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注連
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しめ
ふりがな文庫
“
注連
(
しめ
)” の例文
浦づたいなる掃いたような白い道は、両側に軒を並べた、
家居
(
いえい
)
の中を、あの
注連
(
しめ
)
を張った岩に続く……、松の
蒔絵
(
まきえ
)
の貝の一筋道。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
注連
(
しめ
)
だの輪飾だのを一ぱいに積んだ車がいそがしく三人の間を通って行った。——新しい、すが/\しい藁の匂が激しく三人の鼻を
撲
(
う
)
った。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
忽
(
たちま
)
ちそこが開けて見ると、第二の岩戸があって、
注連
(
しめ
)
が張りめぐらしてある。その中は土の牢、岩の
獄屋
(
ひとや
)
になっているのがありありとわかる。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
元日からきょうまでを松のうち、あるいは
注連
(
しめ
)
の内と称したわけで、また、この朝早くそれらのかざり物を焼き捨てる。二日の書初めを燃やす。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
繩
(
なは
)
には
注連
(
しめ
)
のやうに
刻
(
きざ
)
んだ
其
(
そ
)
の
赤
(
あか
)
や
青
(
あを
)
や
黄
(
き
)
の
紙
(
かみ
)
が一
杯
(
ぱい
)
にひら/\と
吊
(
つ
)
られてある。
彼等
(
かれら
)
は
昨日
(
きのふ
)
の
内
(
うち
)
に一
切
(
さい
)
の
粧飾
(
かざり
)
をして
雞
(
にはとり
)
の
鳴
(
な
)
くのを
待
(
ま
)
つたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
▼ もっと見る
さて入り口に
清水川原
(
しみづがはら
)
といふあり、こゝにいたらんとする
道
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に、丸木の
柱
(
はしら
)
を
建
(
たて
)
、
注連
(
しめ
)
を引わたし、中央に高札あり、いかなる事ぞと立よりみれば
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ここでは
注連
(
しめ
)
飾りが町家の
軒
(
のき
)
ごとに立てられて、通りの
角
(
かど
)
には年の暮れの市が立った。
橙
(
だいだい
)
、
注連
(
しめ
)
、
昆布
(
こんぶ
)
、
鰕
(
えび
)
などが行き通う人々の
眼
(
め
)
にあざやかに見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
御用金は奥の御居間の床の間に、
注連
(
しめ
)
を張ってお供え申しておいた。盗賊の入ったのは真夜中でござろう。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黒い
檜
(
ひのき
)
の舞台に、五色の
帳
(
とばり
)
が垂れていた。棟の四方に、
張
(
は
)
り
繞
(
めぐ
)
らしてある
注連
(
しめ
)
に、山風がそよとうごいて、
庭燎
(
にわび
)
の火の粉がチラチラ燃えつきそうに時折
掠
(
かす
)
める。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう思いながら、門松の笹の葉が
注連
(
しめ
)
と一緒に風にざわめいている交通のはげしい大晦日の往来へ出た。
鏡餅
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は姫路の城に入ると、天主閣の周囲には
注連
(
しめ
)
を張らせた。閣の入口には毎日もろもろの供物をささげさせて、月に一度ずつは城主自身が必ず参拝を怠らなかった。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いまも焼けずにのこつてゐる二天門あたり
注連
(
しめ
)
か飾りか橙か、観音堂ちかい市の売声が、どよめきが真黒い人影が、仄明るい灯かげの中に聞え、うかがはれて来る風情は
下町歳事記
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
蹲踞
(
しゃが
)
んで出刃を
磨
(
みが
)
くものもある。寒い日の光は
注連
(
しめ
)
を飾った軒先から射し入って、太い柱や、そこに並んで倒れている牛や、白い
被服
(
うわっぱり
)
を着けた屠手等の肩なぞを照らしていた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
往還から少し引ッ込んだ門構えに
注連
(
しめ
)
を張り、あるいは
幔幕
(
まんまく
)
をめぐらせ、奥まった玄関に式台作りで、どうかすると、門前に古い年号を刻み入れた頂上三十三度石などが立っている。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
注連
(
しめ
)
飾り、桶類、金物類そのほかの店が隙間なく、高張や長提灯の数を
列
(
つら
)
ねて、耳も
聾
(
ろう
)
するばかりの呼び声、ことに明治の中頃の景気は格別、江戸時代に輪をかけてすばらしい人出
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
年を迎える家のしるしとして、棚と
注連
(
しめ
)
飾り松飾り以外にどういう支度をするか。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あれほど心頼みにした天満天神の
注連
(
しめ
)
とも別れるのは心細く、行先に不安の念を抱く者は多い。天皇は粗末な
腰輿
(
ようよ
)
を召された。
輿
(
こし
)
をかつぐ者もないのである。
葱花
(
そうか
)
鳳輦
(
ほうれん
)
とは名ばかりであった。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
神棚には新しい
注連
(
しめ
)
が張られて燈明が赤々と照っていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
注連
(
しめ
)
を張っておいでになるのですもの。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
厳
(
おごそ
)
かに
注連
(
しめ
)
の内てふ言葉あり
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
それでも、
注連
(
しめ
)
を張った岩窟の中までは
朧
(
おぼ
)
ろに光が届いて、その奥の方に、かすかに白い衣服がうごいていることがわかる。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なるほど、そこには
注連
(
しめ
)
を張った大きな銀杏のたくましく
聳
(
そそ
)
り立っているばかり、鳥居も、玉垣も、社殿も……牛島神社の影もかたちもが存しなかった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
捧げた心か、
葦簀
(
よしず
)
に挟んで、
常夏
(
とこなつ
)
の花のあるが
下
(
もと
)
に、日影涼しい手桶が
一個
(
ひとつ
)
、輪の上に、——大方その時以来であろう——
注連
(
しめ
)
を張ったが、まだ新しい。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
御用金は奧の御居間の床の間に、
注連
(
しめ
)
を張つてお供へ申して置いた。盜賊の入つたのは眞夜中で御座らう。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
榊枝
(
さかきえ
)
で、牛若の体をはらった。
颯々
(
さっさつ
)
と、白い
注連
(
しめ
)
と緑の風にはらわれて、牛若は何かしら体がぞくとした。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒
(
さけ
)
が
其處
(
そこ
)
に
火
(
ひ
)
を
點
(
てん
)
じた。
庭
(
には
)
の四
本
(
ほん
)
の
青竹
(
あをだけ
)
に
長
(
は
)
つた
繩
(
なは
)
の
赤
(
あか
)
や
青
(
あを
)
や
黄
(
き
)
の
刻
(
きざ
)
んだ
注連
(
しめ
)
がひら/\と
動
(
うご
)
きながら
老人等
(
としよりら
)
と
一
(
ひと
)
つに
私語
(
さゝや
)
くやうに
見
(
み
)
えた。
日
(
ひ
)
は
陽氣
(
やうき
)
な
庭
(
には
)
へ一
杯
(
ぱい
)
に
暖
(
あたゝ
)
かな
光
(
ひかり
)
を
投
(
なげ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
元伐
(
もとぎ
)
りにした二本の樅には
注連
(
しめ
)
なぞが掛けられて、その前で
禰宜
(
ねぎ
)
の
祈祷
(
きとう
)
があった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『伊勢の浜荻』巻一に、
注連
(
しめ
)
を標と同じものだということを述べて、その末に次のように書いてある。他国にて注連縄というものを、伊勢神宮の地でシメツクシというのは方言である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
貴重尊用
(
きちようそんよう
)
の縮をおるには、家の
辺
(
ほと
)
りにつもりし雪をもその心して
掘
(
ほり
)
すて、
住居
(
すまゐ
)
の内にてなるたけ
烟
(
けふり
)
の入らぬ
明
(
あか
)
りもよき
一間
(
ひとま
)
をよく/\
清
(
きよ
)
め、あたらしき
筵
(
むしろ
)
をしきならべ四方に
注連
(
しめ
)
をひきわたし
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
なんでも高い段のようなものを築いて、そこへ
御幣
(
ごへい
)
や
榊
(
さかき
)
をたてて、座敷の四方には
注連
(
しめ
)
を張りまわして、自分も御幣を持っていて、それを振り立てながら何か
祷
(
いの
)
りのようなことをするんだそうです
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お豊は、その通りにここまで来てみると、もうかなり勇気が出て、
注連
(
しめ
)
を張った木に手をおいて、中をのぞぎ込んでは
四辺
(
あたり
)
を見廻してみました。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
周囲に
柵
(
さく
)
を結いたれどそれも低く、錠はあれど
鎖
(
さ
)
さず。
注連
(
しめ
)
引結いたる。青く
艶
(
つやや
)
かなる
円
(
まろ
)
き石の
大
(
おおい
)
なる下より
溢
(
あふ
)
るるを
樋
(
ひ
)
の口に受けて木の
柄杓
(
ひしゃく
)
を添えあり。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、そこを店とすれば、店と奥との
堺
(
さかい
)
には、
注連
(
しめ
)
が張り廻してあるのが——すぐ武蔵の眼についた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
騒がしく、楽しい町の空の物音は
注連
(
しめ
)
を引きわたした竹のそよぎにまじって、二階の障子に伝わって来ていた。その中には、多吉夫婦の娘お
三輪
(
みわ
)
が下女を相手にしての
追羽子
(
おいばね
)
の音も起こる。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その地に
注連
(
しめ
)
を
繞
(
めぐ
)
らし飯酒を供えて、祈祷して還るというので、これまた産の様子を見たのではないが、この神事のあった年に限って、必ず新たに一万人の信徒が増加するとさえ信じていた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
正面の上のかたは板羽目にて、上に祭壇を設け、
注連
(
しめ
)
を張れり。中央の出入り口にはやぶれたる
簾
(
すだれ
)
を垂れたり。下の方もおなじく板羽目。庭前の下のかたに丸太の門口、
蠣殻
(
かきがら
)
の附きたる垣を結えり。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして十六日の
宵宮
(
よみや
)
、はやくも明日を待ち兼ねてのうき立つはやしの音をのせ、軒々の
注連
(
しめ
)
を、提燈を、その提燈の上にかざした牡丹の造花をふいてわたる夕かぜの、いかに生き生きと、あかるく
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
この池を御禊の池といって、
椎
(
しい
)
の木が二本、門柱でもあるかのように前に立って、それに
注連
(
しめ
)
が張り渡してありました。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
浄
(
きよ
)
め砂置いた広庭の壇場には、
幣
(
ぬさ
)
をひきゆい、
注連
(
しめ
)
かけわたし、
来
(
きた
)
ります神の道は、(
千道
(
ちみち
)
、
百綱
(
ももづな
)
、道七つ。)とも言えば、(
綾
(
あや
)
を織り、
錦
(
にしき
)
を敷きて招じる。)
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
注連
(
しめ
)
のついた
荒縄
(
あらなわ
)
がギリギリとかれの
腕
(
うで
)
へまわされた。民部はこのあいだに、なにか、いってやりたかったけれど、
胸
(
むね
)
がいっぱいで、かれにあたえることばを知らなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これはまだ
注連
(
しめ
)
の内という祝いの日のうちなのだからおかしくはない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
玄関先に
注連
(
しめ
)
が張りまわしてあった。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
女が倒れているのは——静かな神社の
境内
(
けいだい
)
。突き当ったのは、
注連
(
しめ
)
の張った杉の大木にめぐらした木柵。ここは諏訪の
秋宮
(
あきのみや
)
、この杉こそは名木
根入杉
(
ねいりすぎ
)
。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「野郎、こっちを向いて、
尿
(
いばり
)
をしていやがる。——佐々の旦那、もうなんぼ何でも、堪忍はできますまい。
注連
(
しめ
)
を張って、おれたちは仕事をしているってえのに、犬のような」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(ねえ、こっちにもう一つ
異体
(
いてい
)
なのは、
注連
(
しめ
)
でも張りそうな裸のお腹、……)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五
注連
(
しめ
)
と松飾り
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
兵馬が見ると、その長持には
注連
(
しめ
)
が張って、上には札が立ててある。その札に記された文字は
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
大名小路の
金碧
(
こんぺき
)
さんらんたる門や構えを見て来た眼で——ここの暗やみ坂の青葉の底に、そこらの百姓家の屋根と変らない——ただ鰹木と
注連
(
しめ
)
だけが違う——
佗
(
わび
)
しいお宮を見ると、
猶々
(
なおなお
)
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
魔とも、妖怪変化とも、もしこれが
通魔
(
とおりま
)
なら、あの火をしめす宮奴が気絶をしないで
堪
(
こら
)
えるものか。で、般若は一
挺
(
ちょう
)
の
斧
(
おの
)
を提げ、天狗は
注連
(
しめ
)
結いたる半弓に矢を取添え、狐は腰に
一口
(
ひとふり
)
の太刀を
佩
(
は
)
く。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“注連”の意味
《名詞》
「しめ(標)」のこと。
注連縄。
(出典:Wiktionary)
“注連(
注連縄
)”の解説
注連縄(しめなわ)は、神道における神祭具で、糸の字の象形を成す紙垂(しで)をつけた縄。神聖な区域とその外とを区分するための標(しめ)である。注連縄の形式によっては縄の下に七本、五本、三本の藁を垂らす。以上の理由から、標縄、〆縄、七五三縄などとも表記する。
平安時代以降では神仏混淆により仏教(特に密教)においても結界の意味で使用することがある。
(出典:Wikipedia)
注
常用漢字
小3
部首:⽔
8画
連
常用漢字
小4
部首:⾡
10画
“注連”で始まる語句
注連縄
注連繩
注連飾
注連掛
注連川
注連図久
注連小屋
注連繩張