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愕然
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がくぜん
ふりがな文庫
“
愕然
(
がくぜん
)” の例文
ここでは、必ず、数寄屋の外に立っているはずの藪田助八も、ふと、その様子を見て、
愕然
(
がくぜん
)
と、越前守のうしろまで
跳
(
と
)
びこんで来た。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、彼女がその一月の間に三夜ほど外泊し、その度に、分厚い札たばを持ってきて、貯金したという話をきいて、私は
愕然
(
がくぜん
)
とした。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
客は
愕然
(
がくぜん
)
として急に左の膝を一
ト
膝引いて
主人
(
あるじ
)
を一ト眼見たが、直に身を伏せて、
少時
(
しばし
)
は
頭
(
かしら
)
を上げ得無かった。然し
流石
(
さすが
)
は老骨だ。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
青年は
愕然
(
がくぜん
)
として、
嘘
(
うそ
)
ではないか、
騙
(
かた
)
りではないかと疑い、ほとんどわれを忘れて、まるで気でも違ったようになってしまった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
新一は
愕然
(
がくぜん
)
として、息遣いも荒く、そこに跪くと父博士の手首を掴んだ。掴んだままいつまでも空間を見つめて、身動きさえしなかった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
といって無遠慮に図巻の上へ伸ばしたその手が、白魚のように細かったものですから、ここに初めて田山白雲は
愕然
(
がくぜん
)
としました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
宇治は
愕然
(
がくぜん
)
として立ちすくみ斜面へ二三歩よろめいた。道は土手の上まで来ていたのだ。白い薄光が彼の網膜にぼんやりひろがって来た。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
李陵は例によって漢との戦いには陣頭に現われず、水北に退いていたが、左賢王の戦績をひそかに
気遣
(
きづか
)
っている
己
(
おのれ
)
を発見して
愕然
(
がくぜん
)
とした。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
愕然
(
がくぜん
)
として文三が、夢の覚めたような
面相
(
かおつき
)
をしてキョロキョロと
四辺
(
あたり
)
を
環視
(
みま
)
わして見れば、
何時
(
いつ
)
の間にか
靖国
(
やすくに
)
神社の
華表際
(
とりいぎわ
)
に
鵠立
(
たたずん
)
でいる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
次に黒い
眸
(
ひとみ
)
をじっと
据
(
す
)
えて自分を見た昔の
面影
(
おもかげ
)
が、いつの間にか消えていた女の面影に気がついて、また
愕然
(
がくぜん
)
として心細い感に打たれた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弟もやはりそこに
跼
(
しゃが
)
んでは遊んでいたのに、お俊は気もちの中にときおり
愕然
(
がくぜん
)
として何物かに衝かれたような気になって、きよ子の姿を見た。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ぐいと、自身番の小者がねじむけたその顔を見るといっしょに、ふたりはさらに
愕然
(
がくぜん
)
と二度おどろきました。まさしく、あの御家人なのです。
右門捕物帖:38 やまがら美人影絵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
客も主じも家娘も家妻も酒と
博賭
(
ばくち
)
の好きな息子たちも、茫然、
瞠然
(
どうぜん
)
、
愕然
(
がくぜん
)
、
恟然
(
きょうぜん
)
として声も出ない。八百助は「村の方がた」と静かに云った
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いい気になっていた彦太郎は
愕然
(
がくぜん
)
として、どうしてな、あんた、どうして、組合には反対か、あんた、と意気ごんで
訊
(
たず
)
ねた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
愕然
(
がくぜん
)
としたのは平次ばかりではありません。名指しされた石川良右衛門は、何か弁解をする積りらしく口を開きましたが、その言葉が出る前に
銭形平次捕物控:072 買った遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
既
(
すで
)
にして、松川が
閨
(
ねや
)
に到れば、こはそもいかに
彼
(
か
)
の
泣声
(
なきごゑ
)
は
正
(
まさ
)
に
此室
(
このま
)
の
裡
(
うち
)
よりす、予は
入
(
はひ
)
るにも
入
(
はひ
)
られず
愕然
(
がくぜん
)
として
襖
(
ふすま
)
の外に
戦
(
わなな
)
きながら
突立
(
つツた
)
てり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
一時、わすれていたのですが、こんど、あなたから、「エホバを
畏
(
おそ
)
るるは知識の本なり。」という
箴言
(
しんげん
)
を教えていただいて
愕然
(
がくぜん
)
としたのでした。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてもしそうなったら、自分はもう生きてゆくすべを知らぬだろう、とさとって、かなり
愕然
(
がくぜん
)
としてしまったのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
人びとは一斉に息を殺してその微妙な音に絶え入っていた。ふとその完全な窒息に眼覚めたとき、
愕然
(
がくぜん
)
と私はしたのだ。
器楽的幻覚
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
われこの日始てこれを寺僧に聞得て
愕然
(
がくぜん
)
たりき。
因
(
ちなみ
)
にしるす南岳が四谷の旧居は荒木町
絃歌
(
げんか
)
の地と接し今岡田とかよべる酒楼の立てるところなり。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして
愕然
(
がくぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
した。一列に並んでいる古い銅像と黒い柱との間に、西壁の阿弥陀が明るく浮き出して、手までもハッキリと見えている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
埔里郡役所から事件の報告を受けとった台中州庁では、水越知事を始め一同、異常な予期しない出来事に
愕然
(
がくぜん
)
とした。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
そうと知って、紅琴は
愕然
(
がくぜん
)
としたけれども、千古の神秘をあばこうとする、狂的な願望の前には、なんの事があろう。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
愕然
(
がくぜん
)
として、予は褥榻のところへ跳んでゆき、その眠れる人を呼び起してこの驚くべき消息を知らせようと努めた。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
愕然
(
がくぜん
)
として身を起した俊寛はわが耳を疑った。だが、熊野詣の二人を呼ぶ島人ならざる人の声は、確かに聞えた。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
ちょうど絵の中から思いがけもなく父の顔がのぞいているような気がして
愕然
(
がくぜん
)
として驚いた。しかし考えてみるとこれはあえて不思議な事はないらしい。
自画像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
とちかよってきましたが、提灯をかざしたその一隊は、おもわずそこに
愕然
(
がくぜん
)
として、立ちすくんでしまいました。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
健策は
愕然
(
がくぜん
)
となった。何事か思い当ったらしく
唾液
(
つば
)
を
嚥
(
の
)
み込み嚥み込みした。しかし黒木は構わずに話を続けた。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この言葉を聞くと菊女をはじめ、その供人にやつして来たところの、明暦義党の同志らは、
愕然
(
がくぜん
)
として驚いたが
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
乍
(
たちま
)
ち有りて、
迸
(
ほとばし
)
れるやうにその声はつと高く揚れり。貫一は
愕然
(
がくぜん
)
として枕を
欹
(
そばだ
)
てつ。女は
遽
(
にはか
)
に
泣出
(
なきいだ
)
せるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
いよ/\来たな、と、道阿弥はもう観念の
臍
(
ほぞ
)
を固めていたが、今度は松雪院を初め女中たちが
愕然
(
がくぜん
)
とした。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ぼんやり
中腰
(
ちゅうごし
)
になってお由の白い顔を眺めていた土岐健助は、初めて
愕然
(
がくぜん
)
と声をあげた。そして、おずおずとお由の
硬張
(
こわば
)
った腕を持ったが、
勿論
(
もちろん
)
脈
(
みゃく
)
は切れていた。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それは魔にうなされたように、哀切な声になってゆく。
愕然
(
がくぜん
)
として、彼も今その声にうなされているようだった。病苦が今この家全体を襲いゆさぶっているのだ。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
……愛子ではないか……葉子は
愕然
(
がくぜん
)
として夢からさめた人のようにきっとなってさらに耳をそばだてた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
老僕聞て大に
驚
(
おどろ
)
き、
過
(
すぐ
)
る三月三日、
桜田
(
さくらだ
)
の
一条
(
いちじょう
)
を
語
(
かた
)
りければ、一船ここに至りて皆はじめて
愕然
(
がくぜん
)
たり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
暫
(
しばら
)
くゆくと彼は
跫音
(
あしおと
)
がちつとも聞えないのに気がついた。で彼は
愕然
(
がくぜん
)
として
背後
(
うしろ
)
へ振り向いた。そこに彼女がほんの一尺計り離れて彼に
憑
(
つ
)
いてるやうに歩いてゐる。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
心臓の破れるような思いをしていた頃の、ひどく絶望的な詩であることを知って、私は
愕然
(
がくぜん
)
とした。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
孫軍曹は、そう
呶鳴
(
どな
)
っていたが、坑夫を分けて
手負
(
ておい
)
に近づくと、
愕然
(
がくぜん
)
としてその一人を抱きあげた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
この上は
大膳
(
だいぜん
)
父子をはじめ長防二州の処置を適当に裁決あることと心得ていたところ、またまた将軍の進発と聞いては天下の人心は
愕然
(
がくぜん
)
たるのほかはないというにある。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
歯牙
(
しが
)
にも掛けずありける九州炭山坑夫の同盟罷工今や
将
(
まさ
)
に断行せられんことの警報伝はるに
及
(
およん
)
で政府と軍隊と、実業家と、志士と論客と
皆
(
み
)
な始めて
愕然
(
がくぜん
)
として色を失へり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
ブルヴェーは
愕然
(
がくぜん
)
とした、そして恐る恐る彼を頭から足先まで見おろした。彼は続けて言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
けれど
畢竟
(
ひっきょう
)
自分
(
じぶん
)
を
慰
(
なぐさ
)
め、
苦痛
(
くつう
)
を
忘
(
わす
)
れさせるものには
酒以外
(
さけいがい
)
ないことを
知
(
し
)
ったが、
生
(
う
)
まれた
日
(
ひ
)
から、
今日
(
きょう
)
まで、
瞬時
(
しゅんじ
)
も
休
(
やす
)
まず
鼓動
(
こどう
)
をつづける
心臓
(
しんぞう
)
に
触
(
ふ
)
れて、
愕然
(
がくぜん
)
として、
彼
(
かれ
)
は
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
困難の
度
(
ど
)
は
実
(
じつ
)
に水量と反比例をなし
来
(
きた
)
る
進
(
すす
)
むこと一里にして両岸の岩壁
屏風
(
びやうぶ
)
の
如
(
ごと
)
く、河は
激
(
げき
)
して
瀑布
(
ばくふ
)
となり、
其下
(
そのした
)
凹
(
くぼ
)
みて
深淵
(
しんえん
)
をなす、衆佇立
相盻
(
あひかへり
)
みて
愕然
(
がくぜん
)
一歩も
進
(
すす
)
むを得ず
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
男達は
愕然
(
がくぜん
)
として
咄嗟
(
とっさ
)
にめくるめく狼狽のさなかで故里を思い出したりするのであった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
一たび
疱瘡
(
ほうそう
)
(
昔
(
むかし
)
は天然痘のことを疱瘡といいました)がはやるということが伝わると、人々は
愕然
(
がくぜん
)
として色を失い、ことに
子供
(
こども
)
を持つ親は、ぶるぶるとふるえたものであります。
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
予、なにごとの
出来
(
しゅったい
)
せしやと疑いながらただちに披封すれば、なんぞはからん、「父大病につき、ただちに帰宅せよ」と、親戚某より寄するところの電報なり。
愕然
(
がくぜん
)
、大いに
憂懼
(
ゆうく
)
す。
妖怪報告
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
大切なものを取り落したことに気がついて
愕然
(
がくぜん
)
とし、
石
(
こく
)
切れから、お暇勝手次第の触れが出たのを幸いに、御役ご免を願い、すぐにも
陸奥
(
みちのく
)
に下るつもりで、そうそうに江戸へ帰った。
奥の海
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私は
愕然
(
がくぜん
)
とした。まったく、その時は、自分でも顔色がサッと変ったのを意識した——。私を、こんな失意の底に投込んでしまったその女、ネネが、この変屈者の愛人であるとは……。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
愕然
(
がくぜん
)
としてわれに返ると、余り
怠
(
なま
)
けた結果、私は六科目の注意点を受けてゐたので、
俄
(
にはか
)
に
狼狽
(
ろうばい
)
し切つた勉強を始め、例の便所の入口の薄明の下に書物を
披
(
ひら
)
いて立つたが、さうしたことも
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
僕は
愕然
(
がくぜん
)
として、泣くに泣かれぬような心持がした。自分が長い間無沙汰していた事などは忘れて、病気している事位は、
予
(
あらか
)
じめ知らせてくれても
宜
(
よ
)
さ
相
(
そう
)
なものにと、驚きもし悲しみもした。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
“愕然”の意味
《名詞》
愕然(がくぜん)
非常に驚くこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
愕
漢検1級
部首:⼼
12画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“愕”で始まる語句
愕
愕心
愕眙