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祈祷
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きとう
ふりがな文庫
“
祈祷
(
きとう
)” の例文
次第に日はかたむいて、寺院のあたりを
徘徊
(
はいかい
)
する人の遠い足音はいよいよ
稀
(
ま
)
れになってきた。美しい音色の鐘が夕べの
祈祷
(
きとう
)
を告げた。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
かの神仏を念じ
祈祷
(
きとう
)
を行って治療を施すもの、みなこの類なり。さきのいわゆる御札、マジナイの効験あるは、またみな同一理なり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
宿
(
しゅく
)
では十八人ずつの夜番が交替に出て、街道から裏道までを警戒した。
祈祷
(
きとう
)
のためと言って村の代参を名古屋の
熱田
(
あつた
)
神社へも送った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
翌朝
(
よくちょう
)
セルゲイ、セルゲイチはここに
来
(
き
)
て、
熱心
(
ねっしん
)
に十
字架
(
じか
)
に
向
(
むか
)
って
祈祷
(
きとう
)
を
捧
(
ささ
)
げ、
自分等
(
じぶんら
)
が
前
(
さき
)
の
院長
(
いんちょう
)
たりし
人
(
ひと
)
の
眼
(
め
)
を
合
(
あ
)
わしたのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「わたくしの
舅
(
しゅうと
)
様すこし以前より、物の
怪
(
け
)
にでも
憑
(
つ
)
かれましたか、乱心の気味にござりまするが、ご
祈祷
(
きとう
)
をしてくだされましょうか」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
間諜
(
かんちょう
)
の老寺男が毎晩うずくまって
祈祷
(
きとう
)
の文句を鼻声でくり返しながら人をうかがってる場所と、その古ぼけたぼろとを借りうけた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
星こそあれ、
無月荒涼
(
むげつこうりょう
)
のやみよ。——おお、はるかに
焔
(
ほのお
)
の列が
蜿々
(
えんえん
)
とうごいていく。呂宋兵衛らの
祈祷
(
きとう
)
の群れだ、火の行動は人の行動。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
祈祷
(
きとう
)
は常におさせになっていたが、たいした効果も見えないために、わざわざ遠い寺々などでさせることにもお計らいになった。
源氏物語:41 御法
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
恐らく鳴尾君の讃美歌は天上のエホバの
御座
(
みくら
)
にまでとどいたことであろう。私は時に鳴尾君の
祈祷
(
きとう
)
の姿を
瞥見
(
べっけん
)
することがあった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
どうせすぐ近所に
祈祷
(
きとう
)
がもれ聞こえるような人里の中で彼らは集まりはしませんからね。いつもたいてい茂木のはずれにある
醤油屋
(
しょうゆや
)
の庫を
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
隠遁はじつに霊魂の港、休憩所、
祈祷
(
きとう
)
と
勤行
(
ごんぎょう
)
の密室である。真の心の静けさと濡れたる愛とはその室にありて保たるるのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
新たな
祈祷
(
きとう
)
の式は起こらず、海の
彼方
(
あなた
)
から訪れたまう年々の神の恵みは、もっぱら稲を作る人々の、島ごとの小さな群に向けられていた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
腫物
(
はれもの
)
一切
(
いっさい
)
にご
利益
(
りやく
)
があると近所の人に聴いた
生駒
(
いこま
)
の石切まで一代の
腰巻
(
こしまき
)
を持って行き、特等の
祈祷
(
きとう
)
をしてもらった足で、
南無
(
なむ
)
石切大明神様
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
修験者の
珠数
(
じゅず
)
を押し
揉
(
も
)
んで
祈祷
(
きとう
)
する傍には、長者の一人
女
(
むすめ
)
と、留守を
預
(
あずか
)
っている宇賀一門の老人達が二三人坐っておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
母親は心配して
祈祷
(
きとう
)
したりまじないをしたりしたが、王の容態はますます悪くなるばかりで、体もげっそり
瘠
(
や
)
せてしまった。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
見る間に不動明王の前に
燈明
(
あかし
)
が
点
(
つ
)
き、たちまち
祈祷
(
きとう
)
の声が起る。おおしく見えたがさすがは
婦人
(
おんな
)
,母は今さら途方にくれた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
そう云う薄暗い堂内に
紅毛人
(
こうもうじん
)
の
神父
(
しんぷ
)
が一人、
祈祷
(
きとう
)
の頭を
垂
(
た
)
れている。年は四十五六であろう。額の
狭
(
せま
)
い、
顴骨
(
かんこつ
)
の突き出た、
頬鬚
(
ほおひげ
)
の深い男である。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
面
(
かお
)
の色を変えて、戸を立て切り、
明朝
(
あす
)
とも言わずに竜神の社へ駈けつけて、
祈祷
(
きとう
)
と
護摩
(
ごま
)
とを頼むに相違ないのであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「合掌
礼拝
(
らいはい
)
。森君よ。ずっと向うに見えて居るのは何でしょう。あれは死ですね。最も賢き人は死を
確
(
しか
)
と認めて居ますね。十二月七日。
祈祷
(
きとう
)
。」
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
遠方のお寺で朝の
祈祷
(
きとう
)
のかねが鳴っていた。太陽はもう空の上に高く上って、つかれた心とからだをなぐさめる光を心持ちよく投げかけていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
しかしその人が行ってしまうとお経の声はまた変じてたちまち鼻唄となるので、
祈祷
(
きとう
)
などという考えは
毛頭
(
もうとう
)
壮士坊主の心の中にはないようです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
すると人はきっと何かしら神秘的な因果応報の作用を想像して
祈祷
(
きとう
)
や
厄払
(
やくばら
)
いの他力にすがろうとする。国土に災禍の続起する場合にも同様である。
天災と国防
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
なんの
祈祷
(
きとう
)
か、祈りがもう始まっているらしいのです。その音をたよりに、名人は一歩一歩と八方へ心を配りながら、拝殿近くへ忍び寄りました。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
現代のヨーロッパは、もはや一つの共通な書物をもっていなかった。万人のためになるべき、一つの詩も一つの
祈祷
(
きとう
)
文も一つの信仰録もなかった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
同時にあれほどの
大酒
(
おおざけ
)
も、喫煙もすっかりやめて、氏の
遊蕩
(
ゆうとう
)
無頼
(
ぶらい
)
な生活は、日夜
祈祷
(
きとう
)
の生活と激変してしまいました。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
朝夕朗々とした声で
祈祷
(
きとう
)
をあげる、そして原っぱへ出ては号令と共に体操をする、御嶽教会の老人が大きな雪
達磨
(
だるま
)
を作った。傍に立札が立ててある。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
お前は一方に崇高な告白をしながら、
基督
(
キリスト
)
のいう意味に於て、
正
(
まさ
)
しく盗みをなし、
姦淫
(
かんいん
)
をなし、人殺しをなし、偽りの
祈祷
(
きとう
)
をなしていたではないか。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そんなことをして
此方
(
こつち
)
をさん/″\
嚇
(
おど
)
かして置いて、お
仕舞
(
しまい
)
に高い
祈祷
(
きとう
)
料をせしめようとする
魂胆
(
こんたん
)
に相違ないのだ。そのくらゐの事が判らないのかな。
影を踏まれた女:近代異妖編
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
田中という
中脊
(
ちゅうぜい
)
の、少し肥えた、色の白い男が
祈祷
(
きとう
)
をする時のような眼色をして、さも同情を求めるように言った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
老人も
終
(
つい
)
には若い男の説を
納
(
い
)
れて解剖刀を捨て、二人とも
跪
(
ひざまず
)
いて少女の死屍に
祈祷
(
きとう
)
を捧げたという光景を叙して
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そは
糞
(
ふん
)
づまりなるべしといふもあれば尻に卵のつまりたるならんなどいふもあり。余は戯れに
祈祷
(
きとう
)
の句をものす。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は病気の子供や大人の親族の者どもを連れて来て、長老がその病人の頭にちょっと手を載せて、
祈祷
(
きとう
)
を唱えてくれるようにと懇願する多くの人を見た。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
かう思ふと、彼は、いつもきまつて、何ものかに
祈祷
(
きとう
)
を
捧
(
さゝ
)
げたいやうな、涙ぐましい気持ちになるのであつた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
朝夕の
祈祷
(
きとう
)
をしていると、どこからともなく集って来た百姓が、宣教師の背後に来て、しずかに十字を切った。
島原の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
口伝
(
くでん
)
玄秘
(
げんぴ
)
の術として、明らかになっていないが、医術と、
祈祷
(
きとう
)
とを基礎とした
呪詛
(
じゅそ
)
、
調伏
(
ちょうぶく
)
術の一種であった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それから約半年、医者に診せたり、いろいろと薬をのませたり、
祈祷
(
きとう
)
や
呪禁
(
まじない
)
までやってみたが、少しもよくならない。
尤
(
もっと
)
も、ひどく悪化するのでもなかった。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
故に詩を作ることはいつも「
祈祷
(
きとう
)
」であり「
詠歎
(
えいたん
)
」である。詩人は小説家のように、人間生活の実情を観察したり、社会の風俗を研究したりしようとしない。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
病人は暮方から熱が高まり、夜は悪夢にうなされて
譫言
(
たわごと
)
を言い、
屡〻
(
しばしば
)
水をもとめた。明方に漸く寝しずまるのが例であった。附添の男は和尚に
祈祷
(
きとう
)
を
懇願
(
こんがん
)
した。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
どうか
旱魃
(
かんばつ
)
の時にはこの村の田畑に水の枯れぬように、どうか小供の水難を救われるようにと
祈祷
(
きとう
)
をして、さてこの池をば
稚子
(
ちご
)
が
淵
(
ふち
)
の
明神
(
みょうじん
)
と名づけたのである。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
酋長の一人が、カヴァを飲む時、先ず腕を伸ばして盃の酒を徐々に地に
灌
(
そそ
)
ぎ、
祈祷
(
きとう
)
の調子で
斯
(
こ
)
う言った。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
けさは大勢見舞いに
駈
(
か
)
けつけ、それ山伏、それ
祈祷
(
きとう
)
、取揚婆をこっちで三人も四人も呼んで来てあるのに、それでも足りずに医者を連れて来て次の間に控えさせ
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
多数集りて厳粛に
祈祷
(
きとう
)
するや、やがて讃美歌を歌い楽器の声がこれを助ける。更に起って舞踏をする。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それは、くらの夫——すなわち先代の近四郎が、草津
在
(
ざい
)
の癩村に
祈祷
(
きとう
)
のため赴いたという事実である。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「まあ
祈祷
(
きとう
)
の前としてもよい。」
生徒監
(
せいとかん
)
はいった。「しかし、わたしはなぜかと
聞
(
き
)
いておるのだ。」
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
かくて、
吾等
(
われら
)
二人は、
過来
(
すぎこ
)
し
方
(
かた
)
をふりかへる旅人か。また暮れ
行
(
ゆ
)
く今日の
一日
(
ひとひ
)
を思ひ返して、燃え
出
(
いず
)
る同じ心の
祈祷
(
きとう
)
と共に、その手、その声、その魂を結びあはしつ。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
山の草、
朽樹
(
くちき
)
などにこそ、あるべき茸が、人の
住
(
すま
)
う屋敷に、所嫌わず
生出
(
はえい
)
づるを忌み悩み、ここに、法力の
験
(
げん
)
なる山伏に、
祈祷
(
きとう
)
を頼もうと、橋がかりに向って呼掛けた。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引上げられた少年達は
殆
(
ほと
)
んど気を失っていた。坑夫達は、彼等を地上に寝かし、あるものは自分達のボロ布で
扇
(
あお
)
ぎ、ある者は自信あり気に揃って不思議な
祈祷
(
きとう
)
をやり始めた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
そうではない、これはイエス・キリストの信仰からきたと言うことを証した。
祈祷
(
きとう
)
と断食をして耐え忍んでいたが、一か月たって、警察の人の取調べの態度が変わってきた。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
やがて
納棺
(
のうかん
)
して、葬式が始まった。調子はずれの
讃美歌
(
さんびか
)
があって、
牧師
(
ぼくし
)
の
祈祷
(
きとう
)
説教
(
せっきょう
)
があった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
艫
(
とも
)
ノ
間
(
ま
)
の上り口はどうだろうと、艫ノ間へ駆けて行くと、乗組の百人、一人残らず
後手
(
うしろで
)
に括られてころがっている。李旦はと見ると、十字架の前に
跪
(
ひざまず
)
いて一心に
祈祷
(
きとう
)
をしていた。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
“祈祷(祈り)”の解説
祈り(いのり)とは、宗教によって意味が異なるが、世界の安寧や、他者への想いを願い込めること。利他の精神。自分の中の神と繋がること。神など神格化されたものに対して、何かの実現を願うこと。神の定理は各宗教による。祈祷(祈禱、きとう)、祈願(きがん)ともいう。儀式を通して行う場合は礼拝(れいはい)ともいう。
(出典:Wikipedia)
祈
常用漢字
中学
部首:⽰
8画
祷
漢検準1級
部首:⽰
11画
“祈祷”で始まる語句
祈祷書
祈祷所
祈祷会
祈祷料
祈祷式
祈祷者
祈祷師
祈祷文
祈祷台
祈祷場