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めい
ふりがな文庫
“
滅入
(
めい
)” の例文
彼らの大切な支柱がなくなってしまったのだ。父親はもともと病気だったが、気をおとして
滅入
(
めい
)
りこんでしまい、やがて世を去った。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
銀座あたりはまだ宵の内でしたが、公園の中はすっかり
更
(
ふ
)
けて、街の遠音が波の音のように聞くのさえ、何んとなく
滅入
(
めい
)
る心持です。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
空
(
そら
)
を
焦
(
こが
)
す
狼火
(
のろし
)
……そして
最後
(
さいご
)
に
武運
(
ぶうん
)
いよいよ
尽
(
つ
)
きてのあの
落城
(
らくじょう
)
……四百
年後
(
ねんご
)
の
今日
(
こんにち
)
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
してみる
丈
(
だけ
)
でも
気
(
き
)
が
滅入
(
めい
)
るように
感
(
かん
)
じます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「どうもいかん、あれを聞いていると、心が
滅入
(
めい
)
るのみならず、骨と、身が、バラバラに解けて、畳の中へしみ込んでしまいそうだ」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ほんに、そう
仰
(
お
)
っしゃれば秋らしい晩でございますこと。けれどわたくし、こう云う晩は淋しゅうて
滅入
(
めい
)
るような気がいたします」
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
これなら、どんな
神経質
(
しんけいしつ
)
な
子供
(
こども
)
に
聞
(
き
)
かせても、また、
気持
(
きも
)
ちのつねに
滅入
(
めい
)
る
病人
(
びょうにん
)
が
聞
(
き
)
いても、さしつかえないということになりました。
楽器の生命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
児を
棄
(
す
)
てる日になりゃア金の
茶釜
(
ちゃがま
)
も出て来るてえのが天運だ、
大丈夫
(
だいじょうぶ
)
、銭が無くって
滅入
(
めい
)
ってしまうような
伯父
(
おじ
)
さんじゃあねえわ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
自分はいったい陰気な
質
(
たち
)
であるが、こういう日にはなんだか引き入れられるように気が
滅入
(
めい
)
って、自然に悲しくなるなどと話した。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
秋の季節に来たせいもあらうが、まことに秋の国とも云ふべき、調子の弱い、色の
柔
(
やはら
)
かい、人間の欲望を
滅入
(
めい
)
らせる様な国である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
諂
(
へつら
)
つてもらはなくちやならない——音樂にダンスに交際社界がなくちやならない——でなければがつかりして
滅入
(
めい
)
り込んでしまふ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
銀泥のふすまに
滅入
(
めい
)
りこむような
灯
(
ひ
)
が更けております。水の底かと思われるばかり
森
(
しん
)
とした本丸の深殿に、吉宗はまだ起きている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
さ
)
うかと
謂
(
い
)
つて勿論嬉しいといふやうなことも思ツて居らぬ。たゞ一種淋しいといふ感に強く
壓付
(
おしつ
)
けられて、
妄
(
むやみ
)
と氣が
滅入
(
めい
)
るのであツた。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
どういうものか、嫌で、嫌で、片時も居たたまらなくッてよ。金沢へ帰りたい帰りたいで、例の持病で、気が
滅入
(
めい
)
っちゃあ泣いてばかり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とありますが、「初夜の鐘は諸行無常、入相の鐘は寂滅為楽」などというと、いかにも
厭世
(
えんせい
)
的な
滅入
(
めい
)
ってゆくような気がします。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
分けてもいやでたまらないのは、実際、何か気の
滅入
(
めい
)
る原因がありそうなことなんです。いや、やっぱり故郷が一番いいですよ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
私は茶店の娘相手に晩酌の盃を
嘗
(
な
)
めていたが、今日の妻からの手紙でひどく気が
滅入
(
めい
)
っていた。二女は
麻疹
(
はしか
)
も出たらしかった。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
と団さんはいつになく
湿
(
しめや
)
かだった。三十年近くも勤めていた会社だ。やめるとなると、自発的でも矢張り気が
滅入
(
めい
)
るのだろう。
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そして話がそこまで来ると、殆んど船乗りばかりのその座は、妙に白けて、皆ないやアな顔をして
滅入
(
めい
)
り込むのが常だった。
動かぬ鯨群
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
元子は、そんな山形の心細そうな言葉を思い出すと、気が
滅入
(
めい
)
りそうになる。そんなことにもなりかねないのだ。なんとか、ならないものか。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
風呂に
浸
(
つか
)
っていると、ちょうど窓から雨にぬれた山の
翠
(
みどり
)
が
眉
(
まゆ
)
に迫って来て、
父子
(
おやこ
)
の人情でちょっと
滅入
(
めい
)
り気味になっていた
頭脳
(
あたま
)
が軽くなった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女中は
闇
(
やみ
)
の中から手探りにやっと、
洋燈
(
ランプ
)
を探し当てゝ火を点じたが、ほの暗い光は、一層瑠璃子の心を
滅入
(
めい
)
らしてしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
人間でも気が
滅入
(
めい
)
り、火鉢の火でもほげたく思うような時、袖をかき合わせて籠をのぞくと、一層物淋しい心に打たれる。
小鳥
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その夜は、浜田達にとって、一と晩じゅう、眠ることの出来ない、奇妙な、
焦立
(
いらだ
)
たしい、
滅入
(
めい
)
るような不思議な夜だった。
前哨
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
が今では気が
滅入
(
めい
)
るような時には、「まだなかなかマリユスが帰ってこないとすれば……」などと自ら言うようになった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
三四
日
(
か
)
どうもなかつたから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だとは
思
(
おも
)
つて
見
(
み
)
ても、
恁
(
か
)
う
凝然
(
ぢつ
)
として
居
(
ゐ
)
ると
遠
(
とほ
)
くの
方
(
ほう
)
へ
滅入
(
めい
)
つて
畢
(
しま
)
ふ
樣
(
やう
)
な
心持
(
こゝろもち
)
がして
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その毎日にも
何彼
(
なにか
)
と心の
鬱
(
う
)
さの
紛
(
まぎ
)
れることもございましょうが、青い
蘆荻
(
ろてき
)
のそよぎばかり見ていては心は毎日
滅入
(
めい
)
ってしまうばかりでございます。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こいつは見当が狂った、しくじった、いっそ書かないほうがよかったのだと、むしゃくしゃして、気が
滅入
(
めい
)
るんですよ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
電車通りからは遠く、自動車も滅多に通らぬ横町なので、
滅入
(
めい
)
るように静かだ。その上にこの暗闇、山奥の一軒家にでもいるような心細さである。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
鋭い口笛のようなうなりを立てて吹きまく風は、小屋をめきりめきりとゆすぶり立てた。風が
小凪
(
おな
)
ぐと
滅入
(
めい
)
るような静かさが
囲炉裡
(
いろり
)
まで
逼
(
せま
)
って来た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
総身
(
そうしん
)
の活気が一度にストライキを起したように元気がにわかに
滅入
(
めい
)
ってしまいまして、ただ
蹌々
(
そうそう
)
として
踉々
(
ろうろう
)
という
形
(
かた
)
ちで
吾妻橋
(
あずまばし
)
へきかかったのです。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、自身で自身を
叱
(
しか
)
って見たが、私にはただたわいもなく哀れっぽく悲しくって何か深い
淵
(
ふち
)
の底にでも
滅入
(
めい
)
りこんでゆくようで
耐
(
こら
)
え
性
(
しょう
)
も何もなかった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼は伯母があとでこうつぶやいて身も世もあらず
滅入
(
めい
)
り込んでいるさまを想像して、心から気の毒に思いながらも、おかしくなってひとり笑っていた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
このごろのような、バカな芸者の相手になっているのも悲劇だが、あんなふうに、女がダブついているのを見ると、なにか、あわれで、気が
滅入
(
めい
)
ってしまうよ
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それだのに何としたか意久地なしの
霊魂
(
たましひ
)
がまたトスカ的に
滅入
(
めい
)
り込む、気が
悄気
(
しよげ
)
る。ポロポロと涙が
零
(
こぼ
)
れる。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「拝見していましても苦しくなるほどお
滅入
(
めい
)
りになっていらっしゃいますね。碁をお打ちなさいませよ」
源氏物語:55 手習
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
母は、いかにもこの相手が
荷厄介
(
にやっかい
)
らしく、なんだか
滅入
(
めい
)
ったような気乗りのしない調子で、しぶしぶ受け答えをしていた。父は時たま、かすかに
眉
(
まゆ
)
の根をひそめた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
巡査が去ってから僕はまた堤にしゃがんで、水や
蘆
(
あし
)
を眺めながらぼんやりしていましたが、だんだん気持が
滅入
(
めい
)
ってきました。そして
憤
(
いきどお
)
ろしさが込み上げてきました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「また自分たちだけが取り殘された——」なぜか、そんな
滅入
(
めい
)
るやうな氣がしてならなかつた。
ふるさとびと
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
見たばかりでも気が
滅入
(
めい
)
りそうな、
庇
(
ひさし
)
の低い平家建で、この頃の天気に色の出た雨落ちの石の
青苔
(
あおごけ
)
からも、
菌
(
きのこ
)
ぐらいは生えるかと思うぐらい、妙にじめじめしていました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ゆき子は所在なく寝床へ横になつて、
暫
(
しばら
)
く
呆
(
ぼ
)
んやりしてゐたが、気が
滅入
(
めい
)
つて、くさくさして仕方がなかつた。それに、
何時
(
いつ
)
までたつても、隣室の騒々しさはやまなかつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
それほど私は、辻永のキビキビした探偵ぶりにどういうものか気が
滅入
(
めい
)
ってくるのであった。
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
単に大和の国で、私は
郡
(
ぐん
)
も町の名も知らない、古宿の破れ二階に、独り旅の疲れた
躯
(
からだ
)
を据えていた、道中の様々な刺戟に頭は重くて
滅入
(
めい
)
り込むよう、
草鞋
(
わらじ
)
の紐の
痕
(
あと
)
で足が痛む。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
雨もよいの空は、暗く低く、何となく気の
滅入
(
めい
)
りそうな空模様である。そこへ、千手の前が、
琵琶
(
びわ
)
と
琴
(
こと
)
をたずさえてやってきた。重衡を慰めよ、という頼朝の計らいであった。
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
こんな
風
(
ふう
)
に
言
(
い
)
われて
子家鴨
(
こあひる
)
はひとりで
滅入
(
めい
)
りながら
部屋
(
へや
)
の
隅
(
すみ
)
っこに
小
(
ちい
)
さくなっていました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「ははは、とんだ
滅入
(
めい
)
った話になって、酒も何も冷たくなってしまった。お光さん、ちっともお前やらねえじゃねえか、遠慮をしてねえでセッセと
馬食
(
ぱく
)
ついてくれねえじゃいけねえ」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
そこで今度は第三の門に来ましたが、ここはじゅくじゅくの
湿地
(
しっち
)
ですから、うっかりすると足が
滅入
(
めい
)
りこみます。所々の草むらは綿の木の白い花でかざった壁のようにも思われます。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
「なんだか心が
滅入
(
めい
)
って来た」嘉門は花を見上げたが、ふと寂しそうにつぶやいた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
志津は底もなく
滅入
(
めい
)
り込んで行く心持ちを感じ乍ら、重たい夜具を抱へて歩んだ。
夏蚕時
(新字旧仮名)
/
金田千鶴
(著)
気を
滅入
(
めい
)
らす
氷雨
(
ひさめ
)
が朝から音もなく降りつづいていて、開け放たれた窓の外まで、まるで夕暮のように
惨澹
(
さんたん
)
としていたが、ふと近所のラジオのただならぬ調子が彼の
耳朶
(
じだ
)
にピンと来た。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その
癖
(
くせ
)
もうすぐ気が
滅入
(
めい
)
り、M君がきた翌日などは、終日戸外へも出なかった。いつもの伝で、…………………書物や原稿紙まで始末してから、軒先の
陽
(
ひ
)
だまりにボンヤリ腰かけていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
滅
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“滅入”で始まる語句
滅入込