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梶棒
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かじぼう
ふりがな文庫
“
梶棒
(
かじぼう
)” の例文
洋車が二台、
梶棒
(
かじぼう
)
の根もとのランプを都合四つ明るくきらめかせながら、静かに馬車廻しの植込みをまはつて出て行くところだつた。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
新吉が胸をワクワクさせている間に、五台の腕車が、店先で
梶棒
(
かじぼう
)
を
卸
(
おろ
)
した。真先に飛び降りたのは、足の先ばかり白い和泉屋であった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
両手に
梶棒
(
かじぼう
)
をつかみ、荷車を自分の前に大駆けに押しやって勢いのいい勇ましい響きを立てながら、市場町の方へ走っていった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
昔の
煉瓦建
(
れんがだ
)
てをそのまま改造したと思われる
漆喰
(
しっくい
)
塗りの
頑丈
(
がんじょう
)
な、
角
(
かど
)
地面の一構えに来て、
煌々
(
こうこう
)
と明るい入り口の前に車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を降ろすと
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「コリャ
剣呑
(
けんのん
)
だ、なにもう大丈夫、表のガラス一枚
破
(
わ
)
りましたよ、車へ載せて来ましたからつい
梶棒
(
かじぼう
)
をガラス戸へ突き当ててしまったんです」
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
▼ もっと見る
ある日、一台の車がM伯爵の門長屋へ
這入
(
はい
)
って来て、三畳と四畳半二間切りの狭苦しい父親の
住居
(
すまい
)
の前に
梶棒
(
かじぼう
)
を
卸
(
おろ
)
した。
夢遊病者の死
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は寒い雨の
袴
(
はかま
)
の
裾
(
すそ
)
に吹きかけるのも
厭
(
いと
)
わずに足を留めて、あの晩車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を握ったまま立往生をしたのはこのへんだろうと思う所を見廻した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
車夫
(
くるまや
)
は
梶棒
(
かじぼう
)
をおろして、奥様、お気の毒ですがその腰掛けの下にオランダ付け木(マッチの事ですよ)がはいっていますから、というのでしょう。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
切符売場の前で
梶棒
(
かじぼう
)
を据えられた時、私は俥から下りようとして、着物の裾が汗ばんだ
両脛
(
りょうはぎ
)
へ粘り着いた為めに、危く脚を縛られて倒れそうになった。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
三吉は腕を叩きて、「
確
(
たしか
)
に、請合いました。」「よくせい。」とひらりと召す。
梶棒
(
かじぼう
)
を挙げて一町ばかり
馳出
(
はせい
)
だせる
前面
(
むかい
)
より、
颯
(
さ
)
と
駈来
(
かけきた
)
る一頭の犬あり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母親が
徹夜
(
てつや
)
して縫ってくれた
木綿
(
もめん
)
の
三紋
(
みつもん
)
の羽織に新調のメリンスの
兵児帯
(
へこおび
)
、車夫は色のあせた
毛布
(
けっとう
)
を
袴
(
はかま
)
の上にかけて、
梶棒
(
かじぼう
)
を上げた。なんとなく胸がおどった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
車上の医師は春の
朧夜
(
おぼろよ
)
、揺られながらにトロトロとまどろむとき、小道に分け入るより、ハッとわれに返りしころは、すでに
梶棒
(
かじぼう
)
はトンと玄関に突かれてあった。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
その橇は人力車の輪を
取除
(
とりはず
)
して、それに「いたや」の堅い木片で造った橇を代用したようなものだ。
梶棒
(
かじぼう
)
と
後押棒
(
あとかじぼう
)
とあって人夫が二人掛りで引いたり押したりする。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼女は車道の隅から車の前を突然突切ろうとしたので、車夫はこれを避けたが、彼女の破れた袖無しに
釦
(
ぼたん
)
がなかったため、風に煽られて外に広がり、
梶棒
(
かじぼう
)
に引掛った。
些細な事件
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
どうかした日の
晩方
(
ばんがた
)
、川から帰りがけに、
背負
(
しょ
)
ってる
籠
(
かご
)
がいつもの晩より重く、押してる車が思うように動かないのさ。お前さんは、車の
梶棒
(
かじぼう
)
の間へ
膝
(
ひざ
)
をついて倒れる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ある
時雨
(
しぐれ
)
の降る晩のことです。
私
(
わたし
)
を乗せた
人力車
(
じんりきしゃ
)
は、何度も
大森界隈
(
おおもりかいわい
)
の
険
(
けわ
)
しい坂を上ったり下りたりして、やっと
竹藪
(
たけやぶ
)
に囲まれた、小さな西洋館の前に
梶棒
(
かじぼう
)
を下しました。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前は軍医、あとは私、二台の車が前後して走るうちに、三宅坂上の陸軍
衛戍
(
えいじゅ
)
病院の前に来かかった時、前の車夫は突然に
梶棒
(
かじぼう
)
を右へ向けた。軍医は病院の門に入るのである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、病み衰えた顔に淋しい微笑を浮べ、
梶棒
(
かじぼう
)
の上ると共に互に黙礼を
換
(
かわ
)
して
訣
(
わか
)
れた。暫らくは涙ぐましく俥の跡を
目送
(
みおく
)
ったが、これが紅葉と私との最後の
憶出
(
おもいで
)
の深い会見であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
僕は「大千住の先の小菅だよ」と車夫に言ったが、車夫は返詞をせずに
梶棒
(
かじぼう
)
を上げた。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
帰途
(
かえり
)
は夜と覚悟してか、まのぬけた
小田原提灯
(
おだわらちょうちん
)
が一つ
梶棒
(
かじぼう
)
の先にぶら下がっていた。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
車夫
(
しゃふ
)
は年頃
四十五六
(
しじゅうごろく
)
で
小肥満
(
こでっぷり
)
とした
小力
(
こぢから
)
の有りそうな男で、
酒手
(
さかて
)
を
請取
(
うけと
)
り荷を積み、身支度をして
梶棒
(
かじぼう
)
を
掴
(
つか
)
んだなり、がら/\と引出しましたが、古河から
藤岡
(
ふじおか
)
までは二里
余
(
よ
)
の
里程
(
みちのり
)
。
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
梶棒
(
かじぼう
)
の先につけた
提灯
(
ちょうちん
)
の光が車夫の手の静脈を太く浮び上らしていた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
スマートな
広東
(
カントン
)
服や腕環などから見ても、
俥夫
(
しゃふ
)
は、いずれこの俥は祝儀の出る門口へつくだろうと予測していたのに、羽衣町の裏通りのきたない縄のれんの軒先で止められたので
梶棒
(
かじぼう
)
を迷わせた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
車は
一走
(
ひとはし
)
りして、
燈火
(
ともしび
)
明
(
あか
)
るい町の
唯有
(
とあ
)
る家の前に
梶棒
(
かじぼう
)
を下ろした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
爺はそう言って、車の
梶棒
(
かじぼう
)
で人々を
掻
(
か
)
き
除
(
の
)
けるようにした。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
若い車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を静かにおろして私に言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
梶棒
(
かじぼう
)
を下ろして飲みし清水かな
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その前車は、大きな鉄の心棒と、それに
嵌
(
は
)
め込んである重々しい
梶棒
(
かじぼう
)
と、またその心棒をささえるばかに大きな二つの車輪とでできていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
やがて車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を
下
(
おろ
)
した。暗い幌の中を出ると、高い石段の上に
萱葺
(
かやぶき
)
の山門が見えた。Oは石段を
上
(
のぼ
)
る前に、門前の
稲田
(
いなだ
)
の
縁
(
ふち
)
に立って小便をした。
初秋の一日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ふと車が
停
(
と
)
まって
梶棒
(
かじぼう
)
がおろされたので葉子ははっと夢
心地
(
ごこち
)
からわれに返った。恐ろしい吹き降りになっていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私はその姿を見るが早いか、素早く幌の下へ身を投じて、車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を上げる刹那の間も、異様な興奮に動かされながら、『あいつだ。』と
呟
(
つぶや
)
かずにはいられませんでした。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一里半ばかり、鼻のもげるような
吹曝
(
ふきさら
)
しの寒い
田圃道
(
たんぼみち
)
を、
腕車
(
くるま
)
でノロノロやって来たので、
梶棒
(
かじぼう
)
と一緒に
店頭
(
みせさき
)
へ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が
硬張
(
こわば
)
っていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
高輪から人力車に乗って急がせて来ると、金杉の通りで車夫は路ばたに
梶棒
(
かじぼう
)
をおろした。
月の夜がたり
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「ええッ
此奴
(
こいつ
)
。」と度外れの大声に耳を驚かして眼を開けば、
梶棒
(
かじぼう
)
をがたりと
下
(
おろ
)
して、「
夫人
(
おくさま
)
提灯
(
ちょうちん
)
を
点
(
つ
)
けますからちょいとどうぞ。」と車夫の吉造、
婦人
(
おんな
)
を一人輪の下に
轢
(
ひ
)
かんとせし
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
車をがらがらと門前まで乗り付けて、
此所
(
ここ
)
だ此所だと
梶棒
(
かじぼう
)
を
下
(
おろ
)
さした声は
慥
(
たし
)
かに三年
前
(
ぜん
)
分れた時そっくりである。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
車夫は葉子を助けようにも
梶棒
(
かじぼう
)
を離れれば車をけし飛ばされるので、
提灯
(
ちょうちん
)
の
尻
(
しり
)
を
風上
(
かざかみ
)
のほうに
斜
(
しゃ
)
に向けて目八
分
(
ぶ
)
に上げながら何か大声に後ろから声をかけていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「作さんを嫌って、お島さんが逃げたって云うんで、近所じゃ大評判さ」とにかく今夜は帰ることにして、銀さんは、
漸
(
ようよ
)
うお島を俥に載せると、
梶棒
(
かじぼう
)
につかまりながら話しはじめた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
車夫
(
わかいし
)
はたった今乗せたばかりの処だろう、
空車
(
からぐるま
)
の気前を見せて、
一
(
ひと
)
つ
駆
(
が
)
けで、
顱巻
(
はちまき
)
の上へ
梶棒
(
かじぼう
)
を突上げる
勢
(
いきおい
)
で、
真暗
(
まっくら
)
な坂へストンと
摺込
(
すべりこ
)
んだと思うと、むっくり線路の
真中
(
まんなか
)
を躍り上って、や
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お銀は窓から伸びあがって覗いてみると、車夫の元吉は
梶棒
(
かじぼう
)
をおろして、くぐり門から一旦はいったかと思うと、さらに内から正面の門を左右にひらいて、車を玄関さきまで
挽
(
ひ
)
き込んで行った。
有喜世新聞の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのうち
俥
(
くるま
)
の
梶棒
(
かじぼう
)
が一軒の宿屋のような
構
(
かまえ
)
の門口へ横づけになった。自分は何だか
暖簾
(
のれん
)
を
潜
(
くぐ
)
って土間へ
這入
(
はい
)
ったような気がしたがたしかには覚えていない。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時車の
梶棒
(
かじぼう
)
の間から後ろ向きに箱に
倚
(
よ
)
りかかっているらしい子供の脚を見たように思った。
卑怯者
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「それじゃ私は先へ行っておりますで、
明朝
(
あした
)
はどうでも来て下さるだろうね。」母親は
行李
(
こうり
)
を一つ
股
(
また
)
の下へ
挿
(
はさ
)
んで、車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を持ち上げたときに、
咽喉
(
のど
)
の
塞
(
ふさ
)
がりそうな声を出して言うと
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
口を
極
(
きわ
)
めてすでに立ち去りたる巡査を
罵
(
ののし
)
り、
満腔
(
まんこう
)
の熱気を吐きつつ、思わず腕を
擦
(
さす
)
りしが、四谷組合と
記
(
しる
)
したる
煤
(
すす
)
け
提灯
(
ちょうちん
)
の
蝋燭
(
ろうそく
)
を今継ぎ足して、力なげに
梶棒
(
かじぼう
)
を取り上ぐる老車夫の
風采
(
ふうさい
)
を見て
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五十分ほど
後
(
おく
)
れて、玄関の松の根際に
梶棒
(
かじぼう
)
を上げた一挺は、黒い
幌
(
ほろ
)
を
卸
(
おろ
)
したまま、
甲野
(
こうの
)
の屋敷を指して
馳
(
か
)
ける。小説はこの三挺の使命を順次に述べなければならぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やにわに
対曳
(
さしび
)
きの綱を
梶棒
(
かじぼう
)
に投げ
懸
(
か
)
くれば、疲れたる車夫は勢いを得て
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はやむを得ず車夫に
梶棒
(
かじぼう
)
を向け直させて、思いも寄らない本郷へ行けと命じた事を記憶していた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と話は
極
(
きま
)
った
筈
(
はず
)
にして、委細構わず、車夫は
取着
(
とッつ
)
いて
梶棒
(
かじぼう
)
を差向ける。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人は
俥
(
くるま
)
を
雇
(
やと
)
って病院を出た。先へ
梶棒
(
かじぼう
)
を上げた三沢の車夫が余り威勢よく
馳
(
か
)
けるので、自分は大きな声でそれを留めようとした。三沢は
後
(
うしろ
)
を振り向いて、手を振った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寺院は随一の
華主
(
とくい
)
なる
豆府
(
とうふ
)
屋の
担夫
(
かつぎ
)
一人、
夕巡回
(
ゆうまわり
)
にまた例の
商売
(
あきない
)
をなさんとて、四ツ谷
油揚坂
(
あぶらげざか
)
なる宗福寺に
来
(
きた
)
りけるが、数十輛の馬車、
腕車
(
わんしゃ
)
、
梶棒
(
かじぼう
)
を連ね輪を
駢
(
なら
)
べて、肥馬
嘶
(
いなな
)
き、道を擁し、
馭者
(
ぎょしゃ
)
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
敬太郎も
後
(
おく
)
れないように一台雇った。車夫は
梶棒
(
かじぼう
)
を上げながら、どちらへと聞いた。敬太郎はあの車の
後
(
あと
)
について行けと命じた。車夫はへいと云ってむやみに
馳
(
か
)
け出した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
梶
漢検準1級
部首:⽊
11画
棒
常用漢字
小6
部首:⽊
12画
“梶”で始まる語句
梶
梶原
梶川
梶原景季
梶平
梶井
梶取
梶王
梶女
梶派