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呻吟
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しんぎん
ふりがな文庫
“
呻吟
(
しんぎん
)” の例文
然るに恋愛なる一物のみは能く彼の厭世家の
呻吟
(
しんぎん
)
する胸奥に忍び入る秘訣を有し、
奇
(
く
)
しくも彼をして多少の希望を起さしむる者なり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
人と自然と、神の
創造
(
つく
)
り給える全宇宙が罪の審判のために震動し、天の
涯
(
はて
)
より地の
極
(
きわみ
)
まで、万物
呻吟
(
しんぎん
)
の声は一つとなって空に
冲
(
ちゅう
)
する。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
けれども御弓の
菩提所
(
ぼだいじ
)
を僕が知ろうはずがなかった。僕は
呻吟
(
しんぎん
)
しながら、
已
(
やむ
)
を得なければ姉に聞くよりほかに仕方あるまいと答えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜具の中で
輾転
(
てんてん
)
と悶えたり、
呻吟
(
しんぎん
)
したり、はね起きて、がたがた震えながら歩きまわったり、また幾たびも暗い庭へ出ていったりした。
月の松山
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
相手は一たまりもなく
床
(
ゆか
)
に倒れて、苦しそうな
呻吟
(
しんぎん
)
の声を洩らした。——それはあの腰も
碌
(
ろく
)
に立たない、猿のような老婆の声であった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
喚き声、
罵
(
ののし
)
り声、悲鳴、
呻吟
(
しんぎん
)
、剣と剣と触れ合う音、太刀と太刀と切り結ぶ音、ワッワッと云う
大叫喊
(
だいきょうかん
)
が、瞬時に町を引っ包んだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
平生
(
へいぜい
)
の元気も失せて
呻吟
(
しんぎん
)
してありける処へ親友の小山中川の二人尋ね来りければ
徒然
(
とぜん
)
の折とて
大
(
おおい
)
に
悦
(
よろこ
)
び枕に
臂
(
ひじ
)
をかけて
僅
(
わずか
)
に
頭
(
こうべ
)
を
揚
(
あ
)
げ
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
実に社会の底に
呻吟
(
しんぎん
)
するレ・ミゼラブル(惨めなる人々)であり、彼らを作り出した社会の欠陥であり、彼らが漂う時運の流れであった。
レ・ミゼラブル:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
僕の結婚当時から、腹が痛むと云って食べ物に注意していた今井は、何時の間にか腸結核に
罹
(
かか
)
って、不治の病床に
呻吟
(
しんぎん
)
していた。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
産婦は絹布の夜具によりかかり
呻吟
(
しんぎん
)
しおるより、早速医師はそれぞれ手を尽くしようやく産ますれば、後よりまた産まるる
双嬰
(
ふたご
)
。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
長い月日を病床に
呻吟
(
しんぎん
)
する不幸な人々の神経を有害に刺激する事なしに
無聊
(
ぶりょう
)
を慰め精神的の治療に資する事もできはしまいか。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それはほかならぬ道庵先生が
不憫
(
ふびん
)
なことに、その筋から手錠三十日間というお
灸
(
きゅう
)
を
据
(
す
)
えられて、屋敷に
呻吟
(
しんぎん
)
しているということであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
惜まれて
逝
(
ゆ
)
く多くの有望な人々と同じやうに、今また斯の人が同じ病苦に
呻吟
(
しんぎん
)
すると聞いては、うたゝ同情の念に堪へないと書いてあつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
神山守は
呻吟
(
しんぎん
)
するのです。若い娘が、若い男の獨り住居の家へ、眞夜中の
子刻
(
こゝのつ
)
から
丑刻
(
やつ
)
近くまで居たといふことは、一體何を意味するでせう。
銭形平次捕物控:255 月待ち
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうすれば、当然草木の
呻吟
(
しんぎん
)
と揺動とは、その人のものとなって、ついに、人は草木である——という結論に達してしまうのではないだろうか。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
葉子はそう言って、彼の手を取ったが、この重苦しい愛着の圧迫に苦しんでいる、それは彼女の
呻吟
(
しんぎん
)
の声でしかなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
水ヲ下サイ……水ヲ下サイ……水ヲ下サイ……水ヲ下サイ……それは夢魔のように彼を
呻吟
(
しんぎん
)
させた。彼は帰京してから、それを次のように書いた。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
警察を出し抜き、名探偵明智小五郎を病院のベッドに
呻吟
(
しんぎん
)
せしめ、まんまと三重の殺人を犯して、ついに気体の如く消え失せてしまったのである。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
初めは
呻吟
(
しんぎん
)
、中頃は
叫喚
(
きょうかん
)
、終りは
吟声
(
ぎんせい
)
となり放歌となり
都々逸
(
どどいつ
)
端唄
(
はうた
)
謡曲
仮声
(
こわいろ
)
片々
(
へんぺん
)
寸々
(
すんずん
)
又継又続
倏忽
(
しゅっこつ
)
変化
自
(
みずか
)
ら測る能はず。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それまでは何の感じもなく、ただ産婦の
呻吟
(
しんぎん
)
するのを不安に感じて、うろうろしていましたが、不思議なものですね。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
はるばる富山まで来て、交番の奥の間に
呻吟
(
しんぎん
)
している自分が世界中で一番哀れなものに思われた。どうにでもなれ!
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
我等が獄中
呻吟
(
しんぎん
)
の日々に於けるツシタラの温かき心に報いんとて 我等 今 この道を贈る。我等が築けるこの道 常に
泥濘
(
ぬかる
)
まず
永久
(
とは
)
に崩れざらん。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
担
(
にな
)
える
籠
(
かご
)
は覆りて、紙屑、
襤褸切
(
ぼろきれ
)
、
硝子
(
がらす
)
の
砕片
(
かけ
)
など
所狭
(
ところせま
)
く散乱して、
脛
(
すね
)
は地を
蹴
(
け
)
り、手は
空
(
くう
)
を
掴
(
つか
)
みて、
呻吟
(
しんぎん
)
せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
医師の免状も取って、
業
(
ぎょう
)
も開き、年頃の娘を持つくらいの年になってから、重症に
罹
(
かか
)
って、
永
(
ながら
)
く病床に
呻吟
(
しんぎん
)
した。
取り交ぜて
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
君
(
きみ
)
よ、
君
(
きみ
)
は
今
(
いま
)
の
時文
(
じぶん
)
評論家
(
ひやうろんか
)
でないから、
此
(
この
)
三日
(
みつか
)
の
間
(
あひだ
)
、
床
(
とこ
)
の
中
(
なか
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
して
居
(
ゐ
)
た
時
(
とき
)
考
(
かんが
)
へたことを
聞
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れるだらう。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
あの時の僕を考えて見れば、確かに、失意と、惨めさの意識との中で
呻吟
(
しんぎん
)
して、自らを
呪詛
(
じゅそ
)
する季節にいたのだ。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
べつにジャズだからといって、黒人の
呻吟
(
しんぎん
)
や狂気なんかどうでもいい。日本人の狂気がそこにあればいいのだ。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
暫く聞いていると、その溜息が段々大きくなって、苦痛のために
呻吟
(
しんぎん
)
するというような風になったそうだ。そこで宮沢がつい、どうかしたのかいと云った。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
地にしてあまりに重き荷に苦しむ時には、神秘なる
呻吟
(
しんぎん
)
の声が影のうちより発し、無限の深みにまでも達する。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
篠田の寂しき台所の火鉢に
凭
(
よ
)
りて、首打ち垂れたる
兼吉
(
かねきち
)
の
老母
(
はゝ
)
は、
未
(
いま
)
だ罪も定まらで牢獄に
呻吟
(
しんぎん
)
する我が愛児の上をや
気遣
(
きづか
)
ふらん、折柄誰やらん
訪
(
おとな
)
ふ声に
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして、そう思って見る時、公の面貌に甚だ悲壮な、
惨澹
(
さんたん
)
たる
懊悩
(
おうのう
)
の影が現れ、勇ましい鎧武者の姿が、残虐な
桎梏
(
しっこく
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
している囚人の如くに映じて来る。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
高貴なる血統に宿った凄惨な悲劇を、御一族は身をもって担い、倒れたのであるが、この重圧からの
呻吟
(
しんぎん
)
と
歔欷
(
きょき
)
の声は、わが国史に末長く余韻して尽きない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
まだ日の暮れない
中
(
うち
)
に半分、もしくは零になりかけている霊魂の
呻吟
(
しんぎん
)
が、私達の居る白樺の林の中から溢れ出して、私を無限の強迫観念の中に引包んでしまった。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
思うさま叫んでくれ! 虚空さえ
掴
(
つか
)
み損ねて
呻吟
(
しんぎん
)
しているおれのために!……——そうして彼は彼自身の心臓を虚空へ掴み出して投げ捨てたかのように
藻掻
(
もが
)
いた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
生活の
倦怠
(
けんたい
)
を
託
(
かこ
)
ったり、その荒涼の現実のなかで思うさま
懊悩
(
おうのう
)
呻吟
(
しんぎん
)
することを覚えたわけである。
猿面冠者
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は窓の所へ机を持って行って、原稿紙に向かって
呻吟
(
しんぎん
)
しながら心待ちに君を待つのだった。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
かつて一牝馬難産のところへ行き合せしに、その部の酋長これを憂うる事自分の母におけるごとく、
流涕
(
りゅうてい
)
して神助を
祷
(
いの
)
れば牝馬これに応じてことさらに
呻吟
(
しんぎん
)
するようだった。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その一人は絶息し、その一人は死の手から、ほんのこの世へ
取帰
(
とりもど
)
されたというだけの、
生命
(
いのち
)
のほども
覚束
(
おぼつか
)
ない重傷に
呻吟
(
しんぎん
)
しているおり、その真相が知り得られようわけがない。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
強
(
あなが
)
ち孤独地獄の
呻吟
(
しんぎん
)
を堪へなく思つたわけではないが、或偶然事が私を伊藤に結びつけた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「犬の幽霊が野原をああして駆けまはつて居たのだ。さうして、さういふ霊的なものは俺にばかりしか見えないのだ……。」……
憂欝
(
いううつ
)
の世界、
呻吟
(
しんぎん
)
の世界、霊が
彷徨
(
はうくわう
)
する世界。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
峰から峰の偃松は、暴風雨のあとの海原のように
凪
(
な
)
いで、けろりと静まりかえっている、谷底の風の
呻吟
(
しんぎん
)
は、山の上が静粛になるだけ、それだけ、一層
凄
(
すさ
)
まじく高く響いて来る。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
私は枕を列べて
呻吟
(
しんぎん
)
している三人の子供の看護に、夜も寝なかったことが度々あった。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
床中
(
しょうちゅう
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
してこの事を知った娘の心は
如何
(
どう
)
であったろう、
彼女
(
かれ
)
はこれを
聞
(
きい
)
てから
病
(
やまい
)
も
一
(
ひと
)
きわ
重
(
おも
)
って、忘れもしない明治三十八年八月二十一日の夜というに、
終
(
つい
)
にこの薄命な女は
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
ここを以て周遊の念、
勃々然
(
ぼつぼつぜん
)
として心胸の間を往来し、
而
(
しか
)
も
呻吟
(
しんぎん
)
𨀥跙
(
ししょ
)
すること、
蓋
(
けだ
)
しまた年あり。幸いにして今貴国の大軍艦、
檣
(
しょう
)
を連ねて来り、我が港口に泊し、日たる
已
(
すで
)
に久し。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
混乱、恐怖の叫び、
呻吟
(
しんぎん
)
……敷居の上に立っていたラズーミヒンは、部屋の中へ飛び込んで、その力強い手に病人をかきいだいた。そして病人はすぐさま長椅子の上に寝かされた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
マリア夫人は、少しも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
することなく、直ちに右の条件を承諾し、自ら進んで
囹圄
(
れいご
)
の人となり、それより我夫とともに、甘んじて一生涯を鉄窓の下に
呻吟
(
しんぎん
)
しようとしたのであった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
クウルマイエールの谷間に墜落、ヒカゲノカツラの中で
呻吟
(
しんぎん
)
中、これなる無宿衆バルトリ君ならびに同山の神氏に救助され、いまやモントラシェの町立病院に運ばれる途中なのである。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
病気や落胆でやつれ苦しんだことのある人や、異国でひとりかえりみてくれる人もなく病床に
呻吟
(
しんぎん
)
したことのある人ならば、高齢になってからでも、母を思いおこさぬものはあるまい。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
他のものはこれを
護衛
(
ごえい
)
して、左門洞にひきあげた、しかし道は
平坦
(
へいたん
)
ではない、たんかは
動揺
(
どうよう
)
した、そのたびに
架上
(
かじょう
)
のドノバンは、
悲痛
(
ひつう
)
な
呻吟
(
しんぎん
)
をもらした、このうめきをきく富士男の心は
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
沼津で
歿
(
な
)
くなった際、形見として弟子の中川海老蔵に与えたが、海老蔵は昭和五年の秋、女房に逃げられて、その苦悩のうちに病気になり、久しく病床に
呻吟
(
しんぎん
)
していたが、
某日
(
あるひ
)
杖に
縋
(
すが
)
って
お化の面
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“呻吟”の意味
《名詞》
呻 吟(しんぎん)
苦しくてうめくこと。
(出典:Wiktionary)
呻
漢検1級
部首:⼝
8画
吟
常用漢字
中学
部首:⼝
7画
“呻吟”で始まる語句
呻吟声
呻吟中
呻吟聲
呻吟籠居
呻吟転輾