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迹
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あと
ふりがな文庫
“
迹
(
あと
)” の例文
果して然らば、
啻
(
たゞ
)
に国体を維持し、外夷の軽侮を絶つのみならず、天下之士、朝廷改過の
速
(
すみやか
)
なるに悦服し、斬奸の挙も亦
迹
(
あと
)
を絶たむ。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
小六
(
ころく
)
から坂井の弟、それから満洲、
蒙古
(
もうこ
)
、出京、安井、——こう談話の
迹
(
あと
)
を
辿
(
たど
)
れば辿るほど、偶然の度はあまりにはなはだしかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
東北に
往
(
い
)
って聞いてみても、岡の尾崎をタテとはいうが館
迹
(
あと
)
とは言わない。畑とか林とかの場処をさしてただタテと呼ぶのである。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
王子の
停車場
(
ステーション
)
へついたのは、もう晩方であったが、お島は
引摺
(
ひきず
)
られて行くような暗い心持で、やっぱり父親の
迹
(
あと
)
へついて行った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
先生の俳句を年代順に見て行くと、先生の心持といったようなものの推移して行った
迹
(
あと
)
が最もよく追跡されるような気がする。
夏目先生の俳句と漢詩
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
と、
地面
(
じべた
)
に
匐
(
のたく
)
つた太い木根に
躓
(
つまづ
)
いて、其
機会
(
はずみ
)
にまだ新しい下駄の鼻緒が、フツリと
断
(
き
)
れた。チヨツと
舌鼓
(
したうち
)
して
蹲踞
(
しやが
)
んだが、
幻想
(
まぼろし
)
は
迹
(
あと
)
もなし。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一昨年差上げ候
蝉丸
(
せみまる
)
の拙作韻脚の処書損じ仕り候まゝ差上げ申候。
迹
(
あと
)
にて気付き疎漏の
至
(
いたり
)
に候。後便
認
(
したた
)
め直し差上げ可く候。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これを隱して人を
欺
(
あざむ
)
くことの快からぬために、我血はいよ/\騷ぎ立ちぬ。數日の後、反動の期至り、我心は風の吹き荒れたる
迹
(
あと
)
の如くなりぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
眼に見えない
烈
(
はげ
)
しい力の動いて行った
迹
(
あと
)
でも
辿
(
たど
)
るようにして、自分の小さな
智慧
(
ちえ
)
や力でそれをどうすることも出来なかったことを考えて見た時は
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
昔、宇治の
稚彦
(
わかひこ
)
皇子が遺教して、自ら骨を散ぜしめ、後世これに傚う者があるも、これは皇子の事であって、帝王の
迹
(
あと
)
にあらず、我国上古より山陵を
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
少くも硯友社は馬琴の下駄の
迹
(
あと
)
を印し馬琴の声を聞いた地に育ったので、幽明相隔つるといえ、馬琴と硯友社とはいわば
大家
(
おおや
)
と
店子
(
たなこ
)
との関係であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
然れども是れ親王の事にして、帝王の
迹
(
あと
)
にあらず。我が国上古より山陵を起さざるは、未だ聞かざる所なり。
火葬と大蔵:焼屍・洗骨・散骨の風俗
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
余が宇宙の漂流者となりし時、その時こそ爾が爾の無限の愛を余に示し得る時にして、余が爾を
捨
(
すて
)
んとする時爾は余の
迹
(
あと
)
を
逐
(
お
)
い余をして爾を離れ得ざらしむ。
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
大風
(
おほかぜ
)
の
凪
(
な
)
ぎたる
迹
(
あと
)
に
孤屋
(
ひとつや
)
の立てるが如く、
侘
(
わび
)
しげに留守せる
主
(
あるじ
)
の隆三は
独
(
ひと
)
り碁盤に向ひて
碁経
(
きけい
)
を
披
(
ひら
)
きゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
民族生活の発展の
迹
(
あと
)
を明かにすることは、いうまでもなく、史学の任務であるが、主としてその材料を文献に求める史学は、その研究におのずから限界がある。
日本上代史の研究に関する二、三の傾向について
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
三四
作略
(
さりやく
)
は平日致さぬものぞ。作略を以てやりたる事は、其
迹
(
あと
)
を見れば善からざること判然にして、必ず悔い有る也。唯戰に臨みて作略無くばあるべからず。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
もし『孟子』にいうごとく「王者の
迹
(
あと
)
熄
(
や
)
みて詩亡び、詩亡びて
然
(
しか
)
る後に春秋
作
(
おこ
)
れり」(『孟子』離婁下)であるならば、孔子の時には詩は亡んでいたのである。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
まだ
新嫁
(
にいよめ
)
でいらしッたころ、一人の
緑子
(
みどりご
)
を
形見
(
かたみ
)
に残して、
契合
(
ちぎりあっ
)
た夫が世をお去りなすったので、
迹
(
あと
)
に一人
淋
(
さび
)
しく
侘住
(
わびずま
)
いをして、いらっしゃった事があったそうです。
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
老人は
古
(
いにし
)
へを恋ひ、壮年は己れの時に
傲
(
おご
)
る、恋ふるものは恋ふべきの
迹
(
あと
)
透明にして而して後に恋ふるにあらず、傲る者は傲るべき理の照々たるが故に傲るにあらず。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
其処に夏になると美しい衣に滲み出る
黴
(
かび
)
のような、周囲に不調和な平原の
陋習
(
ろうしゅう
)
の
迹
(
あと
)
が汚なく印せらるるにしても、其他の、殊に別山から雄山に続く長い頂上の何処に
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
でも、彼の心のふさぎのむしは
迹
(
あと
)
を潜めて、唯、まるで今歩いているのが、
大日本平城京
(
おおやまとへいせいけい
)
の土ではなく、大唐長安の大道の様な錯覚の起って来るのが押えきれなかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
というような句を見ると、そこに或転化の
迹
(
あと
)
が目につく。移竹の句の登高は本当の登高ではない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
かく詣でつかうまつるは、
一一一
憑
(
たの
)
みつる君の御
迹
(
あと
)
にて、いついつの日ここに
葬
(
はうむ
)
り奉る。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
たとひその抱負は四海を覆ひその材能は天下を
経綸
(
けいりん
)
するに足る者ありしとするも、一事為すなきの
迹
(
あと
)
に徴して、断じて庸劣と為す、強ひて弁ずべからざる者あり。将軍にして
且
(
か
)
つしかり。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
さうした癖は必ずしも今尚
迹
(
あと
)
を絶つた訳ではない、——三ツ児の魂ひ百迄といふ譬もあるので、まだ/\それが消えうせるまでには、可なり先のあることだと考へて居る次第であります。
癖
(新字旧仮名)
/
喜多村緑郎
(著)
それも
当世
(
たうせい
)
のお嬢さんではない。五六年来
迹
(
あと
)
を絶つた
硯友社
(
けんいうしや
)
趣味の娘である。
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それが
頻
(
しき
)
りに市中を
巡邏
(
じゆんら
)
する。尚ほ手先を使つて、彼等盜賊の
迹
(
あと
)
を附けさせると、それが今の
芝
(
しば
)
の
薩摩
(
さつま
)
ツ
原
(
ぱら
)
の薩州屋敷に
入
(
はい
)
るといふのでこの賊黨はとう/\
薩藩
(
さつぱん
)
中
(
ちう
)
の
溢
(
あふ
)
れ
者
(
もの
)
だといふことが分つた。
兵馬倥偬の人
(旧字旧仮名)
/
塚原渋柿園
、
塚原蓼洲
(著)
熱情は或は人をして判断を過らしむることあるべし、然れども熱情ある人に非れば
活
(
い
)
きたる人物を写し出すこと能はざる也。史海にも、日本開化小史にも吾人は君が英雄崇拝の
迹
(
あと
)
を見るを得ざる也。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
客去りて
車轍
(
くるま
)
の
迹
(
あと
)
のみ
幾条
(
いくすぢ
)
となく砂上に
鮮
(
あざや
)
かなる山木の玄関前、庭下駄のまゝ
枝折戸
(
しをりど
)
開けて、二人の
嬢
(
むすめ
)
の手を
携
(
たづさ
)
へて現はれぬ、姉なるは白きフラネルの
単衣
(
ひとへ
)
に、
漆
(
うるし
)
の如き黒髪グル/\と
無雑作
(
むざふさ
)
に
束
(
つか
)
ね
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
世高と秀英の二人は機の熟するまで
迹
(
あと
)
をくらますことにした。
断橋奇聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
法王シルヴェストル一世のために
迹
(
あと
)
を絶つに及べり。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この一群れの
迹
(
あと
)
に残りて
語合
(
かたら
)
う女あり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
その
)
迹
(
あと
)
を
泯滅
(
びんめつ
)
する
所以
(
ゆえん
)
なりと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
舌の戦ぎというのは、ロオマンチック時代のある小説家の云った事で、女中が主人の出た
迹
(
あと
)
で、近所をしゃべり廻るのを
謂
(
い
)
うのである。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
けれども血色にも表情にも
苦悶
(
くもん
)
の
迹
(
あと
)
はほとんど見えなかった。自分は最初その横顔を見た時、これが病人の顔だろうかと疑った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お庄はまだ
目蓋
(
まぶた
)
の
脹
(
は
)
れぼったいような顔をして、寝道具をしまった
迹
(
あと
)
を掃いていた。お鳥は急いで
襷
(
たすき
)
をかけて、次の間へハタキをかけ始めた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
驚破
(
すはや
)
、障子を
推開
(
おしひら
)
きて、貫一は露けき庭に
躍
(
をど
)
り下りぬ。つとその
迹
(
あと
)
に
顕
(
あらは
)
れたる満枝の
面
(
おもて
)
は、
斜
(
ななめ
)
に
葉越
(
はごし
)
の月の
冷
(
つめた
)
き影を帯びながらなほ火の如く燃えに燃えたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
自分は方々の田舎について、そういう屋敷
迹
(
あと
)
を遺し去った人々の種類を、集めて比べてみたいと思っているのだが、最も数の多いのは意外にも長者屋敷であった。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
われは敢て自家を以て否運の兒となさじ。神の
禍
(
わざはひ
)
を轉じて
福
(
さいはひ
)
となし給へる
迹
(
あと
)
は
掩
(
おほ
)
ふ可からざるものあればなり。初めわれ不測の禍のために母上を
喪
(
うしな
)
ひまゐらせき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
卜が焼かれた甲骨のひびわれの
迹
(
あと
)
を見ることによって行われたものならば、焼く前にそれに文字を刻するというのは解しがたいことであり、またそのひびわれの迹のある甲骨は神聖なものであるから
日本に於ける支那学の使命
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
轍
(
わだち
)
の
迹
(
あと
)
のみ雪に残して、
檻車
(
かんしや
)
は
遂
(
つひ
)
に彼を封して去れり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
至人
迹
(
あと
)
俗に混ず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
恋
(
こひ
)
しき人の
迹
(
あと
)
ゆかし
寡婦の除夜
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
なるほど眺めていると、
煤
(
すす
)
けたうちに、古血のような大きな模様がある。
緑青
(
ろくしょう
)
の
剥
(
は
)
げた
迹
(
あと
)
かと怪しまれる所も
微
(
かす
)
かに残っている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
曽根は小男なのに、塩田は背が高い。曽根は細面で、
尖
(
とが
)
ったような顔をしているのに、塩田は下膨れの顔で、濃い
頬髯
(
ほおひげ
)
を
剃
(
そ
)
った
迹
(
あと
)
が青い。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お島は
迹
(
あと
)
から
附絡
(
つきまと
)
って来る川西の兇暴な力に反抗しつつ、工場の
隅
(
すみ
)
に、
慄然
(
ぞっ
)
とするような体を縮めながらそう言って拒んだ。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は
唇
(
くちびる
)
の寒かるべきを思ひて、
空
(
むなし
)
く
鬱抑
(
うつよく
)
して帰り去れり。その言はざりし
語
(
ことば
)
は
直
(
ただち
)
に貫一が胸に響きて、彼は人の
去
(
い
)
にける
迹
(
あと
)
も、なほ聴くに
苦
(
くるし
)
き
面
(
おもて
)
を
得挙
(
えあ
)
げざりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
我等は一の劇場と一の平和神祠との
迹
(
あと
)
なる斷礎の上を登り行きぬ。ジエンナロ人々を顧みて、あはれ平和と演劇との二つのもの、いかなればかく迄相親むことを得たるぞと云ふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
満護寺という寺の
迹
(
あと
)
である。次の地名も皆民居の所在である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「え」と云いながら顔を上げた独仙君の
山羊髯
(
やぎひげ
)
を伝わって
垂涎
(
よだれ
)
が一筋長々と流れて、
蝸牛
(
かたつむり
)
の這った
迹
(
あと
)
のように歴然と光っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
迹
漢検1級
部首:⾡
10画
“迹”を含む語句
痕迹
足迹
不行迹
往迹
形迹
垂迹
迹方
迹付
迹取
踪迹
罪迹
迹門
迹処
農迹
追迹
一代教迹
絶迹
突迹
穢迹
雲無迹
...