かけ)” の例文
井戸は小屋をかけかはやは雪中其物をになはしむべきそなへをなす。雪中には一てん野菜やさいもなければ家内かない人数にんずにしたがひて、雪中の食料しよくれうたくはふ。
鼻にかけて我々を見下し不孝の事のみ多く其上下女などに不義ふぎ仕懸しかけ何一ツ是ぞと云取處とりどころなく斯樣かやうの者に家を渡す事は勿論もちろん忠八にいとま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
卯平うへいせまいながらにどうにか土間どまこしらへて其處そこへは自在鍵じざいかぎひとつるしてつるのある鐵瓶てつびんかけたり小鍋こなべけたりすることが出來できやうにした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
段々れて来てお前さん、この頃じゃあ、立身たちみになりましょうと、喧嘩の虫が声をかけると、それから明るくなりますぜ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
千里の天眼鏡をかけて人生を観測すること既に久し、而して哲学を以て、科学を以て、詩人の霊眼を以て、つひに説明し尽すべからざるものはれ人生なるかな。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
御本宅は丸茂まるもという暖簾のれんかけた塩問屋、これは旦那様の御兄様おあにいさまで、私の上りました御家は新宅と申しました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
実にその労と申しては田圃でんぽ悪莠あくゆうを一回芟除さんじょするよりもなおやすきことにて、その器械と申すはわが邦俗ほうぞく新年門戸もんこかけ注連縄しめなわのごとく、羊毛にて製したるものにて
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
図696は、若干の花を優雅に生けるかけ花入れの写生である。籠は非常に古く、署名つきである。
夏のはじめつころ、天皇埴安はにやすの堤の上などにいでまし給ふ時、かの家らに衣をかけほしてあるを見まして、実に夏の来たるらし、衣をほしたりと、見ますまに/\のたまへる御歌也。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
射手は、心得たりと、弩弓どきゅうかけつらね、鉄弓の満を持し、敵の来るも遅しとばかり待っていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家は上り口と、奥の八畳との二室ふたまであつたが、八畳から二階へ梯子はしごかけわたされて、倉を直したものらしく、木組や壁は厳重に出来てゐたが、何となく重苦しい感じを与へた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おのが勧めて婚姻さしかけたは忘れたように何とも云わず物思わしげなる珠運しゅうんはらきかずとも知れてると万端らち明け、貧女を令嬢といわるゝように取計とりはからいたる後、先日の百両突戻つきもどして
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ものの金龍通人は自分の戸口に洒落た一れんかけておいた。聯の文句はかういふのだ。
……何、ほんまぢや? そんなら起請か、かけもするてや、し、天も地も照覧あれ、指かけ小かけ、嘘云ふものは手の指腐され、好し、そんならつて見よう。嘘ぢややら、指十本腐るぞよ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
いわゆるかけの魚は、本来は貯蔵の状態のままの姿と思われる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
金をかけて馬をひょろひょろと走らす
馬を愛す (新字新仮名) / 今野大力(著)
さづたまふ所ならん然るに久八は養父五兵衞につかふることむかしまさりて孝行をつくみせの者勝手元の下男に至る迄あはれみをかけ正直しやうぢき實義じつぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御当家おうちへ迷惑はかけないから、帰るまでああして蔵匿かくまって置いて下さらないか、衣服きものに血がついてたり、おどおどしている処を見ると、邪慳じゃけんしゅうとめにいびられる嫁か。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
珠運が一身二一添作にいちてんさくの五も六もなく出立しゅったつが徳と極るであろうが、人情の秤目はかりめかけては、魂の分銅ふんどう次第、三五さんごが十八にもなりて揚屋酒あげやざけ一猪口ひとちょく弗箱ドルばこより重く、色には目なし無二無三むざん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『フン、どつちが外聞が惡いんだらう。私や十歳とをの時からねえさんの御奉公してゐたんだよ。其で姉さんの手から、半襟はんゑりかけくれたこともありやしないで。チヨツ利いたふうな事を言つてるよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
幾年いくねんなくても勝手かつてつてるのでかれはしらかけてあるランプをけて、あへ手足てあしあたゝめるため麁朶そだをぽち/\とつて火鉢ひばちべた。すゝけた藥罐やくわんを五とくかけてそれからかれ草鞋わらぢをとつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
七 幸木さいわいぎかけうお
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
既に我が身に引請んとするを暫時しばしと引留千太郎進みより否々いへ/\久八にては御座らぬと言んとするを押留おしとゞ尻目しりめかけて夫となく知らする忠義の赤心まごころ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
支那しなだか、朝鮮だか、それとも、北海道か、九州か、どこで観ようと云うのだか、それを聞きかけた処へ、貴女が食堂へ入っておいでなさいましたもんですから
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
端艇が浜へついたとき、かけわたされた船板から、四五人の男女が上陸して来たが、その中に旧式なパナマを冠つて、小さい手提鞄てさげかばん細捲ほそまきとをもつて、肥満した老人が一人こつちへ遣つて来た。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
又、泥障あおりかけもてきたれ、という。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今朝も、その慈愛の露を吸ったいきおいで、謹三がここへ来たのは、金石の港に何某なにがしとて、器具商があって、それにも工賃の貸がある……かけを乞いに出たのであった——
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一二のかけ
の二種として、これを結ぶに必要なるは、先づ髷形わげがたかもじとなり。髢にたぼみの小枕こまくらあり。びんみの、よこみの、かけみの、根かもじ、横毛といふあり、ばら毛といふあり。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二度のかけ
憎さも憎しと伯爵夫人、「二円。」と恐しきかけう。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
升屋ますやかけはまだ寄越さんかい。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)