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噪
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さわ
ふりがな文庫
“
噪
(
さわ
)” の例文
宇津木兵馬は、七兵衛の約束を半信半疑のうちに、浅草の観音に参詣して見ると、堂内の
巽
(
たつみ
)
に当る柱で
噪
(
さわ
)
いでいる一かたまりの人の声。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いや、まったくは降伏でない。
誘降
(
ゆうこう
)
の上書を奉ったものにすぎぬ。それをしも、
悪推量
(
わるずいりょう
)
して、
噪
(
さわ
)
ぎ立てする者あらば、斬ってしまえ」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それより母の許へ帰らんと望むに、許され帰る。その後、夜々形は見えずに
噪
(
さわ
)
ぐ者あるので、母に告げると、蝋燭を
点
(
とも
)
して見出せという。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
唯だ姫が側なる人をベルナルドオならんと疑ひしとき、我心の
噪
(
さわ
)
がしかりしは、
妬
(
ねたみ
)
なるか
否
(
あら
)
ざるか、そはわが考へ定めざるところなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
見よ、デモクラシーは
宿昔
(
しゆくせき
)
の長夢を攪破せんとのみ
悶
(
もが
)
き、アリストクラシーは急潮の進前を妨歇せんとのみ
噪
(
さわ
)
ぐにあらずや。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
が、近江之介は、
噪
(
さわ
)
ぎ立つ番衆を振り切って、もう部屋を出かかっていた。こっちから仕向けた争いであることは、
衆目
(
しゅうもく
)
の見たところである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
また心静かなる時は手平かに、心
噪
(
さわ
)
げば手元狂う。訟を聴きつつ茶を碾くのは、粉の精粗によって心の動静を見、判断の確否を知るためである。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
忽ち
厨
(
くりや
)
の
方
(
かた
)
に人の罵り
噪
(
さわ
)
ぐ声が聞えた。程近き街の
魚屋
(
うをや
)
が猫に魚を
偸
(
ぬす
)
まれて勝手口に来て女中に訴へてゐるのであつた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その
噪
(
さわ
)
がしい華やかさ、そのロンドンらしい「遵奉されたる
蕪雑
(
ぶざつ
)
さ」において、この「巷の詩」のもつ
調子
(
ニュアンス
)
とすこしも変らないものを見出し得る町が
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
さりながら
実家
(
さと
)
にては、父中将の名声
海内
(
かいだい
)
に
噪
(
さわ
)
ぎ、今は予備におれど交際広く、
昇日
(
のぼるひ
)
の勢いさかんなるに引きかえて、こなたは武男の父通武が没後は
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
田の中の小道を行けば冬の溝川水少く草は大方に枯れ尽したる中に
蓼
(
たで
)
ばかりの
赤
(
あこ
)
う残りたる、とある処に古池の
蓮
(
はちす
)
枯れて
雁
(
がん
)
鴨
(
かも
)
の
蘆間
(
あしま
)
がくれに
噪
(
さわ
)
ぎたる
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
お峯は
心苦
(
こころぐるし
)
がりて、この上は唯警察の手を借らんなど
噪
(
さわ
)
ぐを、直行は人を
煩
(
わづらは
)
すべき事にはあらずとて聴かず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
廟の傍の林には数百の烏が
棲息
(
せいそく
)
していて、舟を見つけると一斉に飛び立ち、
唖々
(
ああ
)
とやかましく
噪
(
さわ
)
いで舟の帆柱に戯れ舞い、舟子どもは之を王の使いの烏として敬愛し
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
双方共
背後
(
うしろ
)
から押されてゐる。中にちよい/\理性に
合
(
かな
)
つた詞を出すものがあつても、
周囲
(
まはり
)
の罵り
噪
(
さわ
)
ぐ声に消されてしまふ。此場の危険は次第にはつきり意識に上つて来た。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
その
後
(
のち
)
室内沈静にして、
些々
(
ささ
)
たる物音も聞えぬ事あり、時ありては畳を蹴立てて
噪
(
さわ
)
がしき
響
(
ひびき
)
の起る折あり、突然、きいーきいーと悲鳴をあげて、さもくやしげに泣く
音
(
ね
)
も聞ゆ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空には
一群
(
ひとむれ
)
一群の小鳥が輪を作ッて南の方へ飛んで行き、上野の森には
烏
(
からす
)
が
噪
(
さわ
)
ぎ始めた。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
空には一群一群の小鳥が輪を作ッて南の方へ飛んで行き、上野の森には
烏
(
からす
)
が
噪
(
さわ
)
ぎ始めた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
「ドウナルド、そんなに
噪
(
さわ
)
ぐんじゃアありませんよ。」と、ジャネットはいいました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
殊に当節は
葭簀
(
よしず
)
の囲いさえ結われたが、江戸ッ児は男も女も
噪
(
さわ
)
ぐのが面白く、葭簀を境いにキャッキャッとの騒ぎ、街衢をはなれたこの小
仙寰
(
せんかん
)
には遠慮も会釈もあったものではない。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
むやみに他人の不信とか不義とか変心とかを
咎
(
とが
)
めて、万事万端向うがわるいように
噪
(
さわ
)
ぎ立てるのは、みんな平面国に籍を置いて、活版に印刷した心を
睨
(
にら
)
んで、旗を
揚
(
あ
)
げる人達である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『
私
(
わたし
)
がお
前
(
まへ
)
と
同
(
おな
)
じ
戸
(
と
)
の
傍
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
るではないか、それに
中
(
なか
)
で
彼麽
(
あんな
)
噪
(
さわ
)
ぎをして
居
(
ゐ
)
るのに、
何
(
なに
)
が
聞
(
きこ
)
えるものか』
確
(
たし
)
かに
中
(
なか
)
では
恐
(
おそ
)
ろしい
大噪
(
おほさわ
)
ぎをして
居
(
ゐ
)
ました——
絶
(
た
)
えず
吼
(
ほ
)
えたり、
嚏
(
くさめ
)
をしたり
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
噪
(
さわ
)
ぐ声がする、東の峡間に、一頭の
羚羊
(
かもしか
)
を見つけ出したのだ、なるほど一頭いるわいと気が
注
(
つ
)
くころ、中村宗義は銃を抱えて、岩蔭を岩蔭をと身を平ッたく伝わって、谷側まで下りた
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
八幡横手の阪道から、
宮裏
(
みやうら
)
の雑木林をかけて、安小間物屋、
鮨屋
(
すしや
)
、柿蜜柑屋、大福駄菓子店、おでん店、ずらりと並んで、カンテラやランプの
油煙
(
ゆえん
)
を真黒に立てゝ、人声がや/\
噪
(
さわ
)
いで居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
スエ子だか百合子だか、母見わけがつかず、自分と分ると
噪
(
さわ
)
いで
日記:18 一九三一年(昭和六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と
噪
(
さわ
)
ぎどよめいている
処
(
ところ
)
へ下女のお米
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
群鳥
(
むらどり
)
翔
(
かけ
)
る翼のその
噪
(
さわ
)
ぎと
機縁:(友なる画家の画稿に題す)
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
葦切
(
あしきり
)
はけゝしと
噪
(
さわ
)
ぎ
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「十八公麿のすがたが見えぬとて、そう、
噪
(
さわ
)
ぎたてることはない」侍女のことばを
窘
(
たしな
)
めて、彼女は、静かに良人の枕元を離れた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
噪
(
さわ
)
ぐべく、歌うべき当人の株を奪って、その騒音は、意外といえば意外だが、さもそうありそうな船内の一角から起りました。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
燈に
丁字頭
(
ちょうじがしら
)
が立つと銭を儲けるとて拝し、
鵲
(
かささぎ
)
が
噪
(
さわ
)
げば行人至るとて餌をやり、蜘蛛が集まれば百事
嘉
(
よろこ
)
ぶとてこれを放つ、
瑞
(
ずい
)
は宝なり、信なり。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
わが此不慮此不幸の全範圍を感ぜしは、酒店の人の罵り
噪
(
さわ
)
ぎつゝ走り寄りアヌンチヤタと媼との我前に來るを見し時なりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
どこからか外れ飛んで来た
羽子
(
はね
)
が、ヒョイと壁辰の
襟首
(
えりくび
)
に落ちた。女の児が追っかけて来て
噪
(
さわ
)
ぎ立てる。壁辰は、にっこり掴み取って、投げ返した。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
なんともすさまじい享楽と
騒擾
(
そうじょう
)
の一大総合場面——バグダットの朝市場ほど
噪
(
さわ
)
がしく、顛狂院の宴会できちがいの大群が
露西亜
(
ロシア
)
バレイを踊ってるほどにも奔流的な
光景
(
キイド
)
を呈するのが
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
別に
厭
(
いや
)
な顔もせず、一口の不平も
零
(
こぼ
)
さず、不規則に酒を飲んだり、物を食ったり、女を相手にしたり、していながら、
何時
(
いつ
)
見ても疲れた
態
(
たい
)
もなく、
噪
(
さわ
)
ぐ気色もなく、物外に平然として
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
風の
暴頻
(
あれしき
)
る
響動
(
どよみ
)
に紛れて、寝耳にこれを
聞着
(
ききつく
)
る者も無かりければ、誰一人
出
(
いで
)
て
噪
(
さわ
)
がざる間に、火は
烈々
(
めらめら
)
と
下屋
(
げや
)
に
延
(
し
)
きて、
厨
(
くりや
)
の燃立つ底より一声
叫喚
(
きようかん
)
せるは
誰
(
たれ
)
、狂女は
嘻々
(
きき
)
として高く笑ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
大半は小娘だから、小鳥の囀るように何やら言って
噪
(
さわ
)
いでいる。岡田は何事も
弁
(
わきま
)
えず、又それを知ろうと云う好奇心を起す
暇
(
ひま
)
もなく、今まで道の真ん中を歩いていた足を二三歩その方へ向けた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
二勺より路は
黒鉄
(
くろがね
)
を鍛へたる如く、天の一方より急斜して、
爛沙
(
らんさ
)
、
焦石
(
せうせき
)
、
截々
(
せつ/\
)
、風の
噪
(
さわ
)
ぐ音して人と伴ひ落下す、
偶
(
たまた
)
ま雲を破りて額上
微
(
かす
)
かに見るところの宝永山の
赭土
(
あかつち
)
より、冷乳の
缸
(
かめ
)
を傾けたる如く
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
かく言ううちも
渠
(
かれ
)
の手なる鈴は絶えず
噪
(
さわ
)
ぎぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お粂は、そこにある
櫛
(
くし
)
の二つ三つを膝にのせて、聞かない振りをしていながら、
襟
(
えり
)
あしに
茜
(
あかね
)
をさしたように血を
噪
(
さわ
)
がせていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
米友の姿が屋根の上に現われた時に、下では折助どもが
喧々囂々
(
けんけんごうごう
)
として
噪
(
さわ
)
ぎ罵りました。
梯子
(
はしご
)
を持って来いと怒鳴りました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この教育は六年の間續きたり、否、七年ともいふことを得べし。されど六とせ目の年の末には、早く多少の風波の我生涯の海の面に
噪
(
さわ
)
ぎ立つを見たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
西インドへ輸入するとたちまち風変りとなって鳴き
噪
(
さわ
)
がず、その代りにいつ盛るという定めもなく年中唖でやり通しで、林中に食物多き故、野生となって大いに
蕃殖
(
はんしょく
)
す。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
下廻りや座方の衆がわいわい
噪
(
さわ
)
いで先刻もやたらにそこらを歩いていた——という彦兵衛の話。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
別に
厭
(
いや
)
な
顔
(
かほ
)
もせず、
一口
(
ひとくち
)
の不平も
零
(
こぼ
)
さず、不規則に酒を飲んだり、
物
(
もの
)
を
食
(
く
)
つたり、女を相手にしたり、してゐながら、
何時
(
いつ
)
見ても
疲
(
つか
)
れた
態
(
たい
)
もなく、
噪
(
さわ
)
ぐ気色もなく、物外に平然として
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
馬にいたるまで土とほこりに汚れきった一頭立ての軽馬車を雑然とかためて、
高粱
(
こうりゃん
)
の
鞭
(
むち
)
を鳴らして何か大声に罵りあいながら客待ちしているのが、遠く
噪
(
さわ
)
がしいだけにうつろに眺められる。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
夫は出でて
未
(
いま
)
だ帰らざれば、今日
若
(
も
)
し
罵
(
ののし
)
り
噪
(
さわ
)
ぎて、内に
躍入
(
をどりい
)
ることもやあらば
如何
(
いかに
)
せんと、前後の
別
(
わかれ
)
知らぬばかりに
動顛
(
どうてん
)
して、取次には婢を
出
(
いだ
)
し
遣
(
や
)
り、
躬
(
みづから
)
は
神棚
(
かみだな
)
の前に
駈着
(
かけつ
)
け、
顫声
(
ふるひごゑ
)
を
打揚
(
うちあ
)
げ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「ご観念をと、すすめたところで、なかなか、おあきらめを持つみかどではあるまい。……といって、じたばた
噪
(
さわ
)
がれては」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はて、あの人が槍を抱えて島田先生のあとを
覘
(
ねら
)
って行くなと思うと、さきの毒一件から、またわたしの胸が
噪
(
さわ
)
ぎ出しました
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
杯盤狼藉
(
はいばんろうぜき
)
をきわめて
噪
(
さわ
)
いでいた、風体人相の好くない浪人者と覚しい七、八人の一団——部屋の隅に、四曲屏風を立てめぐらして、その中に、白衣に白の弥四郎頭巾をかぶり
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
今度はいよいよ化け物類の出勤時間、草木も眠る真夜中に、彼ら総出で何とも知れぬ大声で
噪
(
さわ
)
ぎ立て、獅・豹・熊・牛・
蝮蛇
(
まむし
)
・
蠍
(
さそり
)
・狼の諸形を現じて尊者の身が切れ切れになるまでさいなんだが
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
噪
漢検1級
部首:⼝
16画
“噪”を含む語句
喧噪
噪音
噪然
鼓噪
噪気
噪々
狂噪
噪閙
噪雑
噪聒
噪舌
噪鈎
取噪
大噪
心噪
怒罵喧噪
狂噪暴言
胸噪
軽噪
輕噪
...