トップ
>
揮
>
ふる
ふりがな文庫
“
揮
(
ふる
)” の例文
鳴鶴等一流の諸先生が達筆を
揮
(
ふる
)
ったものだが、一時は守田宝丹のひねくれた書法が奇抜というので、提灯屋の書いた看板まで宝丹流。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
後
事
(
こと
)
露
(
あら
)
われ夫
惧
(
おそ
)
れて妻を離縁したと載せ、スプレンゲルはある人鬼がその妻を犯すを
睹
(
み
)
、刀を
揮
(
ふる
)
うて斬れども更に斬れなんだと記す。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかし、審配は毅然として、防禦の采配を
揮
(
ふる
)
った。ために、外城の門は陥ちたが内城の壁門は依然として固く、さしもの曹操をして
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだ自殺までには大分時間があるから、充分、十二分に落ち付いて、紫の煙と、
琥珀
(
こはく
)
色の液体を相手に悠々と万年筆を
揮
(
ふる
)
う事にする。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お千勢の矢場というは、お千勢の母親のお組が采配を
揮
(
ふる
)
い、娘のお千勢の
愛嬌
(
あいきょう
)
を看板に、この二三年めきめきと仕上げた店でした。
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
が、彼はそれを両手に抱くと、片膝砂へついたまま、
渾身
(
こんしん
)
の力を
揮
(
ふる
)
い起して、ともかくも岩の根を
埋
(
うず
)
めた砂の中からは抱え上げた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして腕組みをして
昂然
(
こうぜん
)
とした態度を作つた。それには不自然なところがあつた。兄はありたけの勇を
揮
(
ふる
)
つて弟の瞳に
睨
(
にら
)
み合つた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
衛兵は三たび呼んだが、それでも返事のないのを見て、彼はやにわに銃剣を
揮
(
ふる
)
って大尉の胸を突き刺した。大尉は悲鳴をあげて倒れた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
斉名は筆を
揮
(
ふる
)
って書いた。ところで卿の御気に召さなかった。そして卿は
更
(
あらた
)
めて大江
ノ
以言に委嘱された。以言も骨を折って起草した。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
究理の利剣もその刃
脆
(
もろ
)
くも地にこぼれ、科学の斧も其力を
揮
(
ふる
)
ふに由なく、たゞ詩と信仰のみ最大の権威を以て天啓の如く世界を司配す。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼は
髪剃
(
かみそり
)
を
揮
(
ふる
)
うに当って、
毫
(
ごう
)
も文明の法則を解しておらん。頬にあたる時はがりりと音がした。
揉
(
も
)
み
上
(
あげ
)
の所ではぞきりと動脈が鳴った。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
神尾とても看板書きになったわけではなく、頼まれたればこそ、こうして筆を
揮
(
ふる
)
うのでありましょう。そこへ廊下を歩いて来る人の音
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
邦強く敵無くんば、
将
(
まさ
)
に長策を
揮
(
ふる
)
うて四方を
鞭撻
(
べんたつ
)
せんとす、則ち人をして
己
(
おのれ
)
に備うるに
遑
(
いとま
)
あらざらしむ、何ぞ区々防禦のみを言わんや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ちええ、面倒だ。と剣を
揮
(
ふる
)
い、
胸前
(
むなさき
)
目懸けて突込みしが、心
急
(
せ
)
きたる手元狂いて、肩先ぐざと突通せば、きゃッと
魂消
(
たまぎ
)
る下枝の声。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
良
(
い
)
い分別といふのは
外
(
ほか
)
でもない、もしか卜新老が約束に
背
(
そむ
)
いたら、持前のお医者の腕を
揮
(
ふる
)
つてみせる事だ。ゲエテが言つたぢやないか。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
分けや丸、半玉と十余人の抱えの
稼
(
かせ
)
ぎからあがる一万もの月々の収入も身につかず、
辣腕
(
らつわん
)
を
揮
(
ふる
)
いつくした果てに、負債で首がまわらず
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
種々の境遇の變化の中に現れる主人公の性格を強調した心理描寫の筆を
揮
(
ふる
)
ふべきであつたと思ふが、浮雲の如く去來する
心持
(
ムウド
)
は描けても
貝殻追放:006 「八千代集」を読む
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
雪の底の生活に飽き飽きした若い人などが、何という目的もなしに、鍬を
揮
(
ふる
)
うて庭前の雪を掘り、土の色を見ようとしたという話もある。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
諸流の調和を図りまた家元なるものの特権を
揮
(
ふる
)
ふて後進年少が進んで行かうといふ道を
杜絶
(
とぜつ
)
することのないやうにしてもらはねばならぬ。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それを
故
(
もと
)
の社主は放任していたのである。新聞は新しい社主の手に渡った。少壮政治家の鉄のような
腕
(
かいな
)
が意識ある意志によって
揮
(
ふる
)
われた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
で、禿はその通の病人だから、今ではあの女が
独
(
ひとり
)
で腕を
揮
(
ふる
)
つて益す盛に
遣
(
や
)
つてゐる。これ
則
(
すなは
)
ち『
美人
(
びじ
)
クリイム』の名ある
所以
(
ゆゑん
)
さ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そういう訳なら案内は
不用
(
いらぬ
)
。お前はここで待っているがよい。……さて、数馬殿、お気の毒じゃが、腕を
揮
(
ふる
)
っていただかなければならぬ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ある日は「御料理仕出し」の
招牌
(
かんばん
)
をたのまれて
千蔭
(
ちかげ
)
流の筆を
揮
(
ふる
)
い、そうした家の女たちから頼まれる手紙の代筆をしながらも
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それから自分の机から硯をひきよせ、誰かが揮毫の依頼においていったものらしい画箋紙を切って「読意如読書」と筆を
揮
(
ふる
)
い
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
昔の男一匹は動物的に猛勇を
揮
(
ふる
)
うを特性としたとはいいながら、なおかつ当時においても女子よりは
思慮
(
しりょ
)
と判断の力が
優
(
すぐ
)
れていたであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
方
(
まさ
)
に一触即発のこの時、天は絶妙な劇作家的手腕を
揮
(
ふる
)
って人々を驚かせた。かの歴史的な大惨禍、一八八九年の大
颶風
(
ハリケーン
)
が襲来したのである。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし、この、「長い黒の
外套
(
がいとう
)
」を着て
闇黒
(
あんこく
)
に
棲
(
す
)
む妖怪は、
心願
(
しんがん
)
のようにその
兇刃
(
きょうじん
)
を街路の売春婦にのみ限定して
揮
(
ふる
)
ったのだ。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
ロンドンのサボイ・ホテルやカルトンで腕を
揮
(
ふる
)
っていた頃には、どれほどの
喰
(
く
)
いしん坊がはるばる海を渡って彼の皿を求めに来たか知れない。
世界の「料理王逝く」ということから
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
あたかも利刃を
揮
(
ふる
)
って泥土を
斬
(
き
)
るに等しい何らの手答えのない葛藤を何年か続けた後に、二葉亭は終に力負け
根
(
こん
)
負けがして
草臥
(
くたび
)
れてしまった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
文士筆を
揮
(
ふる
)
ふ猶英雄剣を揮ふが如し。共に空を撃つが為めに非ず
為
(
な
)
す所あるが為也。万の弾丸、千の剣芒、
若
(
も
)
し世を益せずんば空の空なるのみ。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
同行の高頭君は、退屈紛れに、杖を沙上に
揮
(
ふる
)
って、それを模写していた。自然は欺かれず、人間の智能は、鹿の足痕一つをだに描き得なかった。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
これは、美和子の
揮
(
ふる
)
う論理の中でも、相当夫人にとっては、痛いものであるだけに、夫人はますます
苛々
(
いらいら
)
して、表情らしい表情を無くして
了
(
しま
)
い
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
欧米国民は夫れを知るや知らずや、中にも露国は傲慢無礼、日本を蔑視し、東洋に暴威を
揮
(
ふる
)
はんとせしより、日本国民の血は沸けり、骨は鳴れり。
警戒すべき日本
(新字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
後進を
誘掖
(
いうえき
)
するに到りては、今の
独逸
(
ドイツ
)
文学に酔へる青年幻想家、いかでか一鞭を
揮
(
ふる
)
ふて、馬を原頭に立るの勇気無らん。
劇詩の前途如何
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
私も人々の間にまじって
一臂
(
いちび
)
の力を
揮
(
ふる
)
い一人の悪漢を
捩
(
ね
)
じあげましたが、よく見るとそれは皮肉にも竹内だったのです。
暗夜の格闘
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
と、何処からともなく又
数多
(
たくさん
)
の鼠が出て、伊右衛門の
揮
(
ふる
)
っている刀にからみついた。其のひょうしに伊右衛門は刀を
執
(
と
)
り落した。其処を与茂七が
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ゾパルは新知識の所有者を以て
自
(
みずか
)
ら任じ、新説の提唱をなすが如く思いて意気
揚々
(
ようよう
)
として舌を
揮
(
ふる
)
う、これに対してヨブは右の如く答えるのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
私にはすぐこの男の低能なことがわかったので、もちろん、自分の手練を
揮
(
ふる
)
うに持って来いの相手として目をつけた。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
崩れを横切って偃松の少ない右の尾根を一息に登る、登って山稜の一角に立った、そして力任せに杖を
揮
(
ふる
)
って大声に叫び出さずにはいられなかった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
いよいよ
戈
(
ほこ
)
を
揮
(
ふる
)
いもしくは弁を揮わんとし、現在の偶像——それもすでに揺ぎ始めてる——にたいして、騒々しく出征の途にのぼらんとする時には
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
既に
隻脚
(
かたあし
)
を墓に入れしひとりの者程なくかの僧院のために歎き、權をその上に
揮
(
ふる
)
ひしことを悲しまむ 一二一—一二三
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
が、ここで、そなたが、
普留那
(
ふるな
)
の弁口を
揮
(
ふる
)
うて、西の米をどしどし売らせたなら、米価は、一どきに低落し、長崎屋方は、総くずれになるは
必定
(
ひつじょう
)
だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
左様
(
さう
)
です、
若
(
も
)
し松本等の主張ならば、僕も驚きは致しませぬ、
然
(
しか
)
るに
彼
(
あ
)
の温良なる、
寧
(
むし
)
ろ温柔の
嫌
(
きらひ
)
ある浦和武平が、涙を
揮
(
ふる
)
つて之を宣言したのです
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
舟は深碧の水もて
繞
(
めぐら
)
されたる高き
岩窟
(
いはや
)
に近づきぬ。ジエンナロは杖を
揮
(
ふる
)
ひて舷側の水を打てり。われは且怒り且悲みて、傍より其面を打ち
目守
(
まも
)
りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
流汗を
揮
(
ふる
)
いつつ華氏九十九度の
香港
(
ほんこん
)
より申し上げ
候
(
そろ
)
。
佐世保
(
させほ
)
抜錨
(
ばつびょう
)
までは先便すでに申し上げ置きたる通りに
有之
(
これあり
)
候。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
取扱うや、概して科学者の態度だ。すなわち実験室において、
南京
(
なんきん
)
兎を注射するごとく、もしくは解剖室において、解剖刀を
揮
(
ふる
)
うがごとくであった、云々
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
四本の脚を踏んばって突き刺さった槍の力を受け止めていた牛は、忽ち渾身の勇を
揮
(
ふる
)
ってそれを
反
(
は
)
ね返し、鋭い大きな二本の角でぐさりと馬の右腹を突いた。
闘牛
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
起
(
た
)
ち上って、また突進すると、面倒なりとばかり、大男は、怪腕を
揮
(
ふる
)
って、若い水夫の顔面に一撃を加えた。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
揮
(
ふる
)
って友人の笑覧に供したまでなのだが、かくの通り立派に表装してしまったね、三月十日の空襲の際には、伝家の宝物の如く大事に持って逃げたというんだ。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そしてつい此間は、彼が断崖の上で鶴嘴を
揮
(
ふる
)
うと見るや、徳さん親子が魔の淵の藻屑と消えたではないか。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
揮
常用漢字
小6
部首:⼿
12画
“揮”を含む語句
一揮
指揮
揮毫
発揮
指揮者
發揮
揮発油
揮下
揮廻
揮上
墨客揮犀
揮発
揮返
揮配
揮舞
揮良夫
揮毫者
揮𢌞
搉揮
擢揮
...