“稲妻:いなずま” の例文
“稲妻:いなずま”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石13
泉鏡花6
芥川竜之介6
海野十三5
太宰治4
“稲妻:いなずま”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)1.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.1%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「あら、もう席にかえっているわ。」とセエラが叫びました。「いつだってああなのよ。稲妻いなずまみたいに早いんですもの。」
彼の心には刹那せつなの間、あの古ぼけた教室の玄関に、雨止あまやみを待っていた彼女の姿が、稲妻いなずまのように閃いた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
島はだんだん近くなったが、ぴかり、ぴかりと稲妻いなずまがきらめくたびに、一同は不安にかられ、神に祈り、誓いをたてた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、三郎の頭の中に、そのことが稲妻いなずまのようにひらめいたが、とたんに、横の仕切りの扉の向こうに大きなもの音があった。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のみならず神鳴かみなりも急に凄じく鳴りはためいて、絶えず稲妻いなずまおさのように飛びちがうのでございます。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おぼろの奥に星をうずめて、限りなき夜を薄黒く地ならししたる上に、稲妻いなずまの穂は一を引いて虚空を走った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するうちくもの中からぴかりぴかり稲妻いなずまがはしりして、はげしいかみなりがごろごろしました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その時たくましい黒犬が一匹、稲妻いなずまのように踏切へ飛びこみ、目前にせまった列車の車輪から、見事に実彦を救い出した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかも、クロはこの難行苦行なんぎょうくぎょうにもくっする色なく、なおとぶことは稲妻いなずまよりもはやい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——次の瞬間には、小野さんの胸を左右に、燦爛さんらんたる金鎖が動かぬ稲妻いなずまのごとくかかっていた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄は自分の顔を見て、えへへと笑った。自分はその笑いの影にさえ歇斯的里性ヒステリせい稲妻いなずまを認めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「わははは。これはいいおもてなしを受けたもんだ。稲妻いなずまのごちそうとは、親善の客にたいして無礼きわまる」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
影のような稲妻いなずまのような言葉のうちからその消息をぼんやりと焼きつけられたのは、天下に自分の胸がたった一つあるばかりであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帰り道にまた鐘塔しゅとうの下を通ったら高い窓からガイフォークスが稲妻いなずまのような顔をちょっと出した。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしこの日は全然それとことなった一大革命いちだいかくめいが精神の上に稲妻いなずまのごとく起こった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
が、真夏などは暫時しばらくの汐の絶間たえまにも乾き果てる、壁のようにかたまり着いて、稲妻いなずま亀裂ひびはいる。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
苦しく切ない稲妻いなずまがもぬけの私の身体の中を駆け廻り、ところ/″\皮膚を徹して無理な放電をするから痛い粟粒あわつぶが立ちます。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ひらめくは稲妻いなずまか、二折ふたお三折みおれ胸のあたりを、するりと走るやいなや、かちりと音がして、閃めきはすぐ消えた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たばしるつるぎ稲妻いなずまにまきこまれた、可憐かれん咲耶子さくやこの身はどうなるであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はただ目の前に稲妻いなずまに似たものを感じたぎり、いつのにか正気しょうきを失っていました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右へ折れたり左へ折れたり稲妻いなずまのように歩いて、段々を——さあ何町なんちょう降りたか分らない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毒々どくどくしい青緑色せいりょくしょく稲妻いなずま天井裏てんじょううらにまで飛びあがった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆるくゆるくゆるんで行くねむまぶたのすぐまのあたりをすご稲妻いなずまがさッと流れた。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
その時この三箇月ほど忘れていた、過去の下宿の匂が、狭い廊下の真中で、自分の嗅覚きゅうかくを、稲妻いなずまひらめくごとく、刺激した。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秋口あきぐちに見る稲妻いなずまのように、それは遠いものであった、けれども鋭どいものに違なかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遠くで稲妻いなずまのする空の下を、修理の屋敷へ帰りながら、宇左衛門は悄然しょうぜんと腕を組んで、こんな事を何度となく胸の中で繰り返えした。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すべてこれらの過去った日の光景ありさまが前にあったことも後にあったことも一緒に混合いれまざって、稲妻いなずまのように岸本の胸を通過ぎた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
界隈かいわい野犬やけんが居て、あるいは一疋、ある時は二疋、稲妻いなずま強盗ごうとうの如く横行し、夜中鶏を喰ったり、豚を殺したりする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
光る雨、輝く、此の炎天の下蔭したかげは、あたか稲妻いなずまこもる穴に似て、ものすごいまで寂寞ひっそりした。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その咄嗟とっさ刹那せつなにすら、稲妻いなずまひとみに焼きつけるとはこれだと思った。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左手の渚には、波がやさしい稲妻いなずまのように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この時水色のはげしい光の外套がいとうを着た稲妻いなずまが、向うからギラッとひらめいて飛んで来ました。そして童子たちに手をついて申しました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その怖ろしい顔は仮面であって、その下にこそまぼろしの女の美しい顔がひそんでいるのではないかという考えが、稲妻いなずまのように私の頭にひらめいた。
手でなぐって、足で踏むを、海水は稲妻いなずまのように幼児おさなごを包んでその左右へ飛んだ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——かか霜夜しもよに、掻乱かきみだす水は、氷の上を稲妻いなずまが走るかと疑はれる。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼はこの答案を稲妻いなずまのごとく頭の奥にひらめかして、得意の余り踴躍こおどりした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いただくは天と知る故に、稲妻いなずま米噛こめかみふるおそれも出来る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は表に猫の墓と書いて、裏にこの下に稲妻いなずま起るよいあらんとしたためた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一度途切とぎれた村鍛冶むらかじの音は、今日山里に立つ秋を、幾重いくえ稲妻いなずまくだくつもりか、かあんかあんと澄み切った空の底に響き渡る。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
屋外そとには暗い空を仰いで稲妻いなずまのような探海燈の光を望む町の人達がある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
らいよ、もっと落ちよ。もっと鳴れ。稲妻いなずまよ。もっとはげしく光れ。この塔を、電撃でうちこわしてもいいぞ。もっとはげしく、もっと強く、この塔に落ちかかれ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
対岸をふさいだ山の空には、二三度かぎの手の稲妻いなずまが飛んだ。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お秀はかっとした。同時に一筋の稲妻いなずまが彼女の頭の中を走った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遠い空には稲妻いなずまが光って、それが窓の玻璃に映ったり消えたりした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬春堂は目前の稲妻いなずまにいよいよ胆をちぢめて、今はたまらぬと思ったか、不意に——吾を忘れて、内から戸を閉めきッて抑えたので、その音に、初めて居所を知った久米之丞、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがあわてているから、槍の石突で突いてしまっているから、また槍を取り直す時にお銀様は、ようやく掻巻の中から脱け出すと、その鼻先に神尾の槍の穂の稲妻いなずまです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それだから相手は時によると稲妻いなずまに打たれたような思いをする。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少女は「さても礼儀知らずの継子どもかな、汝らにふさはしき接吻のしかたこそあれ。」と叫び、ふりほどきて突立ち、美しき目よりは稲妻いなずま出づと思ふばかり、しばし一座をにらみつ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あの稲妻いなずまのひらめきさえもが、時としては人に徹する。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
左手のなぎさには、なみがやさしい稲妻いなずまのようにえてせ、右手のがけには、いちめんぎん貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
近づき難い点において、天外の稲妻いなずまと一般である。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尊氏の眉も唇も稲妻いなずまのように引ッつれた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両三日来夜になると雷様かみなりさま太鼓たいこをたゝき、夕雲ゆうぐもの間から稲妻いなずまがパッとしたりして居たが、五時過ぎ到頭大雷雨だいらいうになり、一時間ばかりしてれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
誰も御出迎に参らないうちに、御客様はつかつかと上がっていらっしゃると見え、唐紙の開く音がして、廊下がきしむ。稲妻いなずまのような恐怖おそれは私の頭の脳天から足の爪先までき通りました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
稲妻いなずまのやうに行交ゆきかはす。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あれは現実世界の稲妻いなずまである。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汁粉しるこであるか煮小豆ゆであずきであるか眼前がんぜん髣髴ほうふつする材料もないのに、あの赤い下品な肉太にくぶとな字を見ると、京都を稲妻いなずますみやかなるひらめきのうちに思い出す。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我ながら相応そぐはない事を云つて、火桶ひおけ此方こなたへ坐つた時、違棚ちがいだなの背皮の文字が、稲妻いなずまの如く沢のひとみた、ほかには何もない、机の上なるも其の中の一冊である。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ただ、光の鈍い、長々とを引いた、えだに分れたような稲妻いなずまが、空にひらめいているだけで、それもひらめくというよりはむしろ死にかけている鳥のつばさのように、ぴくぴくふるえているのだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
得意げにその兵士の舟の上を旋回せんかいしていたら、ひとりのいたずらっの兵士が、ひょうと矢を射てあやまたず魚容の胸をつらぬき、石のように落下する間一髪、竹青、稲妻いなずまの如く迅速に飛んで来て魚容の翼をくわ
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
稲妻いなずま
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
当座の人気とは言いながら、さほどの名医が来合わせたということが、稲妻いなずまのように宿の上下にひろがったと見え、ぜひ一度、先生に来てみていただきたい、先生に見ていただきさえすれば、病人がその晩に死んでも心残りはないという注文である。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わが渡り合いしは巨人の中の巨人なり。銅板に砂を塗れる如き顔の中にまなこ懸りて稲妻いなずまを射る。我を見て南方の犬尾をいて死ねと、かの鉄棒を脳天より下す。眼をさえぎらぬ空の二つに裂くる響して、鉄の瘤はわが右の肩先をべる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
葉子は四角なガラスをはめた入り口の繰り戸を古藤が勢いよくあけるのを待って、中にはいろうとして、八分通りつまった両側の乗客に稲妻いなずまのように鋭く目を走らしたが、左側の中央近く新聞を見入った、やせた中年の男に視線がとまると、はっと立ちすくむほど驚いた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
——八大竜王はちだいりゅうおう鳴渡なりわたりて、稲妻いなずまひらめきしに、諸人しょにん目を驚かし、三日の洪水を流し、国土安穏あんおんなりければ、さてこそ静のまいに示現ありけるとて、日本一と宣旨せんじたまわりけると、うけたまわそうろう
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
青砥、はっと顔色を変え、駒をとどめて猫背ねこぜになり、川底までも射透さんと稲妻いなずまごとを光らせて川の面を凝視ぎょうししたが、潺湲せんかんたる清流は夕陽ゆうひを受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り、とても川底まで見透す事は出来なかった。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
——君に黄昏たそがれが来はじめたのだ……君は稲妻いなずまもてあそんだ。あまり深く太陽を見つめすぎた。それではたまらない……(一行あき。)めくら草紙の作者に、この言葉あてはまるや否や、——ストリンドベルグの『ダマスクスへ』よりの言葉である。と、ああ、気取った書き方をしてしまった。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)