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濡色
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ぬれいろ
ふりがな文庫
“
濡色
(
ぬれいろ
)” の例文
カアカア、アオウガアガアガア、と五六
羽
(
は
)
、
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
へ
低
(
ひく
)
く
濡色
(
ぬれいろ
)
の
烏
(
からす
)
、
嘴
(
くちばし
)
を
黒
(
くろ
)
く
飛
(
と
)
ぶ。ぐわた/\、かたり/\と
橋
(
はし
)
の
上
(
うへ
)
を
曳
(
ひ
)
く
荷車
(
にぐるま
)
。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
浴槽の天井には一坪ほどの窓があって、明放しだから、湯の中に雨が降り込む、入口も明け放しで、渓の紅葉の
濡色
(
ぬれいろ
)
が美しい。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
果物鉢は南洋風の焼物だし中には皮が
濡色
(
ぬれいろ
)
をしている南洋生の
竜眼肉
(
りゅうがんにく
)
が入っていた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
庭は
一隅
(
ひとすみ
)
の
梧桐
(
あおぎり
)
の繁みから次第に暮れて来て、ひょろ
松
(
まつ
)
檜葉
(
ひば
)
などに
滴
(
したた
)
る
水珠
(
みずたま
)
は夕立の後かと
見紛
(
みまご
)
うばかりで、その
濡色
(
ぬれいろ
)
に夕月の光の薄く映ずるのは何とも
云
(
い
)
えぬすがすがしさを
添
(
そ
)
えている。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
華奢
(
きやしや
)
な
男女
(
だんぢよ
)
も
忙
(
せは
)
しない車馬も一切が
潮染
(
うしほぞめ
)
の様な
濡色
(
ぬれいろ
)
をして
其
(
その
)
中に動く。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
菱餅
(
ひしもち
)
の底を渡る気で
真直
(
まっすぐ
)
な向う角を見ると藤尾が立っている。
濡色
(
ぬれいろ
)
に
捌
(
さば
)
いた濃き
鬢
(
びん
)
のあたりを、
栂
(
つが
)
の柱に
圧
(
お
)
しつけて、斜めに持たした
艶
(
えん
)
な姿の中ほどに、帯深く差し込んだ
手頸
(
てくび
)
だけが白く見える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
灯
(
ひ
)
うつる
路
(
みち
)
の
濡色
(
ぬれいろ
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
濡色
(
ぬれいろ
)
を
含
(
ふく
)
んだ
曙
(
あけぼの
)
の
霞
(
かすみ
)
の
中
(
なか
)
から、
姿
(
すがた
)
も
振
(
ふり
)
もしつとりとした
婦
(
をんな
)
を
肩
(
かた
)
に、
片手
(
かたて
)
を
引担
(
ひつかつ
)
ぐやうにして、
一人
(
ひとり
)
の
青年
(
わかもの
)
がとぼ/\と
顕
(
あら
)
はれた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
わかき瞳の
濡色
(
ぬれいろ
)
に。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
陽炎
(
かげらふ
)
が
膝
(
ひざ
)
に
這
(
は
)
つて、
太陽
(
たいやう
)
はほか/\と
射
(
さ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
空
(
そら
)
は
晴
(
は
)
れたが、
草
(
くさ
)
の
葉
(
は
)
の
濡色
(
ぬれいろ
)
は、
次第
(
しだい
)
に
霞
(
かすみ
)
に
吸取
(
すひと
)
られやうとする
風情
(
ふぜい
)
である。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
色
(
いろ
)
を
五百機
(
いほはた
)
の
碧緑
(
あをみどり
)
に
織
(
お
)
つて、
濡色
(
ぬれいろ
)
の
艶
(
つや
)
透通
(
すきとほ
)
る
薄日
(
うすひ
)
の
影
(
かげ
)
は——
裡
(
うち
)
に
何
(
なに
)
を
棲
(
す
)
ますべき——
大
(
おほい
)
なる
琅玕
(
らうかん
)
の
柱
(
はしら
)
を
映
(
うつ
)
し、
抱
(
いだ
)
くべく
繞
(
めぐ
)
るべき
翡翠
(
ひすゐ
)
の
帳
(
とばり
)
の
壁
(
かべ
)
を
描
(
ゑが
)
く。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と小法師の
擡
(
もた
)
げた顔の、鼻は
鉤形
(
かぎなり
)
に
尖
(
とが
)
つて、色は
鳶
(
とび
)
に
斉
(
ひと
)
しい。
青黒
(
あおぐろ
)
く、
滑々
(
ぬらぬら
)
とした
背膚
(
せはだ
)
の
濡色
(
ぬれいろ
)
に、星の影のチラ/\と
映
(
さ
)
す
状
(
さま
)
は、
大鯰
(
おおなまず
)
が
藻
(
も
)
の花を
刺青
(
ほりもの
)
したやうである。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
横
(
よこ
)
に
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ、
續
(
つゞ
)
いて
木造
(
もくざう
)
の
橋
(
はし
)
が
濡色
(
ぬれいろ
)
に
光
(
ひか
)
つた、
此
(
これ
)
が
旅行案内
(
りよかうあんない
)
で
知
(
し
)
つた
圓山川
(
まるやまがは
)
に
灌
(
そゝ
)
ぐのである。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
去年
(
きよねん
)
の
事
(
こと
)
である。
一雨
(
ひとあめ
)
に、
打水
(
うちみづ
)
に、
朝夕
(
あさゆふ
)
濡色
(
ぬれいろ
)
の
戀
(
こひ
)
しく
成
(
な
)
る、
乾
(
かわ
)
いた
七月
(
しちぐわつ
)
のはじめであつた。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜
(
よる
)
の雲に暗く
梢
(
こずえ
)
を
蔽
(
おお
)
はれながら、もみぢの枝の
裏透
(
うらす
)
くばかり、
友染
(
ゆうぜん
)
の
紅
(
くれない
)
ちら/\と、
櫛巻
(
くしまき
)
の黒髪の
濡色
(
ぬれいろ
)
の
露
(
つゆ
)
も
滴
(
したた
)
る、天井高き山の
端
(
は
)
に、電燈の影白うして、
揺
(
ゆら
)
めく如き暖炉の
焔
(
ほのお
)
は
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
薄
(
うっす
)
り路へ
被
(
かか
)
った水を踏んで、その
濡色
(
ぬれいろ
)
へ
真白
(
まっしろ
)
に映って、
蹴出
(
けだ
)
し
褄
(
づま
)
の
搦
(
から
)
んだのが、私と並んで立った姿——そっくりいつも見る、座敷の額の
画
(
え
)
に覚えのあるような有様だった——はてな
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美
(
うつく
)
しさは、
夜
(
よる
)
の
雲
(
くも
)
に
暗
(
くら
)
く
梢
(
こずゑ
)
を
蔽
(
おほ
)
はれながら、もみぢの
枝
(
えだ
)
の
裏
(
うら
)
透
(
す
)
くばかり、
友染
(
いうぜん
)
の
紅
(
くれなゐ
)
ちら/\と、
櫛卷
(
くしまき
)
の
黒髮
(
くろかみ
)
の
濡色
(
ぬれいろ
)
の
露
(
つゆ
)
も
滴
(
したゝ
)
る、
天井
(
てんじやう
)
高
(
たか
)
き
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に、
電燈
(
でんとう
)
の
影
(
かげ
)
白
(
しろ
)
うして、
搖
(
ゆら
)
めく
如
(
ごと
)
き
暖爐
(
だんろ
)
の
焔
(
ほのほ
)
は
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
透かすと……鍵屋の其の
寂
(
さび
)
しい
軒下
(
のきした
)
に、赤いものが並んで見えた。見る内に、霧が薄らいで、其が
雫
(
しずく
)
に成るのか、赤いものは
艶
(
つや
)
を帯びて、
濡色
(
ぬれいろ
)
に立つたのは、
紅玉
(
こうぎょく
)
の如き柿の実を売るさうな。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
霧は
濡色
(
ぬれいろ
)
の
紗
(
しゃ
)
を掛けた、それを透いて、
却
(
かえ
)
って柳の薄い朧に、霞んだ藍か、いや、淡い紫を掛けたような衣の彩織で、しっとりともう一枚羽織はおなじようで、それよりも濃く黒いように見えた。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
動くのに
濡色
(
ぬれいろ
)
が薄油に、ほの白く
艶
(
つや
)
を取って、降りそそぐ雨を露に散らして、細いしぶきを立てると、その飛ぶ露の光るような片輪にもう一つ宙にふうわりと
仄
(
ほの
)
あかりの輪を大きく提灯の形に巻いて
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
濡
漢検準1級
部首:⽔
17画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“濡”で始まる語句
濡
濡衣
濡縁
濡手拭
濡鼠
濡羽
濡々
濡髪
濡手
濡須