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細面
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ほそおもて
ふりがな文庫
“
細面
(
ほそおもて
)” の例文
彼はその時、黒い髪の毛を長くうねらせていたが、それがもじゃもじゃと水兵服の襟に垂れかかって、小さな
細面
(
ほそおもて
)
をふちどっていた。
幸福への意志
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
細面
(
ほそおもて
)
の女のように優しい顔が、恐怖に青ざめ歪んで、目には涙さえ光っている。「どうか見逃して下さい。お願いです、お願いです」
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
細面
(
ほそおもて
)
の綺麗な老夫人で、御殿の大奥様という感じであつた。只一つの装身具として、細い指に大豆位の大きいダイヤが光つてゐた。
ツーン湖のほとり
(新字旧仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
歳は三十の前後、
細面
(
ほそおもて
)
で色は白く、身は
痩
(
や
)
せているが骨格は
冴
(
さ
)
えています。この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと、
青嵐
(
あおあらし
)
が
崩
(
くず
)
れる。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
低声
(
こごえ
)
でこんな唄を
謳
(
うた
)
いながら、お葉は
微酔
(
ほろよい
)
機嫌で
門
(
かど
)
に出た。お葉は東京深川生れの、色の
稍
(
やや
)
蒼白い、
細面
(
ほそおもて
)
の、眉の長い女であった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
半
(
なか
)
ば開きし
障子
(
しょうじ
)
の外の縁先には帯しどけなき
細面
(
ほそおもて
)
の女
金盥
(
かなだらい
)
に向ひて
寝起
(
ねおき
)
の顔を洗はんとするさまなぞ、
柔情
(
にゅうじょう
)
甚だ忘るべからざる
心地
(
ここち
)
す。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
面痩せて美しき子即ち痩せの見える
細面
(
ほそおもて
)
の美人が、愛欲の念断ち難く痩せるほど悩んで、未来を占はせてゐるのだ、人相見さん
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
と、女は鳥居の方へ
一足
(
ひとあし
)
折れながら
揮
(
ふ
)
り返った。
細面
(
ほそおもて
)
の女の顔には大きな長い舌がだらりと垂れていた。政雄はわっと叫んで逃げ出した。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「当世顔は少し丸く」と
西鶴
(
さいかく
)
が言った元禄の理想の
豊麗
(
ほうれい
)
な丸顔に対して、文化文政が
細面
(
ほそおもて
)
の
瀟洒
(
しょうしゃ
)
を
善
(
よ
)
しとしたことは、それを証している。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
私
(
わたくし
)
の
祖父
(
じじ
)
の
年齢
(
とし
)
でございますか——たしか
祖父
(
じじ
)
は七十
余
(
あま
)
りで
歿
(
なくな
)
りました。
白哲
(
いろじろ
)
で
細面
(
ほそおもて
)
の、
小柄
(
こがら
)
の
老人
(
ろうじん
)
で、
歯
(
は
)
は一
本
(
ぽん
)
なしに
抜
(
ぬ
)
けて
居
(
い
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
鼻筋の通った
細面
(
ほそおもて
)
の
凜
(
りん
)
とした、品の
良
(
い
)
い横顔がちらりと見えたが、浮上るように身も軽く、
引緊
(
ひきしま
)
った
裙捌
(
すそさばき
)
で楫棒を越そうとする。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は木炭紙に似たざらつく厚い紙の余りへ、
山羊髯
(
やぎひげ
)
を生やした
細面
(
ほそおもて
)
の父の顔をいたずらにスケッチして、どうしようかと考えた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妹のお絹によく似た
細面
(
ほそおもて
)
、化粧崩れを直す
由
(
よし
)
もありませんが、生れ乍らの美しさは、どんな
汚
(
きた
)
な作りをしても、
蔽
(
おほ
)
ふ由もなかつたのでせう。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
細面
(
ほそおもて
)
の、長い髪をまん中から割った三浦は、こう云う月の出を眺めながら、急に長い
息
(
いき
)
を
吐
(
は
)
くと、さびしい微笑を帯びた声で
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は急いで余所を向いて了ったから、
能
(
よ
)
くは、分らなかったが、何でも下女の話の通り
細面
(
ほそおもて
)
で、蒼白い、淋しい
面相
(
かおだち
)
の、
好
(
い
)
い女だ……と思った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
色白の
細面
(
ほそおもて
)
、
眉
(
まゆ
)
の
間
(
あわい
)
ややせまりて、
頬
(
ほお
)
のあたりの肉寒げなるが、
疵
(
きず
)
といわば疵なれど、
瘠形
(
やさがた
)
のすらりとしおらしき
人品
(
ひとがら
)
。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
顔も
細面
(
ほそおもて
)
であること、それらを取り扱う場合に意味ある形を作り出すことが主要なねらいであって、感覚的な興味は二の次であることなどであるが
麦積山塑像の示唆するもの
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
母親が小ぢんまりとした
細面
(
ほそおもて
)
の美人で、父親が眉の太い、大きい鼻だと、きまって親爺に似て出来てくるものである。
傾城買虎之巻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
色の白い
細面
(
ほそおもて
)
の美くしい竹中はんが、女中と並んで十一時半頃に東の方から歩いて来るのを見ました時、私の胸にはどんなに高い動悸が打つたでせう。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
夫人は四十五六であらうか、色の白い
細面
(
ほそおもて
)
の、目の大きくぱつちりとした、
小皺
(
こじは
)
が寄り
乍
(
なが
)
らも
肉附
(
にくづき
)
の豊かな
頬
(
ほゝ
)
などの様子は四十歳
計
(
ばか
)
りとしか見えない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
しばらくすると門の中から、さっきの紳士が、栗鼠の毛皮のオーバーにくるまった
細面
(
ほそおもて
)
の
麗人
(
れいじん
)
を伴って出て来た。
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二人とも二十三、四らしく、一人は色が白くて背が高く、も一人は中肉中背で、
細面
(
ほそおもて
)
で、髪を長くオールバックにし、黒いセルロイド縁の眼鏡をかけていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
しかし彼女は小意気だった、その時分の
扮装
(
おつくり
)
が黒っぽかったので、背のたかい
細面
(
ほそおもて
)
の
女
(
ひと
)
を、感じから黒茄子にしてしまったが、五十を越しても
水極
(
みずぎわ
)
だっていた。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
津下君は色の
蒼白
(
あをじろ
)
い
細面
(
ほそおもて
)
の青年で、いつも
眉根
(
まゆね
)
に
皺
(
しわ
)
を寄せてゐた。私は君の一家の否運が Kain のしるしのやうに、君の相貌の上に
見
(
あら
)
はれてゐたかと思ふ。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その娘は二、三年前から函館に出て松川の家に奉公していたのだ。父に似て
細面
(
ほそおもて
)
の彼女は函館の生活に磨きをかけられて、この辺では際立って
垢抜
(
あかぬ
)
けがしていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
横町の中ほど、とある小意気な住居の千本格子があいて、色白な
細面
(
ほそおもて
)
をのぞかせた年増があります。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
或る時、私はその少年の日に黒く燒けた、そして脣だけがほのかに紅い色をしてゐる
細面
(
ほそおもて
)
の顏の下から、死んだ三枝の顏が透かしのやうに現はれてゐるのに氣がついた。
燃ゆる頬
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
くっきりとした
二重眼瞼
(
ふたえまぶた
)
の方へ黒目を寄せて
上目
(
うわめ
)
がちに、鏡の中を覗きこみながら、寝乱れた鬢の毛をかき上げてる、軽い斜視の乏しい視力の眼付と真白な
細面
(
ほそおもて
)
の顔とを
溺るるもの
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
能
(
よ
)
く見ると余り
好
(
い
)
い
男振
(
おとこぶり
)
ではなかったが、この“Sneer”が
髯
(
ひげ
)
のない
細面
(
ほそおもて
)
に
漲
(
みなぎ
)
ると
俄
(
にわか
)
に
活
(
い
)
き活きと引立って来て、人に
由
(
よっ
)
ては小憎らしくも思い、
気障
(
きざ
)
にも見えたろうが
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこへ、おおきに、という女の声がし、
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに結った
細面
(
ほそおもて
)
の背の高い芸者が入って来た。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
細面
(
ほそおもて
)
の、無邪気な
眼
(
まな
)
ざしの、パリ好みの身なりをした男である。若い新聞記者は少しはにかみながら、まるで美術館の彫刻にでも近づくやうにエルアフイの裸体に近づいて来た。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
年齢
(
としのころ
)
はまだ三十に届いたか、届かぬ位であろうが色白の
細面
(
ほそおもて
)
に背の高いすらりとした
瘠形
(
やせがた
)
で、刻明な鼻筋には、何処か近付き難い険があるけれども、寮に来てからと云うものは
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ハテなと思い眼をすえて
熟視
(
よくみ
)
ると、三十くらいで
細面
(
ほそおもて
)
の
痩
(
やせ
)
た年増が、赤児に乳房をふくませ、
悄然
(
しょうぜん
)
として、乳を
呑
(
のま
)
せていたのである、この客
平常
(
つね
)
は
威張屋
(
いばりや
)
だが余程臆病だと見え
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
播磨守
(
はりまのかみ
)
政岑は、分家とはいえ門地の高い生れだけあって、顔に間の抜けたところがなく、容貌はむしろ立派なほうだが、ツルリとした
粋
(
いき
)
好みの
細面
(
ほそおもて
)
がいかにも芸人
染
(
じ
)
みたふうにみえ
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
容貌は非常に高尚で、キッパリした富士額、
細面
(
ほそおもて
)
で
中高
(
なかだか
)
の顔、地蔵眉、澄み切った眼——といって決して冷淡ではなく、あまりに邪心がないために、一点の濁りさえ見られないのである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
細君
(
さいくん
)
はそれと
正反対
(
せいはんたい
)
に、色の
青白
(
あおじろ
)
い、
細面
(
ほそおもて
)
なさびしい顔で、
用談
(
ようだん
)
のほかはあまり口はきかぬ。声をたてて笑うようなことはめったにない。そうかといって、つんとすましているというでもない。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
同時に振り顧った男ののっぺりした色白の
細面
(
ほそおもて
)
も、ちらと目に入った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
(すらりとしたからだつきで、
細面
(
ほそおもて
)
の古風な美人型のひとであった。としは、二十二、三くらいであったろうか。あとで聞いた事だが、その弘前の或る有力者のお
妾
(
めかけ
)
で、まあ、当時は一流のねえさんであったようである)
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
細面
(
ほそおもて
)
の、やさしいおもざしであった。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
むしろやつれた
細面
(
ほそおもて
)
のかお
ある日
(新字新仮名)
/
中野鈴子
(著)
白い肩掛を
引掛
(
ひっか
)
けた
丈
(
せい
)
のすらりとした
痩立
(
やせだち
)
の姿は、
頸
(
うなじ
)
の長い目鼻立の
鮮
(
あざやか
)
な色白の
細面
(
ほそおもて
)
と
相俟
(
あいま
)
って、いかにも
淋
(
さび
)
し気に
沈着
(
おちつ
)
いた様子である。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「その
母様
(
おっかさん
)
と云うのは、四十余りの、あの、若造りで、ちょいとお化粧なんぞして、
細面
(
ほそおもて
)
の、鼻筋の通った、何だか権式の高い、違って?」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お絹は色の青白い
細面
(
ほそおもて
)
で、長い眉と美しい眼とをもっていた。林之助も昔はその妖艶なひとみの力に魅せられたのであった。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
肉の足らぬ
細面
(
ほそおもて
)
に予期の
情
(
じょう
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして、重きに過ぐる唇の、
奇
(
き
)
か
偶
(
ぐう
)
かを疑がいつつも、
手答
(
てごたえ
)
のあれかしと念ずる様子である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妹のお絹によく似た
細面
(
ほそおもて
)
、化粧崩れを直す由もありませんが、生れながらの美しさは、どんな汚な作りをしても、
蔽
(
おお
)
う由もなかったのでしょう。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
玄関の土間らしい月の光の
朦朧
(
もうろう
)
と
射
(
さ
)
した柱に
添
(
そ
)
うて、
細面
(
ほそおもて
)
の女が大きな舌、六七寸もありそうに思われる大きな長い舌をだらりとたれて立っていた。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
細面
(
ほそおもて
)
。血色は余り宜しからず。才気ある眼。小さき手。態度は
頗
(
すこぶ
)
る真摯なり。その真摯は同時に又、鋭敏なる神経を想察せしむ。刹那の印象は悪しからず。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
むろん
御筋骨
(
ごきんこつ
)
はすぐれて
逞
(
たくま
)
しうございますが、
御顔
(
おかお
)
は
色白
(
いろじろ
)
の、
至
(
いた
)
ってお
奇麗
(
きれい
)
な
細面
(
ほそおもて
)
、そして
少
(
すこ
)
し
釣気味
(
つりぎみ
)
のお
目元
(
めもと
)
にも、
又
(
また
)
きりりと
引
(
ひ
)
きしまったお
口元
(
くちもと
)
にも
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
顔は
細面
(
ほそおもて
)
で、両眼が少しギラギラし過ぎていた外は、一体によく整っていて、スマートな感じであった。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
或る時、私はその少年の日に黒く焼けた、そして
唇
(
くちびる
)
だけがほのかに
紅
(
あか
)
い色をしている
細面
(
ほそおもて
)
の顔の下から、死んだ三枝の顔が透かしのように現われているのに気がついた。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
細
常用漢字
小2
部首:⽷
11画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“細面”で始まる語句
細面手