トップ
>
賄
>
まかな
ふりがな文庫
“
賄
(
まかな
)” の例文
はじめは彼もほかの下宿人と同じように
賄
(
まかな
)
いをしてもらっていたが、
所謂
(
いわゆる
)
ニコヨンの労働をするようになってからは自炊をしていた。
早春
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
よほど余計な
到来物
(
とうらいもの
)
でもなければ出さないで、連中たちの負担で
賄
(
まかな
)
わせましたばかりでなく、とき/″\はこんな負担を命じました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
実直さとともに
老
(
ふ
)
け、
痩
(
や
)
せぎすな体で、
賄
(
まかな
)
い方の辛労をひき受けて来たのだ。無限の実直さには何らの価値もみとめてはいなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
賄
(
まかな
)
ひの婆さんや、娘達が、げらげら笑ひながら、するめを裂いたり、
鯖干
(
さばぼ
)
しに醤油をかけてくれたりしてゐる。富岡はかなり酔つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
船が印度洋を通りかゝつた頃、青年将校は苦力と
賄
(
まかな
)
ひ方との間に激しい喧嘩がおつ
始
(
ぱじ
)
まつてゐるのに気が
注
(
つ
)
いた。賄ひ方は
広東
(
カントン
)
人だつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
一文無しになって尻込みばかりする井上半十郎正景は、赤痣の美女に
賄
(
まかな
)
われて、
何
(
ど
)
うやら
斯
(
こ
)
うやら、浜松の宿に着きました。
江戸の火術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
御広敷
(
おひろしき
)
の
橋廊下
(
はしろうか
)
という屈強な渡りを見つけて、二の丸御門につづくお留守居部屋と
賄
(
まかな
)
い方の屋根をふみこえて走りつづける。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここからは土手を一本道の小梅へ下ったお
賄
(
まかな
)
い長屋に、
市崎
(
いちざき
)
友次郎さまとおっしゃるお旗本がござりまするが、そのお組屋敷のことでござります
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それにこの人達は学校の食堂で
賄
(
まかな
)
って貰って、三度々々食事のために通っていたから、教師としての捨吉が知らないようなことをも知っていた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ルーレットという賭博で国の政治を
賄
(
まかな
)
っているので有名なモナコのモンテカルロで「お蝶夫人」をうたった時でした。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
時々出稼ぎにあちこちの病院へ出張したが、その報酬は全部自分で使ひ、寿枝には一銭も渡さず、しかも家の費用はすべて寿枝が自分の金で
賄
(
まかな
)
つてゐた。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
その代わり年とった女を二人
傭
(
やと
)
って交代に病院に
来
(
こ
)
さして、洗い物から食事の事までを
賄
(
まかな
)
わした。葉子はとても病院の食事では済ましていられなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
申付られたり此三右衞門は
小身
(
せうしん
)
の上至て
貧窮
(
ひんきう
)
の處へ
己
(
おのれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
とも都合四人の口故日々の
賄
(
まかな
)
ひに甚だ
難儀
(
なんぎ
)
致しけるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
叔父と幸さんとは、食堂の方で、
賄
(
まかな
)
いから取った朝飯を済ましたり、お庄が持ち込んで行ったお茶や菓子を食べたりしてから、やがて十時ごろに帰って行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一日の賃銀は五十銭であったが、彼は朝から晩まで実によく働いて、われわれ一行七人の炊事から洗濯その他の雑用を、何から何まで彼一人で
取
(
とり
)
り
賄
(
まかな
)
ってくれた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
賄
(
まかな
)
ひつてどの位? ときくと、さあ、お客樣がいらしつたから、一圓五十錢にもしたかしら、それとも一圓かしら? 大概三十五錢から、四十錢だと上等なのです。
北京の生活
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
二月五日の衆議院で、
東条
(
とうじょう
)
首相が堂々とこの新製鉄法を述べ、これで今次の大戦を
賄
(
まかな
)
うべき鉄には不自由しないと演述した。議員は皆
喝采
(
かっさい
)
した。私たちは
唖然
(
あぜん
)
とした。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
厚く物を
賄
(
まかな
)
った上、なお今後ご用をつとめるようにとの、ご
諚
(
じょう
)
をさえ内密に賜わったのであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
創
(
きず
)
を療じた後、これ我が表姪王二姐とて、生まれ付いた無性人で夫に
逐
(
お
)
われたとこの頃知ったから妻の伴とし置くと称し、昼は下女同然に
賄
(
まかな
)
わせ使い、夜はすなわち
狎処
(
こうしょ
)
した。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
黒棚や
簾
(
すだれ
)
も新たになり、召使ひの数も
殖
(
ふ
)
えたのだつた。乳母は勿論以前よりも、
活
(
い
)
き活きと暮しを取り
賄
(
まかな
)
つた。しかし姫君はさう云ふ変化も、寂しさうに見てゐるばかりだつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この商売をなすには莫大の費えなれども、政府には米もなく金もなきゆえ、百姓・町人より
年貢
(
ねんぐ
)
・
運上
(
うんじょう
)
を
出
(
い
)
だして政府の勝手方を
賄
(
まかな
)
わんと、双方一致のうえ相談を取り極めたり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
理想が低いと言って笑う人があるかも知れないが、私達は大抵月九円で
賄
(
まかな
)
っていたのだから、二十五円といえば、その三倍に当る。今日の学生は少くとも月五十円の学資を要する。
首席と末席
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私
(
わたくし
)
は頓と心得ませんが、棒を持って見廻って歩き、大した高ではございません、十石三人扶持、御作事方
賄
(
まかな
)
い役と申し、少禄では有りますが、段々それから昇進致す事になるので
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ここの屋根の下に
賄
(
まかな
)
いの小川の食堂があって、
谷中
(
やなか
)
のお寺に下宿していた学生時代に、時々昼食を食いに行った。オムレツと焼玉子の合の子のようなものが、メニューの中にあった。
病院風景
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それならば食事を
賄
(
まかな
)
うより外に人を通わせぬよう致しますか、
然
(
しか
)
し余り
牢住居
(
ろうずまい
)
の
様
(
よう
)
ではないか、ムヽ勝手とならば仕方がない、新聞
丈
(
だ
)
けは
節々
(
せつせつ
)
上
(
あげ
)
ましょう、ハテ
要
(
い
)
らぬとは悪い
合点
(
がてん
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これはみんなパーシェンカ、君んとこのおかみが
賄
(
まかな
)
ってくれたんだよ。あの女、一生懸命に僕にちやほやしてくれるのさ。むろん、僕はかくべつ主張もしないが、拒絶もしないんだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
勘定奉行は重任だ、大蔵卿だからな。
公卿
(
くげ
)
の大蔵卿は名前倒れの看板だが、傾きかけた幕府の大台所を一手に
賄
(
まかな
)
う役目は重いよ、辛いよ。
小
(
こ
)
っ
旗本
(
ぱたもと
)
の家にしてからが、勘定方は辛いぞ。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ただおとよさんが
得心
(
とくしん
)
して来てくれさえすれば、来た日からでも
身上
(
しんしょう
)
の
賄
(
まかな
)
いもしてもらいたいっての、それは執心な懇望よ、向うは三度目だけれどお前も二度目だからそりゃ仕方がない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そのお店の
賄
(
まかな
)
ひをしてゐたんですがね。旦那も大旦那もなくなつたんですよ。
買出し
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
しかもこれに供給する兵器弾薬の量を考えると、余はこれを
賄
(
まかな
)
う方法を知らぬ
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
月々支出している、また支出しなければならない金額は、彼に取って随分苦しい労力の報酬であると同時に、それで
凡
(
すべ
)
てを
賄
(
まかな
)
って行く細君に取っても、少しも
裕
(
ゆたか
)
なものとはいわれなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
尤
(
もっと
)
も、六人もの子供の食事を
賄
(
まかな
)
うのだから、お
菜
(
な
)
一つ買うのにも頭を使うと使わないとでは随分な違いになる訳であるが、
賤
(
いや
)
しいことを云えば、お
惣菜
(
そうざい
)
の献立なども大阪時代とは変って来て
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それを
小分
(
こわ
)
けして見ると、三等室の患者は役員や
賄
(
まかな
)
ひまでに馬鹿にされることもそれだ。ほかの人は二枚も三枚も立派な着がへを持つて來てゐるのに、自分はいつも一枚しかないこともそれだ。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
平生最も隠居に
親
(
したし
)
んでゐる此八人の門人は、とう/\屋敷に泊まつてしまつた。此頃は客があつてもなくても、勝手の
為事
(
しごと
)
は、兼て塾の
賄方
(
まかなひかた
)
をしてゐる
杉山三平
(
すぎやまさんぺい
)
が、人夫を使つて取り
賄
(
まかな
)
つてゐる。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
傳染病に
怖氣
(
おぢけ
)
のついた、
意地惡
(
いぢわる
)
の管理人が逃げてしまつて、ロートン
施療院
(
せれうゐん
)
の看護婦長だつた、彼女の後任者は、まだ新しい家のきまりに慣れてゐないので、比較的にもの惜しみを
爲
(
し
)
ないで
賄
(
まかな
)
つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
股肱
(
ここう
)
と
恃
(
たの
)
み、我子とも思へる貫一の遭難を、主人はなかなかその身に受けし
闇打
(
やみうち
)
のやうに覚えて、無念の止み難く、かばかりの事に屈する鰐淵ならぬ
令見
(
みせしめ
)
の為に、彼が入院中を
目覚
(
めざまし
)
くも厚く
賄
(
まかな
)
ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
弥勒
(
みろく
)
には小川屋という料理屋があって、学校の教員が宴会をしたり飲み食いに行ったりするということをかねて聞いていた。当分はその料理屋で
賄
(
まかな
)
いもしてくれるし、夜具も貸してくれるとも聞いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
……疊があると
賄
(
まかな
)
ひだけのことだすさかい、總代さんとこからをなごし(下女の事)でもやつて、一晩のことだすもん、どないにでもしますんやが、疊なしではあんた、だい/\ごく仕樣がおまへん。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
何でも物価
高直
(
こうじき
)
の
折柄
(
おりから
)
、私の
入
(
いれ
)
る食料では
到底
(
とて
)
も
賄
(
まかな
)
い切れぬけれど、外ならぬ
阿父
(
おとっ
)
さんの
達
(
たっ
)
ての頼みであるに因って、不足の処は自分の方で
如何
(
どう
)
にかする決心で、謂わば義侠心で引受けたのであれば
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
賄
(
まかな
)
いはいうまでもなく店持ちである。青年級は二十七歳で終る。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
大公儀が甲府勤番の諸士を
賄
(
まかな
)
ふために用意した五千兩の大金、柏木で
紛失
(
ふんしつ
)
してしまつたでは、土地の御用聞の寅吉の顏が立たなかつたのです。
銭形平次捕物控:153 荒神箒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
旅籠屋
(
はたごや
)
をはじめ、
小商人
(
こあきんど
)
、近在の
炭
(
すみ
)
薪
(
まき
)
等を
賄
(
まかな
)
うものまでが必至の困窮に陥るから、この上は山林の利をもって渡世を営む助けとしたいものであると
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
豹一はやがて中学校にはいったのだが、しかし安二郎は
懐
(
ふところ
)
を傷めなかった。お君は毎日どこからか仕立物を引き受けてきて、その
駄賃
(
だちん
)
で豹一の学資を
賄
(
まかな
)
った。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
上役の、お
賄
(
まかな
)
い方支配
頭
(
がしら
)
の、大沢高之進様に、あんまりべっぴんじゃねえお嬢さまがおあんなすって、これがつまりぽうっとなっておしまいなすったんですよ。
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
成りあがりの役人どもは、妻子を郷里において単身のりこんで来ていた。貧乏そだちの彼らには、与えられた権力と、
賄
(
まかな
)
われる俸禄がふいに気持を
奢
(
おご
)
らしていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
伯母も身うちには
薄倖
(
はっこう
)
の女で、
良人
(
おっと
)
には早く死に
訣
(
わか
)
れ、四人ほどの子供もだんだん欠けて行き、末の子の婚期に入ったほどの娘が一人残って、塾の雑事を
賄
(
まかな
)
っていた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「滞府中には、あなたから充分な、お
賄
(
まかな
)
いをいただいておるし、この後といえども、
流寓落魄
(
りゅうぐうらくはく
)
貧しきには馴れています。どうかそれは諸軍の兵にわけてやってください」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
えゝ
一週間
(
ひとまわり
)
なり
二週間
(
ふたまわり
)
なりお席をおきまして、お
座敷
(
つぼ
)
の内へ
竈
(
へッつい
)
でも
炭斗
(
すみとり
)
火鉢すべて取寄せまして、
三週間
(
みまわり
)
もお
在
(
いで
)
になれば、また
賄
(
まかな
)
いの
婆
(
ばゝあ
)
も置きまして、世帯をお持ちなさいますなら
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
付ず取調て
御見分
(
ごけんぶん
)
の御役人へ御
渡
(
わた
)
し申すべしと
細々
(
こま/″\
)
御遺言
(
ごゆゐごん
)
有て終に
亡
(
むなし
)
く成給ひし然ば泣々
仰
(
おほ
)
せの如く取計ひ御
石碑
(
せきひ
)
をも
建立
(
こんりふ
)
して御後の取
賄
(
まかな
)
ひ萬事
濟
(
すま
)
せ後下人共へは御
紀念
(
かたみ
)
金を分與へて暇を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そのお店の
賄
(
まかな
)
いをしていたんですがね。旦那も大旦那もなくなったんですよ。
買出し
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
賄
常用漢字
中学
部首:⾙
13画
“賄”を含む語句
賄賂
賄方
収賄
贈賄
賄所
御賄
賄付
賄頭
取賄
賄場
賄料
賄賂請託
賄征伐
隣賄
賄賂不浄財
賄賂也
賄賂請願
賄贈
賄部屋
賄金
...