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たしな
ふりがな文庫
“
嗜
(
たしな
)” の例文
予の母の、年老い目力衰へて、
毎
(
つね
)
に予の著作を讀むことを
嗜
(
たしな
)
めるは、此書に字形の大なるを選みし所以の一なり。夫れ字形は大なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
が、
紅
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
で、色白な娘が運んだ、
煎茶
(
せんちゃ
)
と
煙草盆
(
たばこぼん
)
を袖に控えて、さまで
嗜
(
たしな
)
むともない、その、
伊達
(
だて
)
に持った煙草入を手にした時、——
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その後拙者、先生の家に客となり、半年教授を受けました。先生の性質、草木を愛することは、
飢渇
(
きかつ
)
して飲食を求むるよりも
嗜
(
たしな
)
みます。
禾花媒助法之説
(新字新仮名)
/
津田仙
(著)
それがわずかに「わが青海流は都会人の
嗜
(
たしな
)
みにする泳ぎだ。決して
田舎
(
いなか
)
には落したくない。」そういっている父の
虚栄心
(
きょえいしん
)
を満足させた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
家はしもたや造りですが、なか/\の木口で、隱居が達者なころ、お茶などを
嗜
(
たしな
)
んで、お數寄屋作りの眞以事にもなつて居ります。
銭形平次捕物控:286 美男番附
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
舌をもって草を
舐
(
な
)
め、その味によって種別した、とあり、齊の桓公の料理人易牙は、形の美を
謂
(
い
)
わずして味の
漿
(
しょう
)
を
嗜
(
たしな
)
んだ、という。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
美しい衣服を著るにも、読書をするにも、文学や美術を
嗜
(
たしな
)
むにも、常に立派な娘に成る、完全な人間に成るという心掛が必要です。
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
両親はまだ四十前の
働者
(
はたらきもの
)
、母は
真
(
ほん
)
の
好人物
(
おひとよし
)
で、吾児にさへも強い
語
(
ことば
)
一つ掛けぬといふ
性
(
たち
)
、父は又父で、村には珍らしく酒も左程
嗜
(
たしな
)
まず
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
藩主は謹厳な方で、歌舞音曲はお好みになりませんでしたが、謡はなさるとのことでしたから、自然家中の者も
嗜
(
たしな
)
んだのでしょう。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「主君信長はじめ、みなお
嗜
(
たしな
)
みは深いが、それがしのみは、生来の無骨者、何も
弁
(
わきま
)
えません。……ただ飲むは好きというだけのことで」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おのれの主人の欠点を数えたてるなどは、武士の
嗜
(
たしな
)
みとしてあるまじきことで、どういう場合でも断じてしないものなのである。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
こうした
嗜
(
たしな
)
みのある者がむしろ侍らしく思われるくらいであったから、彼がしきりに笛をふくことを誰もとがめる者はなかった。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大きな工業が栄える土地だけに、手仕事を町に見ることは難しくなりました。ただ世俗の勢いの蔭に、茶の湯を
嗜
(
たしな
)
む者が少くありません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
俺はそれを見たとき、胸が
衝
(
つ
)
かれるやうな気がした。墓場を
発
(
あば
)
いて屍体を
嗜
(
たしな
)
む変質者のやうな惨忍なよろこびを俺は味はつた。
桜の樹の下には
(新字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
恵王は打返して「
孰
(
いずれ
)
か
能
(
よ
)
くこれを
一
(
いつ
)
にする」と問うた時に、孟子は「人を殺すを
嗜
(
たしな
)
まざるもの
能
(
よ
)
くこれを
一
(
いつ
)
にせん」といった。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「武道を
嗜
(
たしな
)
む者が道を誤まるとは何ごとじゃッ。
無辜
(
むこ
)
の人命
害
(
あや
)
めし罪は免れまいぞ! 主水之介
天譴
(
てんけん
)
を加えてつかわすわッ。これ受けい!」
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この出来事のために、集まっている人々の日頃の
嗜
(
たしな
)
みというものが、露骨に現わされたことは、一種の試験といえば試験のようなものです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
当時多少文筆の
嗜
(
たしな
)
みある公卿の多くは、勅命によって書写もしくは校合をやったのであるが、中にも能筆でかつ文字の造詣の深かった実隆は
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
几董は蕪村の高弟で、天明の其角を以て任じ、酒を
嗜
(
たしな
)
んでおったとかいう事があるから、こんなに酒の句が多いのであろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
いわゆる裂帛の声である! 勘八を向うへ突き倒し、その手を帯へ差し入れたが、抜いて握ったは
嗜
(
たしな
)
みの懐刀、振り冠ると凜々しく叱咤した。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「まだ、はっきり名乗りもいたさなんだが、拙者は、門倉平馬と申して、いささか、武芸を
嗜
(
たしな
)
むもの——して、そなたは?」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
物理生理衛生法の初歩より地理歴史等の大略を知るは固より大切なることにして、
本草
(
ほんぞう
)
なども婦人には面白き
嗜
(
たしな
)
みならん。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
亜米利加土人の煙を
嗜
(
たしな
)
みしは、コロムブスが新世界に至りし時、既に葉巻あり、
刻
(
きざ
)
みあり、
嗅
(
かぎ
)
煙草ありしを見て知るべし。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
武士たる者の
嗜
(
たしな
)
みを忘れてみめよきお方の御器量に迷い、本心を失うた、などゝ申すのではござりませぬから、思いちがいをして下さりますな。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ポナペ人を除いた凡てのカロリン群島人は——檳榔の実を石灰に和して常に噛み
嗜
(
たしな
)
むので、家の前には必ず数本の此の樹を植ゑることにしてゐる。
夾竹桃の家の女
(新字旧仮名)
/
中島敦
(著)
その身恥を思わずわがままなる行跡に成り行き候ままにおいておのずから勝手不如意に相成りて
嗜
(
たしな
)
むべき武具をも嗜まず、益もなき金銀を費やし
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それでも彼は時々健三を
伴
(
つ
)
れて以前の通り外へ出る事があった。彼は一口も酒を飲まない代りに大変甘いものを
嗜
(
たしな
)
んだ。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あえて有福な人々ばかりでなく、其の日ぐらしの貧しい階級でも、多少の
嗜
(
たしな
)
みを持たぬ者はないというくらいである。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其の兵器を
鳩集
(
きふしふ
)
する
所以
(
ゆゑん
)
のものは、
恰
(
あたか
)
も
上国孱士
(
じやうこくせんし
)
の茶香古器を
玩
(
もてあそ
)
ぶが如し。
東陲
(
とうすい
)
の
武夫
(
もののふ
)
皆弓槍刀銃を
嗜
(
たしな
)
まざるなし、これ地理風質の
異
(
ことな
)
るに
依
(
よ
)
るのみ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
またもう一つは、ひどく淫事を
嗜
(
たしな
)
むようになったという事で、彼女は夜を重ねるごとに、自分の
矜恃
(
ほこり
)
が
凋
(
しぼ
)
んでゆくのを、眺めるよりほかになかった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自分で
嗜
(
たしな
)
みに字を書くにあらずして、人に見せるという見栄を切る不純な了簡があるために形に引っ掛かって来る。
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
元来酒を
嗜
(
たしな
)
まざれば従つて日頃
悪食
(
あくじき
)
せし覚えもなし。
強
(
し
)
ひて罪を他に負はしむれば
慶応義塾
(
けいおうぎじゅく
)
にて取寄する弁当の洋食にあてられしがためともいはんか。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そういう吉左衛門はいくらか風雅の道に
嗜
(
たしな
)
みもあって、本陣や庄屋の仕事のかたわら、美濃派の俳諧の流れをくんだ句作にふけることもあったからで。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
昔のまだ
独身
(
ひとりみ
)
時分のように読んでいる書物の中に、身も魂も打ち込むということはできなかったが、それでもまだこの方法が酒も
嗜
(
たしな
)
まず賭事も好まず
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「
径路
(
けいろ
)
窄
(
せま
)
きところは、一歩を留めて、人に行かしめ、
滋味
(
じみ
)
濃
(
こまや
)
かなるものは、三分を減じて人に
譲
(
ゆず
)
りて
嗜
(
たしな
)
ましむ、これは
是
(
こ
)
れ、世を
渉
(
わた
)
る一の
極安楽法
(
ごくあんらくほう
)
なり」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
人々との会席の振舞やに芸術を
創
(
はじ
)
めるのでなくて、茶の湯を
嗜
(
たしな
)
むことが一つの風流であるように、歌を作ることにおいて文芸作品を創造するのでなくて
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
藤川の
女将
(
おかみ
)
は、年のころ五十ばかりで、名古屋の
料亭
(
りょうてい
)
の娘といわれ、お茶の
嗜
(
たしな
)
みもあるだけに、挙動は
嫻
(
しと
)
やかで、思いやりも深そうな人柄な女であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは一つは、私をどうかして中学の入学試験に合格させたいと、浅草の
観音
(
かんのん
)
さまへ願掛けをされて、平生
嗜
(
たしな
)
まれていた酒と煙草を断たれたためでもあった。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
誠に口は
禍
(
わざわい
)
の
本
(
もと
)
嗜
(
たしな
)
んで見ても情なや、もの言わねば腹
膨
(
ふく
)
るるなど理窟を付けて
喋
(
しゃべ
)
りたきは四海同風と見えて、古ギリシアにもフリギア王ミダスの譚を伝えた。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
厳格
(
おごそか
)
に口上を
演
(
の
)
ぶるは弁舌自慢の
円珍
(
えんちん
)
とて、唐辛子をむざと
嗜
(
たしな
)
み
食
(
くら
)
える
祟
(
たた
)
り鼻の
頭
(
さき
)
にあらわれたる
滑稽納所
(
おどけなっしょ
)
。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして、現代の日本ではもう忘れかけられた、かの「
嗜
(
たしな
)
みのいい
知識人
(
インテリ
)
」のにおいを君の裡に僕は発見した。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
妙音清調会衆は
皆
(
み
)
な天国に遊びし
心地
(
ここち
)
せしが主人公もまた多年の
嗜
(
たしな
)
みとて観世流の謡曲
羽衣
(
はごろも
)
を
謡
(
うた
)
い出しぬ。客の中には覚えず声に和して手拍子を取るもあり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
立花
(
りっか
)
などの中何か一つ
嗜
(
たしな
)
んでいない者はどんなに身分の
善
(
よ
)
い者でも官吏には採用しないぞと書いています。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
前記の
報条
(
ひきふだ
)
は多分喜兵衛自作の案文であろう。余り名文ではないが、喜兵衛は商人としては文雅の
嗜
(
たしな
)
みがあったので、六樹園の門に入って
岡鹿楼笑名
(
おかしかろうわらいな
)
と号した。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そればかりではなく、ポオル叔父さんは旅行中は無口な人で、
嗜
(
たしな
)
み深い態度を取つたまゝ黙つて居ります。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
老母おなかは元来酒を
嗜
(
たしな
)
む所に、近年は
痰
(
たん
)
が起つて夜分眠られぬ。すると島吉が、老母の好きな酒を飲ませる。酒を飲むと一時痰が納まつて苦痛を忘れると云ふ。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
渠
(
かれ
)
に取るゝ共
時宜
(
じぎ
)
に
寄
(
よら
)
ば長庵めを恨みの一
刀
(
たう
)
浴
(
あび
)
せ
掛
(
かけ
)
我も其場で
潔
(
いさぎ
)
よく自殺を
爲
(
なし
)
て
怨
(
うら
)
みを
晴
(
はらさ
)
んオヽ
然
(
さう
)
じや/\と覺悟を極め
豫
(
かね
)
て其の身が
嗜
(
たしな
)
みの
脇差
(
わきざし
)
密
(
そつと
)
取出して
四邊
(
あたり
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そこへ金と言い、お茶の湯と言い、全然
嗜
(
たしな
)
みのない本来無一物が、偶然中の偶然とも言うべき機会から、何も知らずに参室したのだから、一代の光栄どころでない。
お茶の湯満腹談
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
曰く、日本の青年としての「
嗜
(
たしな
)
み」を完全に、どこまでも、自分のものとする、これだけであります。
青年の矜りと嗜み:――力としての文化 第四話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
トトキ、ヤブカンザウ、ギバウシユ、ヨメナ、雪の下、オホバタネツケバナなどは雜草と云つても、昔から風流の意味で人が
嗜
(
たしな
)
み、世間の評價も既に定まつてゐる。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
嗜
漢検1級
部首:⼝
13画
“嗜”を含む語句
嗜好
不嗜
身嗜
嗜虐
嗜欲
嗜好者
好嗜
大嗜
嗜慾
嗜眠
嗜好品
嗜好物
嗜虐的
嗜食
嗜癖
嗜味
異嗜
同嗜
手嗜
嗜酒任侠
...