トップ
>
橙
>
だいだい
ふりがな文庫
“
橙
(
だいだい
)” の例文
普通
(
ふつう
)
の
焚火
(
たきび
)
の焔なら
橙
(
だいだい
)
いろをしている。けれども木によりまたその
場処
(
ばしょ
)
によっては
変
(
へん
)
に赤いこともあれば大へん黄いろなこともある。
学者アラムハラドの見た着物
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
待つほどに首尾よくいったとみえて、気早にもあの三宝の飾り
橙
(
だいだい
)
までもこわきにしながら、おおいばりでその伝六が姿を見せました。
右門捕物帖:26 七七の橙
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
緑も
樺
(
かば
)
も
橙
(
だいだい
)
も黄も、その葉の茂みはおのおのその膨らみの中に強い胸を一つずつ蔵していて、溢れる生命に喘いでいるように見える。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
玄関に向ってあいている門番の小窓には、背後から
橙
(
だいだい
)
色のスタンドの光を浴びて、カラーなしのシャツ姿の爺さんが首を出していた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その下に
橙
(
だいだい
)
を置き橙に並びてそれと同じ大きさほどの地球儀を
据
(
す
)
ゑたり。この地球儀は二十世紀の年玉なりとて
鼠骨
(
そこつ
)
の贈りくれたるなり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
橙
(
だいだい
)
のかずをよけいくゞって来ているだけに、お
前
(
めえ
)
なんぞよりいろんなことがヒョイ/\とわけもなく俺たちには感じられるんだ。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
魚を釣っているのは、彦島の諸式商「なんでも屋」の親爺、まだ、五十には遠いのに、すっかり頭髪が絶えてしまい、
橙
(
だいだい
)
色に光っている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
大原君、サアこの
菓物
(
くだもの
)
を取り給え。名物揃いだ。
枇杷
(
びわ
)
の方は有名な房州
南無谷
(
なむや
)
の白枇杷だし、
橙
(
だいだい
)
のようなのは
淡路
(
あわじ
)
の
鳴門蜜柑
(
なるとみかん
)
だ。好きな方を
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
しかしこの初めて見るメロンは、外側が浅い
鮮
(
あざや
)
かな緑色で、それが内側の
橙
(
だいだい
)
色にとけ込んでいる様子が、
如何
(
いか
)
にも美しく、また高貴に見えた。
寺田先生と銀座
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そこはまだ濃密な煙に包まれてい、倒れた倉の残骸を、
橙
(
だいだい
)
色の
燄
(
ほのお
)
が
舐
(
な
)
めていたし、穀物の焦げる香ばしい匂いが、
咽
(
む
)
せるほど強く漂っていた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三吉は南向の日あたりの好い場所を
択
(
えら
)
んで、裏白だの、
譲葉
(
ゆずりは
)
だの、
橙
(
だいだい
)
だのを取散して、粗末ながら
注連飾
(
しめかざり
)
の用意をしていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
橙
(
だいだい
)
色のような小さい赤い本で、マノン・レスコオだの、ポオルとヴィルジニイだの、カルメン、若きウェルテルの悲しみ、など読み
耽
(
ふけ
)
りました。
文学的自叙伝
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「
苧
(
お
)
と
橙
(
だいだい
)
と笠と柿を売物にして、『親代々
瘡
(
かさ
)
っかき』と呼んだというのは
小噺
(
こばなし
)
にあるが、それとは少し違うようだな、八」
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それが、他にある
洋橙
(
オレンジ
)
とは異なり、いわゆる
橙
(
だいだい
)
色ではなくて、むしろ
熔岩
(
ラヴァ
)
色とでもいいたいほどに赤味の強い、大粒のブラッド・オレンジだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
窓の外では、廂の上に伸びでた
橙
(
だいだい
)
の木に、蜜蜂が何疋もたかって、白い花をほろほろとこぼしていた。次郎は、見るともなしにそれを見つめていた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
橙
(
だいだい
)
をコウブツなどというのも、最初はカブスではなかったかと思う。カブは九年母とも書いてもとは外来語らしい。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
金色
(
こんじき
)
の、聖者の
最期
(
さいご
)
を彩る
荘厳
(
そうごん
)
に沈んだ山と、空との境目が、その金色の荘厳を失って、
橙
(
だいだい
)
の黄なるに変りました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
灰色の
薄琥珀
(
タフェタ
)
の室内服を
寛
(
ゆるや
)
かに着こなし、いささか熟し過ぎたる
橙
(
だいだい
)
のごとき頬の色をしているのは、室内の
温気
(
うんき
)
に上気したためであろうと見受けられた。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
樫
(
かし
)
、梅、
橙
(
だいだい
)
などの庭木の門の上に黒い影を落としていて、門の内には
棕櫚
(
しゅろ
)
の二、三本、その扇めいた太い葉が風にあおられながらぴかぴかと
輝
(
ひか
)
っている。
河霧
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ここでは
注連
(
しめ
)
飾りが町家の
軒
(
のき
)
ごとに立てられて、通りの
角
(
かど
)
には年の暮れの市が立った。
橙
(
だいだい
)
、
注連
(
しめ
)
、
昆布
(
こんぶ
)
、
鰕
(
えび
)
などが行き通う人々の
眼
(
め
)
にあざやかに見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
枇杷
(
びわ
)
が花をつけ、遠くの日溜りからは
橙
(
だいだい
)
の実が目を射った。そして初冬の
時雨
(
しぐれ
)
はもう
霰
(
あられ
)
となって軒をはしった。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
よその屋敷の塀の上にたまたま、その蜜柑があったと思って、盗んでもほしい気がして寄って見ると、それは
橙
(
だいだい
)
であったり、喰べられない
花梨
(
かりん
)
の
実
(
み
)
であった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父の売ったものはこれは老人自身のひと趣向なので巾八寸位の
蒲鉾板
(
かまぼこいた
)
位のものに青竹を左右に立て、松を根じめにして、
注連縄
(
しめなわ
)
を張って、真ん中に
橙
(
だいだい
)
を置き
海老
(
えび
)
幕末維新懐古談:43 歳の市のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
丘の上の住宅は燃えており、麦畑のふちの銭湯と工場と寺院と何かが燃えており、その各々の火の色が白、赤、
橙
(
だいだい
)
、青、濃淡とりどりみんな違っているのである。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
頂上まで来たとき、青い
橙
(
だいだい
)
の実に埋った家の門を
這入
(
はい
)
った。そこが技師の自宅で句会はもう始っていた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
珊瑚や海藻よりも、いっそう強い色をもっていて、赤、もも色、
紅
(
くれない
)
、黄、
橙
(
だいだい
)
、褐色、青、緑、紺、
藍
(
あい
)
、空色、黒など、まるで、ぬりたてのペンキのように光っている。
無人島に生きる十六人
(新字新仮名)
/
須川邦彦
(著)
橙
(
だいだい
)
色や金縁や
淡碧
(
うすみどり
)
に縁取られた重畳してる線で、地平を取り囲みながら、柔らかな輝きを見せている雪のアルプス連山、ダ・ヴィンチ式の山々。アペニン山脈に落ちてくる
夕闇
(
ゆうやみ
)
。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その森を越えた二人は無言のまま、直ぐ鼻の先の小高い赤土山の上にコンモリと繁った深良屋敷の杉の樹と、梅と、
枇杷
(
びわ
)
と、
橙
(
だいだい
)
と梨の木立に囲まれている白い土蔵の裏手に来た。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それから青、
橙
(
だいだい
)
色、
藍
(
あい
)
、赤となって、まん中が赤です。白が一番おそく走っている道路で、となりへいくほど速くなり、まん中の赤の道路が一番速く、時速百キロで動いています
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
最初の会見は、縁側近く四つ五つ実を持つた
橙
(
だいだい
)
の樹のある、竹山の室で遂げられた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しからば茶色とはいかなる色であるかというに、赤から
橙
(
だいだい
)
を経て黄に至る
派手
(
はで
)
やかな色調が、黒味を帯びて飽和の度の減じたものである。すなわち光度の減少の結果生じた色である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
町々辻々は車をとめ、むしろを敷いて、松、
注連縄
(
しめなわ
)
、
歯朶
(
しだ
)
、ゆずり葉、
橙
(
だいだい
)
、
柚
(
ゆず
)
……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その中に、
廂
(
ひさし
)
に唐辛子、軒に
橙
(
だいだい
)
の皮を干した、……百姓家の片商売。白髪の婆が目を光らして、見るなよ、見るなよ、と言いそうな古納戸めいた
裡
(
なか
)
に、字も絵も解らぬ
大衝立
(
おおついたて
)
を置いた。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
松、杉、
檜
(
ひのき
)
、
樫
(
かし
)
、檞、柳、
槻
(
けやき
)
、桜、桃、梨、
橙
(
だいだい
)
、
楡
(
にれ
)
、
躑躅
(
つつじ
)
、
蜜柑
(
みかん
)
というようなものは皆同一種類で、米、麦、豆、
粟
(
あわ
)
、
稗
(
ひえ
)
、
黍
(
きび
)
、
蕎麦
(
そば
)
、
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
というような物もまた同じ種類であります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
橙
(
だいだい
)
の実十余個を取って堂下にころがして置いて、二人は堂にのぼって酒を飲んでいると、夜も
二更
(
にこう
)
に及ぶころ、ひとりの男が垣を
踰
(
こ
)
えて忍び込んで来たが、彼は堂下をぐるぐる廻りして
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今宵かぎりに売れ残った松飾りや
橙
(
だいだい
)
が見ているうちにどんどんなくなってゆく。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
人から
橙
(
だいだい
)
色の美しくて
啼
(
な
)
きのいいローラカナリヤを贈られて愛育していたのに、この間、死なせてしまい、このごろ窓の外に春の陽ざしのうららかなのを見ると、カナリヤが生きていたら
愉快な教室
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
その他、正月の飾り物には
苧
(
お
)
と
橙
(
だいだい
)
、小判、餅等なり。これ、親代々金持ち(緒や橙金餅)を祝するの意なりという。ある地方にありては、元日の雑煮中に必ず
芋
(
いも
)
の
頭
(
かしら
)
を入れてこれを食うといえり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
宗助も二尺余りの細い松を買って、門の柱に
釘付
(
くぎづけ
)
にした。それから大きな赤い
橙
(
だいだい
)
を
御供
(
おそなえ
)
の上に
載
(
の
)
せて、床の間に
据
(
す
)
えた。床にはいかがわしい
墨画
(
すみえ
)
の梅が、
蛤
(
はまぐり
)
の
格好
(
かっこう
)
をした月を
吐
(
は
)
いてかかっていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
装飾的な背景の前にどつしりと立つてゐる
橙
(
だいだい
)
色の女は視覚的に野蛮人の皮膚の匂を放つてゐた。それだけでも多少
辟易
(
へきえき
)
した上、装飾的な背景と調和しないことにも不快を感じずにはゐられなかつた。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とある屋敷の
橙
(
だいだい
)
に そして雀も啼いてゐる
閒花集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
君が代をかざれ
橙
(
だいだい
)
二万籠 舟泉
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「ええ、ああ、あの大きな
橙
(
だいだい
)
の星は
地平線
(
ちへいせん
)
から今上ります。おや、地平線じゃない。水平線かしら。そうです。ここは夜の海の
渚
(
なぎさ
)
ですよ」
シグナルとシグナレス
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
この変な七つの飾り
橙
(
だいだい
)
を、七日の朝の七ツ
刻
(
どき
)
から始めて、七つの駕籠に乗せ、だれにもわからぬよう見とがめられぬように
右門捕物帖:26 七七の橙
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
外はすっかり明るくなり、あけてある窓の向うに、斜めからさす朝日をあびて、
橙
(
だいだい
)
色に染まっている女竹の
藪
(
やぶ
)
が見えた。
古今集巻之五
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
橙
(
だいだい
)
のつゆをしぼって髪をゆすぐ水に入れます。ベッドの日向にはあなたの着物やかけぶとんやがほしてある。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その人は骨組ががっしりして大柄な
樫
(
かし
)
の木造りの
扉
(
ドア
)
のような感じのする男で、
橙
(
だいだい
)
色がかったチョコレート色の洋服が、日本人にしては珍らしく似合うという柄の人でした。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
夕陽
(
ゆうひ
)
の空には、旗のような鳥だの、垂天の翼のような雲だの、赤く、白く、紫に、
菫
(
すみれ
)
に、
橙
(
だいだい
)
に、
金色
(
こんじき
)
に変ずる山の形だの、空の色だのというものが、見る眼をあやにしたり
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
待ちなよ八、それじゃ、あんまり智恵がなさすぎる、——上の糸は苧や
橙
(
だいだい
)
の
術
(
て
)
でおと読ませるに決っている。その次は紐に相違ないが、輪にして端っこを結んであるから
襷
(
たすき
)
さ。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
赤銅
(
しゃくどう
)
色の
橅
(
ぶな
)
、金褐色の
栗
(
くり
)
、
珊瑚
(
さんご
)
色の房をつけた清涼茶、小さな火の舌を出してる炎のような桜、
橙
(
だいだい
)
色や
柚子
(
ゆず
)
色や栗色や焦げ
燧艾
(
ほくち
)
色など、さまざまな色の葉をつけてる
苔桃
(
こけもも
)
類の
叢
(
くさむら
)
。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
橙
漢検1級
部首:⽊
16画
“橙”を含む語句
橙色
橙黄色
黄橙色
橙樹
橙酢
夏橙
黄橙
香橙色
橙花
橙紅色
香橙
橙重
七橙
柑橙
楠目橙黄子
赤橙
洋橙
橙々
橙黄線
橙黄橘紅
...