油斷ゆだん)” の例文
新字:油断
借る程の者なれば油斷ゆだんならざる男なりと言れし時三郎兵衞はギヨツとせし樣子やうすを見られしが又四郎右衞門は身代しんだい果程はてほどありこまつた事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みんな血走ちはしツてゐるか、困憊つかれきツた連中れんぢうばかりで、忍諸まご/″\してゐたらあご上がらうといふもんだから、各自てん/″\油斷ゆだんも何もありやしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
にたゝへておたかくとはいひしぬ歳月としつきこゝろくばりし甲斐かひやうや此詞このことばにまづ安心あんしんとはおもふものゝ運平うんぺいなほも油斷ゆだんをなさず起居たちゐにつけて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぢゃによって、おゆるしなされ、はやなびいたをば浮氣うはきゆゑとおもうてくださるな、よるやみ油斷ゆだんして、つい下心したごゝろられたゝめぢゃ。
いや、とき手代てだい樣子やうすが、井戸ゐどおとしたおとのやうで、ポカンとしたものであつた、とふ。さて/\油斷ゆだんらぬなか
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はるかくら土手どてすかしててぶつ/\いひながらかれさら豚小屋ぶたごやちかづいて燐寸マツチをさつとつてて「油斷ゆだんなんねえ」とつぶやいてまたぢた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしはまだいままでに、あのくらゐ氣性きしやうはげしいをんなは、一人ひとりことがありません。もしそのときでも油斷ゆだんしてゐたらば、一突ひとつきに脾腹ひばらかれたでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
八、 潰家かいかからの發火はつか地震直後ぢしんちよくごおこることもあり、一二時間いちにじかんのちおこることもある。油斷ゆだんなきことをようする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
最初さいしよから多少たせうこの心配しんぱいいでもなかつたが、かくめづらしき巨大きよだいうをの、左樣さう容易ようい腐敗ふはいすることもあるまいと油斷ゆだんしてつたが、その五日目いつかめあさわたくしはふとそれと氣付きづいた。
油斷ゆだんのならん女だね。……ほんとに君はまだおむこさんを貰はないのかね。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「でも、あの男は油斷ゆだんがなりませんよ」
他人たにんけば適當てきたうひやうといはれやせん別家べつけおなじき新田につたにまではからるゝほど油斷ゆだんのありしはいへうんかたぶときかさるにてもにくきは新田につたむすめなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
現在いまでもそんなことで油斷ゆだんらぬ、村落むら貧乏びんばふしたから荷車にぐるまばかりえてうまつてしまつたが荷車にぐるま檢査けんさつておどろいたなどといふことや
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
集めて相談さうだんしける中長兵衞心付こゝろづき彼のくすりを猫にくはせてためしけるに何の事もなければ是には何か樣子やうすあるべし我又致方いたしかたあれ隨分ずゐぶん油斷ゆだんあるべからずとて又七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
乳母 御方樣おんかたさま只今たゞいま居間ゐまらせられます。けた、もし、油斷ゆだんなうこゝろくばって。
夫よりして友次郎夫婦ふうふ路次ろじ油斷ゆだんなく少しも早く江戸にいた如何いかにもして身の落付おちつきを定めんものと炎暑えんしよの強きをもいとはず夜を日についゆくほど早晩いつしか大井川を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むこなんぞ、承知しようちするもんぢやねえ、あゝだ泥棒野郎どろぼうやらうきれえだ、はたけでもでも油斷ゆだんなんねえから」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かへしなをかふれどそでなみだれんともせずもすればわれともにと決死けつし素振そぶり油斷ゆだんならずなにはしかれいのちありてのものだねなりむすめこゝろ落附おちつかすにくはなしとしては婚儀こんぎ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)