呉服屋ごふくや)” の例文
二人ふたり呉服屋ごふくや反物たんものつてた。米屋こめやからこめつてつた。けれども其他そのたには一般いつぱん社會しやくわいところきはめてすくない人間にんげんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まち人々ひとびとかおをしかめて、そのあわれな子供こどもうし姿すがた見送みおくりました。子供こどもまちのいちばんきれいな呉服屋ごふくやはいりました。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほか布袋屋ほていやふ——いまもあらう——呉服屋ごふくやがあつたが、濱野屋はまのやはう主人しゆじんが、でつぷりとふとつて、莞爾々々にこ/\してて、布袋ほてい呼稱よびながあつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは街を歩むうち呉服屋ごふくやの店先にひらめ友禅ゆうぜんの染色に愕然がくぜん目をそむけて去った事もあった。若き日の返らぬよろこびを思い出すまいと欲したがためである。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
呉服屋ごふくやに物言うのもはばかるほどであったお蔭で、半年経たぬうちにやっと元の額になったのを機会しおに、いつまでも二階借りしていては人にあなどられる
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ちょうど見舞いに来合せていた、この若い呉服屋ごふくやの主人は、短い口髭くちひげふち無しの眼鏡めがねと云う、むしろ弁護士か会社員にふさわしい服装の持ち主だった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もよほ講中かうちうの内にて紺屋こんや五郎兵衞蒔繪師まきゑし三右衞門米屋六兵衞呉服屋ごふくや又兵衞の四にんを跡へ止め別段べつだん酒肴しゆかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たすきがけのまゝ人に聞き/\近在きんざい買物かいものに駈け歩いて、今日きょう斯様こんな処を歩きました、みょうな処にみせは出してない呉服屋ごふくやがありましたと一々報告した。彼女は忽ち近隣きんりんの人々と懇意こんいになった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
隣町の呉服屋ごふくや衣裳いしょうの見立に参ったり、それを家中うちじゅうの手で裁縫したり、道具類だとか、細々こまごました手まわりの品々を用意したり、その中へ先方からは立派な結納ゆいのうが届く、お友達にはお祝いの言葉やら
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこには、おおきな呉服屋ごふくやがありました。たり、はいったりする人々ひとびとで、そこのかどは、黒山くろやまのようにぎわっていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なになか呉服屋ごふくやまうぎてるのさ」と宗助そうすけ其道そのみちあかるいやうことを、このたん銘仙めいせんから推斷すゐだんしてこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日頃ひごろ母子の家に出入でいりする男といっては、日々勝手口へ御用を聞きに来る商人のほかには、植木屋と呉服屋ごふくや家作かさく差配人さはいにんと、それから桑島くわじま先生という内科の医者くらいのものであろう。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しらせけるにそ初瀬留は打驚うちおどろ早速さつそくきたりて吉之助にひ私し故に御勘當ごかんだうの御身となられし由さぞかしにくき者と思召おぼしめされんが此上は私し何事も御見繼おみつぎ申さんにより何處いづくへも行き給はず五八の方に居給へとて夫より呉服屋ごふくやへ言ひ付吉之助が衣類いるゐ其外そのほか何不自由なにふじいうなくおくりければ是ぞ誠に鷄卵たまごに四かく眞實しんじつ仕送しおくらるゝ身は思ふなるべし或日五八は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
呉服屋ごふくや番頭ばんとうは、うさんなつきで、かがや真珠しんじゅや、あかがにのゆびのようなあかいさんごをながめていましたが
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちの、おおきな呉服屋ごふくやで、小僧こぞうようだということをいたので、そこへ、吉雄よしおをやることにしました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、小学校しょうがっこう卒業そつぎょうすると、すぐ都会とかい呉服屋ごふくや奉公ほうこうされました。それから、もう何年なんねんたったでしょう。かれは、勉強べんきょうして、すえにはいい商人しょうにんになろうとおもっているのでした。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちといっても家数いえかずすくないちいさなさびしいまちで、魚問屋さかなどいやや、呉服屋ごふくやや、荒物屋あらものやや、いろんな商店しょうてんがありましたが、いちばん魚問屋さかなどいやおおくあって、町全体まちぜんたい魚臭さかなくさ空気くうきつつまれていました。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのまちには、むかしからの染物屋そめものやがあり、また呉服屋ごふくやや、金物屋かなものやなどがありました。は、西にしりかかっていました。少年しょうねんは、あちらのそらのうす黄色きいろく、ほんのりといろづいたのがかなしかったのです。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるまち呉服屋ごふくや店頭てんとうって一人ひとり少女しょうじょが、じっとそこにかざられた人形にんぎょういっていました。人形にんぎょうは、うつくしい着物きものをきて、りっぱなおびをしめて、まえとおひとたちをほこらしげにながめていたのです。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしいえ近所きんじょ呉服屋ごふくやさんがありましてね。
風船虫 (新字新仮名) / 小川未明(著)