なお)” の例文
「足のほうはようすをみないとわからない、たぶん一と月もすればなおるだろうと思うが、それまでは立ち歩きをしないほうがいい」
そのまちなかに、あかはたが、ながいさおのさきにひらめいています。それは、万病まんびょうなお不思議ふしぎ温泉おんせんのわきるところでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのいきおいで天子てんしさまのからだにおやまいがおこるのだ。だからあのへびかえるしてしまわないうちは、御病気ごびょうきなおりっこないのだよ。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たとえなおっても、あるいは眼がつぶれたり、あるいはあばたが残って、一生涯しょうがい、その人はいやな思いをしなければなりません。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
世を避けながらも猶かつ養生することを忘れずにいもを食って一切の病気をなおしたというあの「つれづれ草」の中にある坊さんのことを思い
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おくさんの言うのには、この子を医者にみせたら、おしがなおっていつか口がきけるようになろうということだからと言った。
兎に角早く病気をなおすことだ、と考えて彼はしいて心を落着けようとした。もし馬の脊髄が結核に効果があるなら、それを注射しても構わない。
愚かな一日 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
袈裟けさがけに刀を浴びせられていますね、よくその傷がなおりましたねえ、痛みはしませんか、とこう言われて、はじめて私が驚くのでございます。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかも再び皮を引きはがされた傷口からは、皮のできる前よりはさらになおしがたいほどの痛みをもってだくだくと血が流れ出さずにはいなかった。
幸いにも果たして市長が明日あした子供を連れてこられたら、そうですね、望外なことがあるかも知れません。非常な喜びが急に病気をなおした例もあります。
で、わたくしどもにむかって身上噺みのうえばなしをせいとッしゃるのは、わばかろうじてなおりかけたこころ古疵ふるきずふたたえぐすような、随分ずいぶんむごたらしい仕打しうちなのでございます。
(病人なら病人らしく死んじまえ。なおるもんなら治ったらかろう。何んだって愚図ぐずついて、わずらっているんだ。)
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なれども、ルルがあの噴水をなおしてしまうまでは待ってたもれよ。それももう長いことではない。ミミよ、お聞きやれ。あのルルの打つつちの勇ましいこと
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
それやこれやをいろいろと案じた末に浮んだは一年か半年ほど清吉に此地こち退かすること、人の噂も遠のいて我夫の機嫌もなおったら取り成しようは幾らもあり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「こないだ、三階から身投げした女がいるのです。あなたの病気は死ななきゃなおらないと云われて……」
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
「だめだ! まだあの高慢狂気きちがいなおらない。梅子さんこそつらの皮だ、フン人を馬鹿にしておる」と薄暗い田甫道たんぼみち辿たどりながらつぶやいたが胸の中は余りおだやかでなかった。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
体のやまいなおすのが医者で、心の病をなおすのが坊主ということになっているが、その心の病のうちでもお通さんのは重態だ、武蔵のほうは、抛っておけばどうにかなろうが
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀子も若い時分一度行ったことがあったが、妹の一人は胸の病気をその山の一と夏でなおした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
またなおるべきやまいも財産のないために治し得ぬこともあり、借金の返せぬために首をくくる男もあって、生命が貴いか財産が貴いか判然せぬごとき場合さえすこぶるしばしばある。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
お気の毒じゃが、この病には、薬もなければ、医者もない。自分でなおすよりほかはないのじゃ。よほどの機縁に恵まれぬかぎり、まず、あんたの顔色のはれる時はありますまいて。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
疣も現在はもうすっかりなおっているのだが、やはり縁に引かれて時々は想い出される。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その傷をなおすより仕方がない……芳一、まア喜べ!——危険は今まったく済んだ。
耳無芳一の話 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
大石橋から十里、二日の路、夜露、悪寒おかん、確かに持病の脚気かっけ昂進こうしんしたのだ。流行腸胃熱はなおったが、急性の脚気が襲ってきたのだ。脚気衝心の恐ろしいことを自覚してかれは戦慄した。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お医者になおしてもらうさ。治ることだってあるんだから。それはそうと、あたしと、お前さんと、一体、どっちが余計難儀をしてるだろう。お前さんは、自分で眼をわずらってることもしらずにいる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「とにかく、人間にならなけりゃならない。そのためには、牧師ぼくしさんとか、お医者いしゃさんとか、先生とか、そのほか、学問があって、こういうことのなおしかたを知っている人にきかなくちゃだめだ。」
「きさまの強情は少しもなおらないな」と摂津がやがて云った、「よし、きさまに確信があると申すなら任せてやろう」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
建久八年(六十五歳)の時法然が少しく病気にかかった。兼実は深くこれを歎いたが、それでも病気は間もなくなおった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ミリガン夫人は、リーズがまだ話をしようとつとめていることを話して、医者はもうじきなおると言っていると言った。
そして、彼女かのじょはむなしく、いえにもどってしまったのです。そのふたたび、彼女かのじょが、かけるはずもなかったから、病気びょうきはついになおらずにしまいました。
世の中のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、ほんとに、あなたにはおわかりになりませんの。私はなおったのですわ。コゼットが明日あした参りますのよ。」
「どうか、わたしを京都きょうとれて行ってください。天子てんしさまの御病気ごびょうきなおしてげとうございます。」
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼女かのじょわたくしははと一しょに、れい海岸かいがんわたくしかくって、それはそれは親身しんみになってよくつくしてくれ、わたくし病気びょうきはやなおるようにと、氏神様うじがみさま日参にっさんまでしてくれるのでした。
その考えから彼は北向の部屋に親子三人まくらを並べ、大きくなれば自然になおる時もあるという少年時代の習慣のついた子供を側に寝かせて、なるべくあによめ達に迷惑を掛けまいとした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少々しょうしょう無理なねがいですがね、身内に病人があって、とても医者の薬ではなおらんにきまったですから、この医王山でなくってほかにない、私が心当こころあたりの薬草を採りに来たんだが、何、ねえさんは見懸みかけたところ
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「でも確かにそれでなおるものとしましたら……。」
愚かな一日 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「病気がもうなおったのか」
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ジョリクールの病気はなおしてやらなければならないし、部屋へやには火がなければならないし、薬も買わなければならないし、宿やどにもはらわなければならない。
ぬえ退治たいじられてしまいますと、天子てんしさまのおやまいはそれなりふきとったようになおってしまいました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そしてやがてがまんのつのを折って売薬などをのむと、ふしぎに病状の軽快することがある、これはなおる時期が来ていたので、薬の代りに糠味噌をのんでも同じことであろう。
霜柱 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あなたほどのわかさで、そんなあお顔色かおいろをなさっていてはいけません。はや手術しゅじゅつをおけになって、さっぱり病気びょうきなおしておしまいなさいまし。」と、っているひとは、いいました。
世の中のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「一度医者にはせましたが」と義雄はそれをさえぎるようにして、「その医者の言うには、これは悪い病気にかかったものだ、余程の専門家にでも掛けなければなおらない、それにしても、 ...
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ああ、お可懐なつかしい。思うおかたの御病気はきっとそれでなおります。」
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そばていたははも、『モー一なおって、晴衣はれぎせてたい……。』とって、してしまいました。んなはなしをしていると、わたくしにはいまでもその光景ありさまが、まざまざとうつってまいります……。
それはちょっとした神経の障害であり、若い娘にはありがちな憂鬱ゆううつであり、一時の曇りであって、一日二日でなおってしまうだろう。で、彼はただ未来のことを、いつものように静かな気持ちで考えた。
なおるかよ、この眼が」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ジョリクールはこれできっとなおると思った。刺絡しらくをすませて、医者はいろいろと薬剤やくざいにそえて注意をあたえた。わたしはもちろんとこの中にはいってはいなかった。
するとまもなく天子てんしさまの御病気ごびょうき薄紙うすがみをへぐように、きれいになおってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ようようすこしずつなおりかけてきた。でも長い重病のあとであったから、すこしでもうちの外に出るには、グラシエールの牧場ぼくじょうが青くなり始めるまで待たなければならなかった。