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鏃
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やじり
ふりがな文庫
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鏃
(
やじり
)” の例文
鑢は何にするかといふと
鏃
(
やじり
)
などの損んだときにそれを研いだり、或は武器の損じたときにそれを研ぐ。それから篩を持つて行きます。
元時代の蒙古人
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
と、鞍の上でのけ
反
(
ぞ
)
ったが、
鐙
(
あぶみ
)
に
確
(
しか
)
と踏みこたえて、片手でわが眼に立っている矢を引き抜いたので、
鏃
(
やじり
)
と共に眼球も出てしまった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逃げて行く二人を追いながら玄関まで主馬之介は走り出たが
傍
(
そば
)
の半弓を押っ取るや、
鏃
(
やじり
)
を抜き取った矢を
交
(
つが
)
えて討手の勢へ声を掛けた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
おゝ、彼の自棄——私の自棄よりも遙かに惡い——の恐れが如何に私の心を刺したことか! それは私の胸に刺さつた
鏃
(
やじり
)
の矢先であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ただならぬ
狼狽
(
ろうばい
)
の影が差したけれども、「いやガリバルダさん、
鏃
(
やじり
)
と
矢筈
(
やはず
)
を反対にしたら、たぶん、弩の
絃
(
いと
)
が切れてしまうでしょうからな」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
それから随分危険ながら蛇が著しく人を助くる今一件は、その毒を
鏃
(
やじり
)
に塗りて
蠢爾
(
しゅんじ
)
たる最も下劣な蛮人が、猛獣巨禽を射殺して活命する事だ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そのまた
円
(
まる
)
い天窓の外には松や
檜
(
ひのき
)
が枝を張った向こうに大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きい
鏃
(
やじり
)
に似た
槍
(
やり
)
ヶ
岳
(
たけ
)
の峯もそびえています。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これが木曾名物の焼き
栗
(
ぐり
)
だと言って、
生
(
なま
)
の栗を
火鉢
(
ひばち
)
の灰の中にくべて、ぽんぽんはねるやつをわざと
鏃
(
やじり
)
でかき回したげな。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
和泉の国の
猟夫
(
さつお
)
は土手下にころがり落ちてこれも胸の深部に、背にまで
鏃
(
やじり
)
が
衝
(
つ
)
き抜かれて、息はすでになくなっていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「このねらい方というやつが……人によってはこれを
鏃
(
やじり
)
からねらうものもある、また左からねらうものもあるけれど、これはいずれもよくないこと」
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
義家
(
よしいえ
)
はそこらにある
弓
(
ゆみ
)
に
矢
(
や
)
をつがえて、
無造作
(
むぞうさ
)
に
放
(
はな
)
しますと、
鎧
(
よろい
)
を三
枚
(
まい
)
とおして、
後
(
うし
)
ろに五
寸
(
すん
)
も
鏃
(
やじり
)
が出ていました。
八幡太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
二人が
眼々
(
がんがん
)
相看た視線の
箭
(
や
)
は其
鏃
(
やじり
)
と鏃とが
正
(
まさ
)
に空中に突当った。が、丹下の箭は落ちた。木沢は
圧
(
お
)
し
被
(
かぶ
)
せるように
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
……ただいま傷口をあらため見まするところ、一見、水蛭の咬み傷の如くには見えまするが、実は水鳥を狩るにもちいる
矪
(
くろろ
)
の
鏑形
(
かぶらがた
)
の
鏃
(
やじり
)
によりできたる傷。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
名高い
八峰
(
はちみね
)
の断裂は、底が五竜岳の方に
抉
(
えぐ
)
れ込んではいるものの、
斯
(
こ
)
う離れて眺めては、天魔が
巨箭
(
きょせん
)
を飛ばしてザクリと射抜いた
鏃
(
やじり
)
の痕のように小さい。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
落
(
お
)
ち
落
(
お
)
ちて
森
(
もり
)
寂
(
しづか
)
に、
風
(
かぜ
)
留
(
や
)
むで
肅殺
(
しゆくさつ
)
の
氣
(
き
)
の
充
(
み
)
つる
處
(
ところ
)
、
枝
(
えだ
)
は
朱槍
(
しゆさう
)
を
横
(
よこた
)
へ、
薄
(
すゝき
)
は
白劍
(
はくけん
)
を
伏
(
ふ
)
せ、
徑
(
こみち
)
は
漆弓
(
しつきう
)
を
潛
(
ひそ
)
め、
霜
(
しも
)
は
鏃
(
やじり
)
を
研
(
と
)
ぐ。
峻峰
(
しゆんぽう
)
皆
(
みな
)
將軍
(
しやうぐん
)
、
磊嚴
(
らいがん
)
盡
(
こと/″\
)
く
貔貅
(
ひきう
)
たり。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
美しくして晴れがましからず、心もおのづから靜まりぬべき室なり。窓の前には厚き質の
幌
(
とばり
)
を垂れたるが、長く床を拂へり。
鏃
(
やじり
)
研
(
と
)
ぐ愛の神の童の大理石像あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
百年ほど前にその豊後の木が枯れたので、伐って見ますと、太い幹からたくさんの
錆
(
さ
)
びた
鏃
(
やじり
)
が出ました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
歩
(
あゆみ
)
速かなりしかどもわがなつかしき父は
默
(
もだ
)
さで、汝
鏃
(
やじり
)
までひきしぼれる
言
(
ことば
)
の弓を射よといふ 一六—一八
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
其
(
そ
)
れ
等
(
ら
)
の研究に
依
(
よ
)
るに、彼等は何れも矢毒(即ち野獣を射て
之
(
これ
)
を毒殺すべく
鏃
(
やじり
)
に塗る毒)クラーレ、ヴェラトリンの
如
(
ごと
)
き猛毒の使用を知り、
併
(
あは
)
せて
阿片
(
あへん
)
、
規那
(
きな
)
、
大麻
(
おほあさ
)
ヤラツパ
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
汝の
云
(
い
)
うその南山の竹に矢の羽をつけ
鏃
(
やじり
)
を付けてこれを
礪
(
みが
)
いたならば、ただに犀革を通すのみではあるまいに、と孔子に言われた時、愛すべき単純な若者は返す言葉に
窮
(
きゅう
)
した。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼は
蹶張
(
けっちょう
)
を得意とし、熊や虎や
豹
(
ひょう
)
が、その
弦音
(
つるおと
)
に応じて
斃
(
たお
)
れた。蹶張というのは片足で弓を踏ん張って射るのである。その
鏃
(
やじり
)
をあらためると、皆その獣の
心
(
むね
)
をつらぬいていた。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あまつさえ
鏃
(
やじり
)
には猛毒でもが塗り仕掛けてあったものか、ご藩医たちがうちうろたえて、介抱手当を施したにもかかわらず、すでに難をうけた者は落命していたものでしたから
右門捕物帖:16 七化け役者
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
十重二十重
(
とへはたへ
)
にも築き上げられた大鐵壁を目がけて
鏃
(
やじり
)
のない矢をぶつつけるやうな、その矢が貫けないからと云つて氣ばかりぢりぢりさせて居たことが、全く無意味に終つてしまつた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
壁の上よりは、ありとある弓を伏せて
蝟
(
い
)
の如く寄手の
鼻頭
(
はなさき
)
に、
鉤
(
かぎ
)
と曲る
鏃
(
やじり
)
を集める。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それで十郎は命が助かり、いまだに石のおもては
鏃
(
やじり
)
のあとが残っているそうです。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
新助は本矢に近い
頑固
(
ぐわんこ
)
な
鏃
(
やじり
)
が入つた稽古矢を一本選ると、その根の方へ、袂から取出した矢文——小菊へ細々と
認
(
したゝ
)
めて、一寸幅ほどに疊んだのをキリヽと結び付け、手馴れた弓につがへて
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
鏃
(
やじり
)
するどき勁箭は、衆軍の上翔けり飛ぶ。 125
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
引く弓はいよよ張り詰め一筋や
眼先
(
まさき
)
の
鏃
(
やじり
)
弣
(
ゆづか
)
まで引く
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
厚三分の
鏃
(
やじり
)
とを発見したことである。
越中劍岳先登記
(新字新仮名)
/
柴崎芳太郎
(著)
鏃
(
やじり
)
ひかめく圍みうち。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
人々がかたずをのんでみつめるまに、
矢筈
(
やはず
)
を
弦
(
つる
)
にかけた蔦之助は、
陽
(
ひ
)
にきらめく
鏃
(
やじり
)
を、
虚空
(
こくう
)
にむけて、ギリギリと満月にしぼりだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
味方の負傷者を調べて見るといずれも傷は浅かったが、
鏃
(
やじり
)
に劇毒が塗りつけてあるので負傷者はのた打って苦しがる。そしてだんだんに弱って行く。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いや、大きい
鏃
(
やじり
)
に似た槍ヶ岳の峯も聳えてゐます。僕は飛行機を見た子供のやうに実際飛び上つて喜びました。
河童
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
貝原先生同様人の唾が蜈蚣の大敵たる由を言うたは、秀郷唾を
鏃
(
やじり
)
に塗りて大蜈蚣を殺したというに合う
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
我が爲めに祈りて世の
穢
(
けがれ
)
を受けざらしめんとして、その度ごとに知らず識らず
鏃
(
やじり
)
を我心に沒せしめたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
くるいなく深くも
抉
(
えぐ
)
られた
鏃
(
やじり
)
のあとも、ほぼ似た鮮やかさであった。しかも、相射ちのおちついた決意は彼らの相貌に一脈の穏やかささえ、ふかくも刻まれてあった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
もし無我夢中の裡に
窓框
(
まどわく
)
に片手を掛けなかったなら、あるいは、そのうちに矢筈が
萎
(
しな
)
び
鏃
(
やじり
)
が抜けるかして、結局直下三丈の地上で粉砕されたかもしれなかったのである。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
憂ひの
鏃
(
やじり
)
をその矢につけし異樣の
歎聲
(
なげき
)
我を射たれば我は手をもて耳を蔽へり 四三—四五
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その時姉が、並んで来たのを、
衝
(
つ
)
と前へ出ると、ぴったりと妹をうしろに囲うと、
筒袖
(
つつそで
)
だが、袖を開いて、小腕で
庇
(
かば
)
って、いたいけな
掌
(
てのひら
)
をパッと開いて、
鏃
(
やじり
)
の如く五指を反らした。
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十重二十重
(
とへはたへ
)
にも築き上げられた大鉄壁を目がけて
鏃
(
やじり
)
のない矢をぶつつけるやうな、その矢が貫けないからと云つて気ばかりぢりぢりさせて居たことが、全く無意味に終つてしまつた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
新助は本矢に近い頑固な
鏃
(
やじり
)
の入った
稽古矢
(
けいこや
)
を一本
選
(
よ
)
ると、その根の方へ、
袂
(
たもと
)
から取出した矢文——小菊へ細々と
認
(
したた
)
めて、一寸幅ほどに畳んだのをキリリと結び付け、手馴れた弓につがえて
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
更
(
さら
)
に間髪を入れず第三矢の
鏃
(
やじり
)
が第二矢の括にガッシと
喰
(
く
)
い込む。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その
三叉
(
みつまた
)
の
鏃
(
やじり
)
ある矢にマカオーン勇將の 505
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
ねえ親方、こういうところを見ると、やっぱり
富士
(
ふじ
)
の
裾野
(
すその
)
あたりで、テンカンテンカンと
鏃
(
やじり
)
をたたいているのが一ばん
安泰
(
あんたい
)
ですね
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見れば盆地の一所に、弓、鉄砲を持った十五、六人の武士が、冬次郎他五人のものを、中へ取りこめ真ん丸に包み、
鏃
(
やじり
)
を向け
銃口
(
つつぐち
)
を差しつけていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蜂は勿論蜜を取る為、蛇は
征矢
(
そや
)
の
鏃
(
やじり
)
に塗るべき、劇烈な毒を得る為であつた。それから狩や漁の暇に、彼は彼の学んだ武芸や魔術を、一々須世理姫に教へ聞かせた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その春と題したる畫の中に群れ遊べるさまこそ愛でたけれ。童一人大なる
砥
(
と
)
を
運
(
めぐら
)
すあれば、一人はそれにて
鏃
(
やじり
)
を研ぎ、外の二人は上にありて飛行しつゝも、水を砥の上に
灌
(
そゝ
)
げり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
一生涯が間身を放たで持ちたりける、五人
張
(
ばり
)
にせき
弦
(
づる
)
懸けて
噛
(
く
)
ひ
湿
(
しめ
)
し、三年竹の
節近
(
ふしぢか
)
なるを、十五束
二伏
(
ふたつぶせ
)
に
拵
(
こしら
)
へて、
鏃
(
やじり
)
の
中子
(
なかご
)
を
筈本
(
はずもと
)
まで打ち通しにしたる矢、たゞ三筋を
手挟
(
たばさ
)
みて
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鏃
(
やじり
)
は青銅製の四叉になっていて、
鴻
(
こうのとり
)
の羽毛で作った
矢筈
(
やはず
)
と云い、見るからに強靱兇暴をきわめ、クリヴォフ夫人を懸垂しながら突進するだけの強力は、それに十分窺われるのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
翠
(
みどり
)
の
鏃
(
やじり
)
の千の矢のように
晃々
(
きらきら
)
と雨道を射ています。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鏃
漢検1級
部首:⾦
19画
“鏃”を含む語句
石鏃
矢鏃
本矢鏃
鏃形
大鏃
矢鏃士
石鏃屑
箭鏃
葉鏃
鏃下
鏃師
鏃鍛
鏃鍛冶
鐵鏃