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聊
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いささ
ふりがな文庫
“
聊
(
いささ
)” の例文
「御公儀御政道を誹謗する不届者は言う
迄
(
まで
)
もない、
聊
(
いささ
)
かたりとも御趣意に背く奴等は
用捨
(
ようしゃ
)
はならぬぞ、片っ端から搦め捕ってしまえ」
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫れ天馬は大逆不慮の際、急を遠国に報ずる為め
聊
(
いささ
)
か用うるに足る丈である。だから竜馬は決して平和の象徴ではない、と云うのだ。
四条畷の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
然しこれは、到底この短き便りに述べ尽し難き事に候へば、今日は品を代へて一寸、盛中校友会雑誌のために
聊
(
いささ
)
か卑見申進むべく候。
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
牧野富太郎いう、右座談会での私に関する事柄はこれで終わっているが、しかし今ここに
聊
(
いささ
)
か私が弁明しておかねばならん事がある。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
官吏は元来心に染まぬが今の場合
聊
(
いささ
)
かなりとも俸銭を得て一家を
支
(
ささ
)
える事が出来るなら幸いであると古川に頼んで、さてそのあとで
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
今更
兎角
(
とかく
)
の
執成
(
とりな
)
しは御聴入れも
可無之
(
これなかるべく
)
、重々御立腹の段
察入
(
さっしいり
)
候え共、
聊
(
いささ
)
か存じ寄りの儀も
有之
(
これあり
)
、近日美佐子同道
御入来被下間敷候哉
(
ごじゅらいくだされまじくそうろうや
)
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それはもう
幾歳
(
いくつ
)
になつたから親に別れて可いと
謂
(
い
)
ふ
理窟
(
りくつ
)
はありませんけれど、
聊
(
いささ
)
か慰むるに足ると、まあ、
思召
(
おぼしめ
)
さなければなりません
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
就きましては、この機会に
聊
(
いささ
)
か私見を述べ、またこれからさき出発せられる皆様に対して希望を申し上げ度いと思うのであります。
現下に於ける童話の使命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その直前にどんなことを考えていたかと思って
聊
(
いささ
)
か
覚束
(
おぼつか
)
ない寝覚めの記憶を逆に追跡したが、どうもその前の連鎖が見付からない。
KからQまで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
聊
(
いささ
)
か
怨
(
うら
)
めしそうな態度にも見えたが、しかし私はソレを彼女独特の無邪気な
媚態
(
びたい
)
の一種と解釈していたので格別不思議に思わなかった。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
曩
(
さき
)
にその忠勇を共にしたる戦死者
負傷者
(
ふしょうしゃ
)
より
爾来
(
じらい
)
の
流浪者
(
るろうしゃ
)
貧窮者
(
ひんきゅうしゃ
)
に至るまで、すべて
同挙
(
どうきょ
)
同行
(
どうこう
)
の人々に対して
聊
(
いささ
)
か
慙愧
(
ざんき
)
の情なきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
今は「四十年前少壮の時、功名
聊
(
いささ
)
か
復
(
ま
)
た
私
(
ひそか
)
に期する有り。老来
識
(
し
)
らず
干戈
(
かんか
)
の事、ただ
把
(
と
)
る春風桃李の
巵
(
さかずき
)
」と独語せしむるに到りぬ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
その
間
(
あいだ
)
に
泛
(
うか
)
ぶ
牡蠣舟
(
かきぶね
)
や
苔取
(
のりとり
)
の
小舟
(
こぶね
)
も今は唯
強
(
し
)
いて江戸の昔を
追回
(
ついかい
)
しようとする人の眼にのみ
聊
(
いささ
)
かの風趣を覚えさせるばかりである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
が、何だか其では
聊
(
いささ
)
か相済まぬような気もして何となく
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せられる一方で、
矢張
(
やっぱり
)
何だか
切
(
しきり
)
に……こう……敬意を表したくて
耐
(
たま
)
らない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
然し今は峠ノ沢の製板業が
盛
(
さかん
)
になったので宿屋なども出来て、
聊
(
いささ
)
か面目を一新した形である。すべる赤土道を登って午後一時赤志に着く。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
もちろん最初からこの通りであったからと、答え得る人も多少はあるのだが、そう思ってしまうには、なお
聊
(
いささ
)
か証拠が足りない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「あそこに茂った
矢筈
(
やはず
)
ぐさが、
兎角
(
とかく
)
そこらにはびこりますが、
聊
(
いささ
)
かのこしてその
外
(
ほか
)
を刈りとりましてよろしゅうござりますか?」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
利智精進の人は未だ難しとなさざるべきも、予が如き頑魯の者は
豈
(
あ
)
に敢てせんや。その故に念仏の一門によりて、
聊
(
いささ
)
か経論の要文を集む。
賤民概説
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
「ふむ、妙な話だなあ。どうしてモルヒネなんか
嚥
(
の
)
む気になったんだい?」と彼は
聊
(
いささ
)
か好奇心に駆られて、どんよりして居た眼を輝かした。
按摩
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
この朝彼は不慮の負傷のため、
聊
(
いささ
)
か順序をくるわしはしたが、今や新しい精進の気持ちをもって、気高い霊峰の上へ目をやったのであった。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
「本当だよ。雪、こら、おい、何をグズ/\している? とやる。雪子さん、あゝしたら
如何
(
いかが
)
でしょうの組とは
聊
(
いささ
)
か選を
異
(
こと
)
にする積りだよ」
秀才養子鑑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「リザーニカ、」と、マニーロフが
聊
(
いささ
)
か悲しそうな顔つきをしながら、「パーウェル・イワーノヴィッチは、もうお帰りになるんだとさ!」
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
冬子の声が
稍
(
やや
)
鋭く聞えたので、市郎も
聊
(
いささ
)
か
面食
(
めんくら
)
って思わず
其
(
その
)
顔を
屹
(
きっ
)
と
視
(
み
)
ると、露の如き
彼女
(
かれ
)
の眼は今や火のように燃えていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
出版当時十ポンドであつたものが、
今日
(
こんにち
)
では三十ポンド内外の市価を
唱
(
とな
)
へられてゐるのは、「一千一夜物語」愛好者の為に
聊
(
いささ
)
か気の毒である。
リチャード・バートン訳「一千一夜物語」に就いて
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、氏郷を会津に置いて葛西大崎の木村父子と結び付けたのは、氏郷に対して若し温かい情が有ったとすれば、秀吉の仕方は
聊
(
いささ
)
か無理だった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さるによつて
僕
(
やつがれ
)
は、常に和殿
們
(
ら
)
を貴とみ、
早晩
(
いつか
)
は
款
(
よしみ
)
を通ぜんとこそ思へ、
聊
(
いささ
)
かも仇する心はなきに、
何罪科
(
なにとが
)
あつて僕を、
噬
(
かま
)
んとはしたまふぞ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
今やこの開校の期に
遇
(
あ
)
い、親しくその式に
与
(
あず
)
かる。故に
聊
(
いささ
)
か余が心情と冀望とを述べ、以てこの開校を祝するの
詞
(
ことば
)
と為す。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
私は
聊
(
いささ
)
か失望しながら、せめては熔岩流の大観に接することの出来る地点だけは見出したいものと、熔岩の流れに添うて
上
(
のぼ
)
って見ることとした。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
いや、
正
(
しょう
)
のものの
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
で、
聊
(
いささ
)
か気分なるものを
漾
(
ただよ
)
わせ過ぎた形がある。が、
此処
(
ここ
)
で早速
頬張
(
ほおば
)
って、
吸子
(
きびしょ
)
の
手酌
(
てじゃく
)
で
飲
(
や
)
った
処
(
ところ
)
は、我ながら
頼母
(
たのも
)
しい。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
預
(
あづ
)
かつて置いて頂戴」と云つた。三四郎は
聊
(
いささ
)
か迷惑の様な気がした。然しこんな時に争ふ事を好まぬ男である。其上往来だから
猶更
(
なおさら
)
遠慮をした。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「神尾家と藤原家とには
聊
(
いささ
)
か家格に違いがござるようじゃ、藤原家の息女が神尾家へ御縁組み致すには、仮親をお立てなさるが順序と考えられるが」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
このたび「明治文士」といふ演劇大入に
付
(
つき
)
当世の文士諸君を招いて
聊
(
いささ
)
か粗酒を呈するのである、明治文士の困難は即ち諸君の幸福と化したのである
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
斯う雑作なく職業にありつくのは
聊
(
いささ
)
か飽気ないような気がするが、満更悪いものでもない。私は間もなく家を出た。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「
某
(
それがし
)
に、今夜一晩、この話を、おあずけ下さらんか。小太郎と談合の上にて、
聊
(
いささ
)
か考えていることがござる」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
但
(
ただ
)
し己を愛するとは何事を示すのであろう。私は己れを愛している。そこには
聊
(
いささ
)
かの虚飾もなく誇張もない。又それを
傲慢
(
ごうまん
)
な云い分ともすることは出来ない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
どんな不愉快な事があって、自己を抑圧していても、
聊
(
いささ
)
かの
弛
(
ゆる
)
みが生ずるや否や、弾力は待ち構えていたようにそれを機として、無意識に元に帰そうとする。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
併し、私の海部芸術を説く為に発足点になるほかひとくゞつとの歴史を説くのには、尚
聊
(
いささ
)
かの用意がいる。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「ああそうだったのか、随分大きくなったものだね」と言われて
這々
(
ほうほう
)
の
態
(
てい
)
で逃げ出したが、あの頃は随分生意気な小僧だったことだろうと思いみて
聊
(
いささ
)
か
辟易
(
へきえき
)
した。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そうしてすっかり種が分ってしまうと、私は
聊
(
いささ
)
かあっけない気がした。不良少年でもやり相な、子供らしい
悪戯
(
いたずら
)
じゃないかと、相手を軽蔑してやり度い気持だった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何とか報恩の道もがなと、
千々
(
ちぢ
)
に心を
砕
(
くだ
)
きし
後
(
のち
)
、同女の次女を養い取りて
聊
(
いささ
)
か学芸を
授
(
さず
)
けやりぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
時に
詔
(
みことのり
)
あって酒を
賜
(
たま
)
い
肆宴
(
とよのあかり
)
をなした。また、「汝諸王卿等
聊
(
いささ
)
か此の雪を
賦
(
ふ
)
して
各
(
おのおの
)
その歌を奏せよ」という詔があったので、それに
応
(
こた
)
え奉った、左大臣橘諸兄の歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ジョン・バートンは夫として彼女が胸に描いた理想の人物とは
聊
(
いささ
)
か隔りがあったけれど、でも
然
(
そ
)
うすれば少くともきりなしに起る悴夫婦の
喧嘩
(
いさかい
)
からは遠のくことが出来る。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
羽織袴をつけてるものの
聊
(
いささ
)
か野武士めいたところもある私はどこか荒大名の茶の湯のかたちだったが、帰った後の評判を結婚後きくところによれば私は見かけが北欧型で
結婚
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
そういう内に、何と云っても児供は児供でどんな面白い事があったか、苦の無い笑声を立てて騒ぎ出した。予も
亦
(
また
)
不思議と其声に揺られて、心の
凝
(
こ
)
りが
聊
(
いささ
)
か柔かになった。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
ロングフェロオが「ケラモス」と題したる詩のうちに、世界の
窯業地
(
えうげふち
)
としてその名をかずまへ、うるはしき詞もて形容せる数行の句は
聊
(
いささ
)
か現今の衰勢を慰むるに足りなむか。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
道路——いや、道路と呼ぶには
聊
(
いささ
)
か顔負けのする代物で、左右両側の道ともにせいぜい一間幅ほどの露路である——その又露路の左右が蜒々として連なり流れる長屋であつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
ここで
聊
(
いささ
)
か我輩自身を紹介するが、無主義であるという我輩も、
強
(
し
)
いて名づくればやはりいわゆる凡人主義で、最初の傾向からして福沢先生と同一経路を
辿
(
たど
)
っているように思う。
福沢先生の処世主義と我輩の処世主義
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
予よりは隠すべきにあらねば当時の
境界
(
きょうかい
)
を申し送り、人世を以て学校とすれば書冊の学校へ入らずも御心配あるなと、例の空想に
聊
(
いささ
)
か実歴したる着実らしき事を交えて書送りたり。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
……その
聊
(
いささ
)
かも不安もなさげな、彼の話をきいていると、実際、空襲は簡単
明瞭
(
めいりょう
)
な事柄であり、同時に人の命もまた単純明確な物理的作用の下にあるだけのことのようにおもえた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
かねて岸本は独りでこの仏蘭西船に身を隠し、こっそりと故国に別れを告げて行くつもりであった。その心持から言えば、こうした人達に見送らるることは
聊
(
いささ
)
か彼の予期にそむいた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
聊
漢検1級
部首:⽿
11画
“聊”を含む語句
無聊
聊爾
聊斎志異
露聊
不聊
無聊至極
無聊頼
聊復爾
聊生
聊齋
鰥居無聊