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菖蒲
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しょうぶ
ふりがな文庫
“
菖蒲
(
しょうぶ
)” の例文
老妓はすべてを大して気にかけず、悠々と土手でカナリヤの餌のはこべを摘んだり
菖蒲
(
しょうぶ
)
園できぬかつぎを
肴
(
さかな
)
にビールを飲んだりした。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
五月には廓で
菖蒲
(
しょうぶ
)
を
栽
(
う
)
えたという噂が箕輪の若い衆たちの間にも珍らしそうに伝えられたが、十吉は行って見ようとも思わなかった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
反物
(
たんもの
)
の
片端
(
かたはし
)
を口に
啣
(
くわ
)
へて畳み居るものもあれば
花瓶
(
かへい
)
に
菖蒲
(
しょうぶ
)
をいけ小鳥に水を浴びするあり。彫刻したる
銀煙管
(
ぎんぎせる
)
にて
煙草
(
たばこ
)
呑むものあり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
五月の節句もまためぐって来て山家の軒にかけた
菖蒲
(
しょうぶ
)
の葉も残っているころに、半蔵は馬籠の新しい伝馬所の前あたりまで
戻
(
もど
)
って来た。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分の住まっている町から一里半余、石ころの
田舎道
(
いなかみち
)
をゆられながらやっとねえさんの
宅
(
うち
)
へ着いた。門の小流れの
菖蒲
(
しょうぶ
)
も雨にしおれている。
竜舌蘭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
例年
簷
(
のき
)
に
葺
(
ふ
)
く端午の
菖蒲
(
しょうぶ
)
も
摘
(
つ
)
まず、ましてや
初幟
(
はつのぼり
)
の祝をする子のある家も、その子の生まれたことを忘れたようにして、静まり返っている。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いや人間は賢いものだ、もし
蓬
(
よもぎ
)
と
菖蒲
(
しょうぶ
)
の二種の草を
煎
(
せん
)
じてそれで
行水
(
ぎょうずい
)
を使ったらどうすると、大切な秘密を
洩
(
もら
)
してしまったことにもなっている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
山吹の真白なじくも押出して、いちょうがえしへかけた。五月の節句には
菖蒲
(
しょうぶ
)
の葉を前髪に結んだり、
矢羽根
(
やばね
)
に切ったのを
簪
(
かんざし
)
にさしたものだった。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ただこはすっきりと
痩
(
や
)
せてみえた。
藍色
(
あいいろ
)
のぼかしに
菖蒲
(
しょうぶ
)
の模様の
帷子
(
かたびら
)
を着、白地にやはり菖蒲を染めた帯をしめていた。
鵜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
五人は湖畔を
辿
(
たど
)
って
菖蒲
(
しょうぶ
)
ヶ浜へ出た。ここは昼なお暗き古木が深々として茂っている。この中に山林局の養魚場がある。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
掌
(
てのひら
)
には、余るくらいなのが、しかも
鰓
(
えら
)
、
鰭
(
ひれ
)
、一面に泥まみれで、あの、
菖蒲
(
しょうぶ
)
の根が魚になったという話にそっくりです。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
荻生さんが持って来てくれた
菖蒲
(
しょうぶ
)
の花に
千鳥草
(
ちどりぐさ
)
を
交
(
ま
)
ぜて
相馬焼
(
そうまや
)
きの花瓶にさした。「こうしてみると、学校の宿直室よりは、いくらいいかしれんね」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
夏祭の日には、家々の軒に、あやめや、
菖蒲
(
しょうぶ
)
や、
百合
(
ゆり
)
などの草花を挿して置くので、それが雨に濡れて茂り、町中が
忽
(
たちま
)
ち
青々
(
せいせい
)
たる草原のようになってしまう。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
蓬
(
よもぎ
)
も
菖蒲
(
しょうぶ
)
も芽を吹かない池は、岸の草まで、冬枯れのままで、何の変哲もなく底をさらしているのです。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まだ
菖蒲
(
しょうぶ
)
には早いのですが、自慢の朝鮮
柘榴
(
ざくろ
)
が花盛りで、
薔薇
(
ばら
)
もまだ残ってますからどうかおほめに来てくださいまして、ね、くれぐれ申しましたよ。ほほほほ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「今頃来ても用はない。五月五日を過ぎた
菖蒲
(
しょうぶ
)
、法会に間に合わぬ花、喧嘩の終ったあとの棒ちぎり」
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
部屋の隅の
菖蒲
(
しょうぶ
)
の花を、ぼんやり眺め、また
徐
(
おもむ
)
ろに立ち上り菖蒲の鉢に水差しの水をかけてやり、それから、いや、別に変った事も無く、
翌
(
あく
)
る日も、その翌る日も
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ごぶさたでござんすこと。やがて、仲の町は、
菖蒲
(
しょうぶ
)
でございますよ。その節は、おわすれなく」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東向いた所は特に馬場殿になっていた。庭には
埒
(
らち
)
が結ばれて、五月の遊び場所ができているのである。
菖蒲
(
しょうぶ
)
が茂らせてあって、向かいの
厩
(
うまや
)
には名馬ばかりが飼われていた。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
千住
(
せんじゅ
)
辺へ出かけた時とか、または
堀切
(
ほりきり
)
の
菖蒲
(
しょうぶ
)
、
亀井戸
(
かめいど
)
の
藤
(
ふじ
)
などを見て、彼女が幼時を過ごしたという江東方面を、ぶらぶら歩いたついでに、彼女の家へ立ち寄ったこともあり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
白い
菖蒲
(
しょうぶ
)
をもって安江はふらりふらりと森の道をわが家の方へ歩いていた。菖蒲はみな花が開いていて、花としての魅力に乏しい。花やのおかみはそれをただでくれたのだった。
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
また
氷室
(
ひむろ
)
の御祝儀ともいって、三月三日の桃の節句、五月五日の
菖蒲
(
しょうぶ
)
の節句、九月九日の菊の節句についで古い行事で、仁徳天皇の御代に
山
(
やま
)
ノ
辺
(
べの
)
福住
(
ふくずみ
)
の氷室の氷を朝廷に
奉
(
たてまつ
)
って以来
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
蓮池の自宅の奥に
数寄
(
すき
)
を
凝
(
こ
)
らいた茶室を造って、お八代に七代とかいう姉妹の遊女を知行所の娘と
佯
(
いつわ
)
って、
妾
(
めかけ
)
にして引籠もり、
菖蒲
(
しょうぶ
)
のお節句にも病気と称して殿の御機嫌を伺わなんだ。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
美しい紫の
菖蒲
(
しょうぶ
)
その他の花や、若干の興味ある小さな貝や、それから面白いことに、その分布が極の周辺にある、小さな、磨かれたような陸貝を一つ発見したりして、相当愉快だった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
壁には人声の長らく響かぬ電話がかかり
剥
(
は
)
ぎ忘れたカレンダーが遠い日数を
曝
(
さら
)
していた。参木は花瓶にへし折れたまま枯れている
菖蒲
(
しょうぶ
)
の花の下で、芳秋蘭の記憶を忘れようとして努力した。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
白虎
(
びゃっこ
)
池の
菖蒲
(
しょうぶ
)
の生えた
汀
(
みぎわ
)
を行くところ、
蒼竜
(
そうりゅう
)
池の
臥竜橋
(
がりょうきょう
)
の石の上を、水面に影を落して渡るところ、
栖鳳
(
せいほう
)
池の西側の小松山から通路へ枝をひろげている
一際
(
ひときわ
)
見事な花の下に並んだところ、など
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あなた達の写真を
貰
(
もら
)
える
嬉
(
うれ
)
しさもあり、白地に、
紫
(
むらさき
)
の
菖蒲
(
しょうぶ
)
を散らした
浴衣
(
ゆかた
)
をきたあなたと、
紅
(
あか
)
いレザアコオトをきた内田さんを、ボオト・デッキの
蔭
(
かげ
)
に、ひっぱり出し、村川が、写真を
撮
(
と
)
り、また
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その日は乾いた風が朗らかな
天
(
そら
)
を吹いて、
蒼
(
あお
)
いものが眼に映る、常よりは暑い天気であった。朝の新聞に
菖蒲
(
しょうぶ
)
の案内が出ていた。代助の買った大きな鉢植の
君子蘭
(
くんしらん
)
はとうとう縁側で散ってしまった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ああ、彼女の床には
菖蒲
(
しょうぶ
)
の香りが
馥郁
(
ふくいく
)
と漂っていたのでありますが——。しかし、わたくしは棺を開けました。そして、火をともした提燈をそのなかにさし入れたのです。わたくしは彼女を見ました。
墓
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
冑
(
かぶと
)
人形、
菖蒲
(
しょうぶ
)
刀、
幟
(
のぼり
)
の
市
(
いち
)
が立って、お高は、それも見に行きたいと思ったが、二十七日は、
雑司
(
ぞうし
)
ヶ
谷
(
や
)
の
鬼子母神
(
きしもじん
)
に、講中のための一年一度の内拝のある日であった。お高は、これへ行ってみたかった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
旅なれや
菖蒲
(
しょうぶ
)
も
葺
(
ふか
)
ず笠の軒 鶴声
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
菖蒲
(
しょうぶ
)
葺
(
ふ
)
いて元
吉原
(
よしわら
)
のさびれやう
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
出る時の傘に落ちたる
菖蒲
(
しょうぶ
)
かな
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
お節句の
菖蒲
(
しょうぶ
)
を軒から引いた
翌
(
あ
)
くる日に江戸をたって、その晩は
式
(
かた
)
の通りに戸塚に泊って、次の日の夕方に小田原の
駅
(
しゅく
)
へはいりました。
半七捕物帳:14 山祝いの夜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女は縁側にちかい
伊予簾
(
いよす
)
のかげに
茵
(
しとね
)
を敷いていて——縁側には初夏ならば、すいすいと伸びた
菖蒲
(
しょうぶ
)
が、たっぷり筒形の花いけに入れてあったり
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
『
千載集
(
せんざいしゅう
)
』雑下道因法師、「けふかくる
袂
(
たもと
)
に根ざせあやめ草うきはわが身にありと知らずや」、ウキは
菖蒲
(
しょうぶ
)
などの生ずべき地なることがこれでわかる。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
寸をちぢめた水色の
肩衣
(
かたぎぬ
)
に袴で、
菖蒲
(
しょうぶ
)
を染めたはなだ色の着物という、芸人らしい派手な着付をしていた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
村では、
飼蚕
(
かいこ
)
の取り込みの中で
菖蒲
(
しょうぶ
)
の節句を迎え、一年に一度の
粽
(
ちまき
)
なぞを祝ったばかりのころであった。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから一と月ばかり、藤や
牡丹
(
ぼたん
)
や
菖蒲
(
しょうぶ
)
が咲いて、世間はすっかり初夏になりきった頃のことでした。
銭形平次捕物控:182 尼が紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その園芸学校時代に実習した染色剤を使って
菖蒲
(
しょうぶ
)
やカーネーションや朝顔を色変りにさせる法や、枯れかゝった松の根元に穴を掘って酒を飲ませて治療する法などを
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
流しには
菖蒲
(
しょうぶ
)
、
萱
(
かや
)
などが一面にしげって、
釣瓶
(
つるべ
)
の水をこぼすたびにしぶきがそれにかかる。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
菖蒲
(
しょうぶ
)
の花咲乱れたる
八橋
(
やつはし
)
に
三津五郎
(
みつごろう
)
半四郎歌右衛門など
三幅対
(
さんぷくつい
)
らしき形して
彳
(
たたず
)
みたる
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
菖蒲
(
しょうぶ
)
重ねの
袙
(
あこめ
)
、
薄藍
(
うすあい
)
色の上着を着たのが西の対の童女であった。上品に
物馴
(
ものな
)
れたのが四人来ていた。下仕えは
樗
(
おうち
)
の花の色のぼかしの
裳
(
も
)
に
撫子
(
なでしこ
)
色の服、若葉色の
唐衣
(
からぎぬ
)
などを装うていた。
源氏物語:25 蛍
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
芍薬
(
しゃくやく
)
、似たりや似たり
杜若
(
かきつばた
)
、花
菖蒲
(
しょうぶ
)
、萩、菊、
桔梗
(
ききょう
)
、
女郎花
(
おみなえし
)
、西洋風ではチューリップ、薔薇、
菫
(
すみれ
)
、ダリヤ、睡蓮、百合の花なぞ、とりどり様々の花に身をよそえて行く末は、
何処
(
いずこ
)
の窓
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
清浄
(
せいじょう
)
な
砂
(
すな
)
をしきつめて
塵
(
ちり
)
もとめない
試合場
(
しあいじょう
)
の
中央
(
ちゅうおう
)
に、とみれば、
黒皮
(
くろかわ
)
の
陣羽織
(
じんばおり
)
をつけた
魁偉
(
かいい
)
な男と、
菖蒲
(
しょうぶ
)
いろの陣羽織をきた一名の若者とが、西と東のたまり
場
(
ば
)
からしずしずと
歩
(
あゆ
)
みだしている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その以前はそこは馬場で、
菖蒲
(
しょうぶ
)
など咲いていたほど水づいていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
野道
山路
(
やまみち
)
厭
(
いと
)
いなく、修行積んだる
某
(
それがし
)
が、このいら高の
数珠
(
じゅず
)
に掛け、いで一祈り祈るならば、などか
利験
(
りげん
)
のなかるべき。橋の下の
菖蒲
(
しょうぶ
)
は、誰が植えた菖蒲ぞ、ぼろぼん、ぼろぼん、ぼろぼんのぼろぼん。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
菖蒲
(
しょうぶ
)
で名高い
堀切
(
ほりきり
)
も、今は
時候
(
じこう
)
はずれ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
菖蒲
(
しょうぶ
)
剪
(
き
)
るや遠く浮きたる葉一つ
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
時はちょうど五月の初めで、おきよさんという十五、六の娘が、
菖蒲
(
しょうぶ
)
を
花瓶
(
かびん
)
に
挿
(
さ
)
していたのを記憶している。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“菖蒲”の意味
《名詞》
(しょうぶ、そうぶ)ショウブ科、またはサトイモ科ショウブ属に属する多年草。学名:Acorus calamus。芳香のある根茎は、菖蒲湯や漢方薬として用いられる。アヤメ科のハナショウブをショウブと称することもあるが、本来は別のものである。
(あやめ:熟字訓)あやめ参照。
(出典:Wiktionary)
菖
漢検準1級
部首:⾋
11画
蒲
漢検準1級
部首:⾋
13画
“菖蒲”で始まる語句
菖蒲革
菖蒲河岸
菖蒲園
菖蒲湯
菖蒲谷
菖蒲小路
菖蒲色
菖蒲幟
菖蒲皮
菖蒲踊