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さかのぼ
ふりがな文庫
“
遡
(
さかのぼ
)” の例文
湯元から間道を入って、谷川を宜い加減
遡
(
さかのぼ
)
った龍之助は、後ろに残したお染のことを気にし乍ら、
何処
(
どこ
)
ともなく導かれて行くのです。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
日本に君臨したもう皇室の淵源に
遡
(
さかのぼ
)
って説いているのであって、大義名分を正すにはここから説き出さなければならないのであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「御縁のはじまりはもう少し前に
遡
(
さかのぼ
)
るのね、そもそもあの松本の浅間のお
祭礼
(
まつり
)
の晩——あの時こそ、ほんとうに失礼しちゃいましたわ」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そこを
遡
(
さかのぼ
)
ると、自分の
現
(
うつ
)
し
身
(
み
)
を
搏
(
う
)
っている血をとおして、遠い
大祖
(
おおおや
)
たちの
神業
(
かみわざ
)
と、国体の
真
(
しん
)
が、いつか明らかに、心に映じてくる。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その先生の進化論というのは、少し極端であって、人間からアメーバに
遡
(
さかのぼ
)
って、そのアメーバが更に無機物から出来たというのであった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
だが、
遡
(
さかのぼ
)
るのは十倍も厄介だつた。空荷なのがせめてものことで、手伝ひの船頭を二人はどうしても雇ひ入れなくてはならない。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
「
亜剌比亜
(
アラビア
)
の医師カアシッシュの不思議なる医術上の経験」といふ
尺牘体
(
せきとくたい
)
には、基督教の原始に
遡
(
さかのぼ
)
りて、意外の側面に信仰の光明を窺ひ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
その頃はまだ珍しかったスエズ運河を見、
蜃気楼
(
しんきろう
)
に欺されたりして、カイロに着き、そこから小船に乗ってナイル河を
遡
(
さかのぼ
)
った。
レーリー卿(Lord Rayleigh)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
また、乾板をあくまで追求してゆくと、是が非にも神意審問会まで
遡
(
さかのぼ
)
って行き、出所をそこに求めねばならなかったのである。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鉄橋の下は意外に深く、ほとんど胸につく深さで、奔流しぶきを飛ばし、少しの間流れに
遡
(
さかのぼ
)
って進めば、牛はあわて狂うて先に出ようとする。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
私は、もちっと古く
遡
(
さかのぼ
)
って、もっとずっと、
今日
(
こんにち
)
よりも新らしくと言うので、ともするとくいちがうのだが、「朱絃」は、ともかく納まった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
民本主義といえばその昔に
遡
(
さかのぼ
)
れば、西洋ならば少くとも
希臘
(
ギリシャ
)
の歴史にまで達してその
本
(
もと
)
を探り、東洋では堯舜の時代にまでも上り得るのである。
デモクラシーの要素
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その今一つ前に
遡
(
さかのぼ
)
ると、国中の諸領主は大小勢力の相違はあっても、要するに対等の交際で、地形上完全なる統一というものを得ていなかった。
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
馬流
(
まながし
)
というところまで岸に添うて
遡
(
さかのぼ
)
ると河の勢も確かに一変して見える。その辺には、川上から押流されて来た恐しく大きな石が埋まっている。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私の記憶は私の四歳頃のことまで
遡
(
さかのぼ
)
ることができる。その頃私は、私の生みの親たちと一緒に横浜の
寿
(
ことぶき
)
町に住んでいた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
私は更にそれ以前の、往来の狭かった、宿場のままの新宿に
遡
(
さかのぼ
)
りたい。私が少年時代には、四谷と新宿の境界は大木戸によって判然と
劃
(
かく
)
されていた。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
……リルケの墓のあるラロンが、もう殆どシンプロンにも近い位、ずっとロオヌの谷を
遡
(
さかのぼ
)
ったところにあることは、私が前にも書いたとおりである。
雉子日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
娘の文代についても、
遡
(
さかのぼ
)
っては彼の結婚そのものにさえ、何かしら深い深い企らみが隠されていたのではなかろうか。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
磐城
(
いわき
)
の夏井川や鮫川。
常陸国
(
ひたちのくに
)
の久慈川に、那珂川などへ、早春の三月中旬頃、すでに河口めがけて
遡
(
さかのぼ
)
ってくるのである。利根川も、同じことであった。
鱒の卵
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
何職人であろうとも二百年も三百年も経過した昔に
遡
(
さかのぼ
)
り、腕が違うの、心得が不純だの、情熱が足りないの、魂が入っていないのといわれてみたとて
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
江戸時代に
遡
(
さかのぼ
)
つて
之
(
これ
)
を見れば元禄九年に
永代橋
(
えいたいばし
)
が
懸
(
かゝ
)
つて、
大渡
(
おほわた
)
しと呼ばれた
大川口
(
おほかはぐち
)
の
渡場
(
わたしば
)
は
江戸鹿子
(
えどかのこ
)
や
江戸爵抔
(
えどすゞめなど
)
の
古書
(
こしよ
)
にその跡を残すばかりとなつた。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
今日の客観描写といい花鳥諷詠というものもまた元禄時代に
遡
(
さかのぼ
)
り、
殊
(
こと
)
に
凡兆
(
ぼんちょう
)
に遡る。また芭蕉に遡り、蕪村に遡る。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
毛氈
(
まうせん
)
を
老樹
(
らうじゆ
)
の
下
(
もと
)
にしき
烟
(
たばこ
)
くゆらせつゝ
眺望
(
みわたせ
)
ば、引舟は浪に
遡
(
さかのぼ
)
りてうごかざるが如く、
下
(
くだ
)
る舟は
流
(
ながれ
)
に
順
(
したが
)
ふて
飛
(
とぶ
)
に
似
(
に
)
たり。
行雁
(
かうがん
)
字をならべ
帰樵
(
きせう
)
画をひらく。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
栂
(
とが
)
の尾は高尾に比して
瀟洒
(
しょうしゃ
)
として居る。高尾から唯少し上流に
遡
(
さかのぼ
)
るのであるが、此処の
楓
(
もみじ
)
は高尾よりも
染
(
そ
)
めて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
が、この事を話そうとすると、その以前に
遡
(
さかのぼ
)
って美術協会というものの基を話さなければなりません。それを話しませんと顔を出した訳が分らんのです。
幕末維新懐古談:45 竜池会の起ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そうしてその七年目の夏、彼は
出雲
(
いずも
)
の
簸
(
ひ
)
の川を
遡
(
さかのぼ
)
って行く、
一艘
(
いっそう
)
の
独木舟
(
まるきぶね
)
の帆の下に、
蘆
(
あし
)
の深い両岸を眺めている、退屈な彼自身を見出したのであった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
寒月の放胆
無礙
(
むげ
)
な画風は先人椿岳の
衣鉢
(
いはつ
)
を
承
(
う
)
けたので、寒月の画を鑑賞するものは更に椿岳に
遡
(
さかのぼ
)
るべきである。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
年が年中六畳の間に立て
籠
(
こも
)
って居る病人にはこれ位の広さでも実際壮大な感じがする。舟はいくつも上下して居るが、帆を張って
遡
(
さかのぼ
)
って行く舟が殊に多い。
車上の春光
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
牧瀬の断片的の話を
綜合
(
そうごう
)
してみるとかうであつた。彼は建築史の研究を近代からだん/\原始へ
遡
(
さかのぼ
)
つて行つた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そんなことでは
縦令
(
たとい
)
お前がどれ程
齷齪
(
あくせく
)
して進んで行こうとも、急流を
遡
(
さかのぼ
)
ろうとする
下手
(
へた
)
な泳手のように、無益に
藻掻
(
もが
)
いてしかも一歩も進んではいないのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
だがわずか一世紀の昔に
遡
(
さかのぼ
)
る時、光景は突如として変る。まだ伝統は死んでいない。よし西洋のものが交わるにしても、互いに一脈の通じるところが残る。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
我々は何か淡水貝を見つけることが出来るかも知れぬと思って、我々が渡る地頸に近く海に流れ込む川を
遡
(
さかのぼ
)
りながら採集し、若干の生きたシジミを発見した。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
山脈を越えて、インジギルカ河を北へ二十露里ほど
遡
(
さかのぼ
)
ると、インジギルカ河とコリマ河との合流点の広い三角洲に脊椎動物の一群が棲息している。人間ではない。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
城址からさらに、川上へ
遡
(
さかのぼ
)
ると、
甲斐駒
(
かいこま
)
の連峰が、川を越して、のしかかるほど眼ぢかに、眺められた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は遠くテスピスの車に
遡
(
さかのぼ
)
りて、(世に傳ふ、テスピスは前五四〇年頃の
雅典人
(
アテエンびと
)
にして、舞臺を車上にしつらひ、始て劇を演じたりと)希臘俳優の
被
(
かぶ
)
りぬといふ
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
遡
(
さかのぼ
)
って当時の事を憶出してみれば、初め
朧
(
おぼろ
)
のが
末
(
すえ
)
明亮
(
はっきり
)
となって、いや
如何
(
どう
)
しても敗北でないと収まる。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「努力して見給え。
遡
(
さかのぼ
)
って思い出せるほど、偉人の資格があるんだ。目を瞑って、よく考えて見給え」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
折柄
(
おりから
)
の
上潮
(
あげしお
)
に、
漫々
(
まんまん
)
たる
秋
(
あき
)
の
水
(
みず
)
をたたえた
隅田川
(
すみだがわ
)
は、
眼
(
め
)
のゆく
限
(
かぎ
)
り、
遠
(
とお
)
く
筑波山
(
つくばやま
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
続
(
つづ
)
くかと
思
(
おも
)
われるまでに
澄渡
(
すみわた
)
って、
綾瀬
(
あやせ
)
から千
住
(
じゅ
)
を
指
(
さ
)
して
遡
(
さかのぼ
)
る
真帆方帆
(
まほかたほ
)
が
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
しかし叔母に関する私の最初の記憶は、後に述べるような事情から、彼女が藤村家に居た時代にまで
遡
(
さかのぼ
)
る。私は幼い頃、祖母に連れられて、幾度か叔母の
許
(
もと
)
を訪ねた。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
鬼仏洞は、ここから、揚子江を七十キロほど
遡
(
さかのぼ
)
った、
江岸
(
こうがん
)
の○○にある奇妙な
仏像陳列館
(
ぶつぞうちんれつかん
)
であった。
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
河原の温泉を過ぎて吾妻川の峡谷を
遡
(
さかのぼ
)
れば、前面に
方
(
あた
)
りて何となく物凄き一大魔形の山が見える。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
しかも気持は一足飛びに少年の昔に
遡
(
さかのぼ
)
って、二十七年前に
跛者
(
びっこ
)
と一緒に演壇に立つのは厭だと言われて泣いて学校から帰って来たあの時の気持と寸分の違いもなかった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
各学者の所説のあいだにいろいろ相違があるのは、その相違を生ずべきそれ相応の理由があるのだから、その理由にまで
遡
(
さかのぼ
)
って各学者の考え方を討究しなければならない。
新たに法学部に入学された諸君へ
(新字新仮名)
/
末弘厳太郎
(著)
話は大正十二年八月三十日に
遡
(
さかのぼ
)
ります。死んだ少年草野富三は、同級(尋常六年生)の少年津田栄吉と、
各々
(
おのおの
)
、家の金五十円ほどずつを持ちだして行方不明になりました。
頭蓋骨の秘密
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それから無意識哲学全体の
淵源
(
えんげん
)
だといふので、
遡
(
さかのぼ
)
つて
Schopenhauer
(
シヨオペンハウエル
)
を読んだ。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
鶴見は思い詰めた一心から、その
業因
(
ごういん
)
を贖物に供えようと考えている。これは
已
(
や
)
むに已まれぬ執著に外ならない。執著の業には因がある。その業因は彼の
未生以前
(
みしょういぜん
)
に
遡
(
さかのぼ
)
る。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
船はいい加減のところまで下ったので、さらに方向を転じて上流の方へ
遡
(
さかのぼ
)
ることになりました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
地図と対照して実際の地形を
視
(
み
)
ると、皇海山の西方から発源する不動沢の左股を
遡
(
さかのぼ
)
るのが楽でもあり、かつ都合もよいように思われるので、それを登ることとして沢を渡り
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
愈
(
いよ/\
)
利根の
水源
(
すゐげん
)
に
沿
(
そ
)
ふて
遡
(
さかのぼ
)
る、
顧
(
かへりみ
)
れば両岸は
懸崖絶壁
(
けんがいぜつぺき
)
、加ふるに
樹木
(
じゆもく
)
鬱蒼
(
うつさう
)
たり、たとひ
辛
(
から
)
ふじて之を
過
(
す
)
ぐるを得るも
漫
(
みだ
)
りに時日を
費
(
ついや
)
すの
恐
(
おそれ
)
あり、故にたとひ
寒冷
(
かんれい
)
足
(
あし
)
を
凍
(
こふ
)
らすとも
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
さうして今読んだ句からもつと
遡
(
さかのぼ
)
つて、
洞
(
ほら
)
の中のファウストの独白から読み初めた。彼はペンに赤いインキを含ませて読んで行くところの句の肩に一々アンダアラインをした。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
遡
常用漢字
中学
部首:⾡
14画
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