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一羽
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いちは
其船頭は
悠然として、
片手で
艫を
繰りはじめながら、
片手で
其の
水を
飮む
時、
白鷺の
一羽が
舞ひながら
下りて、
舳に
留まつたのである。
彈丸は
物の
見事に
其一羽を
斃したが、
同時に
他の
鳥群は、
吾等に
敵對の
色があると
看て
取つたから
堪らない。
トワルの
何れかに
黄金の目の光る
一羽の
梟を添へ
給へ。
以前、
何かに
私が、「
田舍から、はじめて
新橋へ
着いた
椋鳥が
一羽。」とか
書いたのを、
紅葉先生が
見て
笑ひなすつた
事がある。
塒に
枝を
爭つて、
揉拔れて、
一羽バタリと
落ちて
目を
眩したのを、
水をのませていきかへらせて、そして
放した
人があつたのを
覺えて
居る。
二羽一処にト
三羽一処にト
居てそして
一羽が六
尺ばかり
空へ
斜に
足から
糸のやうに
水を
引いて
立つてあがつたが
音がなかつた、それでもない。
「すゞめ
三羽に
鳩一羽といつてね。」と
丁と
格言まで
出來て
居た。それから
思ふと、みゝづくを
以て、
忽ち
食料問題にする
土地は
人氣が
穩かである。
「
違ふよ、お
前、
椋鳥と
言ふのは
群れて
來るからなんだよ。
一羽ぢやいけない。」
成程むれて
來るものだと
思つた。
……
大抵眞夜中の
二時過ぎから、
一時ほどの
間を
遠く、
近く、
一羽だか、
二羽だか、
毎夜のやうに
鳴くのを
聞く。
寢ねがての
夜の
慰みにならないでもない。
鶴よ、
來いよ、と
呼びたまへば、
折から
天下太平の、
蒼空高く
伸したりける、
丹頂千歳の
鶴一羽、ふは/\と
舞ひ
下りて、
雪に
末黒の
大紋の
袖を
絞つて
畏る。
まだ
変つた
事には、
舷を
霞が
包んで、ふつくり
浮上つたやうな
艫に
留まつて、
五位鷺が
一羽、
頬冠でも
為さうな
風で、のつと
翼を
休めて
向ふむきにチヨンと
居た。
はつと
思へば、
烏ほどの
真黒な
鳥が
一羽虫蝕だらけの
格天井を
颯と
掠めて
狐格子をばさりと
飛出す……
裳を
開いて、
悶へ
苦しむが
如くに
見えつゝ、
本尊たる
女の
像は、
此の
時早く
黒煙に
包まれて、
大な
朱鷺の
形した
一団の
燃え
立つ
火が、
一羽倒に
映つて、
水底に
斉しく
宿る。
寂しく
然も
高らかに、
向う
斜に
遙ながら、
望めば
眉にせまる、
滿山は
靄にして、
其處ばかり
樹立の
房りと
黒髮を
亂せる
如き、
湯の
原あたり
山の
端に、すぽい/\、すぽい/\と
唯一羽鳥が
鳴いた。