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稲妻
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いなずま
ふりがな文庫
“
稲妻
(
いなずま
)” の例文
旧字:
稻妻
この時水色の
烈
(
はげ
)
しい光の
外套
(
がいとう
)
を着た
稲妻
(
いなずま
)
が、向うからギラッとひらめいて飛んで来ました。そして童子たちに手をついて申しました。
双子の星
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
遠くで
稲妻
(
いなずま
)
のする空の下を、修理の屋敷へ帰りながら、宇左衛門は
悄然
(
しょうぜん
)
と腕を組んで、こんな事を何度となく胸の中で繰り返えした。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
するうち
雲
(
くも
)
の中からぴかりぴかり
稲妻
(
いなずま
)
がはしり
出
(
だ
)
して、はげしい
雷
(
かみなり
)
がごろごろ
鳴
(
な
)
り
出
(
だ
)
しました。やがてひどい
大夕立
(
おおゆうだち
)
になりました。
雷のさずけもの
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「あらもう消えちまった。暗い空の中にひらめく
稲妻
(
いなずま
)
のようだったわ。」そして彼女は立ち上がりながらやや乱れている
褄
(
つま
)
をそろえた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
影のような
稲妻
(
いなずま
)
のような言葉のうちからその消息をぼんやりと焼きつけられたのは、天下に自分の胸がたった一つあるばかりであった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
……やどかりも、うようよいる。が、真夏などは
暫時
(
しばらく
)
の汐の
絶間
(
たえま
)
にも乾き果てる、壁のように
固
(
かた
)
まり着いて、
稲妻
(
いなずま
)
の
亀裂
(
ひび
)
が
入
(
はい
)
る。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
苦しく切ない
稲妻
(
いなずま
)
がもぬけの私の身体の中を駆け廻り、ところ/″\皮膚を徹して無理な放電をするから痛い
粟粒
(
あわつぶ
)
が立ちます。
愛
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
いまや、その
裾野
(
すその
)
の一角にあって、
咲耶子
(
さくやこ
)
がふったただ一本の
笛
(
ふえ
)
の先から、
震天動地
(
しんてんどうち
)
の雲はゆるぎだした。
閃々
(
せんせん
)
たる
稲妻
(
いなずま
)
はきらめきだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稲妻
(
いなずま
)
の如く迅速に飛んで来て魚容の翼を
咥
(
くわ
)
え、
颯
(
さっ
)
と引上げて、呉王廟の廊下に、
瀕死
(
ひんし
)
の魚容を寝かせ、涙を流しながら
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しく
介抱
(
かいほう
)
した。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と、三郎の頭の中に、そのことが
稲妻
(
いなずま
)
のようにひらめいたが、とたんに、横の仕切りの扉の向こうに大きなもの音があった。
大宇宙遠征隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すべてこれらの過去った日の
光景
(
ありさま
)
が前にあったことも後にあったことも一緒に
混合
(
いれまざ
)
って、
稲妻
(
いなずま
)
のように岸本の胸を通過ぎた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
両三日来夜になると
雷様
(
かみなりさま
)
が
太鼓
(
たいこ
)
をたゝき、
夕雲
(
ゆうぐも
)
の間から
稲妻
(
いなずま
)
がパッと
射
(
さ
)
したりして居たが、五時過ぎ到頭
大雷雨
(
だいらいう
)
になり、一時間ばかりして
霽
(
は
)
れた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
八分通りつまった両側の乗客に
稲妻
(
いなずま
)
のように鋭く目を走らしたが、左側の中央近く新聞を見入った、やせた中年の男に視線がとまると、はっと立ちすくむほど驚いた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その怖ろしい顔は仮面であって、その下にこそまぼろしの女の美しい顔がひそんでいるのではないかという考えが、
稲妻
(
いなずま
)
のように私の頭にひらめいた。その時である。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
ところが
慌
(
あわ
)
てているから、槍の石突で突いてしまっているから、また槍を取り直す時にお銀様は、ようやく掻巻の中から脱け出すと、その鼻先に神尾の槍の穂の
稲妻
(
いなずま
)
です。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたしはわたしに
凭
(
もた
)
れかかった。ゆるくゆるくゆるんで行く
睡
(
ねむ
)
い
瞼
(
まぶた
)
のすぐまのあたりを
凄
(
すご
)
い
稲妻
(
いなずま
)
がさッと流れた。わたしはうとうと睡りかかるとハッとわたしは
弾
(
はじ
)
きかえされた。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
暗い闇の中に、時折、
稲妻
(
いなずま
)
が走る。その度にかぶとの星が、夜目にもはっきりと、きらりきらりと輝くだけで、人のそよとも動く気配も感じられないのが、一層、不気味さを誘う。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
少女は「さても礼儀知らずの継子どもかな、汝らにふさはしき接吻のしかたこそあれ。」と叫び、ふりほどきて突立ち、美しき目よりは
稲妻
(
いなずま
)
出づと思ふばかり、しばし一座を
睨
(
にら
)
みつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
しかしこの日は全然それと
異
(
こと
)
なった
一大革命
(
いちだいかくめい
)
が精神の上に
稲妻
(
いなずま
)
のごとく起こった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ただ、光の鈍い、長々と
尾
(
お
)
を引いた、
枝
(
えだ
)
に分れたような
稲妻
(
いなずま
)
が、空にひらめいているだけで、それもひらめくというよりはむしろ死にかけている鳥の
翼
(
つばさ
)
のように、ぴくぴく
震
(
ふる
)
えているのだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
「いつだってああなのよ。
稲妻
(
いなずま
)
みたいに早いんですもの。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
左手の渚には、波がやさしい
稲妻
(
いなずま
)
のように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や
貝殻
(
かいがら
)
でこさえたようなすすきの
穂
(
ほ
)
がゆれたのです。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
小野さんの句切りは例になく
明暸
(
めいりょう
)
であった。
稲妻
(
いなずま
)
ははたはたとクレオパトラの
眸
(
ひとみ
)
から飛ぶ。何を
猪子才
(
ちょこざい
)
なと小野さんの額を射た。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
島はだんだん近くなったが、ぴかり、ぴかりと
稲妻
(
いなずま
)
がきらめくたびに、一同は不安にかられ、神に祈り、誓いをたてた。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たばしる
剣
(
つるぎ
)
の
稲妻
(
いなずま
)
にまきこまれた、
可憐
(
かれん
)
な
咲耶子
(
さくやこ
)
の身はどうなるであろう。——そして、
武田伊那丸
(
たけだいなまる
)
の運命は、はたしてだれの手ににぎられるのか?
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その時
逞
(
たくま
)
しい黒犬が一匹、
稲妻
(
いなずま
)
のように踏切へ飛びこみ、目前に
迫
(
せま
)
った列車の車輪から、見事に実彦を救い出した。
白
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
滝かと思ふ
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
。光る雨、輝く
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
、此の炎天の
下蔭
(
したかげ
)
は、
恰
(
あたか
)
も
稲妻
(
いなずま
)
に
籠
(
こも
)
る穴に似て、もの
凄
(
すご
)
いまで
寂寞
(
ひっそり
)
した。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
稲妻
(
いなずま
)
。あー こわー なんて男にしがみつく、そのわざとらしさ、いやらしさ。よせやい、と言いたい。こわかったら、ひとりで
俯伏
(
うつぶ
)
したらいいじゃないか。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
界隈
(
かいわい
)
に
野犬
(
やけん
)
が居て、あるいは一疋、ある時は二疋、
稲妻
(
いなずま
)
強盗
(
ごうとう
)
の如く横行し、夜中鶏を喰ったり、豚を殺したりする。ある夜、白が今死にそうな悲鳴をあげた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
急いで部屋を出て見ると、台所には震えながら
祈祷
(
いのり
)
をあげている下宿の
主婦
(
かみさん
)
がある。
屋外
(
そと
)
には暗い空を仰いで
稲妻
(
いなずま
)
のような探海燈の光を望む町の人達がある。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
稲妻
(
いなずま
)
のように宿の上下にひろがったと見え、ぜひ一度、先生に来てみていただきたい、先生に見ていただきさえすれば、病人がその晩に死んでも心残りはないという注文である。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
左手の
渚
(
なぎさ
)
には、
波
(
なみ
)
がやさしい
稲妻
(
いなずま
)
のように
燃
(
も
)
えて
寄
(
よ
)
せ、右手の
崖
(
がけ
)
には、いちめん
銀
(
ぎん
)
や
貝殻
(
かいがら
)
でこさえたようなすすきの
穂
(
ほ
)
がゆれたのです。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一度
途切
(
とぎ
)
れた
村鍛冶
(
むらかじ
)
の音は、今日山里に立つ秋を、
幾重
(
いくえ
)
の
稲妻
(
いなずま
)
に
砕
(
くだ
)
くつもりか、かあんかあんと澄み切った空の底に響き渡る。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「わははは。これはいいおもてなしを受けたもんだ。
稲妻
(
いなずま
)
のごちそうとは、親善の客にたいして無礼きわまる」
怪星ガン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
我ながら
相応
(
そぐ
)
はない事を云つて、
火桶
(
ひおけ
)
の
此方
(
こなた
)
へ坐つた時、
違棚
(
ちがいだな
)
の背皮の文字が、
稲妻
(
いなずま
)
の如く沢の
瞳
(
ひとみ
)
を
射
(
い
)
た、
他
(
ほか
)
には何もない、机の上なるも其の中の一冊である。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の心には
刹那
(
せつな
)
の間、あの古ぼけた教室の玄関に、
雨止
(
あまや
)
みを待っていた彼女の姿が、
稲妻
(
いなずま
)
のように閃いた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜行汽車の窓は暗かった。遠い空には
稲妻
(
いなずま
)
が光って、それが窓の玻璃に映ったり消えたりした。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「わッ——」と弓なりにそってたおれたと見るや、のこる三人の
侍
(
さむらい
)
は、必死に若者の左右からわめきかかる、
疾風
(
しっぷう
)
か、
稲妻
(
いなずま
)
か、
刃
(
やいば
)
か、そこはただものすごい
黒旋風
(
くろつむじ
)
となった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
駒をとどめて
猫背
(
ねこぜ
)
になり、川底までも射透さんと
稲妻
(
いなずま
)
の
如
(
ごと
)
く
眼
(
め
)
を光らせて川の面を
凝視
(
ぎょうし
)
したが、
潺湲
(
せんかん
)
たる清流は
夕陽
(
ゆうひ
)
を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その時この三箇月ほど忘れていた、過去の下宿の匂が、狭い廊下の真中で、自分の
嗅覚
(
きゅうかく
)
を、
稲妻
(
いなずま
)
の
閃
(
ひら
)
めくごとく、刺激した。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども窓の外では、いっぱいに咲いた
白百合
(
しらゆり
)
が、十本ばかり息もつけない
嵐
(
あらし
)
の中に、その
稲妻
(
いなずま
)
の
八分一秒
(
びょう
)
を、まるでかがやいてじっと立っていたのです。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
突然白け切った夜の
静寂
(
せいじゃく
)
を破って、けたたましい音響が
迸
(
ほとばし
)
る。
毒々
(
どくどく
)
しい
青緑色
(
せいりょくしょく
)
の
稲妻
(
いなずま
)
が
天井裏
(
てんじょううら
)
にまで飛びあがった。——
電路遮断器
(
サーキット・ブレッカー
)
が働いて切断したのだった。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
のみならず
神鳴
(
かみなり
)
も急に凄じく鳴りはためいて、絶えず
稲妻
(
いなずま
)
が
梭
(
おさ
)
のように飛びちがうのでございます。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
陽気はそれでも
可
(
よ
)
かったが、泳ぎは知らぬ
児
(
こ
)
と見える。
唯
(
ただ
)
勢
(
いきおい
)
よく、水を逆に
刎
(
は
)
ね返した。手でなぐって、足で踏むを、海水は
稲妻
(
いなずま
)
のように
幼児
(
おさなご
)
を包んでその左右へ飛んだ。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬春堂は目前の
稲妻
(
いなずま
)
にいよいよ胆をちぢめて、今はたまらぬと思ったか、不意に——吾を忘れて、内から戸を閉めきッて抑えたので、その音に、初めて居所を知った久米之丞
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
君に
黄昏
(
たそがれ
)
が来はじめたのだ……君は
稲妻
(
いなずま
)
を
弄
(
もてあそ
)
んだ。あまり深く太陽を見つめすぎた。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
誰も御出迎に参らないうちに、御客様はつかつかと上がっていらっしゃると見え、唐紙の開く音がして、廊下が
軋
(
きし
)
む。
稲妻
(
いなずま
)
のような
恐怖
(
おそれ
)
は私の頭の脳天から足の爪先まで
貫
(
つ
)
き通りました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
狐に
化
(
ば
)
かされたような顔をして
茫然
(
ぼうぜん
)
と塔を出る。帰り道にまた
鐘塔
(
しゅとう
)
の下を通ったら高い窓からガイフォークスが
稲妻
(
いなずま
)
のような顔をちょっと出した。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
雷
(
らい
)
よ、もっと落ちよ。もっと鳴れ。
稲妻
(
いなずま
)
よ。もっとはげしく光れ。この塔を、電撃でうちこわしてもいいぞ。もっとはげしく、もっと強く、この塔に落ちかかれ」
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
八大竜王
(
はちだいりゅうおう
)
鳴渡
(
なりわた
)
りて、
稲妻
(
いなずま
)
ひらめきしに、
諸人
(
しょにん
)
目を驚かし、三日の洪水を流し、国土
安穏
(
あんおん
)
なりければ、
扨
(
さて
)
こそ静の
舞
(
まい
)
に示現ありけるとて、日本一と
宣旨
(
せんじ
)
を
給
(
たまわ
)
りけると、
承
(
うけたまわ
)
り
候
(
そうろう
)
。——
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
稲
常用漢字
中学
部首:⽲
14画
妻
常用漢字
小5
部首:⼥
8画
“稲妻”で始まる語句
稲妻形
稲妻小僧
稲妻萱穂
稲妻型廊下