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鍔
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つば
ふりがな文庫
“
鍔
(
つば
)” の例文
天にも地にも、たった一人の肉親は、青竹を削って、
鍔
(
つば
)
と
柄
(
つか
)
だけを取付けた竹光で、背中から縫われ、獣のように死んでいるのです。
銭形平次捕物控:076 竹光の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
こんな独り言を云いながら、
敬虔
(
けいけん
)
に短刀を抜いてみた。恐らくあげ物というやつだろう、
鍔
(
つば
)
から
切尖
(
きっさき
)
までのバランスがとれていない。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
切っさきを
袂
(
たもと
)
にくるんで、あわや身につきたてようとしたときである。ブーンと、飛んできた
分銅
(
ふんどう
)
が、カラッと刀の
鍔
(
つば
)
へまきついた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういう浪江と寄り添うようにして、腰をかけている茅野雄の大小の、柄の辺りにも日が射していて、
鍔
(
つば
)
をキラキラと光らせていた。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
侍「亭主や、
其処
(
そこ
)
の黒糸だか紺糸だか知れんが、あの黒い色の
刀柄
(
つか
)
に
南蛮鉄
(
なんばんてつ
)
の
鍔
(
つば
)
が附いた刀は誠に
善
(
よ
)
さそうな品だな、ちょっとお見せ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
実際酒に酔って腰をかけたまま
脛
(
すね
)
を折っぺしょった人があるそうだ。見ると橋本の帽子の
鍔
(
つば
)
が風に吹かれてひらひらと
靡
(
なび
)
いている。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
進駐軍の兵卒と同じような上等の
羅紗
(
ラシャ
)
地の洋服に、靴は戦争中士官がはいていたような本皮の長靴をはき、
鍔
(
つば
)
なしの帽子を横手にかぶり
羊羹
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼の影は左には
勿論
(
もちろん
)
、右にももう一つ落ちている。しかもその又右の影は
鍔
(
つば
)
の広い帽子をかぶり、長いマントルをまとっている。
誘惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
士
(
さむらい
)
は、
鍔
(
つば
)
を売り、女は、
簪
(
かんざし
)
を売って献金し、十三ヶ月に渡って、食禄が頂戴できないまでに窮乏してしまった。そして、彼は隠居をした。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
(時の鐘きこゆ。お菊は箱より恐る/\一枚の皿を出す。播磨はその皿を刀の
鍔
(
つば
)
に打ちあてて割るに、お菊も權次もおどろく。)
番町皿屋敷
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その人は線路工夫の
半纒
(
はんてん
)
を着て、
鍔
(
つば
)
の広い
麦藁
(
むぎわら
)
帽を、上の
棚
(
たな
)
に載せながら、誰に
云
(
い
)
ふとなく大きな声でさう言ってゐたのです。
化物丁場
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ほんの少しばかりいつもより
鍔
(
つば
)
の広い
麦藁帽
(
むぎわらぼう
)
をかぶるともう見当がちがって、いろいろなものにぶっつかるくらいであるから
子猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
切先を曲げると
鍔
(
つば
)
元までくる。そのうち一本はピンと折れたので気の毒に思った。二時間ばかりで艦を辞し、グランドホテルに少将を訪う。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
と、怪しい響きを立てたと思うと、相州物の
大業
(
おおわざ
)
ものが、不思議にも、
鍔
(
つば
)
から八、九寸のところで、ゴキリと折れてしまった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ピンクの
裾
(
すそ
)
の長い、
衿
(
えり
)
の大きく開いた着物に、黒い絹レエスで編んだ長い手袋をして、大きな
鍔
(
つば
)
の広い帽子には、美しい紫のすみれをつける。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「例えば、この短刀です。この
鍔
(
つば
)
のない棒みたいな兇器は、一目で持主が分る筈です。喜多川さん、そうではありませんか」
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
日本の屋根を傘とすれば、西洋のそれは帽子でしかない。しかも鳥打帽子のように出来るだけ
鍔
(
つば
)
を小さくし、日光の直射を近々と軒端に受ける。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ございます、ちょうど、雨だれの
簷
(
のき
)
を落ちる時のような同じ形が揃って、
鍔
(
つば
)
の下から切尖まで、ずっと並んで、いかにもみごとでございます」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今年また鉢巻の広いのが流行つて来た代りには、こん度は
鍔
(
つば
)
が狭くなつてゐるでせう。それにあなたが一人鍔の広いのを被つてゐては可笑しいわ。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
目の前の
餉台
(
ちやぶだい
)
にあるお茶道具のことから、話が
骨董
(
こつとう
)
にふれた。ちやうどさういふ趣味をもつてゐる養嗣子が、
先刻
(
さつき
)
から
裂
(
きれ
)
で拭いてゐた
鍔
(
つば
)
を見せた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そう云って、警部は一振りの
洋式短剣
(
ダッガー
)
を突き出した。銅製の
鍔
(
つば
)
から
束
(
つか
)
にかけて血痕が点々としていて、
烏賊
(
いか
)
の甲型をした刃の部分は洗ったらしい。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何者か編笠の中の正体を見届けようとつけ狙って来た小者の方へ、ずいと静かにふり向くと、パチンと高く
鍔
(
つば
)
鳴りをさせました。音が違うのです。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
アフリカ某
地方
(
ちはう
)
の土人は
土堀
(
つちほ
)
り用の
尖
(
とが
)
りたる
棒
(
ぼう
)
に
石製
(
せきせい
)
の
輪
(
わ
)
をば
鍔
(
つば
)
の如くに
篏
(
は
)
めて
重
(
をも
)
りとし、此
道具
(
どうぐ
)
の
功力
(
こうりよく
)
を増す事有り。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
が、それと
同瞬
(
どうしゅん
)
、駕籠の中から、
垂
(
た
)
れを
裂
(
さ
)
いて突き出して来た銀ののべ棒——三尺の
秋水
(
しゅうすい
)
だ。声がした。「
鍔
(
つば
)
を見ろ!」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ラ・プレッサの
家長
(
いへをさ
)
は既に治むる道を知り、ガリガーイオは
黄金裝
(
こがねづくり
)
の
柄
(
つか
)
と
鍔
(
つば
)
とを既にその家にて持てり 一〇〇—一〇二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
両手を
鍔
(
つば
)
の下へ、重々しゅう、南蛮鉄、五枚
錣
(
しころ
)
の
鉢兜
(
はちかぶと
)
を脱いで、陣中に憩った形でござったが、さてその耳の
敏
(
さと
)
い事。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ドクタア・ビゲロウは刀剣、
鍔
(
つば
)
、漆器のいろいろな形式の物を手に入れるだろうし、フェノロサ氏は彼の顕著な絵画の蒐集を増大することであろう。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
腰の物は大小ともになかなか見事な
製作
(
つくり
)
で、
鍔
(
つば
)
には、誰の作か、活き活きとした
蜂
(
はち
)
が二
疋
(
ひき
)
ほど毛彫りになッている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
鍔
(
つば
)
のひろい
笊
(
ざる
)
の底にまろびあういろいろな鶏の卵は私のために乏しい村の隅ずみから寄せ集めたものである。飯がふくじぶんまで話して本陣は帰った。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
彼は何だか変な
身形
(
みなり
)
をして、頭には、両方の耳の上へ
鍔
(
つば
)
が突き出したような一種のふち無し帽をかぶっていました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
竹藪の
鳥渡
(
ちよつと
)
途絶
(
とだ
)
えた
世離
(
よばな
)
れた静かな好い場所を占領して、長い釣竿を二三本も水に落して、
暢気
(
のんき
)
さうに
岩魚
(
いはな
)
を釣つて居る
鍔
(
つば
)
の大きい
麦稈
(
むぎわら
)
帽子の人もあつた。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そのやや真深かにかぶった黄いろい帽子と、その
鍔
(
つば
)
のかげにきらきらと光っていた
特徴
(
とくちょう
)
のある
眼
(
まな
)
ざしとよりほかには、
殆
(
ほと
)
んど何も見覚えのない位であった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
汚い帽子の
鍔
(
つば
)
の下から、節穴のような両眼を光らせ、歪んだ口を引裂けるほど開いて歯をむき出している……
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人造金の
指輪
(
ゆびわ
)
売りや、暗記術速習の本を売る書生風の男や、それから薄暗い横町の電柱の陰では
鍔
(
つば
)
の
垂
(
た
)
れた帽子で目隠しをしたヴァヰオリン
弾
(
ひき
)
の唄売りなど
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
と木部はうつろに笑って、
鍔
(
つば
)
の広い帽子を書生っぽらしく
阿弥陀
(
あみだ
)
にかぶった。と思うとまた急いで取って
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
長いもの、短いもの、黒、白、朱、
螺鈿
(
らでん
)
、いろいろな
鞘
(
さや
)
と、
柄巻
(
つかまき
)
、
鍔
(
つば
)
——二百四五十本もあるであろうか。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
白い入場券を帽子の
鍔
(
つば
)
に、細身のステッキを小腋に抱込んだまま、ひとごみをかき分けかき分け、気取った歩きぶりで、そこらをぶらぶらしているのが眼についた。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それから父は、家族連中の環視の中で、先祖重代の刀を取出して、その
切羽
(
せっぱ
)
とハバキの金を剥ぎ、
鍔
(
つば
)
の中の
金象眼
(
きんぞうがん
)
を掘出して白紙に包んだままどこかへ出て行った。
父杉山茂丸を語る
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ことに
鍔
(
つば
)
と「ねつけ」の所蔵は相当立派なものらしい。写楽、歌麿、広重なんかも壁にかかっている。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
是もハガマすなわち
鍔
(
つば
)
のある
釜
(
かま
)
や、
竈
(
かまど
)
の作り方の変化と関係のあることは確かで、軍陣その他の労力の供給法にも
由
(
よ
)
るであろうが、主たる原因は趣味の移動であり
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
が、同時に彼は、美しい
鍔
(
つば
)
をはめた刀や、
蒔絵
(
まきえ
)
の箱や、
金襴
(
きんらん
)
で
表装
(
ひょうそう
)
した軸物などが、つぎつぎに長持の底から消えていくのを、淋しく思わないではいられなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
事と品とによれば
刃金
(
はがね
)
と
鍔
(
つば
)
とが
挨拶
(
あいさつ
)
を仕合ふばかりです、といふ者が多かつたのだらう、とう/\天慶二年十一月廿一日常陸の国へ相馬小次郎
郎党
(
らうだう
)
を
率
(
ひき
)
ゐて押出した。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
その刃先の下の(〔ところに〕)
鍔
(
つば
)
のようなものがあって、それから
金襴
(
きんらん
)
あるいはシナの五色の上等縮緬が一丈六尺程
垂下
(
さが
)
って居る。その全体の長さは二丈五尺程ある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
鍔
(
つば
)
のない、四角な帽子をかぶり、燃えるような緋の裏のついた、黒いガウンの裾をひいて、ステージに現われ、博士号の贈呈式に引続き、パデレフスキーはお得意の音楽
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
重吉はかぶっているソフトの
鍔
(
つば
)
を表情のある手頸の動かしかたで黙ってぐっと引下げたが
道づれ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
半ガロン
★
ほどの水を含むことの出来そうな自分の帽子の
鍔
(
つば
)
から水気を振い落したりした。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
無論家宝として高橋君の
愛玩
(
あいがん
)
措
(
お
)
かざる
光広
(
みつひろ
)
作
(
さく
)
千匹猿
(
せんびきざる
)
の
鍔
(
つば
)
もどこへ往ったか判らなかった。
千匹猿の鍔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
暗くなった夜空を振り仰ぐと古帽子の
鍔
(
つば
)
を外ずれてまたこまかいものが冷たく顔を
撫
(
なで
)
る。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その本は初め
鍔
(
つば
)
を少し集めた時に求めたので、「鉄色にっとり」などという言葉を、私なども覚えました。
象眼
(
ぞうがん
)
のある品などは一々袋に入れるので、いくつも縫わせられました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
但
(
たゞ
)
し
拵
(
こしら
)
へ
付
(
つき
)
貳尺四寸
餘
(
よ
)
無名物
(
むめいもの
)
縁
(
ふち
)
赤銅
(
しやくどう
)
鶴
(
つる
)
の
彫
(
ほり
)
頭
(
かしら
)
角
(
つの
)
目貫
龍
(
りよう
)
の
純金
(
むく
)
丸
鍔
(
つば
)
瓢箪
(
へうたん
)
の
透
(
すか
)
し
彫
(
ぼり
)
鞘
(
さや
)
黒塗
(
くろぬり
)
鐺
(
こじり
)
銀
(
ぎん
)
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
“鍔”の解説
鐔・鍔(つば)は、刀剣の柄と刀身との間に挟んで、柄を握る手を防護する部位もしくは部具の名称である。
(出典:Wikipedia)
鍔
漢検準1級
部首:⾦
17画
“鍔”を含む語句
鍔広
鍔際
鍔鳴
鍔競
鍔元
金鍔
鍔音
鍔口
鍔甚
鍔江流
鍔押
鍔廣
角鍔
鍔擦
仮鍔
吸鍔桿
吸鍔棹
鍔釜
鍔迫
鍔越
...