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背後
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うしろ
ふりがな文庫
“
背後
(
うしろ
)” の例文
広い室内の
隅
(
すみ
)
の方へ、
背後
(
うしろ
)
に三角の
空
(
くう
)
を残して、ドカリと、
傍床
(
わきどこ
)
の前に
安坐
(
あんざ
)
を組んだのは、
箏
(
こと
)
の、
京極
(
きょうごく
)
流を創造した鈴木
鼓村
(
こそん
)
だった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
庚申塚のある四辻を右の方に折れ曲ろうとすると、塚の
背後
(
うしろ
)
の根本に
藁畔
(
わらぐろ
)
をしてある
禿榎
(
ちびえのき
)
の梢に止っていた一羽の烏がついと飛んだ。
雁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
が、
道行
(
みちゆき
)
にしろ、
喧嘩
(
けんくわ
)
にしろ、
其
(
そ
)
の
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
処
(
ところ
)
が、
遁
(
に
)
げるにも
忍
(
しの
)
んで
出
(
で
)
るにも、
背後
(
うしろ
)
に、
村
(
むら
)
、
里
(
さと
)
、
松並木
(
まつなみき
)
、
畷
(
なはて
)
も
家
(
いへ
)
も
有
(
あ
)
るのではない。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と叫んだ若侍が刀の柄に手をかけたが、その利腕を掴んだ平馬は、無言のまま
背後
(
うしろ
)
に
押廻
(
おしま
)
わした。二人の浪人と真正面に向い合った。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だツて
紳士程
(
しんしほど
)
金満家
(
きんまんか
)
にもせよ、
実
(
じつ
)
は
弁天
(
べんてん
)
も
男子
(
だんし
)
に
見立
(
みたて
)
たいのさ。と
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
背後
(
うしろ
)
の
襖
(
ふすま
)
を
開
(
あ
)
けて。浅「
僕
(
ぼく
)
が
弁天
(
べんてん
)
です、
僕
(
ぼく
)
が
弁天
(
べんてん
)
さ。 ...
七福神詣
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
「市郎、大分寒くなったな。」と、父の
安行
(
やすゆき
)
が
背後
(
うしろ
)
から声をかけた。安行は今年六十歳の筈であるが、
年齢
(
とし
)
よりも
遥
(
はるか
)
に若く見られた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、その時
背後
(
うしろ
)
の方で物音がした。お蘭は振り返って見た。頬冠りをした一人の男が、階段の下に、行燈の光を背にして立っていた。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
道翹
(
だうげう
)
が
答
(
こた
)
へた。「
豐干
(
ぶかん
)
と
仰
(
おつし
)
やいますか。それは
先頃
(
さきころ
)
まで、
本堂
(
ほんだう
)
の
背後
(
うしろ
)
の
僧院
(
そうゐん
)
にをられましたが、
行脚
(
あんぎや
)
に
出
(
で
)
られた
切
(
きり
)
、
歸
(
かへ
)
られませぬ。」
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
直ぐさま
背後
(
うしろ
)
には物売りが人垣を作り、まえの商店からは腕力家の番頭が走り出て来て、有無を言わさず君を店内へ拉致するだろう。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ふと、サラ/\と云ふ衣擦れの音がしたかと思ふと、
背後
(
うしろ
)
の
扉
(
ドア
)
が音もなく開かれた。信一郎が、
周章
(
あわて
)
て立ち上がらうとした時だつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
忽ち
背後
(
うしろ
)
でガラガラと雷の
落懸
(
おちかか
)
るような音がしたから、驚いて振向こうとする
途端
(
とたん
)
に、トンと突飛されて、私はコロコロと転がった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
治療に望みのないことが、診察をおわった叔父が帯を締めている
背後
(
うしろ
)
から、大きい手と首を振って見せた院長の様子でも知れていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
丑松は仙太を
背後
(
うしろ
)
から
抱〆
(
だきしめ
)
て、誰が見ようと笑はうと
其様
(
そん
)
なことに頓着なく、
自然
(
おのづ
)
と
外部
(
そと
)
に表れる深い
哀憐
(
あはれみ
)
の
情緒
(
こゝろ
)
を寄せたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ミサを読んでしまつて、マリア・シユネエの司祭は
贄卓
(
したく
)
の階段を四段降りて、くるりと向き直つて、レクトリウムの
背後
(
うしろ
)
に
蹲
(
うづくま
)
つた。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
そしてその床几と人物の
背後
(
うしろ
)
には、夏萩があります。夏萩は白い花をいい頃合に着けて、夕暮れ頃の雨上りの露を含んでおります。
虹と感興
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
彼等は自分の
背後
(
うしろ
)
に岩石の崩れる音を聞いた。間もなく何か重たい、
塊
(
かたまり
)
のやうなものが、濕つた土にどしりと落ちたやうであつた。
鷲の巣
(旧字旧仮名)
/
ビョルンステェルネ・ビョルンソン
(著)
「一應訊いて見ましたが、白ばつくれて言やしません。二つ三つ引つ叩いたら、
背後
(
うしろ
)
の
苗代
(
なはしろ
)
の中とか何んとか言ふに決つてますよ」
銭形平次捕物控:121 土への愛著
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
誰か男が
背後
(
うしろ
)
についているにちがいないとすれば大抵夜の八時九時時分には女の家に来ているであろうと、そのころを見計らって
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「モシ、モシ。」と
背後
(
うしろ
)
から呼ぶ声をきいた。泉原は
悸乎
(
ぎょっ
)
として振返ると、中折帽を
冠
(
かぶ
)
った大男が、用ありげにツカ/\と寄ってきた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
かれはその
背後
(
うしろ
)
姿を見つめたときに、いつもの暗い屋上に積みかさねられた塔を目に入れ、また彼女の足早な姿を目にいれたのである。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
呼吸を
矯
(
た
)
めていた、兵さんは、ウンと
唸
(
うな
)
りながら、
殆
(
ほと
)
んど
奇蹟
(
きせき
)
的な力で腰をきった。が、石は肩に乗り切らないで
背後
(
うしろ
)
に、
辷
(
すべ
)
った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
とコンラッドの、のぶとい声が
背後
(
うしろ
)
から追っかけてくる。私は聞き流しにして、そのまま部屋を出て来る。何が始まるというのだろう。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
吸血鬼は学生が
独
(
ひと
)
りになったところを
見澄
(
みす
)
まして、
背後
(
うしろ
)
から咽喉を絞め、つづいて咽喉笛をザクリとやって血を吸ったというのだネ
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
此時
(
このとき
)
家
(
いへ
)
の
戸
(
と
)
が
開
(
あ
)
いて、
大
(
おほ
)
きな
皿
(
さら
)
が
歩兵
(
ほへい
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
を
眞直
(
まつすぐ
)
に、それから
鼻
(
はな
)
の
尖
(
さき
)
を
掠
(
かす
)
つて、
背後
(
うしろ
)
にあつた一
本
(
ぽん
)
の
木
(
き
)
に
當
(
あた
)
つて
粉々
(
こな/″\
)
に
破
(
こわ
)
れました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
と言って、
四辺
(
あたり
)
を見廻したが、
背後
(
うしろ
)
にあったのがちょうど、
庚申塚
(
こうしんづか
)
です。兵馬に気兼ねをしながら女は庚申塚の後ろへ身を隠しました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まるで長靴に使う
鞣革
(
なめしがわ
)
そっくりになっているし、
背後
(
うしろ
)
には、普通なら二つに割ってある筈の裾が、四つに裂けてビロビロとさがり
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
鞭聲
(
べんせい
)
の反響に、近き山の岩壁を動かして、
駟馬
(
しば
)
の車を驛舍の前に
駐
(
とゞ
)
むるものあり。車座の
背後
(
うしろ
)
には、
兵器
(
うちもの
)
を執りたる從卒
數人
(
すにん
)
乘りたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
徐晃はわざと敵を
辱
(
はずかし
)
めながら、どうかして黄忠を捕捉しようと試みたが、そのうちに、いつか
背後
(
うしろ
)
のほうで、敵のどよめく気配がする。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どろぼう! という太いわめき声を
背後
(
うしろ
)
に聞いて、がんと肩を打たれてよろめいて、ふっと振りむいたら、ぴしゃんと
頬
(
ほお
)
を
殴
(
なぐ
)
られました。
灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼女は、私の注文を聞くと、
一揖
(
いちゆう
)
してくるッと
背後
(
うしろ
)
を向き、来た時と同じように四つ足半の足
巾
(
はば
)
で、ドアーの奥に消えて行った。
白金神経の少女
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
部屋を出て行かうとする私へ、
背後
(
うしろ
)
から兄は、
故意
(
わざ
)
と乱暴に
外套
(
ぐわいたう
)
をかけてくれた。センチメンタルな愛情の表現を恥ぢると云ふ風に……。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
それから一同の騒ぎが鎮まるのを待つて、起ち上がつて、波を打つた髪を額から
背後
(
うしろ
)
へ掻き上げて「理想」の詩といふものを歌ひ出した。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
つまり七面倒な理窟ぬきにすぐと
背後
(
うしろ
)
をふりかへつてみたまへ、それだけでいいのだ、即ち人間といふものは元来が、どの血管
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
お駒と暫く遊んでゐた竹丸は何時の間にか父の
背後
(
うしろ
)
の方へ來て、千代松の言ふことを芝居の話のやうに思つて小耳に挾んでゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
中央に望樓ありて、悲しく
四方
(
よも
)
を眺望しつつ、常に囚人の監視に具ふ。
背後
(
うしろ
)
に楢の林を負ひ、周圍みな平野の麥畠に圍まれたり。
氷島
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
クージカは袖で藁を払ってそれを被り、
背後
(
うしろ
)
からがあんとやられはしまいかと絶えず恐怖の色を浮べながら、おずおずと車に這い込んだ。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
長過ぎる程の紺絣の單衣に、輕やかな絹の兵子帶、丈高い體を少し
反身
(
そりみ
)
に何やら勢ひづいて學校の門を出て來た信吾の
背後
(
うしろ
)
から
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そるけんで、お種は仰天してバタバタと廊下まで走出したところ、陳が
背後
(
うしろ
)
から追付いて無残に匕首で突刺したのだと申しました
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私は心の心に泣きながら、痛さに腫れた乳の上をしつかと抑えて、折々不気味な若い白痴の女のやうに自分の
背後
(
うしろ
)
を振り返つた。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
この庭先の崖と相対しては、一筋の細い裏通を隔てて
独逸
(
ドイツ
)
公使館の立っている高台の
背後
(
うしろ
)
がやはり樹木の茂った崖になっていた。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すると良寛さんは、びつくりしたやうな
恰好
(
かつかう
)
で、
背後
(
うしろ
)
へそつくりかへる。以前からの約束で、さうしなければならないのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
背後
(
うしろ
)
から光一の喉をしめているのはろばらしい。手塚は前へ出たり後ろへ出たりして光一の顔を乱打した。五人と
一人
(
ひとり
)
かなうべくもない。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
まず以って
直接
(
じか
)
に自分にまつわっている人々が、どこまでの用意をして置くかを調べて、それによって、
背後
(
うしろ
)
の立て物を見抜くが第一——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そして、それに不気味な笑いが伴うのであった。私は思わず
背後
(
うしろ
)
の花子を振返ると、恐怖の号びをたてて
慄然
(
りつぜん
)
としてしまった。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
と、
背後
(
うしろ
)
から、声をかけた。和田は、小径を中心に、左右の草叢へ、森の中へ、出たり、入ったりしていたが、暫く、
身体
(
からだ
)
が見えなくなると
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
譬へば田舎より出でたる小女の都慣れぬによろづ鼻白み勝にて人の
背後
(
うしろ
)
にのみ隠れたるが、猶其の姿しほらしきところ人の眼を惹くが如し。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
すると、この時に
背後
(
うしろ
)
の方に人の足音がしたので、僕は
吃驚
(
びっくり
)
して振り向いた。
和尚
(
おしょう
)
さんだろう。背の高い恐い顔をした坊さんが立っていた。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
癪
(
しゃく
)
に触って堪らぬ。ホイホイ
背後
(
うしろ
)
から追い追い立て、約二里ばかり進めば、八溝川の上流、過般の出水の為に橋が落ちている。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
と
勧
(
すす
)
むる
背後
(
うしろ
)
へそうっと出で来れるお登和嬢「大原さん、どうぞお上り下さい」と兄の言葉について小さく言えど勧むる心は兄にも優れり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ふいと
背後
(
うしろ
)
に軽い物音がした。それはマリイであった。見返る
隙
(
ひま
)
もない内に、女はそこへ出て来て、輝く目をして、顔を少し赤くしている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
“背後”の意味
《名詞》
背 後(はいご)
後。背の方向。後方。
直接表面には現れない陰の面。特に黒幕のこと。
(出典:Wiktionary)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
“背後”で始まる語句
背後向
背後姿
背後手
背後袈裟
背後楯
背後状
背後影
背後態
背後抱
背後指