人通ひとどお)” の例文
正吉しょうきちは、とぼとぼとまちほうをさしてあるいてゆきました。このあたりはもうれると、まったく人通ひとどおりはえてしまったのです。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
村人むらびとたちは夕ぐれ時、頭から手の先まですっかりつつみこんだかっこうで、人通ひとどおりの少ないうら道とか、木のしげりあったくらいじめじめした場所を散歩さんぽしているれいの男にでくわすと
王子おうじ百姓ひゃくしょう人通ひとどおりのない谷奥たにおくうしいて行くのをみょうおもって
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
電信柱でんしんばしらはいうに、昼間ひるま人通ひとどおりがしげくて、おれみたいなおおきなものがあるけないから、いまごろいつも散歩さんぽするのにめている、とこたえた。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこは、人通ひとどおりのない、いえまえはたけなかでありました。うめも、かきのも、すでに二、三じゃくもとのほうはゆきにうずもれていました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あすは、おてらのお開帳かいちょうで、どんなにかこのへん人通ひとどおりのおおいことだろう。お天気てんきであってくれればいいが。」といいました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆきのあるのは、ここだけだ。むら往来おうらいれば、人通ひとどおりがあるし、あるくのがらくになるからがまんをしろよ。さあ、わたしあとについてくるだ。」
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなさびしい、人通ひとどおりのないばんに、いまごろまで露店ろてんしているなんて不思議ふしぎなことだと、父親ちちおやおもいました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、あなたはおじょうぶですから、安心あんしんなさいまし。わたしは、れれば、明日あすにもあの人通ひとどおりのおおみちうえてられてしまうかもしれません。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわいたみちうえには、れたがころがって、人通ひとどおりもない、しんとした往来おうらいを、おそろしいおとこが、あのように、だまってくるまいてゆくのだろう……。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
勇吉ゆうきちが、さきになって、こう一は、あとからついて、人通ひとどおりのすくない、しろかわいた真昼まひる往来おうらいけていきました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらが、くもっていたせいもありますが、まちなかは、れてからは、あまり人通ひとどおりもありませんでした。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、そのがたでありました。そらくもって、さむかぜいていました。あまり人通ひとどおりもない、雪道ゆきみちうえに、二つのあか手袋てぶくろがいっしょにちていました。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その翌日よくじつは、にわかに天気てんきわりました。あさのうちから木枯こがらしがきつのり、日中にっちゅう人通ひとどおりが、えたのです。おじいさんははやくからめてしまいました。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ときどきまち人通ひとどおりのたくさんな、にぎやかなちまたほうから、なにか物売ものうりのこえや、また、汽車きしゃのゆくおとのような、かすかなとどろきがこえてくるばかりであります。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いい月夜つきよでありました。二人ふたりながながまちあるいてゆきました。だんだんゆくにつれて場末ばすえになるとみえて、まちなかはさびしく、人通ひとどおりもすくなく、くらくなってきました。
海ほおずき (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかも、かれのいく楽譜店がくふてんは、このまちでも、いちばん人通ひとどおりのおおい、にぎやかなところでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おれにも、あんな子供こども時分じぶんがあったのだ。」と、かんがえると、きんさんのには、人通ひとどおりのはげしい、あぶらのこげつくにおいがただよう、せま夕日ゆうひたるまち景色けしきかんでくるのです。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこをても、ゆき野原のはらしろでした。だんだんまちちかづくにつれて、みちうえ人通ひとどおりがおおくなりました。雪道ゆきみちうえあるいていくものもあれば、そりにっていくものもあります。
からすとうさぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まったく人通ひとどおりのえた往来おうらいうえを、くるまいてゆくさまえがいたのでした。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
鉛色なまりいろをした、ふゆあさでした。往来おうらいには、まだあまり人通ひとどおりがなかったのです。ひろみち中央ちゅうおう電車でんしゃだけが、うしおしよせるようなうなりごえをたて、うすぐらいうちから往復おうふくしていました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちほうへつづくみちうえには、かげろうがたち、そらいろはまぶしかった。しずかな真昼まひるで、人通ひとどおりもありませんでした。金魚売きんぎょうりのおじさんは、きっと、あっちの露路ろじへまがったのだろう。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この三にんは、石段いしだんしたから二、三だんうえのところにならんでこしをけていましたが、そのまえをいく人通ひとどおりもまれとなったのです。ちょうど、母親ははおやが、れかかったぞうりの鼻緒はなおなおしていたときです。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ、ひるまえで、あまり人通ひとどおりのない時分じぶんでした。みちかたがわに一けんものてんがありました。おもてめんした、ガラスのはまったかざまどには、わかおんなひとがきるような、はでな反物たんものがかかっていました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつしか、は、けていきました。人通ひとどおりがだんだんすくなくなりました。あわれなおんな三味線しゃみせんは、かぜされて、うたをうたっているこえは、むなしく星晴ほしばれのしたそらしたにかすれていました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)