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後退
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あとずさ
ふりがな文庫
“
後退
(
あとずさ
)” の例文
彼女は死んだのだ。やがてウィルは立上った。ミラは両手を口にあてて思わず出ようとした叫を止めると
後退
(
あとずさ
)
りして暗い廊下に出た。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
風があっちへ行くな行くなと思いながらそろそろと小十郎は
後退
(
あとずさ
)
りした。くろもじの木の
匂
(
におい
)
が月のあかりといっしょにすうっとさした。
なめとこ山の熊
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一生懸命に引っ張って行こうとすると
後退
(
あとずさ
)
りしてなかなか進まない。後から杖で
打擲
(
ぶんなぐ
)
って追い遣ろうとしてもどうしても動かない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
煙管を腹がけの
丼
(
どんぶり
)
に落し込みながら、悠々と俺の前に立塞がって、真黒な右手をニューと差し出した。俺は面喰って
後退
(
あとずさ
)
りした。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
仮面の男は、四人の女にピストルを向けたまま
後退
(
あとずさ
)
りして、正面の樹陰へかくれる。夫人たちは、ふるえながら、手をあげたままである。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
▼ もっと見る
その悲しむべき
岸辺
(
きしべ
)
に立って震えながら、恐怖のために
後退
(
あとずさ
)
りしていた。彼はまったく平気でいられるほど無知ではなかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
と思って、一同が
後退
(
あとずさ
)
りをしたその瞬間、がちゃーンという一大音響がして、サッと
濛々
(
もうもう
)
たる
白煙
(
しろけむり
)
が室内に立ちのぼりました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
神職 (魔を切るが如く、
太刀
(
たち
)
を
振
(
ふり
)
ひらめかしつつ
後退
(
あとずさ
)
る)したたかな邪気じゃ、古今の
悪気
(
あくき
)
じゃ、
激
(
はげし
)
い汚濁じゃ、
禍
(
わざわい
)
じゃ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると、それと同時に、その一段の積石が音もなく
後退
(
あとずさ
)
りを始めて、やがて、その跡の床に、パックリと四角の闇が開いた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
半七は
土竜
(
もぐら
)
のように這い込むと、まだ三間とは進まないうちに、道は塞がって行く手をさえぎられた。彼はよんどころなく
後退
(
あとずさ
)
りをして戻った。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
みのるの心は又だん/\に
後退
(
あとずさ
)
りして行つた。義男がさも幸運の手に二人が胴上げでもされてる樣な喜びを見せつけてゐる事にも不足があつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
彼等
(
かれら
)
は
雨
(
あめ
)
を
藁
(
わら
)
の
蓑
(
みの
)
に
避
(
さ
)
けて
左手
(
ひだりて
)
に
持
(
も
)
つた
苗
(
なへ
)
を
少
(
すこ
)
しづつ
取
(
と
)
つて
後退
(
あとずさ
)
りに
深
(
ふか
)
い
泥
(
どろ
)
から
股引
(
もゝひき
)
の
足
(
あし
)
を
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
植
(
う
)
ゑ
退
(
の
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
新九郎はジリジリと、
蟇
(
がま
)
のように身を動かした。そして、思わず刀の柄を折れよと握り締めていたが、ふッと思い返してまた
後退
(
あとずさ
)
りに体を隠した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
した艶子は社長の意図を少しも察することができず、
生命
(
いのち
)
の危険を感じたようにじりじり
後退
(
あとずさ
)
りをした。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そして思はず涙の浮びかゝつた私の眼から、ぼんやり明け近い
暈
(
かさ
)
をかぶつた燈火と、蝙蝠のやうに驛員たちの立つてゐる
歩廊
(
プラツトフオーム
)
が、見る/\中に
後退
(
あとずさ
)
つて行つた。
受験生の手記
(旧字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
それを
但馬守
(
たじまのかみ
)
に
見
(
み
)
られるのが
心苦
(
こゝろぐる
)
しさに
地方
(
ぢかた
)
の
與力
(
よりき
)
何某
(
なにがし
)
は、
猫
(
ねこ
)
に
紙袋
(
かんぶくろ
)
を
被
(
かぶ
)
せた
如
(
ごと
)
く
後退
(
あとずさ
)
りして、
脇差
(
わきざ
)
しの
目貫
(
めぬき
)
の
上
(
のぼ
)
り
龍
(
りう
)
下
(
くだ
)
り
龍
(
りう
)
の
野金
(
やきん
)
は、
扇子
(
せんす
)
を
翳
(
かざ
)
して
掩
(
おほ
)
ひ
隱
(
かく
)
した。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼は
後退
(
あとずさ
)
りする——決して見られないように。何も
彼
(
か
)
もしんと靜まつてゐる。再び彼は近づく。彼女の上に身を
屈
(
かゞ
)
める。輕い薄絹が彼女の顏の上に置かれてある。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
凄
(
すさ
)
まじきまで凝り詰むれば、
爰
(
ここ
)
に
仮相
(
けそう
)
の
花衣
(
はなごろも
)
、
幻翳
(
げんえい
)
空華
(
くうげ
)
解脱
(
げだつ
)
して
深入
(
じんにゅう
)
無際
(
むさい
)
成就
(
じょうじゅ
)
一切
(
いっさい
)
、
荘厳
(
しょうごん
)
端麗あり難き実相
美妙
(
みみょう
)
の
風流仏
(
ふうりゅうぶつ
)
仰ぎて珠運はよろ/\と幾足うしろへ
後退
(
あとずさ
)
り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
勝平の眼が、段々狂暴な色を帯びると共に、彼は
勢
(
いきほひ
)
猛
(
まう
)
に瑠璃子に迫つて来た。彼女は、相手の激しい勢に圧されるやうにヂリ/\と
後退
(
あとずさ
)
りをせずにはゐられなかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
ペタペタと砕けてしまった腰を立てながら、
後退
(
あとずさ
)
って逃げてしまった男の形が眼に見るようです。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
軒下の白い顔が笑いかけたが、孫がぴたりと立止まると、ぎょっと身を硬くして
後退
(
あとずさ
)
りをした。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
女主人の制止に、仕方がないと
諦
(
あきら
)
めたように、犬はウウッーと
喉音
(
こうおん
)
を立てながら、
後退
(
あとずさ
)
りして行きました。が、
驚破
(
すわ
)
といえばまだ躍り
蒐
(
かか
)
らんばかりの、
凄
(
すさ
)
まじい形相です。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その瞬間に、白い天鵞絨の服が草原から出てぱっと
陽
(
ひ
)
に輝いた。突然に激しい白光を感じて、神経の立っていた花房は狂奔的に首をぐんと上げて、五、六歩ほど
後退
(
あとずさ
)
った。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ぼんくらの俳句観はかういふふうに
後退
(
あとずさ
)
りするのだ。「ミヤコ・ホテル」の表現効果の美事さにまで行き着けないでゐるうちに、俳句に色気がないと定めてしまふのである。
俳句は老人文学ではない
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
一番とおいところに——われから
後退
(
あとずさ
)
りして行ったようなものに玉目三郎がいたと
憶
(
おも
)
った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
ひっ掻かれでもしたらたいへんだと思って、少々たじたじになって
後退
(
あとずさ
)
りしたはずみに、絡みあっていた辣薤の茎に踵をとられて、あおのけにどすんと畑のなかに尻餅をついた。
生霊
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ところが一歩踏み入れるなり、彼女はさっと顔色を変えて、たじたじと
後退
(
あとずさ
)
った。
怪談綺談
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
金太郎が
躍気
(
やっき
)
になって籠に顔を押しつけるとロオラはいきなり最もグロテスクな嘴でそれに立向ったので、金太郎はびっくりして
後退
(
あとずさ
)
りをしました。ロオラは金太郎の
狼狽
(
ろうばい
)
を見ると急に
オカアサン
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
聖
(
けだか
)
い隠者はそのやうな人間を見ると、初めは驚愕のあまり
後退
(
あとずさ
)
りをした。その男は白楊の葉のやうに全身をわなわな顫はせてゐた。不気味な
流眄
(
ながしめ
)
をしてゐる両の眼からは、物凄い火花が散つた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「奥様、本当にあなたはまあ!」とマリヤ・コンスタンチーノヴナは
後退
(
あとずさ
)
りをして、両手を打ち合わせて叫んだ、「どうかしてらっしゃるのですわ。ね、しっかりなさって、気をお鎮め遊ばせな。」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
思わず
後退
(
あとずさ
)
りしながら確かめると、それは小犬ほどしかないけれど、間違いもない象なのだ。アッと思って眼を上げると、その眼に今度は小牛ほどもあろうかと思われる化け物のような
蟋蟀
(
こおろぎ
)
が写った。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
一町程
先方
(
むかう
)
から提燈が一つ来るので、渠は一二歩
後退
(
あとずさ
)
つた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私は一瞬
慄毛
(
おぞけ
)
を振るつて
後退
(
あとずさ
)
るやうにして面を振り立てた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「どうしたんですか」私が
後退
(
あとずさ
)
りしながら言うと
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
對戰
(
あしらひ
)
兼
(
かね
)
思はず
後退
(
あとずさ
)
りなし小石に
礑
(
はた
)
と
躓
(
つまづ
)
き
倒
(
たふ
)
るゝを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
スクルージはぞっとして
後退
(
あとずさ
)
りした。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
謹三は、ハッと
後退
(
あとずさ
)
りに
退
(
すさ
)
った。——杉垣の
破目
(
われめ
)
へ引込むのに、かさかさと帯の鳴るのが
浅間
(
あさま
)
しかったのである。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の
膝頭
(
ひざがしら
)
が我れ知らずガクガクと動いた。歯の根がカチカチと鳴り出した。ジリジリと
後退
(
あとずさ
)
りをしながら、薄い黄絹のカアテンを、腫れ物に触るようにして
潜
(
もぐ
)
り出た。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だから、後半分の余力が、その足を軸に廻転を起して、人形の左足がしだいに
後退
(
あとずさ
)
りして行く。そして、完全に横向きになると、今度は扉と平行に進んで行くからだよ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
勝平の眼が、段々狂暴な色を帯びると共に、彼は
勢
(
いきおい
)
猛
(
もう
)
に瑠璃子に迫って来た。彼女は、相手の激しい勢に
圧
(
お
)
されるようにジリ/\と
後退
(
あとずさ
)
りをせずにはいられなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ファゼーロはたじたじ
後退
(
あとずさ
)
りしました。給仕がそばからレッテルのない大きな
瓶
(
びん
)
からいままでみんなの呑んでいた酒を注ごうとしました。わたくしはそこで云いました。
ポラーノの広場
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
タジタジと
後退
(
あとずさ
)
ってきたので、のび上がってみると、ひとりの遍路を相手に何か言い争っているふうなので、眼八は縄付のそばを離れて、すばやくそこへ
潜
(
くぐ
)
って行った。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私があの女に對したときのやうに
嫌惡
(
けんを
)
を以てあなたから
後退
(
あとずさ
)
りしはしなかつたゞらう。あなたが落着いてゐるときには私の他には見張りも看護人も
要
(
い
)
らなかつたゞらう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
玄竹
(
げんちく
)
の
高
(
たか
)
い
聲
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて、
百姓
(
ひやくしやう
)
町人
(
ちやうにん
)
の
群
(
む
)
れまでが、
後退
(
あとずさ
)
りするのを、
玄竹
(
げんちく
)
は
優
(
やさ
)
しく
見
(
み
)
やつて
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
兵馬は小石を拾って
覘
(
ねら
)
いをつけると、犬はまた
後退
(
あとずさ
)
りして、兵馬の
面
(
かお
)
を
睨
(
にら
)
みながら
唸
(
うな
)
る。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
孫は店の者が、真青になって
後退
(
あとずさ
)
りをするほど、殺気を帯びた凄い顔をしていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
彼は
後退
(
あとずさ
)
りをすると、背中を壁にドスンとぶつけた。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
かえって
後退
(
あとずさ
)
りして
唐紙
(
からかみ
)
に背をもたせた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
少年 (
後退
(
あとずさ
)
りして)いいえ、いいえ。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
飛び下りた影を
狙
(
ねら
)
って、
颯然
(
さつぜん
)
たる一刀が月光に鳴り、斜めに腰を払ったが、ヒラッとかわして銀五郎が、無二無三の
刃交
(
はまぜ
)
を
挑
(
いど
)
むと、
対手
(
あいて
)
はたちまち
掠
(
かす
)
りをうけて
後退
(
あとずさ
)
り
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“後退”の解説
後退(こうたい、en: retrograde movement)は、現代戦術論において、現在の戦況の改善を目的とし、戦闘を中止して敵との交戦を回避しつつ前線に対して後方への機動、または敵から距離を置く戦術行動である。後退行動とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“後”で始まる語句
後
後生
後方
後悔
後姿
後家
後手
後日
後世
後裔