“赤蜻蛉:あかとんぼ” の例文
“赤蜻蛉:あかとんぼ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花15
野村胡堂6
泉鏡太郎3
橘外男2
吉川英治2
“赤蜻蛉:あかとんぼ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸3.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
到頭その夏は、秋風が立って十月赤蜻蛉あかとんぼの飛び交う頃まで、体温計と首っ引きで、伊東で寝て暮してしまいました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
やがて、ホテルは寂然しんとして、とほくでうまいなゝくのがきこえる。まどそと赤蜻蛉あかとんぼ
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とおくれ毛を風に吹かせて、女房も悚然ぞっとする。やっこの顔色、赤蜻蛉あかとんぼきびの穂も夕づく日。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
店屋つづきの紺暖簾こんのれん陽炎かげろうがゆらいで、赤蜻蛉あかとんぼでも迷い出そうな季節はずれの陽気。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
秋日和の三時ごろ、人の影より、きびの影、一つ赤蜻蛉あかとんぼの飛ぶ向うのあぜを、威勢のい声。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次は相變らず赤蜻蛉あかとんぼの亂れ飛ぶのを眺め乍ら、鐵拐仙人てつかいせんにんのやうに粉煙草の煙を不精らしくふかすのでした。
「髷節を赤蜻蛉あかとんぼの逢引場所にしてゐるやうな野郎だもの、この世の中が面白くてたまらねえことだらうよ」
水も空も秋でなくては出ないあおさを出していた。赤蜻蛉あかとんぼが今日は高くにいて藁灰わらばいのように太陽のおもをかすめている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人公の名の糸七は「縷紅新草」のそれとひとしく、点景に赤蜻蛉あかとんぼのあらわるる事もまた相似たり。
遺稿:01 「遺稿」附記 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
主人公の名の糸七は「縷紅新草」のそれとひとしく、点景に赤蜻蛉あかとんぼのあらわるる事もまた相似たり。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枯蓮かれはすもばらばらと、折れた茎に、トただ一つ留ったのは、硫黄いおうヶ島の赤蜻蛉あかとんぼ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっともそれでなくっても、上野の山下かけて車坂を過ぐる時※ば、三島神社を右へ曲るのが、赤蜻蛉あかとんぼひとしく本能の天使の翼である。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと同時に腰巻の唐縮緬から、血の飛沫しぶきが八方へ散ったと見たのは、今まで藤蔓に止まっていた赤蜻蛉あかとんぼが、驚いて逃げたので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
白砂しらすなあがつてて、やがて蟋蟀こほろぎねやおもはるゝのが、數百すうひやく一群ひとむれ赤蜻蛉あかとんぼ
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田圃たんぼには赤蜻蛉あかとんぼ案山子かゝし鳴子なるこなどいづれも風情ふぜいなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とにかく赤蜻蛉あかとんぼ光景くわうけいは、なににたとへやうもなかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
広い圃の中に出ると、小春日に、虚空を赤蜻蛉あかとんぼ翻々ひらひらと、かよわく飛んでいるのやら、枯れた足元の草の上にとまっているのもある。
お馴染のガラツ八こと八五郎、髷節まげつぷし赤蜻蛉あかとんぼを留めたまゝ、明神下の錢形平次の家へ、庭木戸を押しあけて、ノソリと入つて來ました。
ある秋の日の夕景、山の手の街は、もう赤蜻蛉あかとんぼがスイスイと頭の上を飛ぶ時分のことです。
くまでの赤蜻蛉あかとんぼおほいなるむれおもつた場所ばしよからこゝろざところうつらうとするのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
——「人よりも空、よりももく。……肩に来て人なつかしや赤蜻蛉あかとんぼ
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
久「蜻蛉とんぼうの出る時分に野良のらへ出て見ろ、赤蜻蛉あかとんぼ彼方あっちったり此方こっちへ往ったり、目まぐらしくって歩けねえからよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
名殘りのあぶが障子に鳴つて、赤蜻蛉あかとんぼの影が射しさうな縁側に、平次は無精らしく引つくり返つて、板敷の冷えをなつかしんでゐる或日の午後のことです。
色も空も一淀ひとよどみする、この日溜ひだまりの三角畑の上ばかり、雲の瀬にべにの葉がしがらむように、夥多おびただしく赤蜻蛉あかとんぼが群れていた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久「えゝ、お前様の姿が赤蜻蛉あかとんぼの眼の先へちら/\いたしそろ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
赤蜻蛉あかとんぼ菱藻ひしもなぶり初霜向うが岡の樹梢こずえを染めてより全然さらりとなくなったれど、赭色たいしゃになりてはすの茎ばかり情のう立てる間に
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
八五郎のガラツ八が、長んがい顏を糸瓜棚へちまだなの下から覗かせた時、錢形の平次は縁側の柱にもたれて、粉煙草をせゝり乍ら、赤蜻蛉あかとんぼの行方を眺めて居りました。
晩秋のある日、神田の裏長屋の上にも、赤蜻蛉あかとんぼがスイスイと飛んで、凉しい風が、素袷すあはせの襟から袖から、何んとも言へない爽快さうくわいさを吹き入れます。
一廻りななめに見上げた、尾花おばなを分けて、稲の真日南まひなたへ——スッと低く飛んだ、赤蜻蛉あかとんぼを、かざしにして、小さな女のが、——また二人。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、去年から赤蜻蛉あかとんぼの出ようが遅くなり、この飛んでいる方向がすこし違ったわけは、近頃この地球上に起っている異常気象と関連しているものと思われるものであって
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうか、辻川博士か。——それからもう一つ、この村では赤蜻蛉あかとんぼが出てくるのは何時ごろからかネ。そしてその赤蜻蛉が飛びながらいつも向いている方角はどっちの方だろうね」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
赤蜻蛉あかとんぼを見送りながら、藤吉郎はちょっと考えこんでいた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤蜻蛉あかとんぼもツイとそれて、尾花の上からながめている。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある時は、秋の空に、無数につるんでいる赤蜻蛉あかとんぼを。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
そうして眼の前に群がる無数の赤蜻蛉あかとんぼを見た。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野に出ると赤蜻蛉あかとんぼが群れをなして飛んでいた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
明るい陽射しの中を、色鮮やかな赤蜻蛉あかとんぼの群が
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
赤蜻蛉あかとんぼが夕日の空に数限りもなく乱れる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
むかし矢野大膳といふ馬乗うまのりの名人が居た。ある時友達のところを訪ねようとして馬に乗つて出掛けた。晴れた美しい秋の日で、町には人間や赤蜻蛉あかとんぼが羽をして飛びまはつてゐた。
はげしく群れ飛ぶ赤蜻蛉あかとんぼの水平動。
七兵衛は勝手の戸をがらりと開けた、台所は昼になって、ただ見れば、裏手は一面の蘆原あしはら、処々に水溜たまり、これには昼の月も映りそうに秋の空は澄切って、赤蜻蛉あかとんぼが一ツき二ツ行き
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その種類ははちせみ鈴虫すずむし、きりぎりす、赤蜻蛉あかとんぼ蝶々ちょうちょう、バッタなどですが、ちょっと見ると、今にもい出したり、羽根をひろげて飛び出そうというように見えます。
その今も消えないで、かえって、色の明くなった、ちらちらと映る小さな紅は、羽をつないで、二つつづいた赤蜻蛉あかとんぼで、形が浮くようで、沈んだようで、ありのままの赤蜻蛉か、提灯に描いた画か、見る目には定まらないが
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明け行く夜は、暁天の色を、足柄山脈の矢倉岳に見せて、赤蜻蛉あかとんぼのような雲が、一筋二筋たなびく、野面はけむりっぽく白くなって、上へ行くほど藍がかる、近処の黄木紅葉が、火でもともされたようにパッと明るくなる
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
いよいよ秋もたけなわになってすいすいと赤蜻蛉あかとんぼの飛び交う爽やかな陽射しとなってきたが、その日も私は昼から店を切り上げて二人の子供にせがまれて金魚の冬ごもりの池を掘るべく親子で泥んこやをやっている真っ最中であった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
——秋の陽は向うの屋根に落ちかけて、赤蜻蛉あかとんぼが僅ばかり見える空を、スイスイと飛び交はす時分、女房のお靜はもう晩飯の仕度に取りかかつた樣子で、姐さん冠りにした白い手拭が、お勝手から井戸端の間を、心せわしく往復してゐる樣子です。
例の写真館と隣合う、向うななめの小料理屋の小座敷の庭が、破れた生垣を透いて、うら枯れた朝顔の鉢が五つ六つ、中には転ったのもあって、葉がもう黒く、鶏頭ばかり根の土にまで日当りの色を染めた空を、スッスッと赤蜻蛉あかとんぼが飛んでいる。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——おお沢山な赤蜻蛉あかとんぼじゃ、このちらちらむらむらと飛散とびちる処へ薄日うすびすのが、……あれから見ると、近間ちかまではあるが、もみじに雨の降るように、こううっすりと光ってな、夕日に時雨しぐれが来た風情ふぜいじゃ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
晩飯の烏賊いかえびは結構だったし、赤蜻蛉あかとんぼに海の夕霧で、景色もよかったが、もう時節で、しんしんと夜の寒さが身にみる。あすこいら一帯に、袖のない夜具だから、四布よのの綿の厚いのがごつごつおもたくって、肩がぞくぞくする。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若い身空にふりみふらずみ、分けてその日は朝から降りつづく遣瀬やるせなさに、築地の家を出て、下谷辺の知辺しるべもとへ——どうも前に云った雪中庵の連中といい、とかく赤蜻蛉あかとんぼに似て北へすのは当今でいえば銀座浅草。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)