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聳
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そばだ
ふりがな文庫
“
聳
(
そばだ
)” の例文
空には星が
瞬
(
まばた
)
きをしてゐる。平な雪の表面が際限もなく拡がつてゐる。そして地平線には、暗い森が
聳
(
そばだ
)
ち、遠い山の頂が突出してゐる。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
高田の下男銀平は、下枝を捜し
出
(
いだ
)
さんとて、西へ東へ
彷徨
(
さまよい
)
つ。
巷
(
ちまた
)
の
風説
(
うわさ
)
に耳を
聳
(
そばだ
)
て、道
行
(
ゆ
)
く人にもそれとはなく問試むれど手懸り無し。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銀色の十字架を胸に
佩
(
お
)
びてゾロゾロと乗込んで来たので、
居住居
(
いずまい
)
を崩していた羽織袴連中は、今更のように眼を
聳
(
そばだ
)
てて坐り直した。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
只
(
たゞ
)
お
品
(
しな
)
にのみ
焦
(
こが
)
れて
居
(
ゐ
)
たのであるが、
段々
(
だん/\
)
日數
(
ひかず
)
が
經
(
た
)
つて
不自由
(
ふじいう
)
を
感
(
かん
)
ずると
共
(
とも
)
に
耳
(
みゝ
)
を
聳
(
そばだ
)
てゝさういふ
噺
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
くやうに
成
(
な
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
(戸口に走り寄り、荒らかに戸を開け、叫ぶ。)ヘレエネさん。(画家は暫く耳を
聳
(
そばだ
)
ている。
四辺
(
あたり
)
はひっそりとして物音無し。 ...
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
▼ もっと見る
応接室に沿う縁側の
椅子
(
いす
)
に、主客には見えないように、そっと腰をかけながら、一語も
洩
(
もら
)
さないように相手の話に耳を
聳
(
そばだ
)
てた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
遠くより望んだよりはさらに一層の険峻で、岩は悉く削ったように
聳
(
そばだ
)
っている。それを伝って段々と昇って行ってやっとの事で絶頂に達した。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
近づいて見れば、幾百段とも知れぬ、純白の石階は、空を圧して
聳
(
そばだ
)
ち、見上げた丈けでも、
身内
(
みのうち
)
がむず痒くなるばかりです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
先日
(
こなひだ
)
東京美術倶楽部で行はれた水戸家の売立会には、色々
好者
(
すきしや
)
の眼を
聳
(
そばだ
)
てさせる物が、それ/″\素晴しい
価
(
ね
)
で取引せられたやうであつたが
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はとっさに思いついて、そんなでたらめを云い、耳を
聳
(
そばだ
)
てたんです。すると綾子さんは涙を拭きながら立ち上って
蛇性の執念
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
あの人の帰る時刻をなか/\見積りかねて、幾度か時計を見上げては、瓦斯の火を細めたり強めたりして居る、足音が表を過ぎるたびに耳を
聳
(
そばだ
)
てる。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
唇から唇へと漁り歩く浅ましい姿は、さすがにそんな事には馴れ切っている筈の芝居者も、眼を
聳
(
そばだ
)
てたり、後ろ指を差したりする有様だったのです。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
種彦は
慄然
(
りつぜん
)
としてわが影にさえ恐れを抱く
野犬
(
のいぬ
)
のように耳を
聳
(
そばだ
)
てたが、すると物音はそれなり聞えず二階の夜は以前の通り柔かな円行燈の光ばかり。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
忽ち隻翼は又
聳
(
そばだ
)
ち起り、竹を
割
(
さ
)
く如き聲と共に、一翼はひたと水に着き、一翼は
劇
(
はげ
)
しく水を
鞭
(
う
)
ち
沫
(
しぶき
)
を飛ばすと見る間に、鳥も魚も沈みて痕なくなりぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
祖母もその
傍
(
わき
)
にいた。私は別室で独りいた。叔父は何か小さな声で父に話していた。私はそれをききつけたいと耳を
聳
(
そばだ
)
ててきいたが、ききとれなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
だから十三世紀以前には、少くとも人の視聴を
聳
(
そばだ
)
たしめる程度に、彼は
欧羅巴
(
ヨオロッパ
)
の地をさまよわなかったらしい。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それから耳を
聳
(
そばだ
)
てると彼方でも此方でも『助さんの講義はよく出来た、驚いた。』というような囁きが聞える。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
まだ若かった私は、兄と知名の方たちとのお話を、いつも片隅で耳を
聳
(
そばだ
)
てて、飽く時なく聞いていたのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
左に高く
聳
(
そばだ
)
ちたるは、いはゆるロットマンが岡にて、「湖上第一勝」と題したる
石碑
(
せきひ
)
の建てる処なり。右に
伶人
(
れいじん
)
レオニが開きぬといふ、水に
臨
(
のぞ
)
める
酒店
(
さかみせ
)
あり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その藤葛が横に靡けば、
前岸
(
かわむこう
)
に
聳
(
そばだ
)
った
平
(
たい
)
らかな岩の
出
(
で
)
っ
端
(
ぱな
)
に往かれそうである。彼はそれに眼をつけた。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
絵甲斐絹
(
ゑかひき
)
の裏をつけた羽織も、袷も、縞ではあるが
絹布物
(
やはらかもの
)
で、角帯も立派、時計も立派。中にもお定の目を
聳
(
そばだ
)
たしめたのは、づつしりと重い総革の旅行鞄であつた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
或る晩、ふっと眼がさめて、習慣から峯子は敏感に枕から頭を離すようにして耳を
聳
(
そばだ
)
てた。暗い夜がどこまでもこめているばかりで、その闇を
劈
(
つんざ
)
く例の音はなかった。
杉垣
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「ちえつ! 他人の不具な足をじろ/\見るなんて奴があるものか! 女がそんな愼みのないことでどうする!」圭一郎は癇癪を起して眼を
聳
(
そばだ
)
てて千登世に突掛つた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
帰期
(
かえり
)
を
報
(
し
)
らせに来た
新造
(
しんぞ
)
のお梅は、次の間の長火鉢に手を
翳
(
かざ
)
し頬を
焙
(
あぶ
)
り、上の間へ耳を
聳
(
そばだ
)
てている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
七兵衛は心得きって、いざといえばこの裏戸を蹴破って走り出す用意万端ととのえていながら、なおじっと辛抱して、混入して来た一行の言語挙動に耳を
聳
(
そばだ
)
てている。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
話の応答の時に一々肩を
聳
(
そばだ
)
て首を深く傾げ『さァそれはさ様』と慎重に思ひ合せ、思ひ付けば笑ひの皺を深め『そう/\』と掌で膝を叩く所作なぞあり、敏感で骨つぽい。
坊つちやん「遺蹟めぐり」
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
ト口早に制して、お勢が耳を
聳
(
そばだ
)
てて何か聞済まして、
忽
(
たちま
)
ち満面に
笑
(
わらい
)
を含んでさも
嬉
(
うれ
)
しそうに
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ラジオの高声器のある戸毎家毎には、近隣の者や、見も知らぬ通行人までが、飛びこんで来て、警備司令部の放送がこれから如何になりゆくかについて、耳を
聳
(
そばだ
)
てるのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
世人の眼を
聳
(
そばだ
)
ててその成行を見ておった一事件のみは、そのままにして引継いでしまった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
その宏壮な建築も(今なら高が知れていようが)当時の人目を
聳
(
そばだ
)
たしめたものだった。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
キリキリという、轍の軋るような音を聞き、頼母は、枕から顔を放し、耳を
聳
(
そばだ
)
てた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
松
(
まつ
)
柏
(
かしは
)
は奥ふかく
茂
(
しげ
)
りあひて、
二一
青雲
(
あをぐも
)
の
軽靡
(
たなび
)
く日すら
小雨
(
こさめ
)
そぼふるがごとし。
二二
児
(
ちご
)
が
嶽
(
だけ
)
といふ
嶮
(
けは
)
しき
嶽
(
みね
)
背
(
うしろ
)
に
聳
(
そばだ
)
ちて、千
仞
(
じん
)
の
谷底
(
たにそこ
)
より
雲霧
(
くもきり
)
おひのぼれば、
咫尺
(
まのあたり
)
をも
鬱俋
(
おぼつかな
)
きここちせらる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
すぐ前にキネマ館が白い壁を
聳
(
そばだ
)
ててゐるので、夜前の雨に
拭
(
ぬぐ
)
はれ切つた空が、狭く細い一部分しか見えない。
併
(
しか
)
し重役はそこから輝き落ちる青藍の
光芒
(
くわうばう
)
をぢつと見やつて眼をしばたゝいた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
彼女は何かしらトリオらしい室内楽の美しい旋律のなかから、自身の夢想を引き出そうとするように耳を
聳
(
そばだ
)
てていたが、楽器の音を聴いていると、少し
頭脳
(
あたま
)
が安まるくらいの程度であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
併しまだ跡を読まぬうちに、覚えず何か物音がしはせぬかと耳を
聳
(
そばだ
)
てた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
耳を
聳
(
そばだ
)
て聞きいると、母答えて汝はちょうどアブ・ハサンが屁を放った晩に生まれたと言うを聞きて、さてはわが放屁はここの人々が齢を紀する年号同然になりおり永劫忘らるべきにあらずと
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
周三は耳を
聳
(
そばだ
)
てゝ、「ほ、
御前
(
ごぜん
)
、何處へかおなりとお出でなツたな。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
(右の方に向き、耳を
聳
(
そばだ
)
てて聞く様子にて立ちおる。)何だか
年頃
(
としごろ
)
聞きたく思っても聞かれなかった
調
(
しらべ
)
ででもあるように、身に沁みて聞える。
限
(
かぎり
)
なき
悔
(
くい
)
のようにもあり、限なき希望のようにもある。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
源斎巌
(
げんさいがん
)
が左に、
対
(
むか
)
って高く
聳
(
そばだ
)
つ天柱岩がある。このあたりから丘陵の間はやや斜面に
展
(
ひら
)
けて赤松の細い幹が
縁辺
(
えんぺん
)
に林立し、怪奇な岩層の風致に一種の繊細味を
交
(
まじ
)
えてゆく。
対松崖
(
たいしょうがい
)
はこれと
映照
(
えいしょう
)
する。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
部屋の中で、参木はいつ秋蘭の足音が遠のくかと耳を
聳
(
そばだ
)
てている自身に気がつくと、ああ、また自分はここで、今まで何をしてたのだろうと、ただぐったりと力がぬけていくのを感じるだけであった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
遠からず世人の目を
聳
(
そばだ
)
たしめるであらうと結んでゐる。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
大和は耳を
聳
(
そばだ
)
てぬ、戸を
叩
(
たゝ
)
く音なり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
耳を
聳
(
そばだ
)
てたのでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「火事——」と道の中へ
衝
(
つ
)
と出た、人の飛ぶ足より
疾
(
はや
)
く、
黒煙
(
くろけむり
)
は幅を拡げ、
屏風
(
びょうぶ
)
を立てて、
千仭
(
せんじん
)
の
断崖
(
がけ
)
を切立てたように
聳
(
そばだ
)
った。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それより南の方へ谷間を縫うて行くと、
沼津
(
ぬまづ
)
領の境近き小山の中腹に高さ一丈五六尺、幅六尺ばかりの大岩が
聳
(
そばだ
)
っていた。それが鸚鵡石であった。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
三日たたないうちに、千代之助はその師匠と落っこって、弟子達の眼を
聳
(
そばだ
)
てさしたことは言うまでもありません。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
寝室の口に立った修験者は耳を
聳
(
そばだ
)
てました。几帳の
陰
(
かげ
)
の話は、生暖かな夜の空気に融け込んで
艶
(
なま
)
めかしく聞えました。修験者は
狂人
(
きちがい
)
のようになって
駈
(
か
)
け込みました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私
(
わたし
)
は
戸外
(
そと
)
に
耳
(
みゝ
)
を
聳
(
そばだ
)
て、それから
少
(
すこ
)
し
首
(
くび
)
をもたげて
靜
(
しづ
)
かな
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
を
見廻
(
みまは
)
しながら、
自問自答
(
じもんじたふ
)
をした。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「ピアノ」の響する儘に耳
聳
(
そばだ
)
つれど、彼君の歌は聞えず。二聲三聲試みる樣なるは、低き「バツソオ」の音なり。樂長ならずば彼群の男の一人なるべし。幸ある人々よ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
母なる人は、鼓楼の蔭あたりで、一刻も早く温かなる手の拾い主を期待していたのだが、容易に人の視聴を
聳
(
そばだ
)
てないことほど、この棄てられた子がおとなしい子でありました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
聳
漢検1級
部首:⽿
17画
“聳”を含む語句
聳立
聳動
相聳
聳目
秀聳
天聳
奇聳
直聳
立聳
聳抜
聳然
聳発
聳聽
高聳