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無気味
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ぶきみ
ふりがな文庫
“
無気味
(
ぶきみ
)” の例文
すると椅子の前の陳彩は、この視線に射すくまされたように、
無気味
(
ぶきみ
)
なほど大きな眼をしながら、だんだん壁際の方へすさり始めた。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
八
糎
(
センチ
)
速射砲の
無気味
(
ぶきみ
)
なる砲口を桟敷の中央に向けたと思うと、来賓席の二段目を目がけて、たちまち打ち出す薔薇やアネモネの炸裂弾。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あちらには、
獰猛
(
どうもう
)
な
獣
(
けもの
)
の、
大
(
おお
)
きい
目
(
め
)
のごとく、こうこうとした
黄色
(
きいろ
)
の
燈火
(
ともしび
)
が、
無気味
(
ぶきみ
)
な
一筋
(
ひとすじ
)
の
線
(
せん
)
を
夜
(
よる
)
の
奥深
(
おくふか
)
く
描
(
えが
)
いているのです。
雲と子守歌
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
とうとう黙っているのが
無気味
(
ぶきみ
)
になって葉子は沈黙を破りたいばかりにこう呼んでみた。貞世は返事一つしなかった。……葉子はぞっとした。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鼻息の荒いお島たちは、人の気風の温和でそして疑り深いN——市では、どこでも
無気味
(
ぶきみ
)
がられて相手にされなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
おとなしく身を
委
(
まか
)
して機会を待つか、それともサッと相手の足を
払
(
はら
)
って出るか、
無気味
(
ぶきみ
)
な沈黙が三人の息を止めた。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
根太
(
ねだ
)
も
畳
(
たヽみ
)
も
大方
(
おほかた
)
朽
(
く
)
ち落ちて、
其上
(
そのうへ
)
に
鼠
(
ねずみ
)
の毛を
挘
(
むし
)
り
散
(
ちら
)
した
様
(
やう
)
な
埃
(
ほこり
)
と、
麹
(
かうじ
)
の様な
黴
(
かび
)
とが積つて居る。落ち残つた
根太
(
ねだ
)
の
横木
(
よこぎ
)
を一つ
跨
(
また
)
いだ時、
無気味
(
ぶきみ
)
な
菌
(
きのこ
)
の
様
(
やう
)
なものを踏んだ。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
上等のバタを使うので、
出来上
(
できあが
)
りがねっとりしていて
些
(
いささ
)
か
無気味
(
ぶきみ
)
に感ぜられる。蛙は
寧
(
むし
)
ろラードのようなものでからりと
揚
(
あ
)
げた方があっさりしていてよくはないだろうか。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は四十五と五十五を見分けてやるほどの同情心を年長者に対して
有
(
も
)
たなかったと同時に、そのいずれに向っても慣れないうちは異人種のような
無気味
(
ぶきみ
)
を覚えるのが常なので
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
白い
無気味
(
ぶきみ
)
なものが、あっちへ行ったり、こっちへ来たりして、ちょうど母親を失った
仔羊
(
こひつじ
)
のように、闇のなかを泣き叫ぶのを見たら、おそらく君だってぞっとしたろうと思う。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
角
(
つの
)
のあるもの、
無
(
な
)
いもの、
大
(
おお
)
きなもの、
小
(
ちい
)
さなもの、
眠
(
ねむ
)
っているもの、
暴
(
あば
)
れているもの……。
初
(
はじ
)
めてそんな
無気味
(
ぶきみ
)
な
光景
(
ありさま
)
に
接
(
せつ
)
した
私
(
わたくし
)
は、
覚
(
おぼ
)
えずびっくりして
眼
(
め
)
を
開
(
あ
)
けて
叫
(
さけ
)
びました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
と頭巾/\と云われるだけに
彼
(
か
)
の侍も
無気味
(
ぶきみ
)
になったと見えたか、大声にて
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
子規が掲げた二句を見ても、すぐに自分を動かすのは、その中に
漂
(
ただよ
)
ふ
無気味
(
ぶきみ
)
さである。
試
(
こころみ
)
に言水句集を開けば、この類の句は
外
(
ほか
)
にも多い。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
配達された郵便物の上に
無気味
(
ぶきみ
)
な三角のマークをつけることも、少々冒険ではありましたが、やって見ました。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして、さらに、なんとなく
無気味
(
ぶきみ
)
に
感
(
かん
)
じたので、がまがえるからも
遠
(
とお
)
くはなれて
飛
(
と
)
び
去
(
さ
)
ったのです。
冬のちょう
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
人間が新しい食物に
馴
(
な
)
れるまでには蝸牛に対するのと同じ
気味
(
きみ
)
悪さを経験したに違いないと主張する。云われて見ればそうかも
知
(
し
)
れないが、日本人にとっては
無気味
(
ぶきみ
)
此上
(
このうえ
)
もないものである。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何
(
なに
)
しろ
腕力
(
わんりよく
)
があるから
敵
(
かな
)
ひませんね。それに
兇器
(
きようき
)
ももつてゐるやうです。
洋行
(
やうかう
)
するときの
護身用
(
ごしんよう
)
にと
買
(
か
)
つたものです。一
緒
(
しよ
)
にあるいてゐると、
途中
(
とちう
)
時々
(
とき/″\
)
ぬかれるんでね。あの
目
(
め
)
も
無気味
(
ぶきみ
)
です。
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは
丁度
(
ちょうど
)
悪夢
(
あくむ
)
に
襲
(
おそ
)
われているような
感
(
かん
)
じで、その
無気味
(
ぶきみ
)
さと
申
(
もう
)
したら、
全
(
まった
)
くお
話
(
はなし
)
しになりませぬ。そしてよくよく
見
(
み
)
つめると、その
動
(
うご
)
いて
居
(
い
)
るものが、
何
(
いず
)
れも
皆
(
みな
)
異様
(
いよう
)
の
人間
(
にんげん
)
なのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その声がまだ消えない内に、ニスの匀のする戸がそっと明くと、顔色の蒼白い書記の
今西
(
いまにし
)
が、
無気味
(
ぶきみ
)
なほど静にはいって来た。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
壊れた
瓦
(
かわら
)
の山を踏む
無気味
(
ぶきみ
)
な足音が、僕のうしろをまわって横に出た。僕のひざががたがたふるえだした。うつろになった僕の眼に一人の少年の姿が入ってきた。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
格別
(
かくべつ
)
不思議
(
ふしぎ
)
とも
無気味
(
ぶきみ
)
とも
思
(
おも
)
われない、
自然
(
しぜん
)
の
現象
(
すがた
)
に
過
(
す
)
ぎませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼
(
かれ
)
は、
多少
(
たしょう
)
、
無気味
(
ぶきみ
)
になりました。
死と話した人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
オルガンティノは一瞬間、
降魔
(
ごうま
)
の十字を切ろうとした。実際その瞬間彼の眼には、この夕闇に咲いた
枝垂桜
(
しだれざくら
)
が、それほど
無気味
(
ぶきみ
)
に見えたのだった。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕んちはここから十三丁も離れているが、
高台
(
たかだい
)
に在るせいか、家の屋上からあのネオン・サインがよく見える。それは
朱色
(
しゅいろ
)
の
入墨
(
いれずみ
)
のように、
無気味
(
ぶきみ
)
で、ちっとも動かない。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
評論がポオの再来と云ふのは、
確
(
たしか
)
にこの点でも当つてゐる。その上彼が好んで
描
(
ゑが
)
くのは、やはりポオと同じやうに、
無気味
(
ぶきみ
)
な超自然の世界である。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕は腰のあたりに爆弾をうちつけられたような
無気味
(
ぶきみ
)
な寒気に襲われた。もう三十秒これがつづいたならば僕は運転手を射殺しても、この車から外へ飛び出そうと決心した。
人造人間殺害事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今度もまた相手の目鼻立ちは確かに「はにかみや」の清太郎である。Nさんは急に
無気味
(
ぶきみ
)
になり、抑えていた手を
緩
(
ゆる
)
めずに出来るだけ大きい声を出した。
春の夜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一同は心臓をギュッと握られたように、
無気味
(
ぶきみ
)
さに
慄
(
ふる
)
えあがった。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
茶屋の手すりに眺めていた海はどこか見知らぬ顔のように、珍らしいと同時に
無気味
(
ぶきみ
)
だった。——しかし
干潟
(
ひがた
)
に立って見る海は大きい
玩具箱
(
おもちゃばこ
)
と同じことである。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
という言葉が、いつまでも
無気味
(
ぶきみ
)
に思い出されるのであった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ところが藤沢は存外不快にも思わなかったと見えて、例のごとく
無気味
(
ぶきみ
)
なほど柔しい微笑を漂わせながら
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
欠伸
(
あくび
)
ばかりしているのもいけないらしかった。自分は急にいじらしい気がした。同時にまた
無気味
(
ぶきみ
)
な心もちもした。Sさんは子供の枕もとに
黙然
(
もくねん
)
と
敷島
(
しきしま
)
を
啣
(
くわ
)
えていた。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
田宮は色を変えた牧野に、ちらりと顔を
睨
(
にら
)
まれると、てれ隠しにお蓮へ
盃
(
さかずき
)
をさした。しかしお蓮は
無気味
(
ぶきみ
)
なほど、じっと彼を見つめたぎり、手も出そうとはしなかった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ただ薄暗い
湯気
(
ゆげ
)
の中にまっ赤になった顔だけ
露
(
あら
)
わしている、それも
瞬
(
またた
)
き一つせずにじっと屋根裏の電燈を眺めていたと言うのですから、
無気味
(
ぶきみ
)
だったのに違いありません。
温泉だより
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕は
床
(
とこ
)
の上に
腹這
(
はらば
)
いになり、妙な興奮を
鎮
(
しず
)
めるために「
敷島
(
しきしま
)
」に一本火をつけて見た。が、夢の中に眠った僕が現在に目を
醒
(
さ
)
ましているのはどうも
無気味
(
ぶきみ
)
でならなかった。
彼 第二
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たね子は
紋服
(
もんぷく
)
を着た夫を前に狭い階段を登りながら、
大谷石
(
おおやいし
)
や
煉瓦
(
れんが
)
を用いた内部に何か
無気味
(
ぶきみ
)
に近いものを感じた。のみならず壁を伝わって走る、大きい一匹の鼠さえ感じた。
たね子の憂鬱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「これは珍品ですね。が、何だかこの顔は、
無気味
(
ぶきみ
)
な所があるようじゃありませんか。」
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、万一鳴ったとしたら、——僕は何か
無気味
(
ぶきみ
)
になり、二度と押す気にはならなかった。
悠々荘
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ビイアスは
無気味
(
ぶきみ
)
な物を書くと、少くとも英米の文壇では、ポオ以後第一人の観のある男ですが、(Amborose Bierce)御当人も第四の空間へでも飛びこんだのか
近頃の幽霊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし
浄海入道
(
じょうかいにゅうどう
)
になると、浅学短才の悲しさに、俊寛も
無気味
(
ぶきみ
)
に思うているのじゃ。して見れば首でも
刎
(
は
)
ねられる代りに、この島に一人残されるのは、まだ仕合せの内かも知れぬ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それより竹藪の中にはひり、竹の皮のむけたのが、裏だけ日の
具合
(
ぐあひ
)
で光るのを見ると、
其処
(
そこ
)
らに
蛞蝓
(
なめくぢ
)
が
這
(
は
)
つてゐさうな、妙な
無気味
(
ぶきみ
)
さを感ずるものなり。(八月二十五日青根温泉にて)
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
両峯の化け物は写真版によると、妙に
無気味
(
ぶきみ
)
な所があつた。冬心のはさう云ふ
妖気
(
えうき
)
はない、その代りどれも可愛げがある。こんな化け物がゐるとすれば、夜色も昼よりは明るいであらう。
支那の画
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
空には
暈
(
かさ
)
のかかった月が、
無気味
(
ぶきみ
)
なくらいぼんやり
蒼
(
あお
)
ざめていた。森の木々もその空に、
暗枝
(
あんし
)
をさし
交
(
かわ
)
せて、ひっそり谷を封じたまま、何か
凶事
(
きょうじ
)
が起るのを待ち構えているようであった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それどころか、堅く結んだ唇のあたりには、例の
無気味
(
ぶきみ
)
な微笑の影が、さも嘲りたいのを
堪
(
こら
)
えるように、漂って
居
(
お
)
るのでございます。するとその不敵な振舞に腹を据え兼ねたのでございましょう。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ランプは
相不変
(
あいかわらず
)
私とこの
無気味
(
ぶきみ
)
な客との間に、春寒い焔を動かしていた。私は
楊柳観音
(
ようりゅうかんのん
)
を
後
(
うしろ
)
にしたまま、相手の指の一本ないのさえ問い
質
(
ただ
)
して見る気力もなく、
黙然
(
もくねん
)
と坐っているよりほかはなかった。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同時にそれが彼の
後
(
うし
)
ろにうろついていそうな
無気味
(
ぶきみ
)
さを感じた。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三人は一種の
無気味
(
ぶきみ
)
さを感じて無言のまま、部屋を外へ
退
(
しりぞ
)
いた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風に
靡
(
なび
)
いたマツチの
炎
(
ほのほ
)
ほど
無気味
(
ぶきみ
)
にも美しい青いろはない。
都会で
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すると兄の眼の色が、急に
無気味
(
ぶきみ
)
なほど険しくなった。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“無気”で始まる語句
無気
無気力漢
無気力