申訳もうしわけ)” の例文
旧字:申譯
例せば甲武信岳の如きは、これまで古生層の山として記載された申訳もうしわけに、頂上附近にわずばかりの古生層の岩片を戴いた花崗岩の山である。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「けれども私もすこし考えが御座いましたので、甥に筆をらせましてあのような手紙を差し上げさせましたので……まことに申訳もうしわけ……」
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「これはお嬢さま、何とも申訳もうしわけございません。坊ちゃんにお見せしようと思って、その屋根のすずめに狙いをつけたのだが、ついはずれまして」
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひと三河武士みかわぶしの末流として徳川累世るいせい恩義おんぎに対し相済あいすまざるのみならず、いやしくも一個の士人たる徳義とくぎ操行そうこうにおいて天下後世に申訳もうしわけあるべからず。
宿へ帰って聞いてみると、県から水電会社への課税のような意味で大正池の泥さらえをやらせているのだという。ほんの申訳もうしわけにやっているのだという。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
じつは、僕は二十年前の世界から時間器械に乗って、当地へやってきた本間という生徒なんです。申訳もうしわけありません」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
チチコフは、思いもよらぬ御迷惑をかけて申訳もうしわけないと陳謝した。『いいえ、構いませんよ!』と、女主人が言った。
重「へえ、あの野郎……あの野郎、誠に申訳もうしわけもございません、何んと何うも飛んだ事になりましてございます……重三郎の死骸は何処どっかへ上りましたか」
お豊は自分の身こそ一家の不幸のために遊芸の師匠に零落れいらくしたけれど、わが子までもそんないやしいものにしては先祖の位牌いはいに対して申訳もうしわけがないと述べる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「お局様、殿方禁断の庭へ入った上は、世上への見せしめ、精一杯懲らしめてやろうでは御座いませんか、そのまま許しては、御台様への申訳もうしわけが立ちません」
漸次ぜんじ増加する所の早稲田学園の学生諸君、もはやかくの如く群衆する所の多数の学生をるる家のないということは諸君に対してはなは申訳もうしわけのないことである。
始業式に臨みて (新字新仮名) / 大隈重信(著)
始終望んでいましたこの山へ、あとを尋ねてのぼる事が、物に取紛とりまぎれているうちに、申訳もうしわけもない飛んだ身勝手な。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やあ旦那、どうも二日とも投げられちゃって申訳もうしわけがございませんなア」と言う。客は笑って
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
季題はただ申訳もうしわけだけに句の中に入れてあるという類が多くって、それは季題を省いても一向に差支さしつかえがない、ただ従来の俳句の型を守るがためにやむをえず季題を入れた
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あい、肝腎かんじんのお見世みせほうを、けてたのでござんすから、一こくはやかえりませぬと、おかあさんにいらぬ心配しんぱいをかけますし、それに、折角せっかくのお客様きゃくさまにも、申訳もうしわけがござんせぬ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
浅草紙、やす石鹸やす玩具おもちゃなど持て来るほンの申訳もうしわけばかりの商人実際のおもらいも少からず来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もっともどの事件も他殺の疑いなどは毛頭なくたんなる過失として扱われたのだから、大きくはらない。巷の出来事といったようないわば六号活字の申訳もうしわけ的報道に止まる。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
その申訳もうしわけは嘘かまことかともかく麗姫のその状態を人々は「麗姫の神遊」と呼んで居る。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「それもだが、君が校正を済まさないと、僕は鉄雄さんに申訳もうしわけがないがね、昼間中は勉強してくれたまえよ、あがったらすぐ旅館に鎮座さして、誰一人寄せつけないことにするからね。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ところが、そう日本語に直したのでは、やはり申訳もうしわけのない裏切りの罪を犯すことになる。なぜなら原句は trad を頭韻とし、tore を脚韻とする大そういきな駄じゃれだからである。
翻訳のむずかしさ (新字新仮名) / 神西清(著)
苦しめて自分が無事でおりましては何としても心が済まずばちが当ってくれたらよいと存じましてなにとぞわたくしにも災難さいなんをお授け下さりませこうしていては申訳もうしわけの道が立ちませぬと御霊様ごりょうさま祈願きがん
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
申訳もうしわけ御座らぬが、お許し下されい。……それとも又、関所の筋道に御懸念でも御座るかの……慮外なお尋ね事じゃが……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それじゃ、おれはどうすればいいんだ。おれはあけみさんを愛している。君には申訳もうしわけない。申訳ないが、この愛情はどうすることもできないんだ」
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして女は重吉がいかに疑ぐろうとしても疑ぐることの出来なくなるような情熱を見せて申訳もうしわけの代りにした。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かげこうむりまするうれしさの余り、ついたべ酔いまして、申訳もうしわけもござりませぬ。真平御免まっぴらおゆるされ下されまし。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孝「やい、何をしやアがるのだ、サア何奴どいつでも此奴こいつでも来い飯島の家来には死んだ者は一ぴきも居ねえぞ、お印物しるしものの提灯を燃やしてしまって、殿様に申訳もうしわけがないぞ」
「はあ、そのわけは、わがロケットの損害があまりに大きくて——首領、どうも申訳もうしわけがありません」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
冗談じょうだんじゃごわせん。そいつをわすれちゃ、申訳もうしわけがありますめえ。——それそれ、んでまた、あらったきなさらねえ。おせんはげやしねえから、落着おちついたり、落着おちついたり
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ひろ子の家は二筋三筋へだたつた町通りに小さい葉茶屋の店を出してゐた。あががまちと店の左横にさゝやかな陳列硝子ガラス戸棚を並べ、その中に進物用の大小の円鑵まるかんや、包装した箱が申訳もうしわけだけに並べてあつた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
自分は十九歳を一期いちごとして父のもとへ行く——父は前年郷里で死んだ——主人には申訳もうしわけが無いから君から宜しく云うてくれ、荷物は北海道に居る母の許に送ってくれ、運賃として金五円封入ふうにゅうして置く
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ほんの申訳もうしわけに食器や空瓶を並べたのが、どうかした横町に行くとザラにある。そこには必ずその白い頬と唇の赤い女が居る。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
身体からだ全体が頭と胴で出来ていて、足などはほんの申訳もうしわけに着いている様だった。高い朴歯ほおば足駄あしだをはいた太短ふとみじかい足が地上二三寸のところでプラプラしていた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
手に一条ひとすじ大身おおみやりひっさげて、背負しょった女房が死骸でなくば、死人の山をきずくはず、無理に手活ていけの花にした、申訳もうしわけとむらいに、医王山の美女ヶ原、花の中にうずめて帰る。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間もなくある保険会社に雇われたものの、これは一時実家へ対しての申訳もうしわけに過ぎないので、半年とはつづかず、そのはぶらぶら京子の家に遊んで日を暮しているうち
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
せいさん、あゝ悪い事は出来ないものだ、其の申訳もうしわけは春見丈助必らず致します、どうか此処こゝでは話が出来ませんから、蔵の中でお話を致します、れんようにお話を
「うん、そのこころざしは有難い」と長造は一つペコンと頭を下げたが、それは申訳もうしわけに過ぎないようだった。「だが、この東京市に敵国の飛行機なんて、飛んで来やしないよ。心配しなさんな」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まえさん、どこへくんだよ。昼間ぴるまッからお見世みせけてったんじゃ、お客様きゃくさま申訳もうしわけがないじゃないか。太夫たゆうさんとこへお見舞みまいくなら、れてからにしとくれよ。——ようッてば
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あと一丈ばかりもあろうかと思われる白い処を両手で一気に繰り拡げながら、ほんの申訳もうしわけ同様に追いかけ追いかけ見て行った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
若しあのまま京子の死骸が帰って来なかったら、旅行中の主人伯爵に何と云って申訳もうしわけをすればいいのだろう。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とても来月の学年試験には及第する見込みがないと思っていた処なので、病気欠席のあとといえば、落第しても母に対してもっとも至極しごく申訳もうしわけができると思うからであった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「さて、どうもあらたまりましては、何んとも申訳もうしわけのない御無沙汰ごぶさたで。いえ、もう、そりゃ実に、からすの鳴かぬ日はあっても、おうわさをしない日はありませんが、なあ、これえ。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それじゃア何か差向さしむかいる処へわしが上って来たから、山平殿と不義濫行いたずらでもして居ると心得て、私が立腹してれへ上って来た故、差向で居た上からは申訳もうしわけとても立たぬ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
博士としては、これだけは確実に来会者をはっきりおどろかせることが出来る自信があり、これさえ成功するなら、あとの実験はたとえことごとく失敗に終っても、申訳もうしわけがつくと考えていた。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人間万事身から出た錆と思うて……親不孝の申訳もうしわけと思うて、誰でも彼でも親切にしてやる片手間には、イツモ親父の石塔に頭を下げておりますが
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
返す返すも申訳もうしわけなく、それ以来ずっと今日こんにちまで、私は一夜としてやすらかに眠ったことはありません。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夜になってからはさすが厄日の申訳もうしわけらしく降り出す雨の音を聞きつけたもののしかし風は芭蕉ばしょうも破らず紫苑しおんをも鶏頭けいとうをも倒しはしなかった——わたしはその年の日記を
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
縲絏なわめに掛っては、只今は廃刀はいとうの世なれども是まで捨てぬ刀の手前、申訳もうしわけのため切腹しました、臨終いまわきわに重二郎殿、清次殿御両人に頼み置きたき事がござる、悪人の丈助ゆえ
学校に縁遠えんどおい方だったものでえすから、暑さ寒さの御見舞だけと申すのが、書けないものには、飛んだどうも、実印じついんしますより、事も大層になりますところから、何とも申訳もうしわけがございやせん。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「水久保君。分らないというだけでは、帝都三百万の市民にたいして、申訳もうしわけにならないぞ。分らないにしても、もっと何か方法がありそうなものじゃないか。こんな風にしてみれば或いは分るかもしれない、といった何か思いつきはないかネ」
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうもコンナに御馳走になったり、勝手なお惚気のろけを聞かしたりしちゃ申訳もうしわけ御座んせんが、ここんところが一番恐ろしい話の本筋なんで致方いたしかたが御座んせん。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)