)” の例文
お絹の家の本家で、お絹たちの母の従姉いとこにあたる女であったが、ほかに身寄りがないので、お京のところで何かの用をしていた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
また仙太郎は金森様のお舟御用ふなごようしますという、末お芽出度いお話でございます。これで粟田口のお話は読切に相成りました。
亭主はさぞ勝手で天窓あたまから夜具をすっぽりであろうと、心に可笑おかしく思いまする、小宮山は山気はだに染み渡り、小用こようしたくなりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
打明けて、互に不満足のないようにしようとする為めのこの会合です。君はって、田舎に帰るのがいやだとならば、芳子を国に帰すばかりです
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「医は仁術なりと申してな、お礼など目的めあてには参り申さぬ。つてとの御意なら、記念のために老先生の扇面が戴きたい。」
五郎兵衛は年来大塩家に出入して、勝手向かつてむきの用をしたこともあるので、二月十九日に暴動のあつた後は、町奉行所の沙汰さた町預まちあづけになつてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
嘉助始め皆なで外の用を好くしてくれる。ですから、私は家を出ないものとしていますよ……女というものは、お前さん、こうしたものですからね
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
朝も早く起きて——老人としよりは目が早くさめるものじゃ——ほかの事はどうでもいいとして、御隠居の用をよくすのだ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
午後私は近所へ用しに出かけると、途中で若い畫家のO君に出逢つた。一緒にカフェに入つた。君はどうするのかと聞いたら、踏み止まるつもりだといふ。
大戦脱出記 (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
その間にも母の薬を持ってきた帰りや、母の用をした帰りには、きっと僕の所へ這入ってくる。僕も民子がのぞかない日は何となく淋しく物足らず思われた。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
馬車を待って乗るからかまわず帰れと翁が云うので、翁を茶店の前に残し、少し用をしてもどりかけると、馬車はすれちがいに通ったが、車中に翁の影が見えない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
十時ころにいちど用をさせ、それから少しうとうとしたと思うと、痛いほど激しくまた乳を吸われた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日曜日には、御機嫌伺いと号して課長殿の私邸へ伺候し、囲碁のお相手をもすれば御私用をもす。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
山にはただこの一軒あるばかりだ。麓の村に下りる迄は二三丁程あった。太吉は日に幾回となく、この赤地あかつちの山道を下りて遊びにも行き、家の用事をもしに行った。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、わしはちょっとソノ……食事のあとで用をすことがあるので、そちだけでいってくれ」
ですからお俊ばかりでなくお神さんたちが頼みもせぬ用をしてくれるのでございます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
彼は、用をしたあとは、疲労と疼痛とうつうとで失心したような状態に陥るのであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
丁度今から三年前、おれが盆茣蓙ぼんござの上のきから、江戸を売つた時の事だ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あんな有様でおくなりになり、どうも死因が変だというので、マリア姫のお父様の外務大臣とは、以前政治上の問題で、御用をしたことがありました所から、大臣が私に御依頼になり
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女はへやを出て往っちまう、で、便所へ往くふりをして、そっと広間へ往って、その皿鉢の中の残り肴を平げてしまい、中を鼻紙で美麗きれいに拭いて、出口の障子際へ持ち出し、それから用をして
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
台所働きの下女はあるが、ほかに手廻りの用をしてくれる小間使いのような若い女がほしい。年頃は十七、八で、あまり育ちの悪くない、行儀のよい、おとなしい娘がほしいというのである。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
龍介はちょっと来てから道ばたの雪に小用をした。用を達しながら、今の家の方を見た。往来をウロウロしていた四十恰好かっこうの貧相な女がさっきの女と、家の側の薄暗いところに立って話をしていた。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ボートで釣りに出たついでに、用しでもしているのだろう。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
とうっかり向うを向いて便をそうとする処をシュウと抜討ちに胴腹どうばらを掛けて斬り、又咽元のどもとを斬りましたから首が半分落るばかりになったのを
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょいちょい用をしに外へ出て行っては、帰って来た。浅井はそのころいろいろのことに手を拡げはじめていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
はツとつばをのみ、むねそらして退すさつたが、やがて思切おもひきつてようしてるまでは、まづ何事なにごともなかつたところ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つて所望いたす、すぐに持参いたすやうに」忠興は前にある小壺の列に、ちらと眼をくれながら
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
時にはまた、用をすための彼が天井裏から床下に降りて行って、下男に見つけられることもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
翌日は逢ってっていさめてどうしても京都にかえらせるようにすると言って、芳子はその恋人のもとうた。その男は停車場前のつるやという旅館はたごや宿とまっているのである。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
己はそれを突き留めて置いて、広小路で用をして、しばらく立ってから伊予紋へ押し掛けて行った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
暫くして用をしにこうと思って、ヒョイと私が部屋を出ると、何時いつ来たのか、お糸さんがツイ其処で、着物の裾をクルッとまくった下から、華美はでな長襦袢だか腰巻だかを出し掛けて
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかも今度の縁談は先方からっての所望しょもうだと云う事、校長自身が進んで媒酌ばいしゃくの労をる以上、悪評などが立つわれのないと云う事、そのほか日頃私の希望している東京遊学のごときも
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それはなにかにつけて惣兵衛がお石に用をさせるからで、それまではたいてい母のそばにじっとしていたのが、屋敷うちのどこにでも、まめまめと立ちはたらく姿が見られるようになったのだ。
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夜中に林蔵は眼をさまし、用をすため部屋を出た。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
霊岸島川口町れいがんじまかわぐちちょう橋本はしもとこうろうと申して、おやしきへお出入を致して、昔からお大名の旗下はたもとの御用をしたもので、只今でも御用を達す処もござりますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この兄は短い上京の日取の間に自分の用事もさなければ成らずと言ったように坐り直して、やがて四方八方をまるく治めて行きたいという口調で、更に言葉を継いで
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
迎方むかへかたとは新任の奉行を迎へに江戸に往つて、町与力まちよりき同心どうしんの総代として祝詞しゆくしを述べ、引き続いて其奉行の在勤中、手許てもとの用をす与力一にん同心二にんで、朝岡は其与力である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
朝から晩まで家の雑用をしてくれている忠実な男がいて、郵便物に注意し、女からのだと見ると、母に気取られぬように、そっと若主人に手渡しすることになっていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
便所かわやがあるのだが、夫人が寝たから、大廻りに玄関へ出て、鞠子のおさんの寝たすそを通って、板戸を開けて、台所だいどこの片隅のひらきから出て、小用をして、手を洗って、手拭てぬぐいを持つと
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
用をしてから出て来て見ると、手水鉢ちょうずばちに水が無い。小女ちびは居ないかと視廻みまわす向うへお糸さんが、もう雑巾掛ぞうきんがけも済んだのか、バケツを提げてやって来たが、ト見ると、直ぐ気が附いて
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
Bは昨夜ゆうべもある宴会からつて戻つて来ようとすると
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
私は全く橋本幸三郎と申して少々ばかり御用をす身の上でございまして…この岡村由兵衞と申すものは奉公人てえ訳ではない、日頃宅へ出入りを致すもので
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
杉山は河内国かはちのくに衣摺村きぬすりむらの庄屋で、何か仔細しさいがあつて所払ところばらひになつたものださうである。手近な用をすのは、格之助の若党大和国やまとのくに曾我村生そがむらうまれの曾我岩蔵いはざう中間ちゆうげん木八きはち吉助きちすけである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
或る時I子はしてもらひたい用事があるのに、来べき筈の寿美子が、二三日姿を見せないので、少し苛ついてゐた。I子はその時旅館にゐた。G——も多くの時間をそこで過した。
彷徨へる (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
と声をかけると、ちょうどおまんは小用でもしに立って行った時と見えて、日ごろ姑がかわいがっている毛並みの白いねこだけが麻の座蒲団ざぶとんの上に背をまるくして、うずくまっていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて小用こようした様子、雨戸をばたりと開けるのが聞えた、手水鉢ちょうずばち柄杓ひしゃくひびき
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さう言つてつて勧めたりして
島の唄 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
渡邊祖五郎はしきりに様子を探りますが、少しも分りません、夜半よなかに客が寝静ねしずまってから廊下で小用こようしながら見ますと、垣根の向うに小家こやが一軒ありました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幼君えうくん「さてなんにてもしよくこのむべし、いふがまゝにあたふべきぞ、退屈たいくつならば其中そのなかにてうたひまひ勝手かつてたるべし。たゞ兩便りやうべんようほかそとづることをゆるさず」と言棄いひすててたまひぬ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこへ浅井も、一日会社や自分の用をしに歩いていたその足で、寄って来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)