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劈
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つんざ
ふりがな文庫
“
劈
(
つんざ
)” の例文
其
(
それ
)
が
三聲
(
みこゑ
)
めに
成
(
な
)
ると、
泣
(
な
)
くやうな、
怨
(
うら
)
むやうな、
呻吟
(
うめ
)
くやうな、
苦
(
くるし
)
み
踠
(
もが
)
くかと
思
(
おも
)
ふ
意味
(
いみ
)
が
明
(
あきら
)
かに
籠
(
こも
)
つて
來
(
き
)
て、
新
(
あた
)
らしく
又
(
また
)
耳
(
みゝ
)
を
劈
(
つんざ
)
く……
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
貪欲界
(
どんよくかい
)
の雲は
凝
(
こ
)
りて
歩々
(
ほほ
)
に厚く
護
(
まも
)
り、
離恨天
(
りこんてん
)
の雨は随所
直
(
ただち
)
に
灑
(
そそ
)
ぐ、
一飛
(
いつぴ
)
一躍出でては人の肉を
啖
(
くら
)
ひ、半生半死
入
(
い
)
りては我と
膓
(
はらわた
)
を
劈
(
つんざ
)
く。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その方にチラリと眼を奪われた瞬間に、虚空を
劈
(
つんざ
)
く非常汽笛と、大地を震撼する真黒い音響とが、私の一尺横を
暴風
(
はやて
)
のように通過した。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鼻を
劈
(
つんざ
)
く石炭酸の臭いは、室の中に込み上った。障子に浸みた消毒水の
痕
(
あと
)
は、外の暗くなりかかった灰色の空の色を
染
(
にじ
)
ませていた。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
十分もしたかと思うころ、右手の後列のあたりで
劈
(
つんざ
)
くような連射音がひびき、ギャッというみじめな悲鳴が聞えた。それからまた一人。
ノア
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
その上、重く堅い
巌
(
いわお
)
を火の力により
劈
(
つんざ
)
き、山形にわたくしを積み上げさせたということは、
仇
(
あだ
)
おろそかのすさびに出来る仕事ではない。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
如何なる憤怒絶望の
刃
(
やいば
)
を以てするも
劈
(
つんざ
)
きがたく、如何なる
怨恨
(
えんこん
)
悪念の焔を以てするも破りがたい
闇
(
やみ
)
の
墻壁
(
しょうへき
)
とでもいいましょうか。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これ無頼の小人。その衣冠も必ず盗み来たるもの。古廟に群がり睡るは、夜労して昼疲る。西瓜を
劈
(
つんざ
)
くはもって蠅を
辟
(
さ
)
くるなりと
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その夜、千駄木の一角に、惡魔の舌のやうな
焔
(
ほのほ
)
がありました。その焔は、二條、三條まで、厚い森を
劈
(
つんざ
)
いて、赤々と深夜の空を染めます。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
戸外には人の足音が入り乱れ「此処だ」「集まれ」という叫び声が闇を
劈
(
つんざ
)
いて聞えた。秀之進は大剣を腰に差し、土間へ下りた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
信一郎の、かうした愛妻を中心とした、いろ/\な想像は、重く垂下がつた夕方の雲を
劈
(
つんざ
)
くやうな、鋭い汽笛の声で破られた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
私達を前にして椅子に腰掛けた東屋氏は、
劈
(
つんざ
)
くような嵐の音の絶え間絶え間に、落着いた口調で事件の真相を語りはじめた。
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
今や、闇を
劈
(
つんざ
)
く電光の
一閃
(
いっせん
)
の中に、遠い過去の世の
記憶
(
きおく
)
が、
一
(
いち
)
どきに
蘇
(
よみがえ
)
って来た。彼の
魂
(
たましい
)
がかつて、この木乃伊に宿っていた時の様々な記憶が。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
間違ったのかと思って振り返る——兵站部は燈火の光、
篝火
(
かがりび
)
の光、闇の中を行き違う兵士の黒い群れ、弾薬箱を運ぶかけ声が夜の空気を
劈
(
つんざ
)
いて響く。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
燦然
(
さんぜん
)
と闇を
劈
(
つんざ
)
くサーチライトの
光芒
(
くわうばう
)
に射られたやうに、眼がくら/\となつたのだつた。お信さんは、まだ私の中に異性を認めて居ないやうだつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
やがて夜は白み、水のおもての
狭霧
(
さぎり
)
には、まだ黄いろい余煙が低く這い、異様な鳥声が、今朝は
劈
(
つんざ
)
くように
啼
(
な
)
き響く。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
破
(
や
)
れた
人間離
(
にんげんばなれ
)
のした
嗄声
(
しゃがれごえ
)
が
咽喉
(
のど
)
を
衝
(
つ
)
いて
迸出
(
ほとばしりで
)
たが、応ずる者なし。大きな声が夜の空を
劈
(
つんざ
)
いて四方へ響渡ったのみで、
四下
(
あたり
)
はまた
闃
(
ひッそ
)
となって了った。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
そこを
劈
(
つんざ
)
いて一筋サッとこちらからの電燈の光が走っている。ひろ子は雨戸に手をかけた姿で、身ぶるいした。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
いよいよ飛び込んだ! 折から
二竜山
(
にりゅうざん
)
の方面より打ち出した大砲が五六発、大空に鳴る烈風を
劈
(
つんざ
)
いて一度に山腹に
中
(
あた
)
って山の根を吹き切るばかり
轟
(
とどろ
)
き渡る。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
突如として
劈
(
つんざ
)
くような金切声が響き渡ったかと思うと、黒衣の京子が、二青年の手を振り払い、後手に縛られたまま、髪振り乱して、兄の側へ駈け寄った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
橋あり長さ数十間その尽くる処
嶄岩
(
ざんがん
)
屹立
(
きつりつ
)
し
玉筍
(
ぎょくしゅん
)
地を
劈
(
つんざ
)
きて出ずるの勢あり。橋守に問えば水晶巌なりと答う。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「火事だ……。」と、榮一の慌てた叫び聲が階下にゐる人々の耳を
劈
(
つんざ
)
いた。外を通つてゐた者をも驚かした。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
星明りに
薄
(
うつす
)
りと浮んだ阿寒山の雪が、塵も動かぬ冬の夜の空を北に限つて、川向の一區域に燈火を群がらせた停車場から、鋭い汽笛が反響も返さず暗を
劈
(
つんざ
)
いた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
黒雲を
劈
(
つんざ
)
いて天の一角から一角に流れて行く電光の姿はまた私に本能の奔流の力強さと鋭さを考えさせる。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
わたしが夜の九時頃に涼みから帰ってくると、徳さんの家のなかから
劈
(
つんざ
)
くような女の声がひびいた。格子の外には通りがかりの人や近所の子供がのぞいていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もちろん黄金があるのではないけれども実に奇々妙々な岩壁が
厳然
(
げんぜん
)
として
虚空
(
こくう
)
を
劈
(
つんざ
)
くごとくに
峙
(
そばだ
)
って居る。その岩壁の向うに玉のごとき雪峰が顔を出して居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
支那蕎麥屋は家の前のだら/\坂をガタリ/\車を挽いて坂下の方へ下りて行つたが、笛の音だけは鎭まつた空氣を
劈
(
つんざ
)
いて物哀しげに遙かの遠くから聞えて來た。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
突然地の底から大砲でも放ったような響が続けさまに二度、谷の空気を
劈
(
つんざ
)
いて山から山に遠鳴りした。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
殷々
(
いんいん
)
たる砲声は耳を
劈
(
つんざ
)
いて、十二
吋
(
インチ
)
主砲弾はたちまち我艦眼掛けて、
釣瓶
(
つるべ
)
打ちに落下してきた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この見せつけがましい鎧櫃一個がこの際、骨を
劈
(
つんざ
)
いてやりたいほどに憎らしくなる。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
外では、ブルンブルンBr……と、湖水の水のように、ひんやり静まり清まった緻密な空気を
劈
(
つんざ
)
いて、四百五十馬力のブリストルジュピタア発動機が、百雷のような唸りをたてている。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
狂わんばかりに打ちはためく電に
劈
(
つんざ
)
かれて、魂の地平を取り囲みながら、息をつめてる空を
双
(
そう
)
の翼で荒々しく打ちながら、日の光を消しながら、眼
眩
(
くら
)
むほどにかつ重々しく
翔
(
かけ
)
ってくる。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
我黨は
廼
(
すなは
)
ち五大洲を
睥睨
(
へいげい
)
して彼の千魂萬魂といはれたりし怪物、わが日の本の鴎外將軍が審美の利劍に
劈
(
つんざ
)
かれて、つひにこそそが正體をあらはしつれと、
洽
(
あまね
)
くとつ國びとにのらまくす。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
なにがゆえにかくのごとく一声の
霹靂
(
へきれき
)
天地を
劈
(
つんざ
)
くの大革命を生出し来たらんや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
向うの方で、光の
槍
(
やり
)
の最初の一
閃
(
せん
)
が、音もなく空を
劈
(
つんざ
)
く。雨が一滴落ちる。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
見脱
(
みおと
)
さんが惜ければ
母衣
(
ほろ
)
は掛けず今井四郎の城跡といふあり此間右は木曾川
漲
(
みなぎ
)
り流れ左りは連山
峨々
(
がゝ
)
たる
崖
(
がけ
)
なるが左りの山を
劈
(
つんざ
)
いて横に一大河の流れて木曾川へ入るあり此の
棧橋
(
かけはし
)
の上より車を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
さて一種の
濁
(
にご
)
った色の
霞
(
かすみ
)
のようなものが、雲と雲との間をかき乱して、すべての空の模様を動揺、
参差
(
しんし
)
、任放、錯雑のありさまとなし、雲を
劈
(
つんざ
)
く光線と雲より放つ陰翳とが彼方此方に交叉して
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
波浪
劈
(
つんざ
)
く船に乘り、むしろ故郷に立ち去らむ、 205
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
雨もまた、天を
劈
(
つんざ
)
きて落ち来たるかと怪しまる。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
空
(
そら
)
を
劈
(
つんざ
)
く
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
。
海
(
うみ
)
に
潜
(
ひそ
)
める
大軍器
(
だいぐんき
)
※
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それが
三声
(
みこえ
)
めになると、泣くような、怨むような、
呻吟
(
うめ
)
くような、
苦
(
くるし
)
み
踠
(
もが
)
くかと思う意味が
明
(
あきら
)
かに
籠
(
こも
)
って来て、
新
(
あた
)
らしくまた耳を
劈
(
つんざ
)
く……
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
信一郎の、こうした愛妻を中心とした、いろ/\な想像は、重く垂下がった夕方の雲を
劈
(
つんざ
)
くような、鋭い汽笛の声で破られた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
かっと喉を
劈
(
つんざ
)
く声とともに、十郎兵衛が体ごと突込んで来た。伊兵衛はわずかに体を
躱
(
かわ
)
した。そして十郎兵衛が烈しくのめって行くのを見たとき
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
北見之守の刃が、お金のふくよかな
脛
(
はぎ
)
を
劈
(
つんざ
)
くのが先か、家来達の刃が、左馬之助を
膾
(
なます
)
にするのが先か。——と思う時。
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
……鋭い小鳥の声が、
劈
(
つんざ
)
くように
翔
(
か
)
け去ってゆく。風のせいか滝の轟きが急に耳へついて、
一朶
(
いちだ
)
の雲の
裡
(
うち
)
に、陽の光も
淡
(
うす
)
れて来たかのように思える。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
突然私は犬の凄じく吼える声が夜の空気を
劈
(
つんざ
)
いてきこえて来るのを耳にした。私にはすぐわかつた。それは平塚領事夫妻の伴れて来てゐた犬に相違なかつた。
北京の一夜
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
日の暮れんとする午後五時となれば
鐘淵紡績
(
かねがふちぼうせき
)
会社工場の汽笛人の耳を
劈
(
つんざ
)
き草木の葉をもふるひ落さんとす。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
星明りに
薄
(
うつす
)
りと浮んだ
阿寒山
(
あかんざん
)
の雪が、塵も動かぬ冬の夜の空を北に限つて、
川向
(
かはむかひ
)
の
一区域
(
ひとしきり
)
に
燈光
(
ともしび
)
を群がらせた停車場から、鋭い汽笛が反響も返さず暗を
劈
(
つんざ
)
いた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と笑いながら船首の
吃水線
(
きっすいせん
)
下に投げ付けた。……トタンに轟然たる振動と、芸者連中の悲鳴が耳も潰れるほど空気を
劈
(
つんざ
)
いた。それを見上げた友吉おやじは又も
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「火事だ……」と、栄一の
慌
(
あわ
)
てた叫声が階下にいる人々の耳を
劈
(
つんざ
)
いた。外を通っていた者をも驚かした。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
劈
漢検1級
部首:⼑
15画
“劈”を含む語句
劈頭
劈痕
劈開
八劈
劈痕焼
劈裂
劈襀
劈開片
劈雲
斧劈