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髻
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もとどり
ふりがな文庫
“
髻
(
もとどり
)” の例文
今まで幾十百人の
髻
(
もとどり
)
を切られた方々も、さすがは青江
備前守
(
びぜんのかみ
)
様と言われるだろうと、——今ではそれより外に汚名を救う
術
(
すべ
)
はないのだ
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
兄弟分せいたかの
遺物
(
かたみ
)
の
髻
(
もとどり
)
を
懐
(
ふところ
)
に入れ、前もって、新九郎に言い渡されている言葉通り、夜に紛れて、江戸から高飛びしてしまった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜に入って上裁籤の組は、皆国元の父母兄弟その他
親戚
(
しんせき
)
故旧に当てた遺書を作って、
髻
(
もとどり
)
を切ってそれに巻き籠め、下横目に差し出した。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
案内もなく入り込んで来たのは、
髻
(
もとどり
)
を高く結び上げて、
小倉
(
こくら
)
の袴を穿いた
逞
(
たくま
)
しい浪士であります。手には
印籠鞘
(
いんろうざや
)
の長い刀を
携
(
たずさ
)
えて
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
髻
(
もとどり
)
が千切れてバラバラになった髪を、かき上げもせず額にかけ、庄右衛門を切った血刀を、袖の下へ隠しながら、
跣足
(
はだし
)
のままで歩いていた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
その
髻
(
もとどり
)
を王使が捉えて手中に留まったのを王に示して、この通りかの者を誅したと告げたので、王大いに悦び重く賞賜した。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
多すぎる髪は、眼のところまでたれていて、首筋のところでは
髻
(
もとどり
)
のようになり、かたい一
房
(
ふさ
)
の毛は後ろへ巻き上がっていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
二人とも紅い
綃
(
しょう
)
の鉢巻をして、
髻
(
もとどり
)
に
雉
(
きじ
)
の尾を挿し、紫の小袖を着、腰に緑の錦を束ね、一方の手に
弾
(
はじきゆみ
)
を持ち、一方の手に青い
臂
(
ひじ
)
かけをしていた。
西湖主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
十一娘はそこで別れて帰ることにして、金の
釵
(
かんざし
)
をとって三娘にやった。三娘も
髻
(
もとどり
)
の上にさした緑の
簪
(
かんざし
)
をぬいて返しをした。
封三娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
此の後、勝元は
髻
(
もとどり
)
を切ろうと云い出し、宗全は切腹をすると言って居る。思うに共に戦意無きを示して、政則を牽制せんと計ったのでもあろう。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
真昼の
緋桃
(
ひもも
)
も、その娘の姿に露の濡色を見せて、髪にも、
髻
(
もとどり
)
にも影さす中に、その瓜実顔を
少
(
すこし
)
く傾けて、陽炎を透かして、峰の松を仰いでいた。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小せんの
頤
(
おとがい
)
へ足首をかけて仰向かせ、右の手にて善太の
髻
(
もとどり
)
をつかまへて引つ立て、二人とちよと顔を見合せて、ぢりぢりと自分の首を右の方にそむく。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
中々繁昌の様子で、
其処
(
そこ
)
に色々な
額
(
がく
)
が上げてある。
或
(
あるい
)
は男女の拝んでる処が
描
(
えが
)
いてある、何か封書が順に
貼付
(
はりつ
)
けてある、又は
髻
(
もとどり
)
が
切
(
きっ
)
て
結
(
ゆ
)
い付けてある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
月あかりに見れば、軒の
端
(
つま
)
にものあり。ともし火を
一八四
捧
(
ささ
)
げて照し見るに、男の髪の
一八五
髻
(
もとどり
)
ばかりかかりて、外には
一八六
露ばかりのものもなし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
白髪まじりの細い
髻
(
もとどり
)
を載せた、横へ広い大きな頭部を振って、黄色い、骨だらけの手で、じゃりじゃり音をさせて角張った顔の無精髯を撫で廻している。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
遥
(
はるか
)
に浅間、八ヶ岳、富士の諸山に揖し、遠く北アルプスの残雪を望み、近く戸隠、黒姫、飯縄の諸峰は、俯して其
髻
(
もとどり
)
を捉う可く、真に雄大を極めている。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
背中も、
髻
(
もとどり
)
も、土埃にまみれて、顔色が蒼白に変り、脣が紫色で、眼が凄く、血走っていた。小太郎が、振向いて
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
尖つた小枝が白い顔や肩を掻きむしり、風が
髻
(
もとどり
)
の解けた髪を吹きさらして、秋の落葉が足の下でガサガサ鳴るが——彼女はあらぬ方を見据ゑてゐるのだ。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
姫は、いつとなく、
髻
(
もとどり
)
をとり束ねて、襟から着物の中に、
含
(
くく
)
み入れた。夜中になって、風雨が止み、星空が出た。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
六兵衛は首を振った、「そうじゃない、怒られると困るんだが、おまえさんの
髻
(
もとどり
)
を切ってもらいたいんだ」
ひとごろし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
切髪の女は、なよやかに、しかも悩ましいほほえみを
洩
(
もら
)
した。すなおな、黒々とした髪を、なだらかな、なまめかしい風もなく
髻
(
もとどり
)
を堅く結んで切下げにしていた。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と蘇古根横蔵は
撥
(
ばち
)
を
据
(
す
)
えて、いつも変わることのない、底知れぬ胆力を示した。そして、海気に焼け切った
鉤鼻
(
かぎばな
)
を弟に向けて、
髻
(
もとどり
)
をゆるやかに揺すぶるのだった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その清い
眉
(
まゆ
)
にも涼しい目もとにも老いの迫ったという
痕跡
(
こんせき
)
がなく、まだみずみずしい髪の
髻
(
もとどり
)
を古代紫の
緒
(
ひも
)
で
茶筅風
(
ちゃせんふう
)
に結び、その先を前額の方になでつけたところは
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
孝助は
後
(
うしろ
)
から来る奴があると思って、いきなり振返りながら源次郎の
肋
(
あばら
)
へ掛けて斬りましたが、殺しませんでお國と源次郎の
髻
(
もとどり
)
を取って栗の根株に突き付けまして
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
色は日本婦人の最も好まない赤色、薄桃色もあるがそれは勅任官というたような者が
髻
(
もとどり
)
の飾りに用いる。なかなか立派なもので、大きいのは一個百二、三十円もする。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
颶風
(
ぐふう
)
が襲って来た。今は船も
覆
(
くつがえ
)
るほどの大荒になって来た。船客も船頭も
最早
(
もは
)
や
奇蹟
(
きせき
)
の力を頼まねばならぬ羽目になって
髻
(
もとどり
)
を切って仏神に祈った。船は漸く港についた。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人の小姓が
斃
(
たお
)
れると、彼は最初の死骸の傍にうずくまって、左の手で
髻
(
もとどり
)
を
掴
(
つか
)
み、右手で首を掻き切ろうとしたが、此の時廊下を駈けて来るらしい数人の足音を聞いた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ところが十九の年、仏門に帰依する心が俄かにおこり、ただちに
髻
(
もとどり
)
を切り捨て修行に出かけた。
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
そうやって死んでも阿部一族への
家中
(
かちゅう
)
の侮蔑は深まるばかりで、その重圧に鬱屈した当主の権兵衛が先代の一周忌の焼香の席で、
髻
(
もとどり
)
を我から押し切って、先君の位牌に供え
鴎外・芥川・菊池の歴史小説
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その家来に至っては、裸で紅い腰巻とか、
髻
(
もとどり
)
を解いて
田笠
(
たがさ
)
をかぶるとか、ほとんど正気の沙汰と思えなかった。一城の人皆狂せるがごとし。蓋
シ
霊狐之所為也。と記されている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「
稼収
(
かおさまって
)
平野濶
(
へいやひろし
)
」晩稲も苅られて、
田圃
(
たんぼ
)
も一望ガランとして居る。畑の桑は一株ずつ
髻
(
もとどり
)
を
結
(
ゆ
)
われる。一束ずつ奇麗に結わえた
新藁
(
しんわら
)
は、風よけがわりにずらりと家の
周囲
(
まわり
)
にかけられる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すいと泳いでその襟髪引ッ捕えながら、早くもすでにプツリ
髻
(
もとどり
)
を切ってすてました。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その頃は一般に合せ
鬢
(
びん
)
にして髪は引詰めて結う風だったのに、
髻
(
もとどり
)
を大段に巻きたて、
髷
(
まげ
)
は
針打
(
はりうち
)
にして元結をかけ、地にひきずるほどの長小袖の袖口から
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
の
襟
(
えり
)
を二寸もだし
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
東の縁側から逃げ出した七代の乱れた
髻
(
もとどり
)
に、飛鳥のごとく掴みかかった与一は、そのまま
飛石
(
とびいし
)
の上をヒョロヒョロと引き
擦
(
ず
)
られて行った。
金剛兵衛
(
こんごうへえ
)
を持直す
間
(
ま
)
もなく泉水の側まで来た。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
朝夕
耳
(
みゝ
)
にせしものは名ある武士が先陣
拔懸
(
ぬけが
)
けの
譽
(
ほまれ
)
れある
功名談
(
こうみやうばなし
)
にあらざれば、弓箭甲冑の
故實
(
こじつ
)
、
髻
(
もとどり
)
垂
(
た
)
れし幼時より
劒
(
つるぎ
)
の光、
弦
(
ゆづる
)
の響の裡に人と爲りて、浮きたる世の
雜事
(
ざれごと
)
は刀の
柄
(
つか
)
の塵程も知らず
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
わたしは泣く泣く俊寛様へ、姫君の
御消息
(
ごしょうそく
)
をさし上げました。それはこの島へ渡るものには、
門司
(
もじ
)
や
赤間
(
あかま
)
が
関
(
せき
)
を船出する時、やかましい
詮議
(
せんぎ
)
があるそうですから、
髻
(
もとどり
)
に隠して来た
御文
(
おふみ
)
なのです。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
秀吉は気絶し、食事は喉を通らず、茶碗の上へ泣き伏して顔中飯粒だらけ、汁や佳肴をかきわけて泳ぐやうに泣き
仆
(
たお
)
れてゐる。その翌日の通夜の席では狂へる如くに
髻
(
もとどり
)
を切つて霊前へさゝげた。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
見えるのは前常念に小さい
髻
(
もとどり
)
を
擡
(
もた
)
げている三角測量標ばかりだ。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
発心
(
ほっしん
)
の
髻
(
もとどり
)
を吹く
野分
(
のわき
)
かな
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
南条、五十嵐のほかのもう一人は、やはり同じように
髻
(
もとどり
)
をあげた壮士でありまして、才気
風丰
(
ふうぼう
)
、おのずから凡ならざるものがあります。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いったかと思うと、周魴はやにわに、小剣を抜いて、自分の
髻
(
もとどり
)
をぶつりと切り落し、曹休の前にさし置いたまま、
嗚咽
(
おえつ
)
を
嚥
(
の
)
んでうつ向いた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
当時
髻
(
もとどり
)
を麻糸で
結
(
ゆ
)
い、
地織木綿
(
じおりもめん
)
の衣服を
著
(
き
)
た弘前の人々の中へ、江戸
育
(
そだち
)
の五百らが
交
(
まじ
)
ったのだから、物珍らしく思われたのも
怪
(
あやし
)
むに足りない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
冗談言っちゃいけません、——ところで
肝腎
(
かんじん
)
の喜三郎だ、あとで気が付くと
髻
(
もとどり
)
は切れて、ザンバラ髪、それも知らず笛を
銭形平次捕物控:349 笛吹兵二郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
身動
(
みじろ
)
ぎに乱るる黒髪。
髻
(
もとどり
)
ふつ、と
真中
(
まんなか
)
から
二岐
(
ふたすじ
)
に
颯
(
さっ
)
となる。半ばを多一に振掛けた、半ばを握って
捌
(
さば
)
いたのを、
翳
(
かざ
)
すばかりに、浪屋の二階を
指麾
(
さしまね
)
いた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仇敵に仕える汝ら二人、首打ち落とすが本来なれど上使と名乗る名に免じて一命だけは助けてくれよう。やあやあ主馬之介
迅
(
と
)
く参って
此奴
(
こやつ
)
らの
髻
(
もとどり
)
を切り払え!
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この間に
髻
(
もとどり
)
はじく。「梶原ほどのさむれえが、弥助といつて
青二才
(
あおにせえ
)
、下男に仕立つてあることを、知れえで討手に来ませうか」といふ。これにて弥左衛門「えゝ」と請く。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
坊主にされて今のような立派な男になるには二年ばかり手間が掛るだろう。往生しろと
云
(
いっ
)
て、
髻
(
もとどり
)
を
捕
(
つかま
)
えて鋏をガチャ/\云わせると、当人は
真面目
(
まじめ
)
になって手を合せて拝む。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
左手で庄吉の
髻
(
もとどり
)
を掴んでも、二人が、身体を捻じらせて、草を踏み倒し、踏みにじり、獣の格闘の如く、
呻
(
うな
)
っても、吼えても——脇差は、月丸から離れまいと、突き立っていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
乾葡萄
(
ほしぶどう
)
、乾桃、
乾棗
(
ほしなつめ
)
及び薬種その他宝石類では
金剛石
(
こんごうせき
)
、
瑠璃
(
るり
)
、
𤥭琥
(
しゃこ
)
、
瑪瑙
(
めのう
)
、
琥珀
(
こはく
)
、
瑜
(
ゆ
)
類であるが、なかんずくその大部分を占めて居るものは
珊瑚珠
(
さんごじゅ
)
と
瑜
(
ゆ
)
という
髻
(
もとどり
)
を飾る宝石である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
奥白根はかなり雪が白く、峰頭をかすめて雲が去来する毎に、
研
(
と
)
ぎ澄した鏡のように光る雪面が曇ったり輝いたりする。庚申山の如きはいわゆる俯してその
髻
(
もとどり
)
をとるべしという形だ。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
髻
漢検1級
部首:⾽
16画
“髻”を含む語句
大髻
頭髻
髻華
高髻
雲髻
鴉髻
髻髪
髻節
髻珠
髻山
髻偏雲乱挽
双孖髻
角髻
肉髻
片髻
椎髻
慵鬟高髻緑婆娑
御髻
女飾髻
墮馬髻