前夜ぜんや)” の例文
ぐわつ十一にちまちまつつたる紀元節きげんせつ當日たうじつとはなつた。前夜ぜんやは、夜半やはんまで大騷おほさわぎをやつたが、なか/\今日けふ朝寢あさねどころではない。
十月十四の午後の出来事をづ書くべきにさふらはん。その前夜ぜんや私常よりも一層眠りぐるしく、ほとほとと一睡の夢も結びかねて明かせしにさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その時刻までに、わが青軍の主力は、前夜ぜんや魚雷ぎょらいに見舞われて速力が半分にちた元の旗艦きかん釧路くしろ』を掩護えんごして、うまく逃げ落ちねばならなかった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あるとき、自分じぶんは、そんなことを空想くうそうしたことがあります。そして、前夜ぜんや、ふしぎにも、むしになったゆめたのでした。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
前夜ぜんやあめはれそら薄雲うすぐも隙間あひまから日影ひかげもれてはるものゝ梅雨つゆどきあらそはれず、天際てんさいおも雨雲あまぐもおほママかさなつてた。汽車きしや御丁寧ごていねい各驛かくえきひろつてゆく。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かぞえてみますと、あれからもう三週間になります。すると、こんやは復活祭ふっかつさい前夜ぜんやということになります。
彼等かれら當日たうじつ前夜ぜんや口見くちみだといつて近隣きんりん者等ものらつてたかつて、なべ幾杯いくはいとなくわかしてはむのでしたゝらしてしまつて、それへ一ぱいみづしてくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ちやうど此の日の前夜ぜんやも、周三は、父から結婚問題に就いて嚴重げんぢう談判だんぱんツたのであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その前夜ぜんやのあの暴風雨ばうふううをわすれたやうに、あさかられ/″\とした、お天氣模樣てんきもやうで、つじつてれいしたほどである。おそろしき大地震おほぢしん大火たいくわために、大都だいとなかば阿鼻焦土あびせうどとなんぬ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
致したり前夜ぜんやかへりてくしをば百五十兩のかたなりと佛前へ備へ置きけるが今朝けさ見れば更になきゆゑ家内中穿鑿せんさくを致すと雖も何分見當らず夫に付き只今參りたりくしの代に何程なにほどにても取て金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのばんは、クリスマスの前夜ぜんやで、とりわけ、さむさのきびしい晩だった。ある地下室ちかしつに、ひとりの少年がいる。少年といっても、まだ六つになったかならないかの、とても小さな子なのだ。
二十日の夜独りで眠れず苦しんで、夜があけるのを待って寿江子に電話をかけ湿布の薬をもって来て貰いましたが、前夜ぜんやの嘔気の工合で、今度は或は切ることになるかなと予感して居りました。
前夜ぜんやのうちに、皇子おうじ馬車ばしゃも、それについてきた騎馬きば勇士ゆうしらも、なみうえへ、とっととんで、うみなかはいってしまったものとおもわれたのであります。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげん勝手かつてなもので、わたくし前夜ぜんや夜半やはんまでねむられなかつたにかゝはらず、翌朝よくあさくらうちからめた。五三十ぷんごろ櫻木大佐さくらぎたいさ武村兵曹たけむらへいそうともなつて、わたくし部室へやたゝいた。
そのためニールスには、この町が、ありのままの姿には見えないで、ほんのちょっとでしたが、まるで、復活祭ふっかつさい前夜ぜんやに見た、あの都と同じように美しいような気がしました。
ふたゝふたをとつたときには掃除さうぢらぬ風呂桶ふろをけのなかには前夜ぜんやあかが一ぱいいてた。其麽そんなことにはかまはずに田植たうゑ同勢どうぜいはずん/\と這入はひつた。彼等かれらほとんどたゞ手拭てぬぐひでぼちや/\と身體からだをこすつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あのおんなは、そんなうたらなければ、またいもできませんでした。それをらぬというわけにもいかず、その前夜ぜんや井戸いどなかげてんでしまいました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たび前夜ぜんやのこと、うれしいやら、かなしいやらで、むねがいっぱいになって、そとにすさぶあらしのおとをきいていると、ちょうどおきぬのまえをうたってとおる、子守唄こもりうた
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あくるばんは、あまり両方りょうほうとも、前夜ぜんやのようにはよくひかりませんでした。自然しぜんいえとして、かわうえや、そらんでいるものを、せまいかごのなかにいれたせいでもありましょう。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)