“挨拶:あいさつ” の例文
“挨拶:あいさつ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花42
宮沢賢治37
夏目漱石35
紫式部32
海野十三31
“挨拶:あいさつ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語48.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語11.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)6.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
これに対する楠緒さんの挨拶あいさつも、今では遠い過去になって、もう呼び出す事のできないほど、記憶の底に沈んでしまった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敬太郎はこの言訳に対して適当と思うような挨拶あいさつを一と口と、それに添えた叮嚀ていねい御辞儀おじぎを一つした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は暑くて草臥くたびれて、それどころではありませんでしたから、ただ口の先でい加減な挨拶あいさつをしていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、御苦労だった」と、わしは挨拶あいさつをした。「ところで、もう一つだけ、お前さんに見て貰いたいものがあるんだが」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女はたまの里帰りという顔つきで、母屋もやの台所口から広い裏庭づたいに兄のいるところへもちょっと挨拶あいさつに来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこへ半蔵の父吉左衛門も茶色な袖無そでなし羽織などを重ねながらちょっと挨拶あいさつに来て、水戸浪士のうわさを始める。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まき氏の家は大手町の川に臨んだ閑静なすまいで、私もこの春広島へ戻って来ると一度挨拶あいさつに行ったことがある。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
信一郎の方から、改めて挨拶あいさつする機会のないほど、向うは親しく馴々なれなれしく、友達か何かのように言葉をかけた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこの二羽が互いに夢中になって挨拶あいさつを交し、そして突然、互いにからみ合うように痙攣けいれんするにしても――
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
検疫官の目は事務長への挨拶あいさつもそこそこに、思いきり派手はでな装いを凝らした葉子のほうに吸い付けられるらしかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
暗い二階の部屋へやに案内されて、愛子が準備しておいた床に横になると葉子はだれに挨拶あいさつもせずにただ泣き続けた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
骨身にみて痛かりけるを妻は赤くなりて推怺おしこらへつつ、さり気無く挨拶あいさつせるを、風早は見かねたりけん、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
けれども事が余り意外なので、すぐ挨拶あいさつをする余裕よゆうも出ず少しはあっけに取られた気味で、ぼんやりしていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とにかく私は何とか挨拶あいさつすべきところを黙っていたのですから、私はこの怠慢の罪をあなたの前に謝したいと思います。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここまで引っ張って来るときには、何のかのと、世話らしい言葉を掛けたのに、いざとなると通り一片の挨拶あいさつもしない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時自分はまた何となく、今しがた自分を置去おきざりにして、挨拶あいさつもしずに出て行った長蔵さんが恋しくなった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄に比べるとはるかに頑丈がんじょう体躯からだを起しながら、「じゃ御先へ」と母に挨拶あいさつして下へ降りた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は兄に対して、つい空惚そらとぼけた挨拶あいさつをしなければすまなくなった。すると母が今度はにがい顔をした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうち船がだんだん河岸に近づいてくるに従って、おかの方で帽子を振って知人に挨拶あいさつをするものなどができて来た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は重そうに肩から釣るした袋を取って、自分の机の上に置きながら、ただ一口「ただいま」と云って姉に挨拶あいさつした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから当分の間は、御免下さいましだの、どちらからいらっしゃいましたのとさかん挨拶あいさつの言葉が交換されていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
例の通り兄には挨拶あいさつもしないで、自分の部屋へ這入はいろうとするのを、宗助はおい小六とはげしく呼び止めた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎はなんとか言って、挨拶あいさつをしようと思ったが、あまり時間がたっているので、どう口をきいていいかわからない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて岸本は家の人達に迎え入れられた。順に一人ずつ挨拶あいさつがあった。岸本は兄の前にも頭をさげ、嫂の前にも頭をさげた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「承知しました」と、目をその女性の顔へ焼きつけるようにえたまま、ちょっと上体をかがめてカムポスが挨拶あいさつした。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ゆきずりにふと挨拶あいさつをかわした旅の人も、何心なく摘みとった道のべの草花もみなわしとはなれられない縁があったのだな。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
山家らしい焚火たきびすすけた高い屋根の下、黒光りのするほど古い太い柱のそばで、やがて主客の挨拶あいさつがあった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お三輪は結いたてのうつくしい島田で彼のところへも挨拶あいさつに来て、紅白の紙に載せた野村の村雨むらさめを置いて行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
主人しゆじん挨拶あいさつかく明日あすのことにするからといつただけだといふ返辭へんじである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茶道具を運んで来た主婦はそれを傍において、改めてていねいに客を招じ入れた。挨拶あいさつをしながらねぎらうのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
奥の間、表座敷、玄間とも言わず、いっぱいの人で、それが一人一人にお辞儀をしてはむつかしい挨拶あいさつを交換している。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いまむかおなじこと、わたくし両親りょうしんからばれて挨拶あいさつたのでございます。
「経験の少ない私が何もわからずにいたしておりますことに、そんな御挨拶あいさつをしてくださいましてはかえって困ります」
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
羞恥しゅうち心を取り忘れたようにお相手に出ました者はそれだけの御挨拶あいさつをいたしておきませんではと存じますから
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
という。外人は得意になって、駕籠かごのそばに来たりくらを見せんと下馬し脱帽して挨拶あいさつした。そのとき通訳官は、
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
どうです言種いいぐさは、前かど博徒ばくちうち人殺ひとごろし兇状持きょうじょうもち挨拶あいさつというもんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同じ年頃としごろの老いた女同士は幾度いくどとなくお辞儀じぎ譲合ゆづりあひをしては長々しく挨拶あいさつした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
後で太子に御通ししておくという挨拶あいさつで、私や印度人たちの一行はここで声を限りに万歳ナリンクマールを絶叫した。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その晩入会した美術家の一人が入会の挨拶あいさつにかえてした話は、その春歿くなったという仲間の美術家の話であった。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「向うは大分あったかいだろう」とついで同然の挨拶あいさつをした。すると、今度はむしろ法外に熱した具合で、
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はこの前梅子に礼を云いに行った時、梅子から一寸ちょっと奥へ行って、挨拶あいさつをしていらっしゃいと注意された。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翁はこの主人とひととおり、初対面の挨拶あいさつをすませると、早速名高い黄一峯を見せていただきたいと言いだしました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
倉地は葉子がその朝その部屋へやに来るのを前からちゃんと知り抜いてでもいたように落ち付き払って、朝の挨拶あいさつもせずに、
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
こんな非紳士的な挨拶あいさつをしなければならないような穴の中へ、私を追い込んだのは、この坂越の男であると思ったからである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔し自分を呼びてにした人から今となって鄭寧ていねい挨拶あいさつを受けるのは、彼に取って何の満足にもならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
六十日の歩役を勤めた後、今度御用済みということで、残らず帰村を許された若者らは半蔵のところへも挨拶あいさつに来た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
丁度お種や豊世は買物を兼ねてぶらぶら町の方へ歩きに行った留守の時で、二階を貸している内儀かみさんが出て挨拶あいさつした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
校長の細君は挨拶あいさつをしながら、顔の蒼白あおじろい、鼻の高い、眉と眉との間の遠い客の姿を見て、弱々しい人だと思った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
しばらくすると帳場の次の狭苦しい部屋で物の莫迦叮寧ばかていねいな母親と、ここの人たちとの間に長い挨拶あいさつが始まった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ト高い男は顔に似気にげなく微笑を含み、さて失敬の挨拶あいさつも手軽るく、別れて独り小川町おがわまちの方へ参る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
梯子段はしごだん踏轟ふみとどろかして上ッて来て、挨拶あいさつをもせずに突如いきなりまず大胡坐おおあぐら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それと同時であった。着物のちりやあくたを打ちはらって、大工たちが彼に声をかけたのだ。無事にすんだ挨拶あいさつであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その夜諏訪から重役が幾人となく挨拶あいさつに来たが、千野兵庫ちのひょうごが来た時であった、葉之助は卒然と訊いた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蔵沢ざうたく墨竹ぼくちく黄興くわうこうの「文章千古事ぶんしやうせんこのこと」と挨拶あいさつをしてゐる事もある。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所々の慰問使が集まって来ていても、挨拶あいさつの取り次ぎを託されるような人もなく、泣き声ばかりが邸内に満ちていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
言いきって母は返辞を待皃まちがおに忍藻の顔を見つめるので忍藻も仕方なさそうに、挨拶あいさつしたが、それもわずかに一言だ。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
クリストフに型ばかりに手を差出し、冷やかに挨拶あいさつをし、黙って真面目にしかつめらしく、ピアノのところへ行ってすわった。
その日もまた頭痛だという姑の枕元へ挨拶あいさつに上ると、お定は不機嫌な唇で登勢の江州なまりをただわらった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
師匠は私にそういってから、下金屋と挨拶あいさつをしている。かねてから、下金屋は師匠をく知っているので大変丁寧になる。
ここにいささかなりとも、その出迎えの模様、対手方あいてかた挨拶あいさつの一順はあるべきだけれど、実は記すべき事がない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
良人やどわたしとしの十いくつも違ふのですもの、永く役に立つやうにして置かねばと何でも無しの挨拶あいさつ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「……それでは君、僕はそういうわけだから、明日の晩は失敬するからね」原口はこう笹川に挨拶あいさつして、出て行った。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
彼のことを覚えていた何人かの人々は戸口で彼に挨拶あいさつしたが、もう誰にもきく必要はなく、間もなく目ざすとびらに来た。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
わたしの方へは、ジナイーダはてんで注意を向けずじまいだった。食事が済むと間もなく、公爵夫人は別れの挨拶あいさつをし始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
母は公爵夫人にわざわざ人をやって、健康がすぐれぬため出発まえにお目にかかれず、まことに残念に思いますと挨拶あいさつさせた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「じゃ僕は失敬しよう。いずれまた。」と、取ってつけたような挨拶あいさつをして、〓々そうそう石段を下りて行った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
葉子は少し挨拶あいさつの機会をおくらしたと思いながらもやさしくこういった。岡はほおあからめたまま黙ってうなずいた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
母はかく挨拶あいさつしつつ彼を迎へて立てり。宮は其方そなたを見向きもやらで、彼の急足いそぎあしちかづく音を聞けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
途中で知人に挨拶あいさつされても、少しも知らずにいる私は、時々自分の家のすぐ近所で迷児になり、人に道をきいて笑われたりする。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「今晩は、どうも――」と挨拶あいさつをすると「いやいや」と周章あわてて、ぼくの顔をみてかなしい薄笑いをして
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
初対面の挨拶あいさつが済むと、その山鳥を座の真中に出して、国から届きましたからといって、それを当座の贈物にした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな事に対して比較的無頓着むとんじゃくな相手も、津田の驚ろき方が反響したために、ちょっと挨拶あいさつに窮したらしかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姉が息苦しくって、受答えが出来かねるので、脊中せなかさすっていた女が一口ごとに適宜な挨拶あいさつをした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは三四郎も知ってる事である。三四郎は挨拶あいさつに窮した。見ると椽側に絵の具箱がある。かきかけた水彩がある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
木賃宿の主人には礼金を遣り、摂津国屋へは挨拶あいさつに立ち寄って、九郎右衛門主従は六月二十八日の夜船で、伏見から津へ渡った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
せんだってなどは一時間半ばかり泣き続けに泣かれて、しまいには大抵な挨拶あいさつはし尽して、おおいに応対に窮したくらいだ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗十郎がすすけた天井裏てんじょううらを見上げながら覚束ない挨拶あいさつをするのに無理もないところもあった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
とお延は正太に挨拶あいさつした。従兄妹いとこ同志の間ではあるが日頃正太のことを「兄さん、兄さん」と呼んでいた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と名倉の老人は正太に挨拶あいさつした。気象のさかんなこの人でも、寄る年波ばかりは争われなかった。ひげは余程白かった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どうも、このごろ、このきまりきった挨拶あいさつの受け答えが、めんどうくさくて、うるさくって、たまらないのである。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お神は挨拶あいさつを済ますと、やがて銀子の傍へ帰って来たが、主人の猪野いのはややしばし弁護士と話しこんでいた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、丁寧ていねい挨拶あいさつする雪之丞の、たわやかな姿を、素浪人は、かっと見開いた、毒々しい目でぐっとめ下ろした。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「松島さん」と慇懃いんぎん挨拶あいさつする山木剛造を、大佐は軽く受け流しつ、伊藤侯爵と相対して腰打ち掛けぬ、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
初対面の客に、ロク/\挨拶あいさつもしないうちに、夫人は何のこだわりもないように、自由にしゃべり続けた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「そうか。よろしい。それでは今朝は八時から世界長に挨拶あいさつに出よう。それからすぐ巡視だ。みんなその支度したくをしろ。」
冷やかな取り澄ました言葉で、彼から受けた好意の礼を言い、彼の健康と彼の母親の健康とを祈り、そして別れの挨拶あいさつを述べた。
配膳はいぜんが終ると主催者が起つて挨拶あいさつをはじめ、次いで長々と狸肉の味について、その蘊蓄うんちくを傾けるのである。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
この地の処女に如是によぜしつけもあることを思ひ、興あることに思つたので、挨拶あいさつをして其処を去つた。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「そうじゃろうがな、もし。若いうちは誰もそんなものじゃけれ」この挨拶あいさつには痛み入って返事が出来なかった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
着衣の件、喫飯きっぱんの件、談判の件、懸引かけひきの件、挨拶あいさつの件、雑話の件、すべて件と名のつくものは皆口から出る。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
挨拶あいさつしてぞろぞろ出て行ったあとには、水入らずの家族五人が、囲炉裏の火にまっかに顔を照らし合いながらさし向かいになる。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
と笑いながら幹事が最初挨拶あいさつした、――それは、神田辺の沢岡という、雑貨店の好事ものずきな主人であった。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人はふすまを開けて出て来て、雛妓おしゃくを見て、好奇の眼をみはった。雛妓は丁寧に挨拶あいさつした。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこへ半蔵は挨拶あいさつに出て、自宅にこれらの人たちを迎えることをめずらしく思ったが、ただ香蔵の顔が見えない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
司馬遷とは互いに顔は知っているし挨拶あいさつをしたことはあっても、特に交を結んだというほどの間柄ではなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「やあ、じいさん、今日は、あなたも呼ばれたんですか。」わたくしはそばへ行ってわらいながら挨拶あいさつしました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
恐惶謹言きょうこうきんげんさせて子爵には一目置いちもくおい挨拶あいさつさせ差詰さしづめ聟殿むこどのと大切がられべきを
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いや皆さん、私まで御心配かけまして」と兄は挨拶あいさつをしました。「ときに警官の方が一人見えないそうですね」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……挨拶あいさつに出た番頭にも、按摩の惣市、宗山と云う、これこれした芸人が居るか、と聞くと、誰の返事も同じ事。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恋われて――いやな言葉づかいだが――挨拶あいさつをするのに、「嬉しいですわ。」は、嬉しくない、と言うのである。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)