“背後:うしろ” の例文
“背後:うしろ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花92
野村胡堂57
国枝史郎42
田中貢太郎37
夢野久作35
“背後:うしろ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語17.4%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
その時に一知の背後うしろなかでマユミがオロオロ泣出している声が聞えた。両親の不幸がやっとわかったらしい。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
早瀬はしばらく黙ったが、思わずこまぬいていた腕に解くと、背後うしろざまに机にひじ、片手をしかと膝にいて、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、お三輪が湯をしに来合わせて、特に婦人客おんなきゃく背後うしろへ来て、きまりの悪そうに手をいた。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろは絶壁下りることは出来ぬ。ただし本栖湖はその方角にある。前には俺が控えている。さあどこからでも下りて見ろ」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ケ、ケ、ケ、ケ、野郎どうだ! 金城鉄壁物かはと云う槍の手並みをごろうじろ! やい背後うしろを振り返って見ねえ!」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
單に私が無職であり、もしくは變人であるといふ理由をもつて、あはれな詩人を嘲辱し、私の背後うしろからつばきをかけた。
純情小曲集 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
それにあの黒服の隠しから出掛かつてゐる白いハンケチの背後うしろには何が隠してあるか、見たいものだと思つた人も大ぶある。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
その向い側の美人画を背後うしろにした椅子には、最前絵葉書で見たバード・ストーン氏が、写真の通りの服装で腰をかけている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その御寮人と云われた、……旦那の背後うしろに、……髪はやっぱり銀杏返しだっけ……お召の半コオトを着たなりで控えたのが、
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういって鬼の面をかぶった数名のものが男装の女――いうまでもないお銀様を引立てて、幕屋の背後うしろへ連れて行きました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それごらんなさい、わたし、どうもさっきから、何かわたしたちの背後うしろに来ているものがあるような気がしてなりません」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あわいの隔った時分から――西河岸の露店の裸火を、ほんのりと背後うしろにして軒燈明の寝静まった色のちまたに引返す
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「兄さん」と、吉里は背後うしろから西宮の肩をいだいて、「兄さんは来て下さるでしょうね。きッとですよ、きッとですよ」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
背後うしろむきにかゝとさぐつて、草履ざうり穿いて、だんりて、てく/\く。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花木の間だをくぐるようにして、秋元は静かに歩み去ったが、月光を浴びた背後うしろ姿が、ひどく心配のある人のようであった。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
梅三爺うめぞうじいの、一坪四銭五厘でひらく開墾区域は、谷のせせらぎに臨んで建った小屋の背後うしろから続いていた。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
とか何とか答えながら、言われた品を取りに背後うしろへ向くと、男は思いきったように進んで、飾台だいの傍へ腰を下ろした。
今でも柳屋に飼ってあります。強いことッたら御用の小僧なんか背後うしろからはたかれて、ぎゃっといって、っ坐りまさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもてを上げて、金之助は今もその音や聞ゆる、と背後うしろ憂慮きづかうもののごとく、不安の色をたたえつつ、
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老人は右の棚から壜入びんいりの酒をとってその口を開け、それを背後うしろの方へやって、「ほい、おかんだ」と云った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
老人は新香しんこうをちょきちょき切っていた。彼はちょっと手が放せないので、背後うしろり返るようにして云った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うすずく陽を背後うしろにして、馬上に笛をすさびながら来る被衣の麗人は、まったく彼ならでも、この世の人とも思えなかった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お十夜と天堂一角は、抜刀ぬきみ背後うしろへ廻して膝歩きに、ソッと、穴の両脇から、息を殺して暗い奥をのぞきこむ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面目めんもく此樣こん姿なりで、背後うしろければなんもつかずにました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが、賢い、すばやい、彼女の六感は、たちまち背後うしろの不安な空気を感じたらしかった。数寄屋橋のたもとまで来ると、
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長十郎は「はっ」と言って、両手で忠利の足をかかえたまま、床の背後うしろ俯伏うつぶして、しばらく動かずにいた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
列車の後部車掌の加古川さんて言う人が馳け付けて来て、背後うしろから抱き起した時に、ウッスリ眼を開いて、息苦しい声で、
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
尋常一年の教師は又、丑松の背後うしろへ廻つて、眼を細くして、そつ臭気にほひいで見るやうな真似をした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「勝手にせい。今度来たら寄せつけへん」と、棄てぜりふを、私の背後うしろに浴びせかけながら、ぴしゃりと硝子戸を閉めた。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それを見ていた岡田弥市は何と思ったか、太刀を振りかぶってちょうど島田虎之助の背後うしろへ廻り、やッとおがうち
もう、仕方がない。床の上に起き上っている大次郎の背後うしろに廻って、膝を突いた千浪、観念して布の結び目を解きにかかると、
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その背後うしろから正木博士がニコニコしながら近付いて来て、やおら肩の上に手を置くと、呉一郎はハッとしたように振り返った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……と思う間もなく背後うしろドアから飛出したらしい、黄色いワンピースを着たアダリーが私の前に重なり合って突立った。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と低い四目垣よつめがき一足ひとあし寄ると、ゆっくりと腰をのして、背後うしろへよいとこさとるように伸びた。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふとその渡場わたしばの手前で、背後うしろから始めて呼び留めた親仁おやじがあります。にいや、にいやと太い調子。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのわきへ、喜太郎様が、帽子シャッポかぶりで、あおくなって附添った、背後うしろへ持明院の坊様がの衣じゃ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見当がついたと見えて、目で知らせ合って、上下うえしたうなずいて、その、貴僧あなた背後うしろになってます、
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中央部が一ばんいいと聞いていたので、ふたりは素走すばしっこく立ちまわって背後うしろから五番目へ左右に別れて腰をおろす。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
し兼ねまじき気勢けはいなれば、気はあせれども逡巡ためらいぬ。小親背後うしろに見てあらむと、われは心に恥じたりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あは細目ほそめけて、其處そこつて、背後うしろに、つきかげさへとゞかぬ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
――一対のばばが、背後うしろで見張るようにも思われたし、縄張の動く拍子に、矢がパッと飛んで出そうにも感じたのである。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またふわりと来て、ぱっと胸に当って、はっとすると、他愛たわいもなく、形なく力もなく、袖を透かして背後うしろへ通る。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
志願兵殿しぐわんへいどの何時なんじでありますか‥‥」と、背後うしろから兵士へいし一人ひとりたづねた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
と、いづこを目的めあてに行くでもなく、ふらふらと赤坂離宮の裏手まで来かかりしに、背後うしろより肩をソと突く者あり。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
が、それでも飛び起きると、解けて乱れてバラバラになった、長い髪を背後うしろへなびかせたままで、先へ先へとひた走った。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まさに紳士が走り出した汽車の窓に手をかけようとした刹那せつな、私は紳士のインバネスの上から背後うしろざまに組みついた。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
空駕籠の揺れぐあいから後棒の辰はもちろん、先棒の男もまだ腰ができていないのを、三次は背後うしろから見ながら随いて行った。
鏡台の前に坐らせて、うがい茶碗でぬらした手を、男の顔へこう懸けながら、背後うしろへ廻った、とまあ思わっせえ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
――すると二人の背後うしろへいつの間にか近づいていた馬蹄の音があって、その馬上から恰幅かっぷくのよい四十がらみの侍が、
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ君、金盥が明いたら貸してくんな。」と言われて振返ると、いつの間にか銭占屋の兄さんが私の背後うしろに立っていた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「死骸の首筋には、細引の跡が殘つてゐるが、不思議なことにそれは前の方だけで、背後うしろには何んの跡もないぢやないか」
その上、山の気か、女のにおいか、ほんのりと佳いかおりがする、わし背後うしろでつく息じゃろうと思った。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴女あなた背後うしろの寝台に……エッ……そんなものは見えないって……? ……貴女は眼がドウかしているんじゃないですか。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お妙は時に、小芳の背後うしろで、内証ないしょうで袂をのぞいていたが、細い紙に包んだものを出して気兼ねそうに、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへな、背後うしろの、暗い路をすっと来て、私に、ト並んだと思う内に、大跨おおまたに前へ抜越ぬけこしたものがある。……
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
棒の様になった支配人をにらみながら、曲者は次第に近寄って、机の上の宝石を掴もうとした瞬間背後うしろで異様な叫声がした。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
斯うして茫然ばうぜんとして、暫時しばらく千曲川の水を眺めて居たが、いつの間にか丑松の心は背後うしろの方へ行つて了つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
急に私の背後うしろから下駄の音がして来たかと思うと、ぱったり立止って、向うの石垣の上の方に向いて呼び掛ける子供の声がした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
最後にスタニスラウスが起つて来て、人を押し分けて椅子の背後うしろに近寄つて、椅背きはいの後面を平手で撫でて見た。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
北の方を見ると黒く見える森に包まれてゐる岡の頂の背後うしろに、白い、鈍く光る雲が出て、それが早く空に拡がつて行く。
小雨の中に肩をすぼめて艙口ハッチを降りて行く伊那少年の背後うしろ姿は、世にもイジラシイあわれなものであった。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
気がつくと、四、五人、山のように背後うしろから押被おっかぶさって、何時いつにかに見物が出来たて。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
純一が小川町おがわまちの方へ一人で歩き出すと、背後うしろ大股おおまたに靴で歩いて来る人のあるのに気が附いた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……間がおよそどのくらいか知れないまで遠くなる、とその一段高い女の背後うしろに、すっくと立った、おおきな影法師が出た。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、ちやう行者ぎやうじや背後うしろを、なゝめとりまはすやうにして、二人ふたりとも立停たちどまつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かさかさとおとがしてぱつと檜笠ひのきがさにかゝることもある、あるひ行過ゆきすぎた背後うしろへこぼれるのもある
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この疑惑に苦しんで、わたしはしばらく途方にくれていました。と、その時わたしの背後うしろから、咳をする声が聞こえて来ました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
侍女の一人が小枝の背後うしろで、ひざまずくように小腰をかがめて、地に敷こうとしている被衣の裾を、恭しく両手でかかげている。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それがいいいい」と猪右衛門も、玄女と並んで歩き出した。しかし十間とは行かなかったろう、背後うしろから呼びかける声がした。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
群集に紛れ込んだ鉄之進は、こう口の中で呟いたが、しかし何となく不安だったので、こっそり背後うしろを振り返って見た。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕は第三者に有勝ありがちな無遠慮を以て、度々背後うしろを振り向いて見たが、お玉の注視はすこぶる長く継続せられていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
一種の素晴らしい威厳を持った男の声が背後うしろのほうから、こういって浪人を呼んだからである。で、浪人は足を止めた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女はそれでも背後うしろを向かなかった。漁師は不思議でたまらなかったが、何かわけがあるだろうと思って、いて往った。
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
返事がない。彼女はラエーフスキイがもうはいって来て椅子の背後うしろに立っているのだと思い、子供のようにしゃくり上げながら、
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
清次郎は自棄やけに唾を吐き散らした。そして見物人達の笑い声を背後うしろに浴びながら幹部休憩所の方へやって行った。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
かう言ひ/\、旦那は着物と對の細い龜甲形の大島の羽織の裾の皺になるのを氣にする風で、大事さうに背後うしろへ撥ねた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
青年はすると、誘うまでもなく、酷く焦燥しながら、身悶みもだえをするようにして署長の背後うしろ追縋おいすがって行った。
新吉はそうして仲間と別れながら、己の挙動を背後うしろから見られているように思ったので、三足みあしぐらい歩いてふり返った。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ぼんやりと、そんな物を見ているうちに、誰か背後うしろへ来て、自分の帯へ手を入れた者があるので、ばばはその手をつかんで、
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二人の御家來は、店に背後うしろを見せて居たのだな。殿樣の顏の前には編笠があつた――ところでお前は何處に居たのだ」
――この附近、すでに浅井方の決死隊が、何十人となく入りこんでいるらしく思えたが、敵は背後うしろを見せて駈け出した。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は心の心に泣きながら、痛さに腫れた乳の上をしつかと抑えて、折々不気味な若い白痴の女のやうに自分の背後うしろを振り返つた。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
宮は彼の背後うしろより取縋とりすがり、抱緊いだきしめ、撼動ゆりうごかして、をののく声を励せば、励す声は更に戦きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼が黙ってあいふすまを開けて次のへやへ出て行こうとした時、細君はまた彼の背後うしろから声を掛けた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は、身を翻して、窯の背後うしろの、二間ばかりの谷を飛び越えると、雑木の生い茂った山の中腹へ、逃げ込もうとした。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
眞俯向まうつむけにおもかぜなかを、背後うしろからスツとかるおそつて、すそ
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろから眺めるとワン・ピースが、はちきれそうにひきしまって、彼女の肉体があらわにいて見えそうだった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其の時、左手の人差指と親指とを拡げて彼の両眼の瞼に触れ、右手はラファエレの背後うしろに廻して、頭や背を軽く叩く。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いつも踏切の近くで出会う下りの石炭列車が、モウ来る時分だと思い思い、何度も何度も背後うしろを振り返りながら……。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちに背後うしろドアいた音がしたので、ハッとして振向くと、顎紐をかけた警官が二三人ドヤドヤと這入って来た。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は、久しく忘れていたものに、眼がしらが潤むのを、唇を喰縛くいしばってこらえた。その時、がたッと背後うしろの方で音がした。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
宇津木が刀を受け取るやうに、俯向加減うつむきかげんになつたので、百会ひやくゑ背後うしろたてに六寸程骨まで切れた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それを五官を以てせずして感ずるので、道を背後うしろから歩いて来る友達がたれだということは、見返らないでも分かると云った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とつぜん二人の背後うしろで、大きな声がしたので、正太とマリ子は、なにということなしにびっくりして、ふりかえった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
背後うしろ一帯いったいの山つづきで、ちょうどその峰通みねどおりは西山梨との郡堺こおりざかいになっているほどであるから
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……舞も、あの、さす手も、ひく手も、ただ背後うしろから背中を抱いて下さいますと、私の身体からだが、舞いました。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初阪は背後うしろざまに仰向あおむいて空を見た。時に、城の雲は、にぎやかな町に立つほこりよりも薄かった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろの蓙の上で絶え間なく笑ひを交へながら何か話し合つてゐる船客達の聲が、蜂の唸りのやうに耳を掠めて行つた。
修道院の秋 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
背後うしろに六角の太き柱立てて、釜に入れたる浅尾の咽喉のんどを鎖もていましめて、真白なるきぬ着せたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
辻に黒山を築いた、が北風ならいの通す、寒い背後うしろからやぶを押分けるように、ステッキで背伸びをして、
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
PR