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銜
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くは
ふりがな文庫
“
銜
(
くは
)” の例文
多分お嘉代を刺した曲者が、盜んだ財布の中味を拔いて、生垣の中に空財布だけを突つ込んで行つたのを、犬でも
銜
(
くは
)
へて來たのでせう。
銭形平次捕物控:147 縞の財布
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
純吉は、湯の中に仰向けの儘煙草を
銜
(
くは
)
えて、悠々と
喫
(
ふか
)
し始めた。静かな朝だつた。煙りはゆらゆらと立ち昇つて、天井に延びた。
明るく・暗く
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
軒下に立つて指を
銜
(
くは
)
へ乍らさも羨ましさうにそれを見てゐた敏雄は、圭一郎の姿を見るなり今にも泣き出しさうな暗い顏して走つて來た。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
太綱
(
ふとづな
)
の
一端
(
いつたん
)
を
前齒
(
まへば
)
に
銜
(
くは
)
へてする/\と
竿
(
さを
)
を
上
(
のぼ
)
りて
直
(
たゞち
)
に
龍頭
(
りうづ
)
に
至
(
いた
)
る。
蒼空
(
あをぞら
)
に
人
(
ひと
)
の
點
(
てん
)
あり、
飄々
(
へう/\
)
として
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かる。これ
尚
(
な
)
ほ
奇
(
き
)
とするに
足
(
た
)
らず。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
若し怒り惡意に加はらば、彼等我等を追來り、その慈悲なきこと口に
銜
(
くは
)
へし兎にむかひて
酷
(
むご
)
き犬にもまさりぬべし 一六—一八
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
先刻から浜の岩に大きな檜笠を被つて
銜
(
くは
)
へ
煙管
(
ぎせる
)
のまゝ膝掛けて、都合によつては自分も網を下ろさうと他の舟の様子を眺めて居た甚六の爺さんは
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
僕は巻煙草を
銜
(
くは
)
へたまま、ふとこの少女の耳の根に
垢
(
あか
)
の残つてゐるのを発見した。その又垢は垢と云ふよりも「よごれ」と云ふのに近いものだつた。
春の夜は
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見れば省吾の弟、泣いて
反返
(
そりかへ
)
る児を
背負
(
おぶ
)
ひ乍ら、一人の妹を連れて母親の方へ駈寄つた。『おゝ、おゝ。』と細君は抱取つて、乳房を出して
銜
(
くは
)
へさせて
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
『黒い煙の中を蜂が子を
銜
(
くは
)
へて逃げて行つたね。』と、小池はこの名も知れぬ神の宮の
大銀杏
(
おほいてふ
)
を、
愛宕
(
あたご
)
さんの大銀杏でゝもあるやうに、見上げつゝ言つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
さて飲みさしの烟草を
銜
(
くは
)
へて考へた。それは汽車の中で読むには何が好からうかと考へたのである。先生は市中で電車に乗るにでも、きつと何か本を持つて乗る。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
大きい蟻の足を小さい蟻が
銜
(
くは
)
へてどうしても離さない。大きい蟻が怒つて車輪の如くに体をまはす、小さい蟻はそのままに
廻
(
ま
)
はされ、埃を浴びて死んだやうになる。
三年
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
かう云つて男は敷島を一本
袂
(
たもと
)
から出して口に
銜
(
くは
)
へた。そして手を両方の
袂
(
たもと
)
へ入れて
燐寸
(
マツチ
)
を捜して居る。
御門主
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
葉巻を横
銜
(
くは
)
へにしながら、場所柄をも考へないやうに哄笑してゐる巨漢は、逓信大臣のN氏だつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
物を言ふ間にも、白髪かつらの長い毛の端を口に
銜
(
くは
)
へて咬んでゐる。己が此度の旅立の事、その旅の目的の事なぞを話して聞かす間も、主人はぢつとして聞いてゐられぬらしい。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
洗吉さんは眠さうな目をして楊枝を
銜
(
くは
)
へて水口から下りて行かれた。六月に高等工業の試験をお受けになるので、その準備に神田の方の学校へ通つてゐられるのださうであつた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
「さあ」
與吉
(
よきち
)
の
出
(
だ
)
した
煙管
(
きせる
)
を
卯平
(
うへい
)
は
拭
(
ふ
)
きもせずに
口
(
くち
)
へ
銜
(
くは
)
へた。
暫
(
しばら
)
くしてから
卯平
(
うへい
)
は
苦
(
にが
)
い
顏
(
かほ
)
をしてぢより/\とこそつぱい
口
(
くち
)
の
泥
(
どろ
)
をぴよつと
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
してそれから
口
(
くち
)
を
衣物
(
きもの
)
でこすつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
うつかりしてる間に
銜
(
くは
)
へてつたことは御存じございますまい。
犬は鎖に繋ぐべからず
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
『打つたり叩いたりなさるんですもの』と袖を
銜
(
くは
)
へて口籠る。
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
口に
銜
(
くは
)
へて立つてゐる
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
ガラツ八は指を
銜
(
くは
)
へてだまつて引下がる外はありません。四ツ目の銅八と自分とでは、あまりにも貫祿が違ひます。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
片頬
(
かたほ
)
に
觸
(
ふ
)
れた
柳
(
やなぎ
)
の
葉先
(
はさき
)
を、お
品
(
しな
)
は
其
(
その
)
艶
(
つや
)
やかに
黒
(
くろ
)
い
前齒
(
まへば
)
で
銜
(
くは
)
へて、
扱
(
こ
)
くやうにして
引斷
(
ひつき
)
つた。
青
(
あを
)
い
葉
(
は
)
を、カチ/\と
二
(
ふた
)
ツばかり
噛
(
か
)
むで
手
(
て
)
に
取
(
と
)
つて、
掌
(
てのひら
)
に
載
(
の
)
せて
見
(
み
)
た。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
早曉に起きて、楊子を
銜
(
くは
)
へながら扉を開けたお道は、キヤツと叫んで氣絶しさうになつた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
無念にも一人ポプラの木の下にしよんぼりと指を
銜
(
くは
)
へて立つてゐなければならなかつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
しまひに御飯をお
櫃
(
ひつ
)
に取つて額際に汗を見たおくみは、仕度した皿のものをお盆に載せて、そろ/\座敷のテイブルに運んで、袂の先を
銜
(
くは
)
へて、すべてのものを恰好よく並べた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
卯平
(
うへい
)
は
暫
(
しばら
)
く
隱居
(
いんきよ
)
に
落付
(
おちつ
)
いてからは一
錢
(
せん
)
づゝでも
懷
(
ふところ
)
を
拵
(
こし
)
らへねばならぬといふ
決心
(
けつしん
)
から
促
(
うなが
)
されて、
毎日
(
まいにち
)
煙管
(
きせる
)
を
横
(
よこ
)
に
銜
(
くは
)
へては
悠長
(
いうちやう
)
ではあるが、
然
(
しか
)
も
間斷
(
かんだん
)
なく
繩
(
なは
)
をちより/\と
綯
(
な
)
つたり
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼は巻煙草を
銜
(
くは
)
へながら、(それは彼が同志と一しよに刑務所を出た
三日
(
みつか
)
目だつた。)ふと彼女の顔へ目を
注
(
そそ
)
いだ。近頃夫を失つた彼女は熱心に彼女の両親や兄弟のことを話してゐた。
鬼ごつこ
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鶴村は、金口の煙草を
銜
(
くは
)
へて、瞑目しながら蓄音機の音に聴き惚れてゐた。
眠い一日
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
少焉
(
しばらく
)
して猫は一尾の
比目魚
(
かれひ
)
を
銜
(
くは
)
へて来て、蘭軒の
臥所
(
ふしど
)
の
傍
(
かたはら
)
に置いた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
指を
銜
(
くは
)
へて
門
(
かど
)
に立つウヽウ
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
銜
(
くは
)
へて引込んぢや居られない。御守殿お茂與の一生の仕事じまひ、恩になつた宗方の旦那のために、せめて敵を討つて上げ度い——と涙を流して頼みましたよ
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
房
(
ふつ
)
さりと
結
(
むす
)
んでさげた
其
(
その
)
姫樣
(
ひいさま
)
の
帶
(
おび
)
を
銜
(
くは
)
へたり、
八
(
や
)
ツ
口
(
くち
)
をなめたりして、
落着
(
おちつ
)
いた
風
(
ふう
)
でじやれてゐるのを、
附添
(
つきそひ
)
が、つと
見
(
み
)
つけて、びツくりして、
叱
(
しつ
)
! といつて
追
(
お
)
ひやつた。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
白い
布
(
きれ
)
を頭から被つて、其の端を口に
銜
(
くは
)
へた一つの人影が、すうつと縁側へ上つて來た。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
卯平
(
うへい
)
は
銜
(
くは
)
へた
煙管
(
きせる
)
を
少
(
すこ
)
し
顫
(
ふる
)
へる
手
(
て
)
に
持
(
も
)
つて
途切
(
とぎ
)
れながら
漸
(
やうや
)
く
此
(
こ
)
れだけいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
片つ方の人差指を口に
銜
(
くは
)
へてとぼ/\とお帰りになる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
キヤツと
叫
(
さけ
)
びて
倒
(
たふ
)
るゝを、
見向
(
みむ
)
きもやらず
通
(
とほ
)
りしは、
優
(
いう
)
にやさしき
人
(
ひと
)
の、
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
を
唇
(
くちびる
)
に
銜
(
くは
)
へしなり。うらぶれし
良家
(
りやうか
)
の
女
(
むすめ
)
の、
父
(
ちゝ
)
の
病氣
(
いたつき
)
なるに、
夜半
(
よは
)
に
醫
(
い
)
を
乞
(
こ
)
へる
道
(
みち
)
なりけり。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「其積りで下手人を
捕
(
つかま
)
へて來い、殺しの現場を見て、指を
銜
(
くは
)
へて引下がる奴があるものか」
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さうして、其處にあつたお客からの預り物の簔の端を
銜
(
くは
)
へて引つ張つたので、主婦は其の方へ氣を取られて、この時ばかりは、店の前を
態
(
わざ
)
と荒々しく通る文吾の方に眼が屆かなかつた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
小屋へ腰を掛けて居ると
鶺鴒
(
せきれい
)
が時々蟲を
銜
(
くは
)
へて足もとまで來ては尾を搖しながらついと飛んで行く。脇へ出て見ると
射干
(
ひあふぎ
)
が一株ある。射干があつたとて不思議ではないが爺さんの説明が
可笑
(
をか
)
しいのだ。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
此
(
こ
)
の
華奢
(
きやしや
)
なのを、あの
唇
(
くちびる
)
の
厚
(
あつ
)
い、
大
(
おほき
)
なべろりとした
口
(
くち
)
だと
縱
(
たて
)
に
銜
(
くは
)
へて
呑
(
の
)
み
兼
(
か
)
ねまい。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
銜
(
くは
)
へさして四つん這ひに這はしてやる
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其
剣幕
(
けんまく
)
に驚きまどひて予も
慌
(
あわ
)
たゞしく
逃出
(
にげい
)
だし、
只
(
と
)
見
(
み
)
れば犬は何やらむ口に
銜
(
くは
)
へて躍り狂ふ、こは怪し口に銜へたるは
一尾
(
いちび
)
の
魚
(
うを
)
なり、そも何ぞと見むと欲して近寄れば、
獲物
(
えもの
)
を奪ふとや思ひけむ
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“銜(ハミ(馬具))”の解説
ハミ(馬銜、銜、en: bit)、または轡(くつわ)は、馬具の一種であり、馬の口に含ませる主に金属製の棒状の道具である。
(出典:Wikipedia)
銜
漢検1級
部首:⾦
14画
“銜”を含む語句
横銜
馬銜
銜煙管
引銜
相銜
兜銜山
官銜燈
頭銜