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ゆくて
ふりがな文庫
“
行手
(
ゆくて
)” の例文
姫は夜の闇にもほのかに映る
俤
(
おもかげ
)
をたどって、
疼
(
うず
)
くような体をひたむきに
抛
(
な
)
げ
出
(
だ
)
す。
行手
(
ゆくて
)
に認められるのは光明であり、理想である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
その氣持ちを言ひ現すことは出來ないが、私は、彼女が私の
行手
(
ゆくて
)
の路に、
嫌惡
(
けんを
)
と不親切の種を蒔きつゝあると云ふことを感じた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それでも、畿内の空の日だと思うと何となく懐かしい、私は日頃の癖のローマンチックの淡い
幻影
(
まぼろし
)
を
行手
(
ゆくて
)
に
趁
(
お
)
いながら辿った。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
私は
挨拶
(
あいさつ
)
をして
格子
(
こうし
)
の外へ足を踏み出した。玄関と門の間にあるこんもりした
木犀
(
もくせい
)
の
一株
(
ひとかぶ
)
が、私の
行手
(
ゆくて
)
を
塞
(
ふさ
)
ぐように、
夜陰
(
やいん
)
のうちに枝を張っていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
是故に天堂を描く時、この聖なる詩は、
行手
(
ゆくて
)
の道の
斷
(
き
)
れたるを見る人のごとく、
跳
(
をどり
)
越えざるをえざるなり 六一—六三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
バラバラと
礫
(
つぶて
)
のように飛び出した山役人、
木下闇
(
このしたやみ
)
を分けて山路に差しかかった旅人清作の
行手
(
ゆくて
)
に立ち塞がりました。
天保の飛行術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
近衛家
(
このえけ
)
に縁故のある津軽家は、
西館孤清
(
にしだてこせい
)
の
斡旋
(
あっせん
)
に依って、既に官軍に加わっていたので、路の
行手
(
ゆくて
)
の東北地方は、秋田の一藩を除く外、
悉
(
ことごと
)
く敵地である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そのうえ、実物をつくって実行してみると、机の上では、とても気がつかなかったような困難な問題がひょこひょことびだしてきて、
行手
(
ゆくて
)
を
阻
(
はば
)
むものである。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
道の
行手
(
ゆくて
)
に、砂けむりが立ったかと思うと、その砂けむりの中から、一頭の白い
牡牛
(
おうし
)
が太い鉄のような
角
(
つの
)
を左右に振り立てながら、飛ぶように走って来ました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
まもなく
行手
(
ゆくて
)
に一個の城のような建物を見た。それは
大巌
(
おおいわ
)
の岬の上に建ててある。少年はその大巌の上にやっとのぼりついた。その城の門にはフレオッセと書いてあった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
靴
(
くつ
)
下駄
(
げた
)
よりも
草鞋
(
わらじ
)
の方可なり。洋服
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
よりも
菅笠
(
すげがさ
)
脚袢
(
きゃはん
)
の方宜し。
連
(
つれ
)
なき一人旅
殊
(
こと
)
に善し。されど
行手
(
ゆくて
)
を急ぎ路程を
貪
(
むさぼ
)
り体力の尽くるまで歩むはかへつて俳句を
得難
(
えがた
)
し。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
が、いくら歩いて行っても、
枳殻垣
(
からたちがき
)
はやはり僕の
行手
(
ゆくて
)
に長ながとつづいているばかりだった。
死後
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幾度かこれを繰り返し最後の小室へ来た時に、そこに厳重の戸があって二人の
行手
(
ゆくて
)
を
遮
(
さえぎ
)
った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
行手
(
ゆくて
)
の右側に神社の屋根が樹木の間に見え、左側には真暗な水面を燈火の動き走っているのが見え出したので、車掌の知らせを待たずして、
白髯橋
(
しらひげばし
)
のたもとに来たことがわかる。
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その春のある夜、太郎左衛門は浜松の城下へ往っての帰りに、遅く村の入口の
庚申塚
(
こうしんづか
)
の傍まで来たところで、
行手
(
ゆくて
)
に当惑しているらしい、二人
伴
(
づれ
)
の女の立ち止っているのを見た。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
N
原
(
はら
)
の
行手
(
ゆくて
)
はまだ
遠
(
とほ
)
かつた。
私
(
わたし
)
が
濡
(
ぬ
)
れしよびれた
中根
(
なかね
)
の
姿
(
すがた
)
を
想像
(
さうぞう
)
して
時時
(
ときどき
)
可笑
(
をか
)
しくなつたり、
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
になつたりした。が、
何時
(
いつ
)
か
私
(
わたし
)
も
襲
(
おそ
)
つてくる
睡魔
(
すゐま
)
を
堪
(
こら
)
へきれなくなつてゐた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
敷
(
しき
)
イザと
勸
(
すゝむ
)
る
箱枕
(
はこまくら
)
のみならぬ身の親父が横に成たる
背後
(
うしろ
)
へ廻り腰より足を
摩
(
さす
)
り
行手
(
ゆくて
)
弱
(
よわき
)
腕
(
かひな
)
も今宵
此仇
(
このあだ
)
を
斃
(
たふ
)
さんお光の精神是ぞ親子が一世の別れと
究
(
きはま
)
る心は如何ならん
想像
(
おもひやる
)
だに
悼
(
いたま
)
しけれ
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
やがて、
行手
(
ゆくて
)
にぽっつりあかりが一つ見え始めました。それを子供の狐が見つけて
手袋を買いに
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
何かしらんと、
月光
(
つきあかり
)
を透して
行手
(
ゆくて
)
の方を見詰めると、何も見えない、多分犬か狐の
類
(
るい
)
だろう、見たらこの棒でくらわしてやろうと、注意をしながら、四五歩前に出ると、またガサガサ
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
ところで、石段を
背後
(
うしろ
)
にして、
行手
(
ゆくて
)
へ例の二階を置いて、
吻
(
ほっ
)
と息をすると……
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
行手
(
ゆくて
)
の道の両側には
見物
(
みせもの
)
店や、食物店が、それはそれはちょうど九段の
招魂社
(
しょうこんしゃ
)
の祭りに行ったように奇麗に居並んでいて、
其処
(
そこ
)
を
往来
(
ゆきき
)
するお姫様や、
小供
(
こども
)
の姿が手に取るように見えます。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
行手
(
ゆくて
)
には、こんもりとした森が見えて、
銀杏
(
いてふ
)
らしい大樹が
一際
(
ひときは
)
傑
(
すぐ
)
れて高かつた。赤く
塗
(
ぬ
)
つた
鳥居
(
とりゐ
)
も見えてゐた。二人はそれを目當てに歩いた。お光は十
間
(
けん
)
餘
(
あま
)
りも
後
(
おく
)
れて、沈み勝にしてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
泊
(
とまり
)
がきまると、
行手
(
ゆくて
)
を急ぐ要はありません。のろ/\歩きましょう。一歩は一歩の
楽
(
たのしみ
)
です。父は九十三、母は九十一、
何卒
(
どうか
)
私共もあやかりたい。先頃の大地震に、私はある人に言いました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
竜之助が立ち止まって天を仰いだ時は、鈴鹿の山も
関
(
せき
)
の
雄山
(
おやま
)
も
一帯
(
いったい
)
に夜と雨とに包まれて、
行手
(
ゆくて
)
に
鬱蒼
(
うっそう
)
と
一叢
(
ひとむら
)
の杉の木立、巨人の姿に盛り上って、その中からチラチラと
燈明
(
とうみょう
)
の光が
洩
(
も
)
れて来る。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
由布院が見える頃になると、この斜面一帯に牛が放牧されている。自動車の
行手
(
ゆくて
)
にも平然としていて、
怪訝
(
けげん
)
そうにこちらを見ていることもある。そしてずっと近くになってやっと
愕
(
おどろ
)
いて逃げ出す。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
突然
行手
(
ゆくて
)
の林の中にある岩の上に白いものが見える。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
あらゆる君等の
行手
(
ゆくて
)
の障害を突き破るだろう
地を掘る人達に
(新字新仮名)
/
百田宗治
(著)
突きあたりて曲る、
行手
(
ゆくて
)
の見えざる広き坂を
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
君が
行手
(
ゆくて
)
に雲かかるあらばその雲に
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僕
(
ぼく
)
は
頭
(
かしら
)
を
轉
(
てん
)
じて
行手
(
ゆくて
)
を
見
(
み
)
た。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「あの方だわ、ちがひないわ!——どこでだつて、私はお見それすることはないんですもの。」と叫んで、その人は、
行手
(
ゆくて
)
を遮つて、私の手をとつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
僕は
行手
(
ゆくて
)
に、
虹
(
にじ
)
のような流れが左右にわかれて遠くへ流れ動いていくのを見、目がくらみそうになった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
行手
(
ゆくて
)
の岸には墨絵の如くにじんだ
首尾
(
しゅび
)
の松。国貞は
猪口
(
ちょく
)
を手にしたまま
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私はその
一言
(
いちごん
)
でKの前に横たわる恋の
行手
(
ゆくて
)
を
塞
(
ふさ
)
ごうとしたのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
行手
(
ゆくて
)
にポッツリ人影が射した。で、足早に寄って行った。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
暫らく
行手
(
ゆくて
)
を見定めていたのでしょう。
江戸の火術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お浜は竜之助の
行手
(
ゆくて
)
を
遮
(
さえぎ
)
るようにして
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その野こえ
行手
(
ゆくて
)
沙原
(
すなはら
)
、そこにしも
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
行手
(
ゆくて
)
には悲痛の森
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と、僕の
行手
(
ゆくて
)
にあたって、また別の土塊がむくむくと頭をもちあげた。一つではなかった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
市ヶ谷
八幡
(
はちまん
)
の桜早くも散って、
茶
(
ちゃ
)
の
木
(
き
)
稲荷
(
いなり
)
の茶の木の
生垣
(
いけがき
)
伸び茂る頃、
濠端
(
ほりばた
)
づたいの道すがら、
行手
(
ゆくて
)
に望む牛込小石川の高台かけて、
緑
(
みどり
)
滴
(
したた
)
る新樹の
梢
(
こずえ
)
に、ゆらゆらと
初夏
(
しょか
)
の雲凉し
気
(
げ
)
に動く空を見る時
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
青年の
行手
(
ゆくて
)
には
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
くらやみの海面から、いつ、どのような無灯の船がぬっと現れ、
行手
(
ゆくて
)
を横断しないとはかぎらないのであった。宿直員は全身の神経をひきしめて、たえず行手を警戒しているのだった。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
行手
(
ゆくて
)
なる
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
十字路で約束通り相良十吉を拾い上げるようにして車内へ入れると、運転手に命じて
灯火
(
あかり
)
を
滅
(
け
)
させ急速力を出させた。
行手
(
ゆくて
)
は
烏山
(
からすやま
)
の中央天文台、暗闇の中に夜光時計は七時二十分前を示す。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おばさま。これ、この通り、夫にうまく行き逢いましたのよ。警官に
行手
(
ゆくて
)
を
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
行
常用漢字
小2
部首:⾏
6画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“行”で始まる語句
行
行燈
行方
行李
行衛
行灯
行脚
行水
行者
行末