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酷
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むご
ふりがな文庫
“
酷
(
むご
)” の例文
欣
(
うれ
)
し泣きに
嗚咽
(
おえつ
)
するお珠の顔を、
酷
(
むご
)
いような力でいきなり抱きしめると、安太郎は、彼女の唇に情熱の
迸
(
ほとばし
)
るままに甘い
窒息
(
ちっそく
)
を与えた。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わたし
)
は、そんな
酷
(
むご
)
い事をしたおぼえはないがと、赤とんぼが、首をひねって考えましたとき、おじょうちゃんが大声でさけびました。
赤とんぼ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「自分を頼み切って居るのに、籠の鳥を殺すような
酷
(
むご
)
いことは出来ない。天下をとるのは運命であって、
畢竟
(
ひっきょう
)
人力の及ぶ所でない」
小田原陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「君は
善
(
よ
)
き人なりと見ゆ。彼のごとく
酷
(
むご
)
くはあらじ。またわが母のごとく」しばし
涸
(
か
)
れたる涙の泉はまた
溢
(
あふ
)
れて愛らしき
頬
(
ほお
)
を流れ落つ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「少年達の待遇は……その……極度に
酷
(
むご
)
いのでありまして、
美国人
(
アメリカじん
)
にでも知れましたら、黙って居らんだろうと思うのであります」
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
▼ もっと見る
されどまことは我一たびこゝに降れることあり、こは魂等を呼びてその
體
(
からだ
)
にかへらしめし
酷
(
むご
)
きエリトンの妖術によれり 二二—二四
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そのやうな
語
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
かせて
予
(
わし
)
を
切
(
き
)
りさいなむとは
酷
(
むご
)
いわい、つれないわい、それでも
高僧
(
かうそう
)
か、
司悔僧
(
しくわいそう
)
か、
教導師
(
けうどうし
)
か、
莫逆
(
ばくぎゃく
)
と
誓
(
ちか
)
うた
信友
(
しんいう
)
か?
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
自己
(
おの
)
が
小鬢
(
こびん
)
の後れ毛上げても、ええ
焦
(
じ
)
れったいと罪のなき髪を
掻
(
か
)
きむしり、一文
貰
(
もら
)
いに乞食が来ても甲張り声に
酷
(
むご
)
く
謝絶
(
ことわ
)
りなどしけるが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
(さう云つたかと思ふと、声をあげて泣き出す)誰がこんな……こんな
酷
(
むご
)
たらしいことをしたんだ。シイ坊、お前は、そいつの顔を見たか。
クロニック・モノロゲ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
早くいえば、芝居の切られお富をそのままなのです。この女は誰でしょう。どうしてこんな
酷
(
むご
)
たらしい目に逢ったのでしょう。
子供役者の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「まさかあなた様は、お代官様になさったような
酷
(
むご
)
たらしいことを、わたしに向ってなさるつもりでお連れになったのではございますまい」
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
主は
爰
(
こゝ
)
に、難くして且つ
酷
(
むご
)
き多くの他の
主
(
しゆ
)
に就けるものを招き玉ふ。彼等は重きを負ふて長途を行きたれば痛く疲れてあり。
主のつとめ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
何もかも済んだこととばっかり思うておりましたところ、思いもかけないこぎゃん
酷
(
むご
)
たらしい始末になったとでござります。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それを岸本は考えて、情熱と真実とに生きようとするものの告白後の結果に、その
酷
(
むご
)
たらしさに、胸の
塞
(
ふさ
)
がる思いをした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
町木戸
(
まちきど
)
の
大番屋
(
おおばんや
)
で
召捕
(
めしとら
)
れた売女の窮命されている有様が尾に
鰭
(
ひれ
)
添えていかにも
酷
(
むご
)
たらしく言伝えられている
最中
(
さいちゅう
)
である。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
誰もそれを
咎
(
とが
)
めはせまい。咎めたとて聞えまい、
私
(
わし
)
も言わぬ、私もそれを
酷
(
むご
)
いと言わぬぞ。知らぬからじゃ、
不便
(
ふびん
)
もいとしいも知らねばこそいの。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『君。もう一つ訊くがね。工場の裏で二人に逢った時に、何故話を丸くしないでこんな
酷
(
むご
)
い事をして
了
(
しま
)
ったのかね?』
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
それだったのに思い入って内田の所に来て見れば、内田は世の常の人々よりもいっそう冷ややかに
酷
(
むご
)
く思われた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
どんな
酷
(
むご
)
いことをしてやろうと、お父さんお母さんの恨み、おめえ自身の苦しみに比べりゃあ、物のかずではありゃあしねえ、気を弱く持っては駄目だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
無名の青年 ——それではあなたは絶望の
儘
(
まま
)
、ただ一人の親のため
空骸
(
なきがら
)
のままで生きて行こうとして居られるのですか。何と云う
酷
(
むご
)
たらしい生き方だろう。
ある日の蓮月尼
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そんな話をきかしても貞時は許してくれるであろうが、筒井は人の心を
酷
(
むご
)
たらしく悲しがらせることは、いままでに仕えた筒井として出来ないことだった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こうして交際を広くして置くと、私の作が出た時に、其知己が余り
酷
(
むご
)
くは評して呉れぬ。無論感服などする者は一人もない。私などに感服しては見識に関わる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こんな
酷
(
むご
)
たらしい殺され方をなすった方の後生をようくお祈りして上げたらということになって、いちおう菩提寺の方へお預けしたようなわけなのでございます。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ちかちかと青びかりしている
酷
(
むご
)
いような冷たさであった。濡れていた
曠野
(
こうや
)
の雪はあわてて凍結した。かちかちにかたく固く凍えた。深夜にはぴンぴンひび割れた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
どんな事になったってこの子だけは自分のものだと思っていたのに、まあ、この子まで、何んて
酷
(
むご
)
いことを言うのだろうと呆れながら、私はもう物も言えずにいた。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あの偉大な慶会楼は今後も残るであろうが、それは遊宴の用に供し得るからに過ぎぬ。かくして残る光化門がその位置に立つべき意義は
酷
(
むご
)
くも奪われてきたのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それが瑠美子の母として彼女をおいて出て行ったとなると、それは何といっても
酷
(
むご
)
い運命であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
總ての神經を何かに
酷
(
むご
)
く使ひ過ぎたので、身體全體はすつかり暫らく休めなくてはならないと云つた。病氣はない。私の恢復は一度恢復し始めたら
速
(
はや
)
からうと云つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
百姓達には、それは自分の子供の手足を眼の前で、ねじり取られるそのままの
酷
(
むご
)
たらしさだった。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
恐ろしいこと、
酷
(
むご
)
たらしいこと、恥ずかしいこと、悲しいことを持ちながら、しかも調和した善い世界を描き得る(無理の感じなく)に至るところにあると思っている。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
なにかしら冷たい——それが
酷
(
むご
)
いほどの理性であるような印象をうけるけれども、また一面には、氷河のような清冽な美しさもあって、なにか心の中に、人知れぬ
熾烈
(
しれつ
)
な
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
番人も
酷
(
むご
)
いぞ、頭を壁へ叩付けて置いて、
掃溜
(
はきだめ
)
へポンと
抛込
(
ほうりこ
)
んだ。まだ
息気
(
いき
)
が
通
(
かよ
)
っていたから、それから一日苦しんでいたけれど、
彼犬
(
あのいぬ
)
に
視
(
くら
)
べればおれの方が
余程
(
よッぽど
)
惨憺
(
みじめ
)
だ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
殊に今日は、
酷
(
むご
)
い人間らしくないことをしようとしているだけ、何か気がとがめるのでしょう。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
人の浅ましきか、我の愚なるか、恩人は
酷
(
むご
)
くも我を欺きぬ。今は世を挙げて皆穢れたるよ。悲めばとて既に穢れたる世をいかにせん。我はこの時この穢れたる世を喜ばんか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
嬶
(
かかあ
)
は内職、娘は
工場
(
こうば
)
。なぞというような一家となったら。
酷
(
むご
)
さ
悲惨
(
みじめ
)
さ話にならない。介抱どころか、お薬どころか。すぐにそのまま一家が揃うて。
顎
(
あご
)
を天井に吊るさにゃならぬ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして彼は寝床の中で、過去に執着するのは貧しい人々にとっては
酷
(
むご
)
たらしいことであると考えた。なぜなら、貧しい人々には、富める人々のように過去をもつの権利がないから。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
但しは無慈悲を通す気か、気違だの騙りだのと人に
悪名
(
あくみょう
)
を付けて
帰
(
けえ
)
って行くような
酷
(
むご
)
い親達から、金なんぞ貰う因縁が無えから、
先刻
(
さっき
)
の五十両を
返
(
けえ
)
そうと
捷径
(
ちかみち
)
をして
此処
(
こゝ
)
に待受け
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三日四日に
歸
(
かへ
)
りしもあれば一
夜
(
よ
)
居
(
ゐ
)
て
逃
(
にげ
)
出
(
いで
)
しもあらん、
開闢以來
(
かいびやくいらい
)
を
尋
(
たづ
)
ねたらば
折
(
を
)
る
指
(
ゆび
)
に
彼
(
あ
)
の
内儀
(
かみ
)
さまが
袖口
(
そでくち
)
おもはるゝ、
思
(
おも
)
へばお
峯
(
みね
)
は
辛棒
(
しんぼう
)
もの、あれに
酷
(
むご
)
く
當
(
あたつ
)
たらば
天罸
(
てんばつ
)
たちどころに
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あの業悪の鬼王丸のために……いやいやそれではあんまり
酷
(
むご
)
い! なんでそんな事があるものか! どうぞお願いでございます! 市之丞様のお身の上を早く明かせてくださいまし!
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あまりに
生々
(
なまなま
)
しい現実であったせいか、ここ数日、
不図
(
ふと
)
そのことばかりが、頭にうかぶのであった——けれど、それは、あの美しくも
酷
(
むご
)
たらしい一齣の場面だけであって、その原因とか
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
なぜ、皆様方は梨の実が欲しいなどと無理な事を
仰
(
おっ
)
しゃったのです。
可哀
(
かわい
)
そうに、わたくしのたった一人の孫は、こんな
酷
(
むご
)
たらしい姿になってしまいました。ああ、可哀そうに。可哀そうに。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
一時に沢山の毛を抜くから血が出るです。誠に
酷
(
むご
)
たらしい有様が見えて居るけれども当人はかえって平気です。いな、そういう風にしていかにも勇気
凜乎
(
りんこ
)
たる有様を人に示すのであるという。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
このやうに
酷
(
むご
)
い目にあはされてゐるのです! その胸に可哀さうなこの
孤兒
(
みなしご
)
を抱きしめて下さい! 廣い世の中に身の置きどころもなく、みんなから
虐
(
いた
)
めつけられてゐるのです!……お母さん
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
政夫と夫婦にすることはこの母が不承知だからおまえは外へ嫁に往け。なるほど民子は私にそう云われて見れば自分の身を
諦
(
あきら
)
める外はない訣だ。どうしてあんな
酷
(
むご
)
たらしいことを云ったのだろう。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
それは
酷
(
むご
)
たらしいなどというよりは、寧ろ気味の悪いものだった。知らせによって其場へ駈けつけた僕の目の前に転がっていたものは、生れてからまだ一度も見たことのない様な珍らしいものだった。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だがおらあ、今夜という今夜こそ、自分の仕事がどんなに
酷
(
むご
)
いものかってえことを知った。盗むこっちゃあどうせ酒か
博奕
(
ばくち
)
に遣っちまう金が、あそこじゃ親娘三人を生かすか殺すかの楔になっている。
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ねえ、竹下——
酷
(
むご
)
いことをする人達だな、どこまでも——」
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
そりやあんまり
酷
(
むご
)
いといふものじやないの、え、銀さん
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
おまへの耳にひそひそと
酷
(
むご
)
い自由を吹込んだため。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
日は
檻
(
をり
)
の外よりぞ
酷
(
むご
)
くも臨む。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
“酷”の意味
《形容動詞》
酷(ひど)い。厳(きび)しい。
(出典:Wiktionary)
酷
常用漢字
中学
部首:⾣
14画
“酷”を含む語句
苛酷
惨酷
残酷
酷似
酷烈
手酷
酷使
慘酷
冷酷
殘酷
小酷
酷待
真一酷
酷薄
峻酷
深酷
酷過
一酷
酷吏
酷熱
...