんぶんつかせよう、というのであった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かへつて年頃としごろに成し身にしてあの如くそとへも出ねば癆症らうしやうおこりやすらん一個ひとりほか掛替のなき者なるをやまひおこらば如何いかにせんと長年ながねんつとむ管伴ばんたうの忠兵衞をび事の由を話してをりも有しならば息子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「吉川さんや瀬戸さん、それに小宮さんは長年ながねんの御交際ですから安心ですけれど、しょうの分らない人は学校のお友達でも油断がなりませんよ。幾らお頼まれになっても、借用証書の連署丈けはお断り下さい」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しょうは、かねると、長年ながねん苦労くろうを一つにしてきたうしが、さびしそうにあとのこされているのを見向みむきもせずに、さっさとていってしまいました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長年ながねんあいだ、わたくしがたからのようにしてぶらげている、だいじなだいじなこぶでございますから、これをげられましては、ほんとうにこまってしまいます。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
長年ながねんの顔があるところから、しばらくは無理がいたけれども、つぼ十五銭の地代が二年近くもとどこおつて、百二三十円にもなつてゐるのは、どうにも返済の見込みが立たない。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども、かへりみて自分を見ると、自分は人間中にんげんちうで、尤も相手を歯痒はがゆがらせる様にこしらえられてゐた。是も長年ながねん生存競争の因果いんぐわさらされたばちかと思ふと余り難有い心持はしなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長年ながねん苦労した種に芽が生えて、十分ではなくても、兎に角子息むすこが月給取になつて、呼んでれるのは嬉しいが、東京といふ処は石の上の住居すまゐ、一晩でも家賃といふものを出さずには寝られない。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
長年ながねんやまんでいて、獣物けものにもなさけがあり、また礼儀れいぎのあることをいていた主人しゅじんは、くまが、さけいにきたのだということだけはわかったのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
親の代から蘆屋に住んでいるおかげで、長年ながねんの顔があるところから、しばらくは無理がいたけれども、坪十五銭の地代が二年近くも滞って、百二三十円にもなっているのは
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おじいさんはそのあとで、そっとかおをなでてみました。そうすると、長年ながねんじゃまにしていた大きなこぶがきれいにくなって、あとはふいてったようにつるつるしていました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「そんなことはありますまい。わたしどもは、長年ながねんいしさがしてあるいていますが、こういうめずらしいいしはこれまで、あまりれたことがないのです。」と、みせのものはこたえました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それはなにしろ長年ながねんいくさで、ころもいともばらばらにほごれてきたからしかたがない。」
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
長年ながねん苦楽くらくともにした女房にょうぼうが、また、せがれにはやさしかったははが、いまはれいとなって、ここにはいり、なにもかもじっとているがして、おじいさんは花生はないけのみずをかえ、かねをたたいて
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしはむかしシナの南岳なんがくという山にんでいて、長年ながねんほとけみち修行しゅぎょういたしました。こんど日本にほんくにまれてることになりましたから、むかしのとおりまたおきょうんでみたいとおもいます。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ここにはもう長年ながねんいるけれど、そんな心配しんぱいはすこしもない。それにやまには、あかじゅくしたがなっているし、あのやま一つせば、たんぼがあって、そこにはわたしたちの不自由ふじゆうをしないほどの食物しょくもつちている。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「わたくしは長年ながねんこのみずうみの中にんでいる龍王りゅうおうでございます。」
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)