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平時
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いつも
ふりがな文庫
“
平時
(
いつも
)” の例文
潮の
退
(
おち
)
た時は沼とも思はるゝ入江が
高潮
(
たかしほ
)
と月の光とでまるで樣子が變り、僕には
平時
(
いつも
)
見慣れた泥臭い入江のやうな氣がしなかつた。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
一時
(
ひとしきり
)
騒々
(
さう/″\
)
しかつたのが、
寂寞
(
ひつそり
)
ばつたりして
平時
(
いつも
)
より
余計
(
よけい
)
に
寂
(
さび
)
しく
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
ける……さあ、
一分
(
いつぷん
)
、
一秒
(
いちびやう
)
、
血
(
ち
)
が
冷
(
ひ
)
え、
骨
(
ほね
)
が
刻
(
きざ
)
まれる
思
(
おも
)
ひ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
心に計画ある時には自ずと五音に現われるもので、陣十郎の言葉の中に、
平時
(
いつも
)
とは
異
(
ちが
)
う不吉の響きが、籠っているがためであった。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こうして来たのだといいながら、ふと
後
(
うしろ
)
を
振返
(
ふりかえ
)
って見ると、
出水
(
しゅっすい
)
どころか、道もからからに乾いて、橋の上も、
平時
(
いつも
)
と少しも変りがない、おやッ、こいつは一番やられたわいと
今戸狐
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
「
憚
(
はばか
)
りなく申上げますれば、
平時
(
いつも
)
の御上の御言葉とは少し御違いあるかに承わりました」
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
▼ もっと見る
中々
(
なかなか
)
逃げそうにもしない、仕方なしに、足でパッと
思切
(
おもいき
)
り蹴って、ずんずん歩き出したが二三
間
(
げん
)
行
(
ゆ
)
くとまた来る、
平時
(
いつも
)
なら自分は「何こんなもの」と
打殺
(
ぶっころ
)
したであろうが、
如何
(
どう
)
した事か
白い蝶
(新字新仮名)
/
岡田三郎助
(著)
「さ? ……
平時
(
いつも
)
とちがって物の具をつけると分らなくなる」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此
(
この
)
時
(
とき
)
の父の様子は余程
狼狽
(
ろうばい
)
して居るようでした。それで声さえ
平時
(
いつも
)
と変り、僕は
可怕
(
こわ
)
くなりましたから、しく/\泣き出すと、父は
益々
(
ますます
)
狼狽
(
うろた
)
え
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
平時
(
いつも
)
は、そんなでもなかったが、
過般中
(
このあいだ
)
、連があって、二人で出掛けた、その時、その千世ちゃんが来たんだね。確か……
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私も
其処
(
そこ
)
まで、お供いたしますが、今日こそ
貴方
(
あなた
)
のようなお
連
(
つれ
)
がございますけれど、
平時
(
いつも
)
は一人で参りますから、
日一杯
(
ひいっぱい
)
に里まで帰るのでございます。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
或日
(
あるひ
)
のことでした、僕が
平時
(
いつも
)
のように庭へ出て松の根に腰をかけ
茫然
(
ぼんやり
)
して居ると、
何時
(
いつ
)
の間にか父が
傍
(
そば
)
に来て
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それで堪忍をして
追放
(
おっぱな
)
したんだそうだのに、夜が明けて見ると、また
平時
(
いつも
)
の処に棒杭にちゃんと結えてあッた。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その夜の八時頃、ちょうど富岡老人の
平時
(
いつも
)
晩酌が済む時分に細川校長は先生を
訪
(
と
)
うた。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
平時
(
いつも
)
だと御宅へ上るんだけれど、今日の慈善会には、御都合で貴女も出掛けると云うから、珍らしくはないが、また浅間へ行って、豆か
麩
(
ふ
)
を食わしとるですかな。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
徳二郎は
平時
(
いつも
)
の
朗
(
ほがら
)
かな聲に引きかへ此夜は小聲で唄ひながら靜かに櫓を漕いで居る。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「神月より、……おや、
平時
(
いつも
)
の字と違ってやしなくッて?……何だか手が違ってるようだねえ。」
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二三杯ぐい/\飲んでホツと
嘆息
(
ためいき
)
をしたが、銀之助は
如何
(
どう
)
考
(
かん
)
がへて見ても
忌々
(
いま/\
)
しくつて
堪
(
たま
)
らない。
今日
(
けふ
)
は
平時
(
いつも
)
より遅く
故意
(
わざ
)
と七時過ぎに
帰宅
(
かへ
)
つて見たが
矢張
(
やはり
)
予想通り
妻
(
さい
)
の
元子
(
もとこ
)
は帰つて居ない。
節操
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
跡方も無い嘘は
吐
(
つ
)
けぬ。……爺さんは実に、
前刻
(
さき
)
にお孝にもその由を話したが……
平時
(
いつも
)
は、縁日廻りをするにも、お千世が左褄を取るこの河岸あたりは
憚
(
はばか
)
っていたのである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
翌日から自分は
平時
(
いつも
)
の通り授業もし改築事務も
執
(
と
)
り、
表面
(
うわべ
)
は以前と少しも変らなかった、母からもまた何とも言って来ず、自分も母に手紙で迫る事すら放棄して了い、一日一日と無事に過ぎゆいた。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
薄
平時
(
いつも
)
のように、どこへとも何ともおっしゃらないで、ふいとお出ましになったもの。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
戸外
(
そと
)
に積んだまま、
平時
(
いつも
)
放下
(
うっちゃ
)
って置くからです」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
橋
(
はし
)
の
詰
(
つめ
)
の
浮世床
(
うきよどこ
)
のおぢさんに
掴
(
つか
)
まつて、
顔
(
ひたひ
)
の
毛
(
け
)
を
真四角
(
まつしかく
)
に
鋏
(
はさ
)
まれた、それで
堪忍
(
かんにん
)
をして
追放
(
おつぱな
)
したんださうなのに、
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けて
見
(
み
)
ると、また
平時
(
いつも
)
の
処
(
ところ
)
に
棒杭
(
ぼうぐひ
)
にちやんと
結
(
ゆわ
)
へてあツた。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どういたしまして、ええ、水をって申しますと、
平時
(
いつも
)
のとおり裏長屋の婆さんが
汲込
(
くみこ
)
んで行ったと
仰有
(
おっしゃ
)
るんで、へい、もう根っから役に立ちません。」と膝を
擦
(
さす
)
ったり、
天窓
(
あたま
)
を掻いたり。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
枕に
就
(
つ
)
いたのは、
良
(
やや
)
ほど過ぎて、私の
家
(
うち
)
の職人衆が
平時
(
いつも
)
の湯から帰る時分。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
平時
(
いつも
)
と違って、妙に胸がどきつくのさ。頭の
頂上
(
てっぺん
)
へ
円髷
(
まるまげ
)
をちょんと乗せた罪の無いお鹿の女房が、
寂寞
(
ひっそり
)
した中へお客だから、喜んで
莞爾々々
(
にこにこ
)
するのさえ、どうやら意見でもしそうでならない。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何
(
なに
)
も、
破
(
やぶ
)
れ
傘
(
がさ
)
の
化
(
ば
)
け
車
(
ぐるま
)
に
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
らせて
運
(
はこ
)
ばせずと
済
(
す
)
む
事
(
こと
)
よ。
平時
(
いつも
)
なら
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
ぢや、お
剰
(
まけ
)
に
案山子
(
かゝし
)
どもが
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
いて、お
迎
(
むか
)
ひ、と
言
(
い
)
ふ
世界
(
せかい
)
なら、
第一
(
だいゝち
)
お
前様
(
めえさま
)
が
其
(
そ
)
の
像
(
ざう
)
を
担
(
かつ
)
いで
出
(
で
)
る
法
(
ほふ
)
はあるめえ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
不断
一八
(
いっぱち
)
に茶の湯のお合手にいらっしゃった、山のお前様、尼様の、清心様がね、あの方はね、
平時
(
いつも
)
はお前様、八十にもなっていてさ、山から
下駄穿
(
げたばき
)
でしゃんしゃんと下りていらっしゃるのに
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
意外なる
待遇
(
もてなし
)
かな、かかりし事われは有らず。
平時
(
いつも
)
はただ人の前、
背後
(
うしろ
)
、
傍
(
わき
)
などにて、
妨
(
さまたげ
)
とならざる限り、処定めず観たりしなるを。
大
(
おおい
)
なる桟敷の
真中
(
まんなか
)
に
四辺
(
あたり
)
を
眗
(
みまわ
)
して、
小
(
ちいさ
)
き体
一個
(
ひとつ
)
まず
突立
(
つった
)
てり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吉野町
(
よしのちょう
)
辺の
裁縫
(
おしごと
)
の師匠へ
行
(
ゆ
)
くのが、今日は特別、
平時
(
いつも
)
と違って、途中の金貸の軒に居る、
馴染
(
なじみ
)
の
鸚鵡
(
おうむ
)
の前へも立たず……黙って奥山の活動写真へも
外
(
そ
)
れないで、早めに帰って来て、紫の包も解かずに
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
池
(
いけ
)
はひつくりかへつても
居
(
を
)
らず、
羽目板
(
はめいた
)
も
落
(
お
)
ちず、
壁
(
かべ
)
の
破
(
やぶれ
)
も
平時
(
いつも
)
のまゝで、
月
(
つき
)
は
形
(
かたち
)
は
見
(
み
)
えないが
光
(
ひかり
)
は
眞白
(
まつしろ
)
にさして
居
(
ゐ
)
る。とばかりで、
何事
(
なにごと
)
も
無
(
な
)
く、
手早
(
てばや
)
く
又
(
また
)
障子
(
しやうじ
)
を
閉
(
し
)
めた。
音
(
おと
)
はかはらず
聞
(
きこ
)
えて
留
(
や
)
まぬ。
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“平時”の意味
《名詞》
平 時(へいじ)
平常な時。変わった事の無い時。平素。
平和な時。戦争の無い時。「万国公法」により日本にもたらされた華製新漢語。
(出典:Wiktionary)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
“平”で始まる語句
平
平常
平生
平素
平和
平坦
平伏
平地
平日
平家