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ぐんじょう
ふりがな文庫
“
群青
(
ぐんじょう
)” の例文
そして処々に一かたまりの
五月
(
さつき
)
や
躑躅
(
つつじ
)
が、真っ白、真っ赤な花をつけて、林を越して向うには、広々と
群青
(
ぐんじょう
)
色の海の面が
眺
(
なが
)
められます。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
窓の外は、一面に濃い
群青
(
ぐんじょう
)
の夏の空だ。——この部屋は五階だ。なるほど、ベッドに寝たきりでいるのだったら、見えるのは空しかない。
暑くない夏
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
向うの方ではまるで泣いたばかりのような
群青
(
ぐんじょう
)
の山脈や
杉
(
すぎ
)
ごけの丘のようなきれいな山にまっ白な雲が所々かかっているだろう。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
まさしく
瑠璃
(
るり
)
の、
群青
(
ぐんじょう
)
の
深潭
(
しんたん
)
を
擁
(
よう
)
して、赤褐色の
奇巌
(
きがん
)
の
群々
(
むれむれ
)
がかっと反射したところで、しんしんと
沁
(
し
)
み入る
蝉
(
せみ
)
の声がする。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
椿岳の泥画というは絵馬や
一文人形
(
いちもんにんぎょう
)
を彩色するに用ゆる下等絵具の
紅殻
(
べにがら
)
、
黄土
(
おうど
)
、
丹
(
たん
)
、
群青
(
ぐんじょう
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
緑青
(
ろくしょう
)
等に少量の墨を交ぜて描いた画である。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
カンラカラカラと笑い飛ばすと、刻みの深い物凄い顔の
紐
(
ひも
)
が
緩
(
ゆる
)
んで、
群青
(
ぐんじょう
)
で描いたような
青髯
(
あおひげ
)
の跡までが
愛嬌
(
あいきょう
)
になります。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一双
(
いっそう
)
の
屏風
(
びょうぶ
)
の絵は、むら消えの雪の小松に
丹頂
(
たんちょう
)
の鶴、
雛鶴
(
ひなづる
)
。一つは
曲水
(
きょくすい
)
の
群青
(
ぐんじょう
)
に桃の
盃
(
さかずき
)
、
絵雪洞
(
えぼんぼり
)
、桃のような
灯
(
ひ
)
を
点
(
とも
)
す。……ちょっと
風情
(
ふぜい
)
に
舞扇
(
まいおおぎ
)
。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのパラソルは一口に云えば空色であるが、よく見ると
群青
(
ぐんじょう
)
と、
淡紅色
(
ときいろ
)
の、ステキに派手なダンダラ模様であった。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
上半身は、それは美しい女体であるけれども、腰から下は暗い
群青
(
ぐんじょう
)
色に照り輝いて、細っそりと
纏
(
まとま
)
った足首の先には、やはり伝説どおりの
尾鰭
(
おひれ
)
があった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
たとえば、金銀、
群青
(
ぐんじょう
)
、
緑青
(
ろくしょう
)
など
岩物
(
いわもの
)
を
平常
(
ふだん
)
使うので、それも品を吟味して最初から上等品を用いさせました。
幕末維新懐古談:72 総領の娘を亡くした頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
天井には
群青
(
ぐんじょう
)
や朱の色の
重
(
おも
)
どろんだ絵具で
天女
(
てんじょ
)
と
鳳凰
(
ほうおう
)
を
画
(
か
)
いてあったが、その天女も鳳凰も同じように一方の眼が潰れていた。武士はまた右の方に眼をやった。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
珍しいことに、その三体が三体共に、ただひと色のじつにすっきりしたいやみのない
群青
(
ぐんじょう
)
色でした。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
瑠璃
(
るり
)
の空に弧を描いた
久摩
(
くま
)
の峯や、
群青
(
ぐんじょう
)
の岩絵具を盛り上げた筒井峠、由良の流れは繭糸をくずしたように山裾をめぐっていた——その広やかな視野からあつまって来る風が
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
道釈
(
どうしゃく
)
人物、花鳥、動物、
雲鶴
(
うんかく
)
、竜、
蔬菜
(
そさい
)
図、等が描かれてあります、その
群青
(
ぐんじょう
)
、朱、金銀泥、
藍
(
あい
)
、などの色調は、さも支那らしい色調であって、大変美しい効果のものであります
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
何もかもがその色に染まってしまいそうな深い
群青
(
ぐんじょう
)
の海、そして潮の匂いがすぐにみずみずしい藻を連想させたり、それ自体が
塩
(
しょ
)
っぱい味を運んでくる潮風を吸い込んだりするときに
乳と蜜の流れる地
(新字新仮名)
/
笠信太郎
(著)
総
(
あら
)
ゆる人種からなる、十三万人の観衆に包まれた
開会式
(
オオプニングセレモニイ
)
は、南カルホルニアの晴れ
渡
(
わた
)
った
群青
(
ぐんじょう
)
の空に、数百羽の
白鳩
(
しろばと
)
をはなち、その白い
影
(
かげ
)
が点々と、
碧玻璃
(
へきはり
)
のような空に消えて行く
頃
(
ころ
)
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
強烈に過ぎはしないかと疑われる
群青
(
ぐんじょう
)
と黄との対照、あるいは
牡丹
(
ぼたん
)
の花などにおける有りとあらゆる複雑な紫色の舞踏、こういうようなものが君の絵に飽かざる新鮮味を与え生気を添えている。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
白い帆を斜めに、
群青
(
ぐんじょう
)
の午後の海をすべって行くヨットを見て、少女は目に涙がうかんできた。だが、少女は笑顔のまま手を振りつづけた。
朝のヨット
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
すると、雲もなく
研
(
みが
)
きあげられたような
群青
(
ぐんじょう
)
の空から、まっ白な雪が、さぎの毛のように、いちめんに落ちてきました。
水仙月の四日
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
が、その影が
映
(
さ
)
すと、半ば
埋
(
うも
)
れた私の
身体
(
からだ
)
は、ぱっと紫陽花に包まれたように、青く、
藍
(
あい
)
に、
群青
(
ぐんじょう
)
になりました。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丘陵の灌木と灌木の間を
点綴
(
てんてい
)
してうねりに沿って、
碧
(
みどり
)
、紫、
群青
(
ぐんじょう
)
、玉虫色に光る
甍
(
いらか
)
を並べて、なだらかな大市街が美しい町並を形づくっているのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
幾百年と経った大木の
樟
(
くすのき
)
は樹皮は
禿
(
は
)
げ、枝は裂けていい
寂色
(
さびいろ
)
に古びている。その
梢
(
こずえ
)
の
群青
(
ぐんじょう
)
を
鴉
(
からす
)
がはたはたと動かしてとまる。かおォかおォである。古風な白帝城。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
するとその
投影
(
かげ
)
の中から、
群青
(
ぐんじょう
)
と
淡紅色
(
ときいろ
)
のパラソルが、
人魂
(
ひとだま
)
か何ぞのようにフウーウと美しく浮き出して、二三間高さの空中を左手の方へ、フワリフワリと舞い上って行ったが
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
甲板
(
かんぱん
)
に出ても、これまで
群青
(
ぐんじょう
)
に、
輝
(
かがや
)
いていた
穏
(
おだ
)
やかな海が、いまは暗緑色に
膨
(
ふく
)
れあがり、いちめんの白波が
奔馬
(
ほんば
)
の
霞
(
かすみ
)
のように、
飛沫
(
しぶき
)
をあげ、荒れ
狂
(
くる
)
うのをみるのは、なにか、胸
塞
(
ふさが
)
る思いでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それが、
群青
(
ぐんじょう
)
を
生
(
なま
)
の陶土に溶かし込んだような色で、
粘稠
(
ねっとり
)
と
澱
(
よど
)
んでいる。その水面に、
虬
(
みずち
)
の背ではないかと思わせているのが、金色を帯びた美しい頭髪で、それが藻草のように
靡
(
たなび
)
いているのだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
老人は
眉
(
まゆ
)
を
寄
(
よ
)
せてしばらく
群青
(
ぐんじょう
)
いろに
染
(
そ
)
まった夕ぞらを見た。それからじつに
不思議
(
ふしぎ
)
な
表情
(
ひょうじょう
)
をして
笑
(
わら
)
った。
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
なるほど小さい、
白魚
(
しらうお
)
ばかり、そのかわり、根の
群青
(
ぐんじょう
)
に、薄く
藍
(
あい
)
をぼかして
尖
(
さき
)
の
真紫
(
まむらさき
)
なのを五、六本。
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
緑
滴
(
したた
)
る眼も遥かな芝生の
彼方此方
(
かなたこなた
)
には
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
がクッキリした
群青
(
ぐんじょう
)
の空を限って
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
藍
(
あい
)
と
碧
(
あお
)
と
群青
(
ぐんじょう
)
と、また
水浅葱
(
みずあさぎ
)
と白と銀と緑と、
渦
(
うず
)
と
飛沫
(
ひまつ
)
と
水漚
(
すいおう
)
と、泡と、泡と、泡と。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
よっぽど西にその
太陽
(
たいよう
)
が
傾
(
かたむ
)
いて、いま入ったばかりの雲の間から
沢山
(
たくさん
)
の白い光の
棒
(
ぼう
)
を
投
(
な
)
げそれは
向
(
むこ
)
うの
山脈
(
さんみゃく
)
のあちこちに
落
(
お
)
ちてさびしい
群青
(
ぐんじょう
)
の
泣
(
な
)
き
笑
(
わら
)
いをします。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
僧都
紺青
(
こんじょう
)
、
群青
(
ぐんじょう
)
、
白群
(
びゃくぐん
)
、朱、
碧
(
へき
)
の御蔵の中より、この度の儀に就きまして、先方へお遣わしになりました、品々の
類
(
たぐい
)
と、数々を、念のために申上げとうござりまして。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのときはもう、
銅
(
あかがね
)
づくりのお日さまが、南の
山裾
(
やますそ
)
の
群青
(
ぐんじょう
)
いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、
白樺
(
しらかば
)
の幹などもなにか粉を
噴
(
ふ
)
いているようでした。
かしわばやしの夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
山藤が紫に、椿が抱いた、
群青
(
ぐんじょう
)
の
巌
(
いわ
)
の
聳
(
そび
)
えたのに、純白な石の扉の、まだ新しいのが、ひたと
鎖
(
とざ
)
されて、
緋
(
ひ
)
の椿の、落ちたのではない、
優
(
やさし
)
い花が幾組か
祠
(
ほこら
)
に供えてあった。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夢を見るように、橋へかかると、これも白い虹が来て
群青
(
ぐんじょう
)
の水を飲むようであった。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あちこちの木がみなきれいに光り山は
群青
(
ぐんじょう
)
でまぶしい
泣
(
な
)
き
笑
(
わら
)
いのように見えたのでした。けれどもキッコは大へんに心もちがふさいでいました。
慶助
(
けいすけ
)
はあんまりいばっているしひどい。
みじかい木ぺん
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ものの
現
(
うつつ
)
のように、いま生れたらしい
蜻蛉
(
とんぼ
)
が、
群青
(
ぐんじょう
)
の絹糸に、
薄浅葱
(
うすあさぎ
)
の結び玉を目にして、綾の
白銀
(
しろがね
)
の
羅
(
うすもの
)
を翼に縫い、ひらひら、と
流
(
ながれ
)
の方へ、葉うつりを低くして、牡丹に誘われたように
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
背きがち、
首
(
うな
)
だれがちに差向ったより炉の灰にうつくしい面影が立って、その
淡
(
うす
)
い桔梗の無地の半襟、お納戸
縦縞
(
たてじま
)
の
袷
(
あわせ
)
の薄色なのに、
黒繻珍
(
くろしゅちん
)
に朱、
藍
(
あい
)
、
群青
(
ぐんじょう
)
、
白群
(
びゃくぐん
)
で、
光琳
(
こうりん
)
模様に
錦葉
(
もみじ
)
を織った。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
森々
(
しんしん
)
たる
日中
(
ひなか
)
の樹林、濃く黒く森に包まれて城の天守は前に
聳
(
そび
)
ゆる。
茶店
(
ちゃみせ
)
の横にも、
見上
(
みあげ
)
るばかりの
槐
(
えんじゅ
)
榎
(
えのき
)
の暗い影が
樅
(
もみ
)
楓
(
かえで
)
を薄く
交
(
まじ
)
へて、
藍緑
(
らんりょく
)
の
流
(
ながれ
)
に
群青
(
ぐんじょう
)
の瀬のある如き、たら/\
上
(
あが
)
りの
径
(
こみち
)
がある。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
森々
(
しんしん
)
たる
日中
(
ひなか
)
の樹林、濃く黒く森に包まれて城の天守は前に
聳
(
そび
)
ゆる。茶店の横にも、見上るばかりの
槐
(
えんじゅ
)
榎
(
えのき
)
の暗い影が
樅
(
もみ
)
楓
(
かえで
)
を薄く
交
(
まじ
)
えて、
藍緑
(
らんりょく
)
の
流
(
ながれ
)
に
群青
(
ぐんじょう
)
の瀬のあるごとき、たらたら
上
(
あが
)
りの
径
(
こみち
)
がある。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……いかにや、年ふる
雨露
(
あめつゆ
)
に、
彩色
(
さいしき
)
のかすかになったのが、
木地
(
きじ
)
の
胡粉
(
ごふん
)
を、かえってゆかしく
顕
(
あら
)
わして、
萌黄
(
もえぎ
)
に
群青
(
ぐんじょう
)
の影を添え、葉をかさねて、
白緑碧藍
(
はくりょくへきらん
)
の花をいだく。さながら
瑠璃
(
るり
)
の牡丹である。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“群青”の意味
《名詞》
アルミニウムとナトリウムの珪酸塩などから成る青色の無機顔料。もとはラピスラズリの粉末をいったが、人工的に焼成した似た色の顔料をもいう。
(出典:Wiktionary)
群
常用漢字
小4
部首:⽺
13画
青
常用漢字
小1
部首:⾭
8画
“群青”で始まる語句
群青色
群青石