)” の例文
首をくくりつけた板は、明かに舟にしたもので、その船首に当る箇所には、船名のつもりか、筆太に「獄門舟」としるされてさえいた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
町幅一杯まちはばいっぱいともいうべき竜宮城りゅうぐうじょうしたる大燈籠おおどうろうの中にいく十の火を点ぜるものなど、火光美しくきてことに目ざましくあざやかなりし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
暁の下に彼らは遠い祖先の宇治川先陣を、今朝の自分にしながら、もうなぎさから白波をあげて、大河のうちへ馬首をすすめていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにも屈せずオースチン師は、依然として冷静に構えていたが、相手に匕首あいくちでもするかのような透徹した寸語でこう云った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鶴見はここにも歓喜の予感をむさぼり求める。そしてみずからを大虫にして、原始的の泥沼のなかを這い廻ることすらいとわない。
と、まるで芝居がかりの妖婆ようばのような口調でいった。そして短刀をしてジリジリと青竜王の方へ近づいてくるのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
宮部たわむれて曰く、「君何ぞそれ商骨にむ、一にここに到る」と。彼れ艴然ふつぜん刀柄とうへいして曰く、「何ぞ我を侮辱するや」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
もって細君からせられた先生は実に普通の意味において乗るちょう事のいかなるものなるかをさえ解し得ざる男なり
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時攫者キャッチャーはその球を取るやいなや直ちに第二基に向って投ずべく第二基人ベースマンはその球を取りて走者に触れんとすべし。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
西洋文学から得た輸入思想を便たよりにして、例えば銀座のかどのライオンを以て直ちに巴里パリーのカッフェーにし帝国劇場を以てオペラになぞらえるなぞ
およそ抜穂は卜部、国郡司以下及び雑色人ぞうしきびと等をひきゐて田にのぞんでこれを抜く。——先づ初抜四束を取つて供御くごの飯にし、自余は皆黒白二酒にす 云々
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
犯人は洋服姿の大男で、中指のない四本指の右手が最大の特徴とくちょう凶器きょうきせられつつ沈着なる宿直員の観察かんさつ
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
この詩を広く人生にして解せむか、いはく、凡俗の大衆は眼低し。法利賽パリサイの徒と共に虚偽の生を営みて、醜辱汚穢おわいの沼に網うつ、名や財や、はた楽欲ぎようよくあさらむとすなり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
やっと兵曹長となり、一応の余裕が出来て、あたりを見廻した時、ひそかに育てて来た復讐のきばは、実はむなしいものにせられてあったことに気付いたに違いないのだ。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
こうする……どうするのかと思うと、やにわに大刀だいとう銀百足ぎんむかでの鞘を払った造酒だ。お妙の胸ぐら取ってそこに引き据えると同時に、紙のように白い咽喉首のどくび切尖きっさきした。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「マガイ」とは馬爪ばづ鼈甲べっこうに似たらしめたるにて、現今の護謨ゴム象牙ぞうげせると同じく似て非なるものなれば、これを以て妾を呼びしことの如何いかばかり名言なりしかを知るべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
管仲くわんちうとみ公室こうしつ(三二)し、(三三)反坫はんてんあり。(三四)齊人せいひともつおごるとさず。管仲くわんちうしゆつす。(三五)齊國せいこく其政そのまつりごとしたがつて、つね諸矦しよこうつよかりき。のち餘年よねんにして晏子あんしあり。
さすがに虐殺することだけは制止したが、自身先に立って手槍をしながら、鳥刺しの逃げ去ろうとした行く手を遮断すると、農民達に命じてこれを搦め捕らせようとさせました。
豹のような水夫は、ひょうのように、疑深く、なおもピストルを、僕の胸にしたままだ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
猛犬まうけんは、——土地とちではまだ、深山みやまにかくれてきてことしんぜられてます——雪中行軍せつちうかうぐんして、なか河内かはちやなけようとした冒險ばうけんに、教授けうじゆ二人ふたり某中學生それのちうがくせいが十五にん
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
金五郎 (忠太郎を殺し、下手人を鳥羽田に塗りつけ、おのれは水熊へこわもてで、入婿いりむこになる計画を捨てず、鳥羽田の刀を拾って、忠太郎の隙を伺い、忍び寄り刀をし、今や刺さんとする)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
自己にせる人物に対する作者の残忍なる描写……等の軽度なるものより
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ありていに云うと、父が折角美しい母の印象をそのまゝ大切に保存しようと努めないで、それをことさらまわしい路上の屍骸にしたりして、腐りたゞれた醜悪なものと思い込もうとするのには
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(特務曹長ピストルをまさに自殺せんとす。)
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この咽喉のどけんしたりと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひるまぬどころか、小林の右手にかじりついて、ピストルを奪いとり、それをしつつ、じりじり通路の方へあとしざりを始めた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と物のにつかれたかのように、狂おしくなった新九郎は、生れて初めて抜いた己れの脇差を、ギラリと千浪の胸へしながら
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彩牋堂主人とは有名な何某なにがし株式会社取締役の一人何某君の戯号ぎごうである。本名はいささかはばかりあればここには妓輩ぎはい口吻こうふんしてヨウさんといって置こう。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
出口にはどこから現れたのか、武装した三十名ほどの警官隊がズラリと拳銃ピストルして鉄壁てっぺきのように並んでいる。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼の幼きや土塊どかいを以て宮闕きゅうけつの状をつくり、曰く、これ織田信長が禁裡きんりの荒廃を修繕したるにするなりと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一、古句を半分位ぬすみ用うるとも半分だけ新しくば苦しからず。時には古句中の好材料を取り来りて自家の用に供すべし。あるいは古句の調にして調子の変化をもさとるべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
堤の上に登り切った高城の姿が、宇治の茫然とした視野の端を影絵のように動いて、拳銃を女にしながら急速にその方向に近づくらしい。女の全身が宇治の視線の中で凝然ぎょうぜんと収縮する。——
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
突如、非人が意外な罵声ばせいをあげると、やにわに懐中からかくしもった種ガ島の短銃を取り出して、駕籠の中をめざしつつ右手めてしたかと見えましたが、あっと思う間に轟然と打ち放しました。
その屍体の風貌の自己に彷彿ほうふつたるものあるを認めしに相違なかるべく、その結果、おのずから自己虐殺の錯覚、幻覚に誘致され、屍体を自己にし、数回に亘りてこれを絞首したるものと認むるは
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
抜き身の斬っ尖を膝に敷きこんだチョビ安の喉元へしたのです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
己は白刃はくじんを胸にせられたと同様の脅喝きょうかつに襲われた事を感じた。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
して見ると、座長の道化服は、あの時明智に恐ろしい毒薬の注射針をした、復讐鬼その人であろうか。そうとしか考えられぬ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
薙刀なぎなたの光芒を描きながら、身をかろがろと躍らして舞う。自身を天狗にして、舞と薙刀の妙を、妖しいばかり描き尽くす。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「折れた紫陽花」はニヤリと意地わるい笑みを浮べると、重い拳銃ピストルの口を帆村の背中にした。あッ、危い!
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
われは或一派の詩人の如く銀座通ぎんざどおり燈火とうかを以て直ちにブウルヴァールのにぎわいに比し帝国劇場を以てオペラになぞらへ日比谷ひびやの公園を取りてルュキザンブルにするが如き誇張と仮設を
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
恐いものをも知らぬげに、ぴたり強刀を主水之介の面前にしました。さすがに一流の使い手らしく、なかなか侮りがたい剣相を見せていましたが、しかし退屈男のきもの太さはそれ以上でした。
もはや眼前に迫る死のぎりぎりの瞬間で、見栄も強がりも捨てた私が、どのような態度を取るか。私という個体の滅亡をたくらんで、鋼鉄の銃剣が私の身体にせられた瞬間、私は逃げるだろうか。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
自分を謙信にし、家康を信玄に比し、二者協力して、天下に志を伸べん——というのが、かれの本音のところらしかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
キンチャコフは、本性を露骨ろこつにあらわして、「火の玉」少尉にしたピストルをひっこめようとはしない。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこにせられているのは、意外にも、十数本の槍先でした。
した拳銃を下に垂れ、しばらく不快な慄えがとまらなかった。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「ばかな。愚眼をまどわして、風雨をし、昼夜の黒白をあやまらす術はあっても、あのあきらかな星座を変じることなどできるものではない」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流石さすがに、教養のある将校たちのこととて、無暗に、拳銃をしたり、軍刀をひらめかしたりはしなかったが、司令官か、参謀長かの一言さえあれば、刹那せつなに、司令部の広間には、流血の大惨事が
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでも「仁寿」「承香じょうこう」「常寧じょうねい」「校書」「清涼」「弘徽こき」「麗景」「登花」の八殿でんせられている大屋根と大屋根との谷はずいぶん長い
首領はピタリとその団員の胸にピストルをした。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)