素直すなほ)” の例文
ついのおさけひますものが、素直すなほうちへおかへりになりにくいものでござりまして、二次會にじくわいとかなんとかまをしますんで、えへゝ
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は素直すなほに折れました。殺しがあつた上は、事件の底の底までさぐつて、下手人を擧げてやらうと言つた、御用聞の責任感に立ちかへります。
此女は素直すなほな足を真直まつすぐに前へはこぶ。わざと女らしくあまへたあるかたをしない。従つて無暗に此方こつちから手を貸す訳に行かない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
打擲致す程の次第なれば今と成ては勿々なか/\すぐ素直すなほには出すまじけれ共餘り其許おまへいたはしさに此事を内々知せ申すなりと云ければ老人は是を聞て力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これが伏見天皇ふしみてんのうのおうたです。後鳥羽上皇ごとばじようこうから、もひとすゝんで、さらにその一種いつしゆくせいた素直すなほなおうたになつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「三ヶ月素直すなほに待つてゐられる女だらうか知らん」と疑ひながら、渠は握つた手を一つ振つてから、それを放した。
台の前に立つた儘、い加減に二三枚あけて見ると、希臘ギリシヤの話らしい小説が出て来た。文章は素直すなほな和文だつた。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
少くともおほやけには、自分の気持を素直すなほに云へないといふ妙な世間のならはしのやうなものがあり、おほやけに云へないことは、おほやけの行為に現はしがたいのが常である。
『美しい話』まへがき (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
何故なぜ紀念塔きねんたふ建立けんりつをはつたとき素直すなほもとみちかへらなかつたらうと、今更いまさら後悔こうくわいえぬのである。
ロレ ひめこゝろはまだらぬとおほせらるゝ。すれば段取だんどり素直すなほでない、吾等われらこのもしうおもひませぬ。
自然にまた小池の足が速くなつて、お光は半丁ほどもおくれた。小池は嫁菜よめなの花が雜草の中に咲いてゐる路傍みちばたに立つて、素直すなほに弱い足を運んで來るお光の追ひ付くのを待つてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ジエィンがもつと愛想あいそのいゝ子供らしい性質や、もつと魅力のある、はきはきした態度——つまり、もちつと輕くて、わたかまりが無くて、素直すなほにならうと、心底しんそこつとめるのを、ベシーから聞くなり
この時代じだいひと無邪氣むじやき素直すなほ心持こゝろもちがよくあらはれてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
夫人ふじん言葉ことばに、病人びやうにん感謝かんしやするやうに、素直すなほうなづいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
心にも素直すなほに身をば守らせて人といふ名をくたさずもがな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
素直すなほにも忍辱にんにくの道守るならむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
曝露ばくろがまともに彼等かれら眉間みけんたとき、彼等かれらすで徳義的とくぎてき痙攣けいれん苦痛くつうつてゐた。彼等かれら蒼白あをしろひたひ素直すなほまへして、其所そこほのお烙印やきいんけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
直接にいふべきことを間接にいつたり、素直すなほに受取ればなんでもないことを妙にからんで来たり、ちやんと知つてることを知らないといつたりする——といふんだね。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
以て少々の見繼みつぎ位はなしてもよきはずなり若今己が御手にあふときは同罪なりと大聲を出すにぞ小兵衞ははなは迷惑めいわくなし此樣子やうすにてはとても素直すなほには歸るまじと夫より旅の支度したく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロレ はて、明白はっきり素直すなほ被言おッしゃれ。懺悔ざんげなぞのやうであると、赦免みゆるしなぞのやうなことにならう。
ちやうどその時は、アデェルが私の手をとつて部屋をあちこち連れて歩いて、美しい本だの壁にとりつけた小卓こづくゑ小箪笥こだんすの上の飾物だのを見せてゐたのだが、私たちは素直すなほに主人の言葉に從つた。
それから小林君が、舞妓まひこをどりを所望した。おまつさんは、座敷が狭いから、唐紙からかみけて、次ので踊るといと云ふ。そこで椿餅つばきもちを食べてゐた舞妓が、素直すなほに次の間へ行つて、京の四季を踊つた。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
文七は平次の意見に承服し乍ら素直すなほに言ふのです。
素直すなほにも忍辱にんにくの道守るならむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
小六ころく一寸ちよつとした好奇心かうきしんたため、二人ふたり會話くわいわ存外ぞんぐわい素直すなほながれてつた。御米およねうら家主やぬしの十八九時代じだい物價ぶつか大變たいへんやすかつたはなしを、此間このあひだ宗助そうすけからいたとほかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見捨て逃出したる嫁に離縁状はやられぬと主人も申きけられことに今日は兩旦那りやうだんなとも留守るすではあるし假令よしやまたうちに御出なされて御はなし申た所がおやをつとに暇を呉た女へすぐ素直すなほに離縁状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅子うめこは代助の云ふ事を素直すなほいてた。代助は凡てを話すに約十分許をついやした。最後に
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)