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咄嗟
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とつさ
ふりがな文庫
“
咄嗟
(
とつさ
)” の例文
八五郎は
咄嗟
(
とつさ
)
に構へを直すと、力任せに、辰三を突いたのです。
爪先
(
つまさき
)
は三味線堀の水、間違ひもなく、その水の中に落ちたと思ひきや
銭形平次捕物控:307 掏られた遺書
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に一切悟つた彼は、
稜威
(
いつ
)
の
雄
(
を
)
たけびを発しながら、力一ぱい
頭
(
かしら
)
を振つた。すると忽ち宮の屋根には、地震よりも凄まじい響が起つた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
けれど、かつて私の惡徳を惹き起したことのある
烈
(
はげ
)
しい怒と
必死
(
ひつし
)
の反抗と同じあの感情に動かされて、私が
咄嗟
(
とつさ
)
に向きなほつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に辨ずる手際がない爲めに、
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず省略の
捷徑
(
せふけい
)
を棄てゝ、几帳面な塗抹主義を根氣に實行したとすれば、
拙
(
せつ
)
の一字は何うしても免れ難い。
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
余はおのれが信じて頼む心を生じたる人に、卒然ものを問はれたるときは、
咄嗟
(
とつさ
)
の
間
(
かん
)
、その答の範囲を善くも量らず、直ちにうべなふことあり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
振り向いて、あツドラ猫だ。宮城といふ受持の教師だつたが、
咄嗟
(
とつさ
)
にその名は想ひ出せず、思はず、
綽名
(
あだな
)
を口走つた。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
礼助は否、と云ひ切れはしなかつた。彼は固いままの顔を
些
(
いささ
)
か赤くして、
咄嗟
(
とつさ
)
に何とか云はなければならなかつた。
曠日
(新字旧仮名)
/
佐佐木茂索
(著)
罹災者
(
りさいしや
)
は
直
(
たゞち
)
にまた
自
(
みづか
)
ら
自然林
(
しぜんりん
)
から
樹
(
き
)
を
伐
(
き
)
つて
來
(
き
)
て
咄嗟
(
とつさ
)
の
間
(
ま
)
にバラツクを
造
(
つく
)
るので、
毫
(
がう
)
も
生活上
(
せいくわつじやう
)
に
苦痛
(
くつう
)
を
感
(
かん
)
じない。
日本建築の発達と地震
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
一
秒
(
べう
)
に
砂
(
すな
)
一
粒
(
りふ
)
、
幾億萬年
(
いくおくまんねん
)
の
後
(
のち
)
には、
此
(
こ
)
の
大陸
(
たいりく
)
を
浸
(
ひた
)
し
盡
(
つく
)
さうとする
處
(
ところ
)
の
水
(
みづ
)
で、いまも、
瞬間
(
しゆんかん
)
の
後
(
のち
)
も、
咄嗟
(
とつさ
)
のさきも、
正
(
まさ
)
に
然
(
しか
)
なすべく
働
(
はたら
)
いて
居
(
ゐ
)
るのであるが
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
近頃ライフの一字、文学社会に多く用ひらるゝに至れるを見て、ひそかに之を祝せんとするの外、
豈
(
あに
)
敢て此大問題を
咄嗟
(
とつさ
)
の文章にて解釈することをせんや。
人生の意義
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に、孝一は刎ね起きた。と、両手で頭をかゝへて、腰をまげ、猫のやうに素早く外へ飛び出してしまつた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
「
豐平川
(
とよひらがは
)
の鐵橋がよからう。」義雄は
斯
(
か
)
う
咄嗟
(
とつさ
)
の間に答へたが、自分の足は既にその方へ向いてゐた。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
平生いかに眼識の明を誇つて居る自分でも、此
咄嗟
(
とつさ
)
の間には十分精確な判断を下す事は出来ぬ。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に、ゆき子が顔を動かした。加野の唇はゆき子の頬に突きあたつて、あへなく離れた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
併し彼は
咄嗟
(
とつさ
)
の間に「あゝ世には手品師といふ職業もあるんだな。」と考へついた。——
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
父は私が遊び仲間から黒坊主と呼ばれてゐることを知つてゐたのだ。私は気も
顛倒
(
てんたう
)
して
咄嗟
(
とつさ
)
に泥んこでよごれた手で鍬を振り上げ、父の背後に詰寄つて無念骨髄の身がまへをした。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
周三は、
咄嗟
(
とつさ
)
に
湧
(
わ
)
いて來たこの男の
義侠心
(
ぎけふしん
)
に對し、ひそかに昂奮し、感謝した。長い間ねらつてゐた脱走の機會が、こんな場合に突然めぐつて來るとは夢にも思はなかつたからである。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
私は
咄嗟
(
とつさ
)
に、提灯を持ち換へる
遑
(
いとま
)
もなく、持つた儘の手を突出して防ぎ止めた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「おつう」と一
聲
(
せい
)
呶鳴
(
どな
)
つて
情
(
じやう
)
の
激
(
げき
)
した
勘次
(
かんじ
)
は
咄嗟
(
とつさ
)
に
次
(
つぎ
)
の
語
(
ことば
)
が
出
(
だ
)
せなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
の
遅
(
おくれ
)
を天に叫び、地に
号
(
わめ
)
き、流に
悶
(
もだ
)
え、巌に狂へる貫一は、血走る
眼
(
まなこ
)
に水を射て、
此処
(
ここ
)
や
彼処
(
かしこ
)
と
恋
(
こひし
)
き
水屑
(
みくづ
)
を
覓
(
もと
)
むれば、
正
(
まさし
)
く
浮木芥
(
うきぎあくた
)
の類とも見えざる物の、
十間
(
じつけん
)
ばかり
彼方
(
あなた
)
を揉みに揉んで
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「
竹本
(
たけもと
)
」や「
常磐津
(
ときはづ
)
」を初め
凡
(
すべ
)
ての
浄瑠璃
(
じやうるり
)
は立派に複雑な感激を
現
(
あらは
)
して居るけれど、「音楽」から見れば歌曲と云はうよりは楽器を用ゐる朗読詩とも云ふべく、
咄嗟
(
とつさ
)
の感情に訴へるには
冷
(
ひやゝ
)
か過ぎる。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私はあの
咄嗟
(
とつさ
)
の際の藤枝の観察の鋭いのに感心した。
殺人鬼
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
の
急
(
きふ
)
には
思
(
おも
)
ひ
浮
(
うか
)
ばなかつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
二人はそれでも負けず
劣
(
おと
)
らず
捻
(
ね
)
ぢ合ひました。あまりに
咄嗟
(
とつさ
)
の出來事で、遠ざけられた近習達が、驅け付ける暇もなかつたのです。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いや、その外に水口の障子ががらりと明けられたのも同時だつた。乞食は
咄嗟
(
とつさ
)
に身構へながら、まともに
闖入者
(
ちんにふしや
)
と眼を合せた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それから博士は、細君の話を聞いた時に、この意外な出来事と細君の妊娠との関係に就いて、
咄嗟
(
とつさ
)
の間に思つた事のあるのを思ひ出した。それはかうである。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その
咄嗟
(
とつさ
)
の
失錯
(
しつさく
)
をどういふ風にして繕つたか——ロチスター氏の
動靜
(
どうせい
)
が、私にとつて重大な關係を持つ理由のある事柄であると、
假
(
かり
)
にも思ふその思ひ違ひを
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
の間に渠は、
主婦
(
おかみ
)
が起きて来るのぢやないかと思つて、ビクリとしたが、唯寝返りをしただけと見えて、立つた
気色
(
けはひ
)
もせぬ。ムニヤムニヤと少年が寝言を言ふ声がする。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
友達の手前は養子に行つたのだと言ひつくらはうと
咄嗟
(
とつさ
)
の
智慧
(
ちゑ
)
をめぐらした。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
たゞ
夫
(
それ
)
が
咄嗟
(
とつさ
)
の
間
(
あひだ
)
に、
前
(
まへ
)
の
問答
(
もんどう
)
に
繋
(
つな
)
がり
好
(
よ
)
く、
口
(
くち
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
なかつたのである。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
況
(
ま
)
してや平生激昂しやすき厭世家の想像は、この誠実なる恋愛に遭ひて
脆
(
もろ
)
くも
咄嗟
(
とつさ
)
の間に、奇異なる魔力に打ち勝たれ、根もなき希望を
醸
(
かも
)
し来り、全心を挙げて情の奴とするは見易き道理なり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
……
其處
(
そこ
)
で、
昨日
(
きのふ
)
穿
(
は
)
いた
泥
(
どろ
)
だらけの
高足駄
(
たかあしだ
)
を
高々
(
たか/″\
)
と
穿
(
は
)
いて、
此
(
こ
)
の
透通
(
すきとほ
)
るやうな
秋日和
(
あきびより
)
には
宛然
(
まるで
)
つままれたやうな
形
(
かたち
)
で、カラン/\と
戸外
(
おもて
)
へ
出
(
で
)
た。が、
出
(
で
)
た
咄嗟
(
とつさ
)
には
幻
(
まぼろし
)
が
消
(
き
)
えたやうで
一疋
(
ひとつ
)
も
見
(
み
)
えぬ。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に荒尾の視線は転じて、猶
語続
(
かたりつづく
)
る宮が
面
(
おもて
)
を
掠
(
かす
)
め
去
(
さ
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
全く
咄嗟
(
とつさ
)
の間の引越しだつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
の間にお二人で相談して、刀を隱して格子戸を外し、曲者が外から入つて父上を害めたことに
取繕
(
とりつくろ
)
つたのです。それに間違ひはないでせうな
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
にかう云ふ自省を動かした彼は、
恰
(
あたか
)
も内心の赤面を隠さうとするやうに、慌しく止め桶の湯を肩から浴びた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
の間に見極めると、年の頃五十六七、實體らしい
老爺
(
おやぢ
)
さんで、どう間違つても身投などをする
柄
(
がら
)
とは見られません。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし
男
(
をとこ
)
は
咄嗟
(
とつさ
)
の
間
(
ま
)
に、わたしを
其處
(
そこ
)
へ
蹴倒
(
けたふ
)
しました。
丁度
(
ちやうど
)
その
途端
(
とたん
)
です。わたしは
夫
(
をつと
)
の
眼
(
め
)
の
中
(
なか
)
に、
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
ひやうのない
輝
(
かがや
)
きが、
宿
(
やど
)
つてゐるのを
覺
(
さと
)
りました。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お越は
咄嗟
(
とつさ
)
の間に石垣を
驅
(
か
)
け降りて、其處に
繋
(
つな
)
いだ小舟に飛乘り、
棹
(
さを
)
を突つ立てて、浮きつ沈みつする子供に近づき、危ふいところで引上げました。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
新公は
咄嗟
(
とつさ
)
に身を
躱
(
かは
)
さうとした。が、傘はその途端に、古
湯帷子
(
ゆかた
)
の肩を打ち据ゑてゐた。この騒ぎに驚いた猫は、鉄鍋を一つ蹴落しながら、
荒神
(
くわうじん
)
の棚へ飛び移つた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その綱は有合せの短かい
繩
(
なは
)
を三本も結び合せたもので、結び目が一寸見ると男結びに似た
機
(
はた
)
結びだつたことなどが、
咄嗟
(
とつさ
)
の間に平次の注意をひきます。
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
女の目も亦猫とすれば、
喉
(
のど
)
を鳴らしさうに
媚
(
こび
)
を帯びてゐる。主人は返事をする代りにちよいと唯
点頭
(
てんとう
)
した。女は
咄嗟
(
とつさ
)
に(!)勘定台の上へ小型のマツチを一つ出した。
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それに、平次の早い眼は、娘の帶から裾へかけて、
斑々
(
はん/\
)
と血潮の附いてゐるのを、
咄嗟
(
とつさ
)
の間に見て取つたのです。
銭形平次捕物控:072 買つた遺書
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
遠藤が次の間へ踏みこまうとすると、
咄嗟
(
とつさ
)
に印度人の婆さんは、その戸口に立ち
塞
(
ふさ
)
がりました。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
新婿の彌八などは、半身浴びるやうな血を受けて、
咄嗟
(
とつさ
)
の間に
着換
(
きが
)
へをしたほどのひどい姿になつてゐたのです。
銭形平次捕物控:287 血塗られた祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
芭蕉の床を囲んでゐた一同の心に、
愈
(
いよいよ
)
と云ふ緊張した感じが
咄嗟
(
とつさ
)
に閃いたのはこの時である。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
死骸には傷の
痕
(
あと
)
はなく、物馴れた平次の眼には、これは溺れたものではなく、首の大動脈を激しく
撃
(
う
)
たれて、
咄嗟
(
とつさ
)
に死んだことは爭ふ餘地もありません。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
途方に暮れた金花は頬を抑へて、微笑する気力もなくなつてゐたが、
咄嗟
(
とつさ
)
にもうかうなつた上は、何時までも首を振り続けて、相手が思ひ切る時を待つ外はないと決心した。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お菊の後ろから近づいて、何か聲をかけながら、
咄嗟
(
とつさ
)
に剃刀を
喉
(
のど
)
へ廻し、肩を押へてやつた——と見たのでせう。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は
咄嗟
(
とつさ
)
に了解した。十戒を破つたモツツアルトはやはり苦しんだのに違ひなかつた。しかしよもや彼のやうに、……彼は頭を垂れたまま、静かに彼の
卓子
(
テエブル
)
へ帰つて行つた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“咄嗟”の意味
《名詞》
咄 嗟(とっさ)
極めて短い時間。
(出典:Wiktionary)
咄
漢検1級
部首:⼝
8画
嗟
漢検1級
部首:⼝
13画
“咄嗟”で始まる語句
咄嗟の考察