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罵
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ののし
ふりがな文庫
“
罵
(
ののし
)” の例文
海の中に落ちた水兵は一生懸命に片手を挙げ、何かおお声に叫んでいた。ブイは水兵たちの
罵
(
ののし
)
る声と一しょに海の上へ飛んで行った。
三つの窓
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
塚原は自分の瞼をぐいと操りあげ「野郎——」と
罵
(
ののし
)
りかえした、「八幡さまに手前のことを呪ってやるから、おぼえてろお…………」
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
会ふほどの人には誰彼となく、貧乏な百姓の
狡猾
(
かうくわつ
)
を
罵
(
ののし
)
り、訴へた。さうして「どうせ貧乏する位の奴は、義理も何も心得ぬ狡猾漢だ」
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
猿のような
面
(
かお
)
をして白い歯を
剥
(
む
)
いて
罵
(
ののし
)
ると、たださえ気の荒い郡内の川越し人足が、こんなことを言われて納まるはずがありません。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうした嘘つきの、不信用の半九郎が、今更何を言っても相手にはならぬというように、源三郎は眼に
角
(
かど
)
を立てて
罵
(
ののし
)
るように答えた。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
それに長いわずらいだと見えて、邪魔者あつかいにされているらしく、昼飯の仕度に帰って来た女房から
罵
(
ののし
)
られたりしているのです。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
女房は例のとおり毒づき始め、おまえは厄病神だ、いまにこの店を
潰
(
つぶ
)
す気だろうと
罵
(
ののし
)
り、子供たちの見ている前で彼を突きとばした。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
孝孺
大
(
おおい
)
に数字を批して、筆を地に
擲
(
なげう
)
って、又
大哭
(
たいこく
)
し、
且
(
かつ
)
罵
(
ののし
)
り且
哭
(
こく
)
して曰く、死せんには
即
(
すなわ
)
ち死せんのみ、
詔
(
しょう
)
は断じて草す可からずと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして、前の日にも勝るほど、声をそろえて、彼を
罵
(
ののし
)
り辱めた。けれど、
宕渠
(
とうきょ
)
の一山は、頑固な唖のごとく、うんもすんも答えない。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし、勝彦が普通の頭脳があり、道義の何物かを知っていれば、
罵
(
ののし
)
り恥かしめて、反省させることも容易なことであるかも知れない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
とうとう腹を決めて、細君が
傍
(
そば
)
へ来ると口ぎたなく
罵
(
ののし
)
った。細君はその
辱
(
はずかし
)
めに堪えられないで、泣きながら死のうとした。景はいった。
阿霞
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
彼は平生から世間へ出る多くの人が、出るとすぐ書物に遠ざかってしまうのを、さも下らない
愚物
(
ぐぶつ
)
のように細君の前で
罵
(
ののし
)
っていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
叫び狂い
罵
(
ののし
)
る声は窓を通し湖水を渡り、闇の大空に
聳
(
そび
)
えている八つの峰を持った八ヶ嶽の高い高い
頂上
(
いただき
)
まで響いて行くように思われた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人間世界に
降
(
くだ
)
って蕃殖し、且つ兇暴を
逞
(
たくま
)
しくするのだと、ある限りの悪称をもって憎み
罵
(
ののし
)
っているのは、珍らしい古文献といってよい。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そのショペンハウエルは、女というものは足の短い肩の狭い
臀
(
しり
)
ばかり大きいものだといった。これは欧羅巴の女を
罵
(
ののし
)
った言葉なのである。
妻
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
車掌が、ポウゼンから乗って来たらしい二十五、六の上品な服装の婦人を、なにか口汚く
罵
(
ののし
)
っている。その婦人もなかなか負けていない。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
例によって彼自身では何一つ楽しみも与えもしないで、苦労ばかりさせた妻にむかっては「ぼていふりの
嬶
(
かかあ
)
が相当だ」と
罵
(
ののし
)
った。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
最もアケスケに藤村を
罵
(
ののし
)
ったのは芥川で、めったにああいう悪口を書かない男が書いたのだから、よほど嫌いだったに違いない。
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その上、
辛抱
(
しんぼう
)
がならないのは、天下の公道で、二言めには、河原者の、身分違いのと、喚き立て、言い
罵
(
ののし
)
るのを聞くことだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この時また、転ぶ様に馳けつけて来た女、この二日間小田島に纏り続け、彼の前でイベットを目の
敵
(
かたき
)
に
罵
(
ののし
)
り通して居たあの女だ。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そういった
罵
(
ののし
)
りを浴びせられつつ、俺は寄ってたかって
殴
(
なぐ
)
られ、蹴られ、踏んづけられて、半死半生の目に会わされたのである。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
かかる席に
列
(
つら
)
なりては、
口利
(
くちき
)
くだに
慚
(
は
)
ずかしきものを、いざさらば帰るべしとて、思うままに言い
罵
(
ののし
)
り、やおら
畳
(
たたみ
)
を
蹶立
(
けた
)
てて帰り去りぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
駅に著く毎に、人々の騒ぎが一層物々しくなり、雨の中をびしょ濡れになった駅員が何か
罵
(
ののし
)
りながら走り去るような姿も窓外に見られた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
世を
憚
(
はばか
)
らず肩で風を切り、杖を振り、歌をうたい、通行の女子を
罵
(
ののし
)
りつつ歩くのは、銀座の
外
(
ほか
)
他の町には見られぬ光景であろう。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
帆足万里
(
ほあしばんり
)
はかつて留守居を
罵
(
ののし
)
って、国財を
靡
(
び
)
し私腹を肥やすものとした。この職におるものは、あるいは多く私財を蓄えたかも知れない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
或る批評家はその間をどっちつかずにいると批評家にふさわしくない俗見に立って
罵
(
ののし
)
っているに対して、亀井氏は「科学的」という文句を
文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
矢は妻の睫毛三本を射切ってかなたへ飛び去ったが、射られた本人は一向に気づかず、まばたきもしないで
亭主
(
ていしゅ
)
を
罵
(
ののし
)
り続けた。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
図書 (
母衣
(
ほろ
)
を
撥退
(
はねの
)
け刀を
揮
(
ふる
)
って出づ。口々に
罵
(
ののし
)
る討手と、一刀合すと
斉
(
ひと
)
しく)ああ、目が見えない。(押倒され、取って伏せらる)無念。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつてマルクス主義者は、口を開けばすぐブルジョアがいけないと、まるで
敵
(
かたき
)
のように
罵
(
ののし
)
りました。
不倶戴天
(
ふぐたいてん
)
のごとくに攻撃いたしました。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
予が社会よりは
吝嗇漢
(
りんしょくかん
)
と
罵
(
ののし
)
られ、婚約者アンネマリーとの結婚さえも延期せざるを得ざる現在の状態は、そなたのよく知るところであろう。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
熊の皮の胴服の男は、口汚く
罵
(
ののし
)
ると、山刀を
一
(
ひ
)
と
揮
(
ふ
)
り、
沸
(
たぎ
)
り返る激怒のやり場に困ったらしく、側の手頃の立樹の幹を、
発止
(
はっし
)
と切り落します。
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
而して海を
罵
(
ののし
)
ってやりました。けれどまたそれが何の役に立ったとも思いません。ただ私の
咽喉
(
のど
)
が痛んで、声が立たなくなったに過ぎません。
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
働こうにも働かせてくれぬ社会にいつもペッペッと
唾
(
つば
)
きを
吐
(
は
)
き、
罵
(
ののし
)
りわめいている男が……私はこのような手紙には何としても返事が書けず
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
来会の途で、ちょうど寺院から帰る子供に逢うごとに、
罵
(
ののし
)
られ石を
抛
(
な
)
げられた。一夕試みに会処を移したが、時刻を
差
(
たが
)
えず犬がその家へ来た。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
新聞記者などが大臣を
誹
(
そし
)
るを見て「いくら新聞屋が
法螺
(
ほら
)
吹いたとて、大臣は親任官、新聞屋は素寒貧、月と
泥龜
(
すつぽん
)
程の違ひだ」などゝ
罵
(
ののし
)
り申候。
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「ばか、貴様は、女の尻に
喰
(
く
)
いつくだけが、得意なんだな」と
罵
(
ののし
)
り、
豪傑
(
ごうけつ
)
笑いしてから、上原なんかと行ってしまいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
いわゆる
輿論
(
よろん
)
なるものは実に軽薄なものである。また我々の友人中にも甲が乙の
噂
(
うわさ
)
をして、はなはだ
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だと
罵
(
ののし
)
る。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私がこうして瀬川を
罵
(
ののし
)
っている間じゅう、宿の女中が
呆気
(
あっけ
)
にとられて聞いていた。私はしかしそれをも何とも思わなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
子供のあそびではあるまいし、
悪戯
(
わるさ
)
もいゝかげんにするがいゝ、といふので、帆まへ船に向つて、口々に
罵
(
ののし
)
り出しました。
海坊主の話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
早くも注進うけたか、歩き出したそのうしろの屋敷内に、突然、慌ただしく足音が近づくと、
罵
(
ののし
)
るように言ったのは、まさしく主計頭の声です。
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
だが、彼がそうして木戸口へ急いでいるとき、うしろの舞台で、突如として一発の銃声が聞こえたかと思うと、人々の
烈
(
はげ
)
しい
罵
(
ののし
)
り声が爆発した。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから、
竜見川
(
たつみがわ
)
学園の
保姆
(
ほぼ
)
……それはまだしもで、私は
寄生木
(
やどりぎ
)
とまで
罵
(
ののし
)
られたのですわ。いいえ、私だっても、どんなに心苦しいことか……。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その争いが烈しくなるにつれて、前者は後者を
罵
(
ののし
)
って、あいつらがそんなに
逸
(
や
)
るのは喰うに困るからだと言った。そして、それは事実でもあった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
けれども、その日はもう夕方になりましたから、翌日
沼狩
(
ぬまか
)
りをすることにして、一同は
罵
(
ののし
)
り立てながら引き上げました。
正覚坊
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
けれども
未
(
いま
)
だ人生に対して経験もなく辛酸も
舐
(
な
)
めないで、つまり若い時分から俳句を作っているために、わけも分からずに人生を俗世界と
罵
(
ののし
)
って
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
現に拙者が
貴所
(
あなた
)
の希望に就き先生を訪うた日などは、先生の梅子
嬢
(
さん
)
を
罵
(
ののし
)
る
大声
(
たいせい
)
が門の外まで聞えた位で、拙者は
機会
(
おり
)
悪
(
わる
)
しと見、
直
(
ただち
)
に引返えしたが
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
実母がそれを生意気だといって
罵
(
ののし
)
るのはまだしも、実父にまで、時々それを
圧
(
おし
)
つけようとする
口吻
(
こうふん
)
を洩されるのは、
堪
(
た
)
えられないほど情なかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そこで
大伴
(
おおとも
)
の
連等
(
むらじら
)
の
祖先
(
そせん
)
のミチノオミの命、
久米
(
くめ
)
の
直等
(
あたえら
)
の祖先のオホクメの命二人がエウカシを呼んで
罵
(
ののし
)
つて言うには
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
鬼五郎鬼五郎といって
罵
(
ののし
)
りました。そんな事に
頓着
(
とんじゃく
)
なく、何の道楽も特別のぜいたくもしず、ただ金をためたのです。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
罵
(
ののし
)
り叫ぶ声がそこにも起って黒い人影が入り乱れた。
赧
(
あか
)
ら顔の大きな男が
悶掻
(
もが
)
き走るように店の中から飛びだして来た。それは山路の主人であった。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
罵
常用漢字
中学
部首:⽹
15画
“罵”を含む語句
罵詈
罵倒
嘲罵
罵声
罵詈讒謗
冷罵
罵詈雑言
悪罵
面罵
痛罵
怒罵
罵言
漫罵
熱罵
呶罵
罵殺
惡罵
慢罵
罵詈悪口
唾罵
...